大江健三郎のレビュー一覧

  • 宙返り(上)

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    長かった。長い道のりだった。しかし、大江健三郎はこのくらいの、ある程度の長さがなければ醸し出されないものがある気がする。だから、この長さは半ば必然的な長さだったのだと思う。途中、面白くて面白くて、一回休憩入れないと駄目だ、勿体無いわ、と思って、休憩入れてまた読んで、というのを繰り返しながら。大江作品には本質的に悲嘆に暮れている人間がいないように感じる。みんな、どこかしら明るい。リジョイス!と叫びたくなる、そういう明るさがある。これでレイトワークは読みきったので、ここからはもうちょっと自由に年代を考えないで読んでいこうか、それとも順番にできるだけ沿って、次は「燃えあがる緑の木」三部作に手を付ける

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    2012年08月17日
  • 新しい人よ眼ざめよ

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    ウィリアム・ブレイクの詩を肴にして、紡がれる連作短編集。とてもとても良かった。これまで大江健三郎は長編でこそ醸しだされる某かがあるだなんて思っていたけれど、そればかりではないんだ、と。はっと気付かされた。どの短編がいい、というよりも、どの短編もいい、という感じで、本当にいい。イーヨーは大江作品にとって、本当に大いなる光だと読むたびに思う。(10/8/25)

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    2012年08月17日
  • 新しい文学のために

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    P.213
    子供じみたいい方と受けとめられるかもしれないが、希望か絶望か、と問われる際には、僕はとりあえず希望の側に立ち、人間の威厳を信じる側に立つ。

    P.216
    想像力とは弦にあたえられているイメージ、固定しているイメージを根本から作りかえる能力である。

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    2012年06月30日
  • あいまいな日本の私

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    ネタバレ

    大江健三郎の文学以外の作品は、出たときには読むことがありますが、後から読み返すことはありませんでした。

    記事で、
    「標題の「あいまいな日本の私」が、ノーベル文学書受賞の際の記念講演の標題だということ。」
    「ノーベル文学賞を受賞した川端康成の「美しい日本の私」を引いていること。」
    を知って、読み返す気になりました。

    「ハックルベリーフィンの冒険」と「ニルスホーゲルソンの不思議な旅」の2冊の書籍を紹介しています。
    「裏切り者(トラディトーレ)としての翻訳者(トラデュトーレ)とはいえない」
    アイルランドの詩人ウィリアムバトラーイエーツに親近感を感じるとのこと。
    上品な(ディーセント)。
    渡辺一夫

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    2012年04月30日
  • 見るまえに跳べ

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    ネタバレ

    見る前に飛んだ人も何人もいたかもしれない。
    自分では、見てからしか飛ぶことはできないかもしれないと思った。

    大江健三郎の小説は沢山読んだ気がするが、タイトルを覚えているのは、これを含めて数冊かもしれません。ごめんなさい。

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    2011年12月20日
  • 性的人間

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    これが初めて読んだ大江だったのですが、そんなに読みにくいと感じることもなく読みました。いろんな意味で衝撃。60年代の若者も迷走してたんですね。「セヴンティーン」は痛いです。軍服着て風俗行く十七歳…。

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    2011年11月24日
  • 新しい文学のために

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    文章が分かりやすく、とても読みやすい。

    「想像力」とは何かを定義する章は特に興味深く、新鮮だった。

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    2011年11月02日
  • 見るまえに跳べ

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    ネタバレ

    「上機嫌」だけは読むのが苦痛だったけど、他の短編はどれも素晴らしかった。特に「動物倉庫」なんかまで行くともはやコミカルと言っても良いくらいで、その上大江健三郎の典型というような内容を同時に保っている。作品の内容について今更語るのも馬鹿馬鹿しいのでやめておくが、大江健三郎の入門書としてオススメしたい。

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    2011年09月09日
  • 万延元年のフットボール

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    カラマーゾフ読み終わってから毎日ベローチェに通ってます。
    気持の入った読書の時間じゃないと、とっつきにくかったかもしれないなと思いました。僕には難解なところも多かった。

    「期待」のない主人公がアメリカから帰ってくる弟、その親衛隊、障害を持った子供を産んだ妻とともに「草の家」「新しい生活」を見つけるべく森に入る。
    万延元年の一揆の首謀者である曾祖父の弟に自分を重ね合わせる、弟。それを客観的にとらえる主人公。

    精緻な構成に、圧倒されました。「本当のこと」に引き裂かれる弟の描写、結び付けられていく事実。非常に面白かったです。

    読後の感情をうまく文章化できるんじゃないかと期待して、時間をおいても

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    2011年08月22日
  • 万延元年のフットボール

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    大江健三郎の文は最初で引き込まれる。特に哲学めいたことが好きな人にはたまらない。
    ただ、入り口が分からないと全く入れない。
    入るとたまらない。
    文に頭が焼かれる。

    なんで、この作品はあまり文庫なんかでも出版が少ないんだろうと思わされる。
    こんなに迷作なのに。

    ただ、大江健三郎は駄作もある。
    特に悪い意味で知的ぶった作品なんかは読むに耐えない。

    ただ、万延元年は、文学好きならマスト本だと自信を持っておすすめできる。

    そういうこと。

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    2011年05月29日
  • 芽むしり仔撃ち

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    世界で一番好きな作品。何度読んでも自分が経験したことのない時代、場所、興奮に出会うことができる。完璧に世界をパッキングした作品。ぜひ読むべき。

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    2021年10月25日
  • 美しいアナベル・リイ

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    この世界の美しさ!青年、壮年、老年と印象的なあるフィルムのヒロインを巡る話なのだがこの女性が主役、というよりは私(古義人)のみた世界の話。
    それぞれのシーンのうつくしさに読んでいてはっとなる。
    老いて行くロリータ
    でてくるのは老人ばかりなのに妙に耽美
    唐突に終わるのがまたリアルで不気味

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    2010年11月27日
  • さようなら、私の本よ!

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    僕はこれまでずっと大江健三郎を誤解してきてしまったようだな、と。今年は大江健三郎を読み進めて行きたいなぁ、という気になった。面白かったなぁ。何だ、この話の入れ子構造というか、私小説とフィクションとさらにさらにっていうこの感じ。すごい新鮮。小島信夫をよりスマートにしたような感じといえばそんな感じか。いや、でもこれだけでそんなことまで言ってしまうのはきっと早計だろうな。でも、大江さんの文章を読んでいると小島さんの文章っていうのがとてもとても人間くさくて、逆に小島さん、読みたくもなった。これは何の相乗効果か。。。あー、自分はまだ世界の何も知らない。ということをこうやって知らされる度にゾクゾクする。そ

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    2010年05月15日
  • 性的人間

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    思春期に一回読んで成人して一回読んで社会人になってから一回よんでその後毎年6月くらいに読むべきだと思う

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    2010年04月28日
  • 日常生活の冒険

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    「洪水は我が魂に及び」と同じく、最後でぐわっと持ってかれました。
    冒険なんて言ってイキがってフラフラして、本当にどうしようもない、他人を「自己欺瞞のかたまりだ」なんて非難しておいて実は自分もそう。
    そんな犀吉からどうしても離れられない主人公。
    どんどん自滅していく犀吉。
    転がり落ちるように日常生活が崩れていく様が素晴らしいです。

    犀吉と一緒にヨーロッパに行った少年の、旅立ちのときとの母親とのやり取りが、もう一日暗い気分になる程いやぁなシーンでした。

    10.02.18

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    2010年02月22日
  • われらの時代

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    大江氏の初期の作品はなんて面白いんだろう。われらの時代、万延元年のフットボール、セブンティーン・・・・・。特にこの作品で、天皇を暗殺しに行き、未遂に終わる場面の官能性はとても印象的です。しかし、初期以降の作品はとても(私としては)つまらない。

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    2010年02月13日
  • 見るまえに跳べ

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    大学時代、かなり影響を受けました。

    乱暴な言い方をすると、
    太宰や安部公房、カフカなんかと違って、
    どこか文章に救いがある。
    そこが好きです。

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    2010年02月11日
  • 「雨の木」を聴く女たち

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    荒廃しきっていた自分の魂が救われた一節がある。

    読んでから何年も後の話。
    石垣島でブーゲンビリアを触った時に
    急に涙が出て止まらなくなった。

    この本が根っこにあったのだと、更に後になってから気付いた。

    この人の作品は
    深く深く深いところで、ひっそりと息をしている。

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    2009年11月05日
  • 空の怪物アグイー

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    死者の奢りあたりの文体の個性、
    迫ってくるような閉塞感はやや影を潜め、
    いろいろなパターンの小説が増えてきたな、という感じ。
    でも相変わらず短編はおもしろい。引き込まれる。

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    2009年10月26日
  • 懐かしい年への手紙

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    スイスへの旅の道すがら、3回目か4回目かの再読。なぞるような速度での今回の再読で、浸み出るみたいにして広がってくる感覚がもたらされた。

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    2009年10月04日