あらすじ
国際的な作家である長江古義人と建築家の繁。この「おかしな二人組」は幼い頃から因縁があり、時を経て病院のベッドで再会を果たす。老人の愚行としてテロを画策する繁に巻き込まれていく古義人は、組織の青年達と精神の触れあいを深めながらも、「小さな老人(ゲロンチョン)」の家に軟禁されるのであった。二人の行き着く先には。
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Posted by ブクログ
僕はこれまでずっと大江健三郎を誤解してきてしまったようだな、と。今年は大江健三郎を読み進めて行きたいなぁ、という気になった。面白かったなぁ。何だ、この話の入れ子構造というか、私小説とフィクションとさらにさらにっていうこの感じ。すごい新鮮。小島信夫をよりスマートにしたような感じといえばそんな感じか。いや、でもこれだけでそんなことまで言ってしまうのはきっと早計だろうな。でも、大江さんの文章を読んでいると小島さんの文章っていうのがとてもとても人間くさくて、逆に小島さん、読みたくもなった。これは何の相乗効果か。。。あー、自分はまだ世界の何も知らない。ということをこうやって知らされる度にゾクゾクする。そして、もっとゾクゾクさせてくれ、と思う。(10/3/14)
Posted by ブクログ
テロリズムに興味はあるか?
淡々として読みやすい文章の過渡期。『取り替え子』よりも読みやすい。
この小説で私が興味を覚えるのは、長江古義人とその家族のこと。長江家の経済的事情もつまびらかにされる。長江のなかの若いところのあるやつ。といふ描写も惹かれる。
一方で、建築家・椿繁の画策する、破壊する建築テロリズムには惹かれない。ジュネーヴとのテロリズム計画は、いささか北軽井沢で完結しすぎてあっさりしてゐる。
もちろん、その合間にたびたび登場する三島由紀夫との因縁は「セヴンティーン」しかり、北杜夫に宛てた大江の自殺未遂を訊ねる手紙しかり、興味深いものだ。
やはりメインは死への観念を書いたところではなからうか。椿繁が車を飛ばしての悟る死。「僕が本当に若かったころ」を思ひださせる。