あらすじ
神秘主義詩人ウィリアム・ブレイクの預言詩(プロフェシー)に導かれ、障害を持って生まれた長男イーヨーとの共生の中で、真の幸福、家族の絆について深く思いを巡らす。無垢という魂の原質が問われ、やがて主人公である作家は、危機の時代の人間の<再生>を希求する。新しい人よ眼ざめよとは、来たるべき時代の若者たちへの作者による、心優しい魂の呼びかけである。大江文学の一到達点を示す、感動を呼ぶ連作短篇集。
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Posted by ブクログ
ウィリアム・ブレイクの詩を肴にして、紡がれる連作短編集。とてもとても良かった。これまで大江健三郎は長編でこそ醸しだされる某かがあるだなんて思っていたけれど、そればかりではないんだ、と。はっと気付かされた。どの短編がいい、というよりも、どの短編もいい、という感じで、本当にいい。イーヨーは大江作品にとって、本当に大いなる光だと読むたびに思う。(10/8/25)
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞受賞者である大江健三郎の、自身と障害を持つ長男との共生を描いた作品。障害による困難や家族の葛藤、周囲の人間の酷な視線がリアルに描かれているため、読んでいて社会の厳しさに心が抉られる場面もある。
一方で、障害のある長男について次男が「みんなをいつも元気づけてくれている」と言い、著者も長男のことを「われわれの家庭につねづね祝祭の雰囲気があるのは、祝祭の道化であり、かつ祭司でもある長男がいてのこと」と述べており、弟妹たちの長男を支える優しさや聡明さには心が温まる。とりわけ次男が長男の成長に気付き、彼の呼び名を変える瞬間は、深い愛情を感じた。
筆者はウィリアム・ブレイクの詩を引用しながら、目の前の出来事や自分の感情を咀嚼していくのだが、長男がプールで危険な目にあっている時ですら「ブレイクの詩を思い浮かべることしか出来なかった」等と言ってしまうほど、どこかぼんやりとしているところがあり、それが面白くもある。
文章は難しいが読み進めると大江健三郎の面白さが伝わる一冊だった。
Posted by ブクログ
ブレイクの詩が私には難解でどう解釈したら良いのかさっぱりわからなかった。ブレイクの詩を理解できたら、この本への理解もまた変わりそうだけれど、
不思議な光さんの言動に、人間の本質が表れているような気がして、光さんの言動を、よく理解しようと思いながら読みました。寄宿舎から帰ってきた時、イーヨーと呼ばれることに抵抗した。イーヨーと呼ばれること、光と呼ばれることの違いをどう感じたのかな?
それから、誘拐された時に辛かった想いは、なぜ吐き出さずに内に留めようとするのかな?
光さんは頭が良くて、内にたくさんの情報を溜め込んでいるのに、「父は死んだ」と思い込み、「善い足」の定義が思い浮かんだことで、よみがえったように父が生きていることを認識した・・・ということ?うーん難しい。
光さんの弟、妹の思いやりの深さに何度も感動した。