大江健三郎のレビュー一覧

  • 個人的な体験

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     バードがしっかり責任を果たしてくれてよかった。自らの行動や状態を捉えることは大切であり、バードのそれを7分で見抜くゲイすげえと思った。でも確かにゲイってそこら辺鋭いイメージある。この認識って昭和からあったのか?

     自分の手で赤ちゃんを殺すか、それとも受け入れるか、その2択のみが責任を果たすということであり、そして責任を果たすのは自分自身のためというのが印象深い。もし自分だったら浅はかに赤ちゃんのためだとかいってしまいそう。

     不気味で陰湿な表現が上手だなと感じた。バードが赤ちゃんと同じ仕草をし始める所とかすごくキモかった。

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    2025年09月20日
  • ヒロシマ・ノート

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    アメリカが広島に落とした原爆はグロテスクに広島の人を変えた。肉体も精神も。身体がグロテスクに剥がれ落ちた人。一見普通に見えても、遺伝子や細胞、心に治らない傷がついた人。
    原爆の被害者として生きることを宿命付けられた人たちの記録。

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    2025年09月09日
  • 死者の奢り・飼育

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    閉塞感むきだしで、そのなかにある生身の人間関係。今日明日の生存に無駄なものを削ぎとったギリギリの状態の人間性。反戦のメッセージと偽善者に対する嫌悪感が私達を締め付ける。

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    2025年09月08日
  • 万延元年のフットボール

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    読み終わった後しばらく放心して、自然と一人一人の決断や行動の意味をずっと頭の中で考え直していました。読む人によって受け取り方が大きく変わる、そして考えさせる非常に奥深い作品でした。
    一言で到底言い表せないけど、「破壊」と「再生」という言葉が私にはキーワードとして浮かびました。

    登場人物の多くは、地獄とも呼べるような現実と葛藤しながら闘い、自らの意志で決断し、行動を取っています。そこには凄まじいほどの「覚悟」があり、読んでいて、鬼気迫るものが感じられました。

    大江さんの文体の特徴として、さまざまな比喩表現やバリエーション豊富な形容詞を用いて文章を修飾しまくっています。そのため、一つ一つの文章

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    2025年09月07日
  • 大江健三郎自選短篇

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    ネタバレ

    最初に描かれるのは、犬の殺処分や大学病院での死体管理といった題材。そこで主人公は「死」と真正面から対峙するのではなく、ただそこにあるものとして淡々と受け止めているように感じた。生と死の境界が明確でありながら、強く拒絶もせず、平静さをもって描かれている点に独特な世界観を感じた。

    続く作品では、日本人の共同体に現れる外国人兵士がいくつか取り上げられる。閉じられた共同体に異物が入り込み、風景が歪む。その異物に人々が慣れ、同化したかに見える瞬間があっても、再び異質さが露呈する構成となっており、その不気味さが際立っていた。

    「空の怪物アグイー」がとても印象に残った。作曲家には、これまでの人生で失った

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    2025年09月10日
  • 万延元年のフットボール

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    今の我々、若者にはこのフットボールの精神などはない。ましてや、一揆などという気概は殆どといっていいくらいない。それが良いか悪いかではなく、自分の内として経験ないことがこの評価たらしめる要因ではあった。(蜜にもないと思う人もいるが、蜜自体は一連の流れに身を任せていないだけで経験はしている。)
    だからこそ、この一点につき、私はこの本を推薦したいと思うのだ。我々の内に秘めたる鷹のような心。社会的な後ろめたさ、挫折感、そう言ったマイナスな感情を幼い時分から持っている、同世代がこの本を読む。言葉に刺される。そして、動く。そしたら、令和幾年のフットボールとして、社会に発現する時が来るかもしれない。私はその

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    2025年08月31日
  • ヒロシマ・ノート

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    ネタバレ

    戦後80年企画で、ついにこの本を。毎年夏になると、戦争関連読書を行いたいと思って手に取るのだが、見ているNHKの番組と情報量が多く引きずられがちで、断念しがち、、なので、今回は読み通せて良かった。林京子作品も読みたいんだよなー

    ヒロシマ・ノート、これは人類必読の書では?という感じで、今まで読んでこなかったのが恥ずかしいレベルだった。新書だし、多くの人に読んで欲しいと思う。

    「広島的なるもの」と形容されるものは何か?それは色々な角度から定義されている。

    …彼女たちにもまた、沈黙する権利がある。もしそれが可能なら、彼女たちには、広島についてすべてを忘れ去ってしまう権利がある。…ところが、たと

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    2025年08月12日
  • 個人的な体験

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    ネタバレ

    障害を持った子が産まれてくるという状況で、自身の感情と世界での倫理に挟まれるとても苦しい状況。その中で葛藤や矛盾を繰り返す心理描写が本当に現実的であり、感動した。最後は倫理を優先するが、それは結局、社会からの圧力に敗北するしかなかったのではないか。私は、簡単にハッピーエンドだとは捉えられなかった。それを含めて非常にリアルな作品だった。

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    2025年07月08日
  • 死者の奢り・飼育

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    初めて大江健三郎を読んだが、三島由紀夫の金閣寺を読んだときの感覚に近いものを感じた。

    「人間の羊」と「不意の啞」が特に良かった。両作品とも進駐軍をテーマにしたものだが、どうやってプロットを練ったのだろうか。まさか実体験ではないだろうし...

    また一人、作品を渉猟したい作家が増えた。

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    2025年05月31日
  • 万延元年のフットボール

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    読み終えるのに時間がかかった。なぜその場面が組み込まれているのか、登場人物の言動は何を意図しているのか、理解できていない部分も多いと感じる。

    主人公は、ほかの登場人物や故郷の谷間から一歩引いてそれらを観察し、自身についても内省を重ねているが、谷間での出来事を通じて自分自身に気付いていく。その気持ちの揺さぶりに読み手として振り回され動揺するような感覚。
    おぞましさや恥といった感情の描写が本当に的確。

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    2025年05月23日
  • 死者の奢り・飼育

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    やっぱり大江健三郎はすごかった。

    かつて大江氏は、自分にわからない世界について、そのギャップを埋めてまで小説を書こうとは思わないし、自分があえて書く必要性も感じないというようなことを言っていた。
    本作に出てくる短編は、児童期が戦時中であった彼だからこそ書けた話であり、学生らしさを失っていない時代だからこその初々しさに溢れている。

    それにしても天才にしか考えつかないようなシチュエーションが設定されている話ばかりである。
    こんな設定、どうやって思いついたんだと舌を巻くような作品ばかりである。

    一方でアメリカ兵を否定的に描写している場面も多く、アメリカ人は大江氏の作品をどのように読むのだろうと

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    2025年05月10日
  • 個人的な体験

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    大江健三郎自身がモデルであることは本人は否定しているが、やはり主人公と近い境遇の人間にしか書けない物語なのは間違いない。
    独特な文体で今時の読みやすい文に慣れると最初は戸惑うが没入感が強い。
    シナリオとしては裏表紙のあらすじがすべてだし、今後主人公に待ち受ける苦難を考えるとほんの入り口でしかない物語なのだが、ページを捲っているだけの自分にも無視できない影を落とす読書体験だった。
    忍耐かあ……

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    2025年03月30日
  • われらの時代

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    5.0/5.0

    戦後まだ間もない時代の閉塞感と虚無感、そして戦争という劇的なものに対する一種の憧れみたいなニュアンスを感じた。
    性、死、政治など様々なテーマが登場するけど、主人公である二人の兄弟は、これらをただの道具として「利用している」だけの印象を受けた。根底にある退屈や自尊心を潤すための為の道具に過ぎず、天皇に手榴弾を投げつけようとする行為も、日本から飛び出そうとする行為も全て利己的。
    時代を如実に内包した強烈な小説だった。

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    2025年03月29日
  • 個人的な体験

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    障害をもって生まれた息子が早く死んでくれることを願いながら、行けなくなったアフリカ旅行に思いを馳せ、酒と女友達とのセックスに溺れる退廃的、背徳的な日々を過ごす男の話。

    なんなんだこの本は。ただただ呆然とする。
    なぜか主人公の鳥に入れ込んでしまい、ときたま自己嫌悪に陥る自己の気持ち悪い感情、やべえ感情が全てさらけだされたような気分。なんなんだこれは。
    倫理など無視した地獄のような葛藤。それが自分の中に巻き起こるかもしれないという恐怖。
    この本と一生向き合って生き続けることになるだろう。

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    2025年03月28日
  • ヒロシマ・ノート

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    広島的な人、それでもなお自殺しなかった人。
    出来事や被爆者の声が著者の感性、思考を通して書かれる。
    人への尊敬や怒りが感じられる。

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    2025年03月24日
  • ヒロシマ・ノート

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     本書の『ヒロシマノート』のヒロシマがカタカナなのは、原爆被災地広島を示すだけでなく、広島・長崎に投下された原爆による人類史上初めてであり、最悪の「人間的悲惨」を象徴する。また核兵器廃絶の意思である「ノーモア・ヒロシマ」を意味する。そして、大江健三郎は悲惨な体験をした広島の人々の生き方から励ましを受け、「まさに広島の人間らしい人々の生き方と思想に深い印象」を受けた。広島の人は、漢字となっている。そして、そこから「人間の尊厳」と言う言葉を紡ぎ出す。

     1960年に広島を最初に訪問し、1963年から取材している。1963年は、大江健三郎が28歳の時だ。
    1964年に『ヒロシマノート』を出版し、『

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    2025年03月22日
  • 美しいアナベル・リイ

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    摑まされた
     クライストの『ミヒャエル・コールハース』は読んでおいた方が楽しめる。

     なにが起ったのかわからない冒頭から、時間軸がさかのぼって説明するスタイル。その謎の提示の仕方は好きだ。
     中期のもっとも晦渋な文体の時期は逸して、すなほな文章だった。

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    2025年03月15日
  • 見るまえに跳べ

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    「奇妙な仕事」のたんたんとして、ざらついた文章が、ひさしぶりに僕の鼻を打った。のめってしまった。
    飽きるほどいうのだが、これが村上春樹の原型だといわれて違和感なく、辿れば同根からでた芽のようなものだろう。

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    2025年03月02日
  • 晩年様式集

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     本書は、大江健三郎の最後の作品である。2011年3月11日の東日本大震災及び原発事故の後に、76歳の大江健三郎が綴った日記に近い私小説である。

     本作品は、大江健三郎の妹、妻、娘の3人からの手紙を起点とし、物語が構成されている。これらの手紙は、大江健三郎に対する非難の内容であった。大江健三郎の表現について、私小説であるがゆえに、家族からの反論と批判がなされている。大江の物語の編集方法が家族によって問い直されている。また、大江の妻が伊丹十三の妹であることを知るのは初めてのことであった。大江が愛媛の田舎から松山東高校に進学した際、同級生として伊丹十三が在籍していたというエピソードも印象的である

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    2025年02月27日
  • 見るまえに跳べ

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    若いうちに読めてよかった。
    大江健三郎は人間の心情を抉りとるような物語を描く。まるで自分のことが書かれているように感じてしまう。

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    2025年02月20日