大江健三郎のレビュー一覧

  • 万延元年のフットボール

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    読み終えるのに時間がかかった。なぜその場面が組み込まれているのか、登場人物の言動は何を意図しているのか、理解できていない部分も多いと感じる。

    主人公は、ほかの登場人物や故郷の谷間から一歩引いてそれらを観察し、自身についても内省を重ねているが、谷間での出来事を通じて自分自身に気付いていく。その気持ちの揺さぶりに読み手として振り回され動揺するような感覚。
    おぞましさや恥といった感情の描写が本当に的確。

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    2025年05月23日
  • 死者の奢り・飼育

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    やっぱり大江健三郎はすごかった。

    かつて大江氏は、自分にわからない世界について、そのギャップを埋めてまで小説を書こうとは思わないし、自分があえて書く必要性も感じないというようなことを言っていた。
    本作に出てくる短編は、児童期が戦時中であった彼だからこそ書けた話であり、学生らしさを失っていない時代だからこその初々しさに溢れている。

    それにしても天才にしか考えつかないようなシチュエーションが設定されている話ばかりである。
    こんな設定、どうやって思いついたんだと舌を巻くような作品ばかりである。

    一方でアメリカ兵を否定的に描写している場面も多く、アメリカ人は大江氏の作品をどのように読むのだろうと

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    2025年05月10日
  • 個人的な体験

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    大江健三郎自身がモデルであることは本人は否定しているが、やはり主人公と近い境遇の人間にしか書けない物語なのは間違いない。
    独特な文体で今時の読みやすい文に慣れると最初は戸惑うが没入感が強い。
    シナリオとしては裏表紙のあらすじがすべてだし、今後主人公に待ち受ける苦難を考えるとほんの入り口でしかない物語なのだが、ページを捲っているだけの自分にも無視できない影を落とす読書体験だった。
    忍耐かあ……

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    2025年03月30日
  • われらの時代

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    5.0/5.0

    戦後まだ間もない時代の閉塞感と虚無感、そして戦争という劇的なものに対する一種の憧れみたいなニュアンスを感じた。
    性、死、政治など様々なテーマが登場するけど、主人公である二人の兄弟は、これらをただの道具として「利用している」だけの印象を受けた。根底にある退屈や自尊心を潤すための為の道具に過ぎず、天皇に手榴弾を投げつけようとする行為も、日本から飛び出そうとする行為も全て利己的。
    時代を如実に内包した強烈な小説だった。

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    2025年03月29日
  • 個人的な体験

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    障害をもって生まれた息子が早く死んでくれることを願いながら、行けなくなったアフリカ旅行に思いを馳せ、酒と女友達とのセックスに溺れる退廃的、背徳的な日々を過ごす男の話。

    なんなんだこの本は。ただただ呆然とする。
    なぜか主人公の鳥に入れ込んでしまい、ときたま自己嫌悪に陥る自己の気持ち悪い感情、やべえ感情が全てさらけだされたような気分。なんなんだこれは。
    倫理など無視した地獄のような葛藤。それが自分の中に巻き起こるかもしれないという恐怖。
    この本と一生向き合って生き続けることになるだろう。

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    2025年03月28日
  • ヒロシマ・ノート

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    広島的な人、それでもなお自殺しなかった人。
    出来事や被爆者の声が著者の感性、思考を通して書かれる。
    人への尊敬や怒りが感じられる。

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    2025年03月24日
  • ヒロシマ・ノート

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     本書の『ヒロシマノート』のヒロシマがカタカナなのは、原爆被災地広島を示すだけでなく、広島・長崎に投下された原爆による人類史上初めてであり、最悪の「人間的悲惨」を象徴する。また核兵器廃絶の意思である「ノーモア・ヒロシマ」を意味する。そして、大江健三郎は悲惨な体験をした広島の人々の生き方から励ましを受け、「まさに広島の人間らしい人々の生き方と思想に深い印象」を受けた。広島の人は、漢字となっている。そして、そこから「人間の尊厳」と言う言葉を紡ぎ出す。

     1960年に広島を最初に訪問し、1963年から取材している。1963年は、大江健三郎が28歳の時だ。
    1964年に『ヒロシマノート』を出版し、『

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    2025年03月22日
  • 美しいアナベル・リイ

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    摑まされた
     クライストの『ミヒャエル・コールハース』は読んでおいた方が楽しめる。

     なにが起ったのかわからない冒頭から、時間軸がさかのぼって説明するスタイル。その謎の提示の仕方は好きだ。
     中期のもっとも晦渋な文体の時期は逸して、すなほな文章だった。

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    2025年03月15日
  • 見るまえに跳べ

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    「奇妙な仕事」のたんたんとして、ざらついた文章が、ひさしぶりに僕の鼻を打った。のめってしまった。
    飽きるほどいうのだが、これが村上春樹の原型だといわれて違和感なく、辿れば同根からでた芽のようなものだろう。

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    2025年03月02日
  • 晩年様式集

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     本書は、大江健三郎の最後の作品である。2011年3月11日の東日本大震災及び原発事故の後に、76歳の大江健三郎が綴った日記に近い私小説である。

     本作品は、大江健三郎の妹、妻、娘の3人からの手紙を起点とし、物語が構成されている。これらの手紙は、大江健三郎に対する非難の内容であった。大江健三郎の表現について、私小説であるがゆえに、家族からの反論と批判がなされている。大江の物語の編集方法が家族によって問い直されている。また、大江の妻が伊丹十三の妹であることを知るのは初めてのことであった。大江が愛媛の田舎から松山東高校に進学した際、同級生として伊丹十三が在籍していたというエピソードも印象的である

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    2025年02月27日
  • 見るまえに跳べ

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    若いうちに読めてよかった。
    大江健三郎は人間の心情を抉りとるような物語を描く。まるで自分のことが書かれているように感じてしまう。

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    2025年02月20日
  • ヒロシマ・ノート

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    自身の被った悲惨さについて、沈黙し、忘れる努力をすることの唯一の権利を持つ被爆者が、その経験をこそ生きる目的へと昇華させることを選択する。そこに、人間の威厳を見る。

    目も当てられないような人間の歴史について、想像することを怠らないことが、平和のさわりだと思う。なぜそれがこんなにも難しいのか

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    2025年01月13日
  • 死者の奢り・飼育

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    どれも読んでいると、生々しい感覚と気持ち悪い感覚が襲ってくる。

    何か凄いことを伝えようとしているのが分かる。
    だけど正直、抽象的すぎて政治的なメッセージや思想はあまり伝わってこなかった。

    個人的には人間の羊が分かりやすくて好き
    被害者にしか分からない葛藤や、被害者を取り巻く人々の気持ちが伝わってきて面白かった

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    2024年11月27日
  • 静かな生活

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    大江健三郎さんの実体験に、ほとんど基づいているので、興味深い。家族たちが健気で読んだあとのあったかさがほっとする。

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    2024年11月04日
  • 死者の奢り・飼育

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    ある日突然貸してくれた本。初めて一緒に働いた日に、私が伊丹十三の話をすると彼は大江健三郎を私に教えてくれた。マニュアルの端に急いでメモをとり、マニュアルに書くのはあんまよくないかってそのあと自分のメモ帳に書き写した。今もそれを使ってる。少し朽ちている。
    当時芥川賞を受賞したときの年齢が23歳。それぐらいの年齢の子たちと今暮らしてる。朝椅子に座って、夜ソファに転がって、同じ空気を吸いながら読んでた。海で読んだら気持ちいいだろうなって港へも連れて行った。読みたがっている女の子がいたけれど、彼女は借りずに帰った。
    彼に読んだことを伝えると急に人が死ぬでしょって笑ってた。本を貸してくれたことをどれだけ

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    2024年11月02日
  • 個人的な体験

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    面白かったです。
    描かれたことのない場所を精緻に描いている小説だった。
    最後、大江健三郎がアスタリスク後のこだわりを語ってるところも良かった。

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    2024年10月22日
  • われらの時代

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    ネタバレ

    醜い脂肪を持った売春婦の情人のヒモをやっている兄とアンラッキーヤングメンという男根愛で戦争経験済みの朝鮮人と、血と争いに飢えた青年ふたりで形成されたバンドとで交互に進んでいく。

    情人が精液を流すのに戸惑っている所から始まる、主人公はフランス文学部所属しており、フランス文学で受賞して温くて余生じみてる日本から脱出することを夢見ていた。が、情人は妊娠してしまい弟が殺人の嫌疑をかけられかけて気が狂ってしまったのと、大学の反フランスの同級生のアラブ人の友人に惚れ込んだ。情人と弟に関しては跳ね除けたのに
    、アラブ人の友情(連携)を取ってしまった。

    弟はアンラッキーヤングメンのみんなと天皇を見送ったら

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    2024年09月28日
  • われらの時代

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    安部公房がインタビューで「小説は言葉になる前のある実態を提供する」と言ってたけど、その意味で大江健三郎はすごく優れた作家だと思う。特にこの作品とか、言葉にならないぐらいの衝撃があるのに文章にならない最たる例ではないか

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    2024年09月15日
  • 万延元年のフットボール

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    ネタバレ

    Jリーグ観るのが好きなのでタイトルが気になって読んだ。この作品においてフットボールとは念仏踊りであり、念仏踊りは歴史の再現なのね。Jリーグは差別に対して毅然と対応してくれるから、こうした懸念を払ってくれる。ありがたい。それはさておき、読むのに体力が要るけど次々と怪人が出てくるから何とか読めた。めちゃめちゃ面白かったのでみんな読んでここに感想を流してほしい。
    アンニュイな語り手である蜜が、弟が恥辱に塗れて死ぬまで正論で殴り続けるところが好きだった。英雄になりたい欲を潰すことにかけては自分で「悪意の迫撃砲」とか言うレベルで容赦がない。で、終盤に100年前の一揆について重要な思い違いが判明して、一揆

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    2024年09月11日
  • 個人的な体験

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    産まれてきた息子が異常を持っているという未だかつて経験したことのない現実に27歳の「大人」が直面するとどうなるか?という内容の小説。

    一言で言うとずっと面白い。

    ほんの数日間の出来事が描かれているにも関わらず、一才が緊迫したシーンで埋め尽くされている、恐ろしい長編。

    予想できない展開、ユーモア、メタファー、回想シーンへの導入、魅力溢れるキャラ、アフォリズム、官能的な文体。

    挙げたら切りが無いが、どれを取ってもピカイチ。
    無限に味わい深い。

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    2024年09月09日