大江健三郎のレビュー一覧

  • ヒロシマ・ノート

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    自身の被った悲惨さについて、沈黙し、忘れる努力をすることの唯一の権利を持つ被爆者が、その経験をこそ生きる目的へと昇華させることを選択する。そこに、人間の威厳を見る。

    目も当てられないような人間の歴史について、想像することを怠らないことが、平和のさわりだと思う。なぜそれがこんなにも難しいのか

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    2025年01月13日
  • 死者の奢り・飼育

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    どれも読んでいると、生々しい感覚と気持ち悪い感覚が襲ってくる。

    何か凄いことを伝えようとしているのが分かる。
    だけど正直、抽象的すぎて政治的なメッセージや思想はあまり伝わってこなかった。

    個人的には人間の羊が分かりやすくて好き
    被害者にしか分からない葛藤や、被害者を取り巻く人々の気持ちが伝わってきて面白かった

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    2024年11月27日
  • 死者の奢り・飼育

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    芥川賞受賞作の『飼育』と表題作の『死者の奢り』
    大江健三郎さんの小説は気軽に感想が書けないほどに文章もテーマも全てが重厚

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    2025年05月20日
  • 静かな生活

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    大江健三郎さんの実体験に、ほとんど基づいているので、興味深い。家族たちが健気で読んだあとのあったかさがほっとする。

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    2024年11月04日
  • 死者の奢り・飼育

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    ある日突然貸してくれた本。初めて一緒に働いた日に、私が伊丹十三の話をすると彼は大江健三郎を私に教えてくれた。マニュアルの端に急いでメモをとり、マニュアルに書くのはあんまよくないかってそのあと自分のメモ帳に書き写した。今もそれを使ってる。少し朽ちている。
    当時芥川賞を受賞したときの年齢が23歳。それぐらいの年齢の子たちと今暮らしてる。朝椅子に座って、夜ソファに転がって、同じ空気を吸いながら読んでた。海で読んだら気持ちいいだろうなって港へも連れて行った。読みたがっている女の子がいたけれど、彼女は借りずに帰った。
    彼に読んだことを伝えると急に人が死ぬでしょって笑ってた。本を貸してくれたことをどれだけ

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    2024年11月02日
  • 個人的な体験

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    読書経験を揺るがした小説を挙げろと言われたら、真っ先に大江健三郎『個人的な体験』と村上春樹『海辺のカフカ』の名を答えると思う
    村上春樹は大江健三郎から影響受けてるのだろうか?書き方や作品の雰囲気が似ていると思ったら、大江健三郎自身も自分のことを「20世紀の作家」、村上春樹のことを「21世紀の作家」と称して交流があったみたい

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    2025年05月31日
  • 個人的な体験

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    面白かったです。
    描かれたことのない場所を精緻に描いている小説だった。
    最後、大江健三郎がアスタリスク後のこだわりを語ってるところも良かった。

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    2024年10月22日
  • われらの時代

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    ネタバレ

    醜い脂肪を持った売春婦の情人のヒモをやっている兄とアンラッキーヤングメンという男根愛で戦争経験済みの朝鮮人と、血と争いに飢えた青年ふたりで形成されたバンドとで交互に進んでいく。

    情人が精液を流すのに戸惑っている所から始まる、主人公はフランス文学部所属しており、フランス文学で受賞して温くて余生じみてる日本から脱出することを夢見ていた。が、情人は妊娠してしまい弟が殺人の嫌疑をかけられかけて気が狂ってしまったのと、大学の反フランスの同級生のアラブ人の友人に惚れ込んだ。情人と弟に関しては跳ね除けたのに
    、アラブ人の友情(連携)を取ってしまった。

    弟はアンラッキーヤングメンのみんなと天皇を見送ったら

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    2024年09月28日
  • われらの時代

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    安部公房がインタビューで「小説は言葉になる前のある実態を提供する」と言ってたけど、その意味で大江健三郎はすごく優れた作家だと思う。特にこの作品とか、言葉にならないぐらいの衝撃があるのに文章にならない最たる例ではないか

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    2024年09月15日
  • 万延元年のフットボール

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    ネタバレ

    Jリーグ観るのが好きなのでタイトルが気になって読んだ。この作品においてフットボールとは念仏踊りであり、念仏踊りは歴史の再現なのね。Jリーグは差別に対して毅然と対応してくれるから、こうした懸念を払ってくれる。ありがたい。それはさておき、読むのに体力が要るけど次々と怪人が出てくるから何とか読めた。めちゃめちゃ面白かったのでみんな読んでここに感想を流してほしい。
    アンニュイな語り手である蜜が、弟が恥辱に塗れて死ぬまで正論で殴り続けるところが好きだった。英雄になりたい欲を潰すことにかけては自分で「悪意の迫撃砲」とか言うレベルで容赦がない。で、終盤に100年前の一揆について重要な思い違いが判明して、一揆

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    2024年09月11日
  • 個人的な体験

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    産まれてきた息子が異常を持っているという未だかつて経験したことのない現実に27歳の「大人」が直面するとどうなるか?という内容の小説。

    一言で言うとずっと面白い。

    ほんの数日間の出来事が描かれているにも関わらず、一才が緊迫したシーンで埋め尽くされている、恐ろしい長編。

    予想できない展開、ユーモア、メタファー、回想シーンへの導入、魅力溢れるキャラ、アフォリズム、官能的な文体。

    挙げたら切りが無いが、どれを取ってもピカイチ。
    無限に味わい深い。

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    2024年09月09日
  • 晩年様式集

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    大江健三郎さんが亡くなり、彼の本を一生懸命読んできた俺として、この時だから何か読みたいと思って読んだ。
    大江健三郎さんを読んだのは久々だったけど、よく感じてた読みづらさ、わかりにくさは俺にとって相変わらず、章(節?)ごとに二回読みながら、没頭(?)できた。
    最後は詩で終わる
    詩が出てくるとわからないからいつも飛ばしてしまうけど、今回は彼がいなくなったという脳の認識が感情を動かしたのか、詩がとても良かった

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    2024年09月06日
  • 万延元年のフットボール

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    ノーベル賞作家・大江健三郎の骨太な長編。安保闘争に敗北し「政治の時代」が終わりを迎えた鬱屈した時代感の中で、性や障害、記憶、歴史といった実存主義的なモチーフが次々に繰り出され、グロテスクで仄暗い小説世界が形成される。

    全編を通じて飽きさせないが、中でも第1章が出色。一文が極端に長く、比喩も多用されており到底スラスラと読める代物ではない。「僕は、自分の内部の夜の森を見張る斥候をひとり傭ったのであり、そのようにして僕は、僕自身の内側を観察する訓練を、みずからに課したのである。」(P.9)といった具合に(これは主人公の失明した片目について触れた箇所である)、難解でありつつセンチメンタルな格調高さを

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    2024年08月20日
  • 死者の奢り・飼育

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    義父の本棚にあったので何気なく手に取ってみた
    人間が複数存在する状況において否応なく発生する緊張感や暗黙の了解についての、解像度や描写力がバケモンすぎる…

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    2024年08月04日
  • 個人的な体験

    購入済み

    前から読んでみたかった大江健三郎さんの作品。初めてページ数を見た時には存外短いなと思いましたが、実際に読んでみたらページ数から想像する10倍は重たく、濃い内容の作品でした。面白い、などと形容していい作品ではないですが、出産や障害、仕事といったリアルな側と、憧れの外国の地や光の差さない愛人の部屋での逢瀬といった非現実な側の対比が美しく、長く心に残りそうな作品だと思いました。読んでよかったです。

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    2024年07月02日
  • 死者の奢り・飼育

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    1950年代後半から1960年代にかけて、戦後の鬱屈とした社会が生々しく描かれている。
    実存主義から構造主義に移行していくような、社会規範のあり方が大きく変わろうとしていた時代。
    どの短編にも共通するのは、変わりゆく時代に敏感な(何かを期待されている)若者たちが主人公ということだ。
    社会正義を押し付けられ、何者かにならなければならないような空気感に抑圧されている学生や、残酷で不寛容な社会で成長せざるを得ない子どもたち。

    当時の人たちが外国人をどのように客観していたのか、令和に生きる私は、私たちの主観で、大江健三郎の文体によって、それを生々しく、悲しく体感させられた。

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    2024年06月08日
  • 洪水はわが魂に及び(下)

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    タイトルから受ける印象が読み終えたことで確定され、どうしようもない気持ちになる。やはり解説はとても良く、よくもこんな短い文章でこの本のエッセンスをまとめられるなと思う。ヴァルネラブルな魂、、
    それにしても洪水のイメージを遡及的に、読み終えてタイトルを眺めてる時に実感したのでその瞬間の重さに一瞬耐えきれなかった

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    2024年04月10日
  • 親密な手紙

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    大江健三郎は、芽むしり仔撃ち の頃のような若い時は、10代の自分には友達のささやきのようであった。それから、自分が20代のなって以降は大江健三郎は、遠くにいて会うことのないお父さんのようであった。わかる時もあればわからない時もあった。亡くなられたときは大きな光が静かに失われたようだったし、脱原発のことを考えている友人はとても落胆していた。
    この新書のなかでは、毎日毎日うつむいて という文章が何気なく良かった。私はほとんど希望を失い毎日毎日うつむいているが、政府の対応がこれだけ反・市民的なのでは、次の大集会にもでかけるほかはない。と。この感じが私の好きな大江健三郎。
    ミランクンデラが文学表現の最

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    2024年02月05日
  • 同時代ゲーム

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    以前1/3くらいで挫折。今回も1年くらいかかった。主人公のこれまでのいきさつと現状の説明と故郷の歴史とのない交ぜと、大江独特の硬質な文体に慣れるまでの「第一の手紙」が一番の難所。大きな歴史としての時間、家族の昔とその後、双子である主人公と妹の目を通して"現在"として移動する時間、と複層的な構造を往還しながら着地点がわからないまま運ばれていく。小説何個分にもなりそうな登場人物やプロットがたいして掘り下げられもせず惜しげもなく投入される。なんか"けり"もつかないまま放り出されて終わるのも凄い。とにかく圧倒的。

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    2024年02月02日
  • 見るまえに跳べ

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    とても良かった。現実離れした内容かと思えば、その表現の仕方は嫌になる程リアルで生々しく、自分が体験したかのような錯覚に陥るとともに、自分が過去に経験した事と結びつき、その時の光景や匂いと共に滑らかな読後感を与えてくれました。

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    2024年01月05日