大江健三郎のレビュー一覧

  • 沖縄ノート

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    本土は沖縄に属している

    大江健三郎が鋭くついた、「本土」と「沖縄」の問題は解決されていないどころか、安倍•菅の強権政治によってより醜悪な形態をさえ取りつつあるのであって、この問題の部外者など真にいないのだと改めて、自戒を込めて。

    わからない、時代を感じる、左巻き、、、
    その無自覚な暴力を大江健三郎は読者に突きつけているのだが、、、

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    2021年09月27日
  • 洪水はわが魂に及び(上)

    購入済み

    イナゴという女性とこの親子

    先が読みたくなる作品だった。
    その1つの理由は、イナゴという女性。
    性的に節操がない。
    あけっぴろげな性的存在。
    が、快楽だけではなく愛情がある。
    知恵遅れの子とは
    愛情を注ぐ一方、かえってイナゴの
    精神を安定させる何かを得ているようだ。
    そして、勇魚は後でイナゴが
    聖書を読むこともあったのかと
    気付く。人の内面は
    簡単に全体像を見せない。

    #笑える #ダーク #ほのぼの

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    2021年09月12日
  • 洪水はわが魂に及び(下)

    購入済み

    あ、ああー、理想欲望暴発ですよ

     先を読みたくなる作品だった理由の
    2つ目は、破滅に向かうような
    ダークな事件が連発していくことだ。
     「……ですよ」と鳥の声を識別する
    声のリフレインの中、何を目指すのか
    わからない若者たちにとって、祈りは
    聖なるものではなく熱中と解釈され、
    『地下室の手記』的に先の読めない
    自由が追求される。
     主人公は、陸上では動けない樹木や
    鯨の代弁者で、幼児を守る、知的存在
    だが、一方、青年たちに好感を持つ中で
    その無茶が樹木を傷つけるのを黙認し、
    それは機動隊の指揮官が私刑的なことを
    黙認するのと同じだし、政治家の秘書
    だった時に少年に対する大罪を犯して
    おり、中庸

    #切ない #笑える #ダーク

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    2021年09月12日
  • 大江健三郎自選短篇

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    初めての大江健三郎でした。
    短篇集にしては分厚いし、初期短篇はかなり暗い。
    自伝的小説。
    暗喩の表現、散文詩的文章が心地よい。
    ご子息との会話が和やかですが、他にも大変なことはいくらでもあっただろう著者は、ご子息を大変大切に想っているのが手に取るように伝わり少し優しい気持ちになりました。
    実は二度挫折した本書、理由は初期短篇が暗すぎるから。
    それは著者が経験のもとに書かれているのだが、あとがきの話のほうが生々しく強烈な印象を受けた。
    苦手意識があったけれど、読後感は最高に良いです。

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    2021年07月30日
  • 個人的な体験

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    ネタバレ

    あまりにも考えられない病院側の反応に困惑したことから始まりました。嫌な現実から逃げようとする主人公。それを受け入れる関係をもった女性。しかし主人公は前向きに変わっていった。
    スワヒリ語のくだりと、沢蟹を探す熊みたいなんて感じの表現が好き。

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    2021年06月15日
  • 人生の親戚

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    息子二人を自殺で失った女性の半生。
    同時期に書かれた「恢復する家族」と共通する表現が多く、筋としても苦難の受容と克服がテーマになっている。
    手紙で語らせるスタイルが印象的。
    引用はイエーツ、バルザック、フラナリー・オコナー。
    ムーサン、サッチャン、アンクル・サム、ミツオなど、相変わらずネーミングセンスが好み。

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    2021年03月16日
  • 恢復する家族

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    長男、光との共生をテーマにしたエッセイ集。
    小説とは違って簡潔で明快な表現が多く、ストレートにポジティブで読みやすい。

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    2021年02月18日
  • 大江健三郎 作家自身を語る

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    大江健三郎氏の創作の秘密、作品に込められたものが解る。
    聞き手の尾崎真理子女史の作品への深い読みに舌を巻く。
    また、尾崎真理子女史の読みが確かなものであるので、大江健三郎氏の応えと合致し、巧みに大江健三郎さんの応えを引き出している。

    この本により、偉大な芸術家の内面を初めて知ったという感慨を持った。
    私生活の事は、身近な人間でないので、わからないけれども、大江健三郎氏の芸術家としての人生は幸せであったと思う。

    とにかく、大江健三郎ファンにはおすすめです。

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    2020年10月14日
  • われらの時代

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    ネタバレ

    敗戦を否定的に捉えた写実小説。めちゃくちゃ面白い!現代人からしたら、当時の若者が戦争に希望を抱いていたことは信じ難いことなのかもしれない。でも、これを現代におきかえてみると、彼らの心境を理解できると思う。
    私達にとっての絶望ってなんだろう。
    この本を読むことで息苦しさについて考えることができると思う。

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    2021年01月27日
  • 叫び声

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    だれか一人が遥かな救いを求めて叫び声を上げる時、それを聞くものはみな、その叫びが自分自身の声でなかったか、考えたくなるものだ。

    小説の中に描かれた人間模様は、「青春」とか一言で表されるような生易しい様相ではなかった。しかし若者たちの抱える叫び声は、少しずつ自分の中に染み込む気がしたのも事実である。叫びの重なり、とふと思わされた。
    私は。激しさの中に潜む純粋な欲や願望に久しく触れてなかった気がした。マネはできないし、しようとも思わないけれど、生きている上で、この渇望を永久に忘れないことが必要なんじゃないかと思う。

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    2020年06月11日
  • 私という小説家の作り方

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    幾つかのエッセイを読むと、大江健三郎には自意識過剰なところがあると思う。
    彼に影響を与えた詩について語る。
    『私という小説家の作り方』というタイトルから想像されるように、大江健三郎自身が、彼の作品について語る。
    同時に、ちょっぴり創作の秘密も。
    彼の作品においてブレイクが、いかに大きな役割を果たしたかが、わかる。

    芸術家の創作における内面を垣間見れることができる。

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    2020年05月20日
  • 同時代ゲーム

    硬派なファンタジー

     解説では、文化人類学やら神話学やらという小難しいことが書かれていますが、それはこの本の文体の難解さの所以でしょう(でもクセになるんですよねぇ)。
     この本以降の大江文学を読んでも、「死と再生」についてはより深く書かれることはあっても、神話についてはこの本より詳しく書かれたものはありません。そういう意味では、この本を読めば、大抵の「大江ワールド」には難なく入ることができます。
     文体は難解ですが、大江さんがおっしゃっていたように、「百年の孤独」を意識されて書かれたこの作品は、多分にラテン文学的なファンタジー要素を含みます。この作品を読んで、大江さんの生まれ故郷を訪ねた人は、きっと私だけでは

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    2019年12月09日
  • 芽むしり仔撃ち

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    戦争末期
    山奥の谷のむこう側に、外界と隔絶された村があって
    そこに町の「不良少年」たちが集団疎開する
    村人たちからしてみれば、厄介者を押しつけられる形だった
    しかし数日後、村に疫病が流行ったため
    村人はみんな隣村に逃げ出してしまい
    少年たちは全員取り残されて
    それだけならまだしも
    線路の橋をバリケードで封鎖され、閉じ込められてしまうのだった
    ところがこれを幸い
    病原菌の蔓延した村で、少年たちは限られた食糧を分け合い
    同じく取り残された疎開者の少女や、朝鮮部落の少年
    それに予科練の脱走兵も加え
    村を自分たちの理想郷に作りかえようとする
    それがしょせん短い夢にすぎないことは
    事の初めからわかってい

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    2019年08月22日
  • 万延元年のフットボール

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    大江健三郎はあまり好きじゃないけど、これは面白かった。人が暴徒化する過程がしつこく書かれていて読み応えある。

    でも、この“しつこさ”が活きたのは初期の頃までかな。後の「同時代ゲーム」とかは読んでいられなかった。
    正直言って、この人がノーベル賞とったのは日本の文学界にとって不幸だったと思う。わかりづらいこと書けば文学的、みたいな変なイメージが広がったんじゃなかろうか。

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    2019年07月07日
  • 大江健三郎自選短篇

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    厚さに尻込みせずに読んだ方がいい。
    初期から中期の暗く鬱々とした作品群、中期から後期にかけての抽象画のような美しい、同時に深い思索がある作品群。
    時代を色濃く写した作品群を読み進める面白さもある。

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    2019年06月20日
  • 取り替え子

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    超良かったです。こんなのも書けるのかと驚いた、なんか初期作品読んだだけのイメージではもっと文章固くて泥臭くて何書いてるのかわからないけど力押しで読め!って押し付けてくる感じだったのが、だいぶ透き通った文体になってたのも衝撃。死者と「これから生まれてくる者」との間のChangeling。なんて優しい祈りのような小説なんだ……
    個人的には終章が白眉。性描写が尊い。千樫は強い。古義人がすっと物語から身を引いて女たちだけで結末を迎えるというのが美しいね。新たな生命が託されるものとしての女性。
    時差ボケの深夜テンションで、いきなりスッポン解体しだすシーンも笑いましたが。

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    2018年10月23日
  • 洪水はわが魂に及び(上)

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    彼の長編小説で一番、面白かったです。
    障害者の子供、鯨の話、浅間山荘事件を想わせる
    リンチ、放水、「荒唐無稽だって?」の台詞が
    ずっと心に残ってました。

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    2018年08月04日
  • 「雨の木」を聴く女たち

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    「「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち」(大江健三郎)を読んだ。救済の象徴であるような『雨の木』をめぐる物語はしかし読み手の感情を抉るように鋭利である。自分の中に一本の『雨の木』があればと思う。最後の「泳ぐ男---水のなかの「雨の木」」に対する違和感が拭えないよ。難しいなあ。

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    2018年07月05日
  • 叫び声

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    ネタバレ

    芽むしり仔撃ち~性的人間の間くらいの時期、のはず。序盤の陽気さからそれぞれ破滅に向かっていく様子は、若者特有の精神的な危機をなぞるかのよう。大江健三郎を未読の人におすすめしたい。

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    2021年02月22日
  • 洪水はわが魂に及び(下)

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    アンチクライマクスが代名詞のような大江にあって、驚くほどストレート、かつ見事なカタストロフィ小説。ここまでコートームケイなストーリーでありながら絶妙に現実とリンクする、この時期の大江の咲き乱れる想像力の凄まじさ、充実は何度考えても震えがくる

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    2018年02月21日