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Posted by ブクログ
読み終わった後しばらく放心して、自然と一人一人の決断や行動の意味をずっと頭の中で考え直していました。読む人によって受け取り方が大きく変わる、そして考えさせる非常に奥深い作品でした。
一言で到底言い表せないけど、「破壊」と「再生」という言葉が私にはキーワードとして浮かびました。
登場人物の多くは、地獄とも呼べるような現実と葛藤しながら闘い、自らの意志で決断し、行動を取っています。そこには凄まじいほどの「覚悟」があり、読んでいて、鬼気迫るものが感じられました。
大江さんの文体の特徴として、さまざまな比喩表現やバリエーション豊富な形容詞を用いて文章を修飾しまくっています。そのため、一つ一つの文章が長くなりがちです。類を見ないほど素晴らしい表現力で感嘆するのですが、慣れるまでは読みづらさが先行してしまい、少ししんどいかもしれません。
私も中盤あたりで中弛みの展開も手伝って挫折しかけたのですが、後半にかけては引き込まれて、読む手が止まりませんでした。中盤ぐらいまでで脱落する人が多そうなので、そこが勿体なく残念だなと勝手に想像しています。
生前、政治的な主張が強かった作者なので、その点から毛嫌いされる人もいるのかなと。
ただ、日本人でただ2人のノーベル文学賞を受賞した筆力はダテではありません。
万人向けではありませんが、少しでも興味を持った人は先入観を排除してぜひ読んで欲しい作品です。
Posted by ブクログ
自己処罰の欲求は本質的に「罪悪感(恥)」に関わる。そこに多少の前後関係はあろうとも、一方は他方を必要とし、他方は一方なしには生きられない。その意味で、主人公が暴力的な子供たちの前に片目を失ったのは、後に来る「罪悪感(恥)」に対する自己処罰の前払いのような物であったと言えよう。
自己処罰は欲求であり、手段である。原因は罪悪感(恥)にある。つまり、我々は罪悪感(恥)から逃れるために進んで自己処罰を欲求するのであり、それはさながら、亡者が永遠の地獄の業火に包まれ、金棒を手にした鬼に殴られながらも、そこに相互関係を見出し、鬼に親しみを覚え、業火に心地よさを感じるようなものである。
Posted by ブクログ
今の我々、若者にはこのフットボールの精神などはない。ましてや、一揆などという気概は殆どといっていいくらいない。それが良いか悪いかではなく、自分の内として経験ないことがこの評価たらしめる要因ではあった。(蜜にもないと思う人もいるが、蜜自体は一連の流れに身を任せていないだけで経験はしている。)
だからこそ、この一点につき、私はこの本を推薦したいと思うのだ。我々の内に秘めたる鷹のような心。社会的な後ろめたさ、挫折感、そう言ったマイナスな感情を幼い時分から持っている、同世代がこの本を読む。言葉に刺される。そして、動く。そしたら、令和幾年のフットボールとして、社会に発現する時が来るかもしれない。私はその時に、サッとフットボールチームのメンバーとして仲間入りしようとも思うのだ。これは蜜でも鷹でも星でも妻でもない、蜜よりもネズミぽい陰湿な自分をそこに認めるのだ。
Posted by ブクログ
ノーベル賞作家・大江健三郎の骨太な長編。安保闘争に敗北し「政治の時代」が終わりを迎えた鬱屈した時代感の中で、性や障害、記憶、歴史といった実存主義的なモチーフが次々に繰り出され、グロテスクで仄暗い小説世界が形成される。
全編を通じて飽きさせないが、中でも第1章が出色。一文が極端に長く、比喩も多用されており到底スラスラと読める代物ではない。「僕は、自分の内部の夜の森を見張る斥候をひとり傭ったのであり、そのようにして僕は、僕自身の内側を観察する訓練を、みずからに課したのである。」(P.9)といった具合に(これは主人公の失明した片目について触れた箇所である)、難解でありつつセンチメンタルな格調高さを湛えた文章に、話の筋の面白さとは全く異なる次元の、小説を読むという体験の素晴らしさを教えられた。
物語の結末は率直に言って、ぼくの想像力を超えた難解なものだった。主人公の選択が輝かしい人間性の恢復へと続くのか、それとも惨たらしい悔恨と逃避を意味するのかはまだ若く未熟なぼくには判断がつかない。
大江自身は後書きで、この作品が彼自身にとっても、彼と同時代の読者にとっても一つの「乗越え点」、すなわち作風の転換点であり、同時に今までの読者をある種ふるいにかけた作品であったと語っている。
ぼく自身がこの作品を自分なりに咀嚼してその意味の一つでも掬い上げることができたのか、あるいはその難解さにただ翻弄されつつ、ファッションとして消費してしまったに過ぎないのかは定かでないが、少なくとも大江文学という一つの「乗越え点」を見つけることはできた。今はそれだけで十分だろう。
Posted by ブクログ
大江健三郎の最高傑作と評されていたので、温めて置いていましたが、現時点では個人的にもやはり最高傑作でした。読み終わってすぐ2周目を始めてしまったほどです。
重厚な構成、有機的で現実的なメタファー、極限状況からの脱出、魂の浄化。巧みな文章力に、自室で1人でため息を漏らしていました。
「魂の浄化」という点だけでいえば、「懐かしい年への手紙」の方が深く掘り下げていますが、全体としての完成度はこの作品が飛び抜けている気がします。
第1章の、蜜三郎が穴にこもり、自身を徐々に「穏やか」にし、精神の下降の斜面へと滑り落としていくシーンが1番好きです。このシーンの情景を大切に心の芯に持って生きていきたいです。
僕は、蜜と鷹、どちらの生き方を目指すのか…
Posted by ブクログ
日本人でありながら、自国からのノーベル賞受賞作家作品を読んだことがないのもいかがなものか、と思いまして。で、その大江作品の中、例の福田書評集で最も高評価だった本作をチョイス。勝手な印象だけど、何となく読み心地は村上春樹風。それをもっと小難しくした感じというか。あと思ったのは、英語みたいな日本語だな、ってこと。何を言っているのかというと、一文あたりがやたら長くて、文の途中まで意味が掴めないと思ったら、最後まで読んで腑に落ちる、みたいなあの感覚。なので読解に骨が折れる部分も少なくないけど、意外にリーダビリティは悪くない。内容は、タイトルからはイマイチ想像が出来なかったけど、江戸時代の一揆を、現代において再現してみました、的な。弟の自殺とか、その子を身籠った我が妻とか、かなりドロドロなクライマックスで、読み終わった後、ちょっと疲労感を覚えちゃいました。良い作品とは思えたので、評価は高めで。
Posted by ブクログ
冒頭がすごく引き込まれる。読み進めていく中でずっと考えていたことは「なんでこんな話おもいついたの?」だった。『個人的な体験』ではそんな思いは微塵もなかった。
凄すぎる人のやっていることは普通の人にはなかなかわかりづらい的な形がこの小説にもあるのかもしれない。難解ではなく話としては内容を辿っていけるし登場人物の会話も分かる。でもそれを全体として見ようとした時理解してない自分がいる。
鷹が兄の妻と不倫して子供まで作った場面、自分は憤慨も憤慨ですがそれでは駄目なのです。おまけにその妻はその子供を生んでやり直そうとか言っるし…そこで憤慨しているようでも駄目なのです。
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