【感想・ネタバレ】万延元年のフットボールのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年10月27日

読後の衝撃たるや。それは深部に残り続けるだろうと思います。

友人の不可解な死に導かれ、夜明けの穴にうずくまる僕・根所蜜三郎。
地獄の憂悶を抱え、安保闘争で傷ついた弟の鷹四。
僕の妻・菜採子は、重度の精神障害児を出産してから、アルコールに溺れるようになった。
アメリカでの放浪を終えた鷹四が帰国したの...続きを読むを機に、苦悩に満ちた彼らは故郷・四国の谷間の村を目指して軽快に出発した。
鬱積したエネルギーを発散する鷹四は彼を支持する若者らの信奉を得て、谷間でフットボール・チームを結成する。やがて鷹四に率いられた青年グループを中心に、万延元年(1860年)の一揆をなぞるような暴動が神話の森に起こり…。

大江健三郎の最高傑作とも評されるのも頷ける長編。生硬かつ濃密な文体で綴られる、生きる苦しみ。
ひたすらに内省的な僕「蜜」は、27歳にしてすでに諦観の境地に達したか。
対照的に、その弟「鷹」は、自我を引き裂かれた怪物のような青年で、幕末の一揆を彷彿とさせる暴動を先導する。
「新生活」を始めるため、彼らは故郷・四国の谷間の村に行ったが、地元の青年たちの支持を集めてカリスマ性を発揮する鷹に対し、蜜は倉屋敷に閉じこもり思索に沈む。
内向的すぎてもはや何の行動も起こさない蜜にとって、鷹は血を分けた弟とはいえ、到底理解できる相手ではなく、憎悪の対象でしかない。
たしかに、幕末の一揆を引き起こした曾祖父の弟に自分を重ね、自己陶酔に浸る鷹は恐ろしい存在ですし、絶縁して当然ですが、蜜は弟の暴走を止める対話をできたのでは?しかし、そこは妻がずばり指摘してましたね。
それらすべてを抱え、蜜は再生に踏み出せるか。深遠な問いに読者も道連れにされる、果てしなく重い作品でした。

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Posted by ブクログ 2023年06月02日

大江健三郎の最高傑作と評されていたので、温めて置いていましたが、現時点では個人的にもやはり最高傑作でした。読み終わってすぐ2周目を始めてしまったほどです。

重厚な構成、有機的で現実的なメタファー、極限状況からの脱出、魂の浄化。巧みな文章力に、自室で1人でため息を漏らしていました。
「魂の浄化」とい...続きを読むう点だけでいえば、「懐かしい年への手紙」の方が深く掘り下げていますが、全体としての完成度はこの作品が飛び抜けている気がします。

第1章の、蜜三郎が穴にこもり、自身を徐々に「穏やか」にし、精神の下降の斜面へと滑り落としていくシーンが1番好きです。このシーンの情景を大切に心の芯に持って生きていきたいです。

僕は、蜜と鷹、どちらの生き方を目指すのか…

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Posted by ブクログ 2022年09月15日


文学的な位置でも自身の中の位置でも最重要な一冊。
この特濃の内容とゴテゴテの文体を1人の人間が描いているのが恐ろしい。
初オーケンでこれを選ぶと胸焼けする可能性があるが、本作以降も擦られ続ける主題であり向き不向きを決める上でも必読書だと思う。

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Posted by ブクログ 2019年07月07日

大江健三郎はあまり好きじゃないけど、これは面白かった。人が暴徒化する過程がしつこく書かれていて読み応えある。

でも、この“しつこさ”が活きたのは初期の頃までかな。後の「同時代ゲーム」とかは読んでいられなかった。
正直言って、この人がノーベル賞とったのは日本の文学界にとって不幸だったと思う。わかりづ...続きを読むらいこと書けば文学的、みたいな変なイメージが広がったんじゃなかろうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年09月03日

当時の大江健三郎のあらゆるエッセンスが詰め込まれた意欲作。
物語の設定とストーリーは、自身の故郷である愛媛の山間の村落、障害を患ったであろう子の誕生、戦後民主主義の中のアメリカ文化、学生運動と命をかける青春(跳ぶ、ほんとうのことなど)などの作者のバックグラウンドが複合して形作られている。
同時に、冒...続きを読む頭の難解な長文はロシアフォルマニズムの異化の手法、弟鷹四の村落への反乱とその消滅は当時からの有力な学説であった異人による日常への祝祭の現出を採用しており、それらをすべて一つの作品で詰め込んだ内容の濃い作品なのだ。
一度目を読むのに時間はかかるが、それだけの意味のある作者の最高傑作。

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Posted by ブクログ 2017年08月28日

日本人でありながら、自国からのノーベル賞受賞作家作品を読んだことがないのもいかがなものか、と思いまして。で、その大江作品の中、例の福田書評集で最も高評価だった本作をチョイス。勝手な印象だけど、何となく読み心地は村上春樹風。それをもっと小難しくした感じというか。あと思ったのは、英語みたいな日本語だな、...続きを読むってこと。何を言っているのかというと、一文あたりがやたら長くて、文の途中まで意味が掴めないと思ったら、最後まで読んで腑に落ちる、みたいなあの感覚。なので読解に骨が折れる部分も少なくないけど、意外にリーダビリティは悪くない。内容は、タイトルからはイマイチ想像が出来なかったけど、江戸時代の一揆を、現代において再現してみました、的な。弟の自殺とか、その子を身籠った我が妻とか、かなりドロドロなクライマックスで、読み終わった後、ちょっと疲労感を覚えちゃいました。良い作品とは思えたので、評価は高めで。

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Posted by ブクログ 2013年05月28日

レビューすることを放棄したくはないけれど、
この作品を的確に言い表すのは難しい。

中盤まで文章は深く淀み、息苦しい。
得体の知れない嫌悪、不安がまとわりつく。
後半は物語が展開して文章的には読み進めやすくなるが
不安はますます確信めいて目を離すことも出来ない。

寝取られとか読んでるだけでも辛いよ...続きを読む
これ以上苦しめないで!苦しまないで!
登場人物より読者のほうは思い悩むのは何故だ。
しかし最後前向きに終わるのに違和感がある。
どこに希望があったの……?

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Posted by ブクログ 2013年04月06日

彼自身の状況を象徴するような「どん詰まり」の谷間の中で、最後に思いもかけない地下室を発見するところがなんとも言えず爽快。この頃から円環の要素が出てくるのか?万延元年の出来事に似たことが再び繰り返されるならば、出来事というものが反復されるならば、万延元年の事件の思いもかけない「抜け道」であった「地下室...続きを読む」は同時に閉塞した今の自分を励ますという…。そして「スーパーマーケットの天皇」のスーパーであるようなものが後の『燃え上がる緑の木』などで川沿いのスーパーまで行って来たのよ、などと登場するところも面白い。

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Posted by ブクログ 2011年08月22日

カラマーゾフ読み終わってから毎日ベローチェに通ってます。
気持の入った読書の時間じゃないと、とっつきにくかったかもしれないなと思いました。僕には難解なところも多かった。

「期待」のない主人公がアメリカから帰ってくる弟、その親衛隊、障害を持った子供を産んだ妻とともに「草の家」「新しい生活」を見つける...続きを読むべく森に入る。
万延元年の一揆の首謀者である曾祖父の弟に自分を重ね合わせる、弟。それを客観的にとらえる主人公。

精緻な構成に、圧倒されました。「本当のこと」に引き裂かれる弟の描写、結び付けられていく事実。非常に面白かったです。

読後の感情をうまく文章化できるんじゃないかと期待して、時間をおいてもう一度読み直したい。

嘲弄っていう言葉を使いだしそう

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Posted by ブクログ 2011年05月29日

大江健三郎の文は最初で引き込まれる。特に哲学めいたことが好きな人にはたまらない。
ただ、入り口が分からないと全く入れない。
入るとたまらない。
文に頭が焼かれる。

なんで、この作品はあまり文庫なんかでも出版が少ないんだろうと思わされる。
こんなに迷作なのに。

ただ、大江健三郎は駄作もある。
特に...続きを読む悪い意味で知的ぶった作品なんかは読むに耐えない。

ただ、万延元年は、文学好きならマスト本だと自信を持っておすすめできる。

そういうこと。

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Posted by ブクログ 2011年03月25日

私のアイデンティティというものについて、自分なりに消化できたところが、あったような気がする。ちゃんと読書感想文を書きたい。

・「恥」のコミュニティに生きる人々の内面と行動について
・蜜三朗の心持ちと連動するかのような、文体
・はたから見ると宙ぶらりんのようで、でも主人公にとっては確実な、ラストの一...続きを読む歩の、しっくり感
・最後の解説がまた一層織りなしてて素晴らしい

P93「uprootedという言葉をアメリカでたびたび聴いたんだが、おれは自分の根を確かめてみようとして谷間に戻って来て、結局おれの根が、もうすっかり引きぬかれていて、自分は根なし草なんだと感じはじめたよ、おれこそuprootedだ。」
P164「私たちが蜜のいうとおりに、とりかえしがつかないと認める時が来たら、私たちはお互いにもっと優しくなるかもしれないわ」
P320「それは蔵屋敷の高みから谷間を見おろしている厭世家の、誤った展望にすぎないよ、蜜」
P368「『暴動』の日、かれらはその『恥』そのものを正面から引き受けることによって破壊力を獲得し、お互いに結びつきあったのだ。」
P395「昨夜ずっと考えているうちに、私たちがその勇気さえ持てば、ともかくやり始めることはできると思えてきたのよ、蜜」

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Posted by ブクログ 2011年01月16日

ノーベル文学賞を受賞した作家の作品とはどのような作品なのかということに関心をもって本書を読んでみた。話の序盤では、苦渋に満ちた登場人物たちが四国の村を目指すシーンがあり、そこでは軽快ささえ感じられる。しかしクライマックスはあまりにも衝撃的なものだった。難解な文章をくぐり抜けこれほどまでに印象深い結末...続きを読むを迎えるとは予想もしなかった。

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Posted by ブクログ 2011年01月09日

大江健三郎の代表作といってもいい作品。村上春樹の本を読んでいた自分が、この本を読むことで、一気に大江の大ファンになった。裏表紙には、上手いこと書いてあるが、内容は極めて、下品さと道徳の崩壊を記してある。この本も、実存主義の本であり、鷹が死ぬとき、猛烈なクライマックスを迎える。音が実際に響いてくるよう...続きを読むな本だった。

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Posted by ブクログ 2011年01月06日

これほど読み切るのに膨大なエネルギーを費やした作品はなかった。いい意味でも、悪い意味でも。

ただ強大なパワーを秘めた小説であるのは確か。一生忘れられないと思う。
ノーベル賞は伊達じゃない!

ちなみに文体構造の難解さは、わざとやっているらしいですね。

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Posted by ブクログ 2010年10月17日

多用される比喩と物語の重層性が非常に難解な印象を与え、読者を限定させると思われがちだが、そういう方は初期作品から読み進めるとよい。作者と主人公、日本近代という歴史の青年期のしめくくりを記した小説を私自身のそのしめくくりに読み終えたことを幸福に思う。熱い期待を込めて脱出した場所から、再び根所を降ろすそ...続きを読むの場所へ。

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Posted by ブクログ 2010年07月12日

ジャンル:NTR・近親相姦

村の一員として贖罪羊になることを望んだ兄と、残された兄妹たちの歴史
「人は一人では生きられない」という当たり前の言葉の裏にあるグロテスクさ

地理に関する描写が読む手を止める

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Posted by ブクログ 2010年03月16日

読めば読むほど「こんな人たちと一緒にいたくない・・・」って思います。みんなそれなりに思いやりがあるくせに、わざと自分や他人を傷つける言い方をネッチネチと・・・・・・ほんま私なら即、拳が飛び出しそうです。
とは言え、そこが自己欺瞞や虚飾から目を逸らさない徹底した表現方法だと思います。他人と衝突するって...続きを読む疲れるし、自分を見つめなおすのは億劫。でもそうしないわけにはいかない万延元年のフットボールなのですね!!
やはり夫婦揃って鷹の子供を育てる決断については、鷹=蜜でないと納得できない部分がありました。
私の読み方はそれでいいや。

10.03.15(再読)


必読書うんたら系に必ず名の挙がるこの作品、大江ファンとして読まずにいられようか!
と思いつつ、リテラシーを上げて取り掛からないと理解できんだろうな。でもそろそろ読んでみようかな、で、読んだ。

やはり前半はかなり読みづらいものがあったのですが、鷹四が破滅していくあたりから大江作品特有の、そりゃあもう私が大好きな、負に向かってガンガン上り詰めていく緊迫感がもう鳥肌もんです!

そのあたりからようやく作品を自分の中で消化できそうになってきました。
私にとって、蜜=鷹として考えると、すごいしっくりでした。人の短所長所をそれぞれ蜜と鷹っていう二人に分配してかかれたんじゃないかなー。「もう一人の自分」的な。
そういう読み方で、近いうち再読します。

10.03.04

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Posted by ブクログ 2010年05月09日

濃い話だった。読むのは難しい・・・。
しかしこれこそ本気の青春の終わり、青春というか時代も同時に終わったみたいな感じがしました。よかったねっていう感じと、あ、終わっちゃったという悲しさ。

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

大江健三郎って本当にすごい作家だと思う。
小説の中で彼独特の世界を完璧に作り上げてる。

これもまた大江健三郎らしい作品。
もうどうしようもないところまで皆で堕ちて行くけど、
最後には希望の光が見える。
しかも鼻につかないギリギリの微かな光。

読み終わってなんかもう感心するしかなかった。
尊敬です...続きを読む

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

ひとりの人間が、それをいってしまうと、他人に殺されるか、自殺するか、気が狂って見るに耐えない反・人間的な怪物になってしまうか、そのいずれかを選ぶしかない、絶対的に本当の事。

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

ブコフで発見して800円。「全然安くなってないじゃん・・」と思って裏見たら定価1500円でやんの。そうか・・そんなに高かったか・・・・再び読み始めました。

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Posted by ブクログ 2022年08月27日

なぜこれを読もうと思ったのか?
ノーベル賞受賞の根拠となったらしい作品だから、というミーハーな動機・・・

冒頭だけ読んだ時点では、蛭子能収のマンガみたいな不条理作品なのかこれは?と思ってしまい、文章の読みにくさもあってげんなりしてしまったけど、読み進めていくにつれて意外と普通に理解していけばよい作...続きを読む品なんだと気づいた。

乱暴に要約するなら、主人公兄弟が「本当のこと」を自他に認められるようになるまで、という至極真っ当な話、ではある。
加えて、60年安保闘争の空気感とか、歴史的事件を踏まえた神話的ストーリー展開とか、開化されゆく地方の習俗とか、重層的なテーマが絡み合ってとても読み応えがある。人類学や構造主義哲学の素養があればより楽しめる作品なのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2017年08月21日

「万延」と「フットボール」というミスマッチな単語を重ね合わせた軽妙な題名とは異なり、推敲に推敲を重ね無駄を排した独特な文章と、段落を極力無くし畳み掛ける緻密な描写は読者に緊張さえ与える。初めての大江健三郎作品であったが、いやはや鬼気迫る作品であった。

日本人に古来より根付く暗澹たる気質を浮き彫りに...続きを読むし、万延元年の一揆と鷹四が隆起する暴動の共通項による事件性を謳いながらも、結局は大江自身の自己反芻の物語であるのかもしれない。内包する狂気性が自己に向かった場合に起こることを鷹と蜜という対立軸で思考実験を重ねた産物のように思えた。

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Posted by ブクログ 2015年06月15日

日本文学に疎いため、恥ずかしながら初めて読む大江作品。出だしから重く、暗く、救いのない状況の主人公。アメリカから帰った弟たちと、実家の売却のために久しく帰らなかった郷里の部落を訪れる。そこで見聞したのはさらに忌まわしい歴史と現状。そうしたおどろおどろしい村社会の人間関係をどこか他人事のように眺める主...続きを読む人公と、そこに深く関わり万延元年の一揆を再現しようとする弟。その時代性なのか、なんともやりきれない重苦しさが苦々しく残る。作者は何を伝えたかったのか、真意が分からぬままに読み終えた。今は読むべき時ではなかったのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2014年07月21日

 1967年発表、大江健三郎著。友人が死んだ主人公、アメリカから帰ってくる弟、障害児を生んだ主人公の妻。彼らは故郷である四国の村へ向かう。そこで弟の主導の元、スーパーへの略奪が起こり、万延元年の一揆をなぞるように、村全体を巻き込んだ暴動が始まる。
 今まで読んだ著者の作品の中で一番面白かった。思想や...続きを読む人間心理や土着的な知識が混然となっていて、何だかラテンアメリカ小説に似た熱を感じる。
 著者が本小説の前に書いた「個人的な体験」では少し荒さが目立った気がしたが(特にご都合主義的なラストシーン)、この小説ではそういった欠点がしっかり取り除かれている。序盤は確かに少し退屈だが、ストーリーが村に行き着くと、大食病の女、隠遁者ギー、スーパーマーケットの天皇、それに村の伝説など、興味深い要素が次々飛び出してくるため読んでいて飽きない。そしてその勢いを保ったまま最後には、弟の持っている破滅的思想があらわになり、村の伝説に関する種明かしもあり、主人公と妻が村から旅立つ爽やかなシーンで終わる。
 時代を象徴した暗喩として解釈もできそうだし、神話的な美しさもあるし、大江健三郎的だとしか言いようのないオリジナリティ溢れる文体を楽しめるし、純粋にキャラクターや物語自体が面白い。総合的に見て、理想的な小説だと思う。

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Posted by ブクログ 2018年10月18日

身勝手で頭のおかしい家族とその周辺の話し。肛門に胡瓜指して縊死した友人、近親相姦、不倫(?)や朝鮮からの渡来人に対する事実誤認など盛りだくさん。

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Posted by ブクログ 2015年09月26日

大江さんの作品は難解と言われたり、考察しながら読むべきとの見方があるかもしれないが、私にとってこの小説は感情にまかせて読んでしまうものだった。集団行動の不条理さや、行動的であることへの嫉妬心のようなもので、感情がかき乱され続けた。エネルギーに満ちた小説。

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Posted by ブクログ 2014年10月04日

下手な翻訳文のような、注意深く選びとられて長々と装飾された言葉の羅列に息が詰まる。
会話になると急に世界が矮小になったと感じる。五感でさえ人間を中心に存在しているわけではない、この退廃的で重苦しい空気が表現されています。

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Posted by ブクログ 2014年07月29日

隠喩に富んで、いたのだろうか。

大江に先にはまったのは、私の方だった。ただ、万延元年のフットボールだけは友人が先で、とにかく感銘を受けたからと、こちらの積ん読を一つずつ崩す楽しみを無視して割り込まんとしてきたのである。しかし、このような義務感から、技巧的にもテーマ的にも考え抜かれたであろうこの著書...続きを読むをあらぬことか斜め読みしてしまったのである。

含蓄やギミックの多い物語を斜め読みすることは、一夜の夢を見るようだ。思考は途切れ、飛び、気まぐれに繋がり、そしてまた散る。同じくノーベル文学賞を受賞した莫言との比較や、スーパーマーケット襲撃を百姓の一揆と重ねたようなストーリーを、次には関東大震災時の朝鮮人差別に重ねたり…。そしてまた、大江自らの障害児の子がここにも登場するという事や、バードと鷹の関係性など…。全て、思考は夢の中で、途切れ途切れ。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

ちょっとふざけたようなタイトル、やたらと明るいレモンイエローの装丁、
題字は斜めにシルバー。

中学生のときに、すぐ上のお姉さんの高校の国語の教科書に載ってたのは
なんだったんだっけな、大江健三郎の。
思い出せないけど、それを読んだときのようなとまどいは全くなく
思っているのと話しているの...続きを読むと書いているのの真ん中のような
不思議な文体が面白くて仕方なかった、今回。
ひとつの面でこういう世界を描いてみせるというか
ズラすところを分かりやすく設定するわけでもなく、でも重量感があるというか
むやみやたらと嬉しくなってしまったので、わけもわからないまま日記を書きました。
文字の軽さだけじゃなく、ことばの軽さまで感じる小説でした。
重量感とは矛盾せずにある軽さ。

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