大江健三郎のレビュー一覧

  • 死者の奢り・飼育

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    どの短編でも自分が悪いわけではないが、不運にもなし崩し的に巻き込まれる厄介な出来事が主題になっていると思った。徒労に終わったり、解放されても後味の悪いこれらの話を読んで、読者は自身の日常の気まずい出来事に読み換え、想起するだろうと思う。
    「飼育」は、〈僕〉の通過儀礼の物語であると思った。
    捕虜となった黒人に感じる気安さは家畜やペットへの気安さと同義であったが、立てこもりによる黒人と〈僕〉の立場の逆転で〈僕〉の世界は崩壊し、まるで死んだ黒人の情念が乗り移ったかのように、〈僕〉は大人たちに脅え拒絶する。
    〈僕〉の掌を叩き潰したのは父の斧ではなく戦争だったのだと、大人になった〈僕〉は認めるのだろう。

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    2026年07月10日
  • 同時代ゲーム

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    超大作にあっぱれを送りたい、ここ最近読んだなかで一番良かったです

    理解するのに時間がかかる構造ゆえ前半は忍耐が必要だけど、中盤以降は著者の編みだす圧倒的なスケールの世界観を前に、ただただ屈服w

    最初は聖書や神話、幕末期の歴史を絡めて何かを見出そうとしてたけど、結局(読み終わった今も)よく分からなかった笑
    だけど理解できたと思ったら興味なくしてしまう私からすれば、この本は咀嚼してもし尽くすことができないスルメのような味

    そういった言語化したいけどできない感情をとりあえず脇に置いとくとすれば、ただただ自然にかえりたい!という人間の本能に近い部分を刺激された体験だった。別に田舎出身でもないけど

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    2026年07月07日
  • 個人的な体験

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    障害を持った子供が生まれたら、育てるとしたら、そして個人の自由が奪われるとしたら。そんな父親の心の揺らぎがとことん美しく表現されており、一言で言うとずっとおもしろかった。
    どん底に落ちた主人公が最後に自己欺瞞に打ち勝つというストーリー自体はよくある話ではあるが、ほんの数日間の出来事を終始緊迫したシーンで埋め尽くされた強烈な内容だった。

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    2026年06月20日
  • 洪水はわが魂に及び(下)

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    ネタバレ

    今まで読んだ大江の本の中で最も好きだった。下からは特に後戻りできない感じが強くなってきて絶望的だが最後まで明るい
    綺麗に畳まれていってスッキリと終わった
    カタストロフ
    最後の籠城戦、本当に多麻吉は敵を打ち倒していたのか?

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    2026年06月07日
  • 万延元年のフットボール

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    ネタバレ

    圧巻とはこのことか。
    戦後日本に生きた人々が抱えていたであろう、先行きの見えない晴れない気持ちと反体制への暴力的な希求が、鷹四とその仲間たちというキャラクター

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    2026年05月20日
  • 芽むしり仔撃ち

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    表紙が新しくなっていたので買いなおして再読。新潮文庫の大江健三郎は、他にも何冊か表紙がリニューアルしていて、どれも凶々しくて全部購入。戦後最高の小説家の言語空間ににワープ

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    2026年04月16日
  • ヒロシマ・ノート

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    ノーベル賞作家である大江健三郎が、1963年夏から数回にわたって広島を訪れ、被爆者や医師たちへの取材を通じて書き下ろしたルポルタージュ。
    著者の感情に訴える文体や天才的な比喩表現が如何なく発揮されており、単なるノンフィクションとは決定的に違う読み応えがある。
    発行から60年以上経った現在でも、全く色褪せることのない平和へのメッセージに胸を打たれる。

    「Ⅰ 広島への最初の旅」では、1963年夏の原水爆禁止世界大会に揺れる広島の様子が描かれる。本章では、ソ連の核実験を支持する共産党と、いかなる国の核兵器も認めない社会党の無意味な対立を批判的に書き留めている。そして、原爆病院長の重藤氏への取材を経

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    2026年03月14日
  • 死者の奢り・飼育

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    ノーベル文学賞受賞作家の初期の短編し6作品を収録した一冊です。6作品の中からタイトルとなっている「死者の奢り」と「飼育」を紹介します。

    まず「死者の奢り」。

    主な登場人物は、「僕」「女子大生」「管理人」で名前は無し。従って、登場人物のパーソナリティや物語性ではなく、彼ら彼女らの言葉や行動に描かれる心象描写に、著者「大江健三郎」さんの主張が込められているのだと思いました。

    「僕」は文学部の学生で、「僕は希望を持っていない。毎日の生活に希望はいらない。子どものとき以外は希望を持って生きたことが無いし、その必要もなかった。」と、はっきり言いきるほど虚無的な思想を持った学生で、目的は分かりません

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    2026年03月13日
  • 個人的な体験

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    ネタバレ

    社会的役割と感情との乖離がある男が、その乖離と責任から、情欲と退廃に逃げる物語

    具体的には頭に腫瘍のある奇形児が生まれてしまい、それを妻に見せず義母と共犯で殺す合理的な役割と、妻の手前や仕事先や病院で与えられる感情的な父親としての役割とに板挟みされた主人公が、そのどちらの演技も必要とせず、理解と議論とカウンセリングと性の解消を与えてくれる母親のようなヒミコに傾倒していく。
    赤ん坊を確実に殺してヒミコとアフリカに駆け落ちしようとしたところで、主人公が昔裏切ったゲイの経営するバーに行くことになる。そこで突如、逃げ続けた結果どんな自分を守りたいのか?と自分に問いかけてみたところ、答えは出ず、ただ逃

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    2026年03月11日
  • ヒロシマ・ノート

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    大江健三郎による、広島に関するエッセイ。
    原爆後の状況、悲惨さ、それを乗り越えていく人間の力などが書かれている。
    原爆投下による地獄であるなかで、それを乗り越えて生きてきた人の状況が克明に描かれている。
    何度も読むと、その度ごとに印象に残るフレーズがある。

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    2026年03月09日
  • 個人的な体験

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    人生でこれからも読み続けていくであろう一冊になりました。

    畢竟、人は自分のために生きるべきである。うん、きっとそうです。人生で遭遇する幸も不幸も、それに伴する個人的な選択は必ず良いものではあるとは言えない。しかーし!余生での幸を慮り、果てしなく永い時間思い悩んで出した選択であれば何もその先を思いやられる必要なんてない!お前の選択だ!エレンイェーガーも言ってました。お前が始めた物語だろってね。これはフランスの実存主義者の言葉ですか?



    しかーし!!
    バードよ!君は表現力が豊かすぎるあまりグヌヌ!!と言う気持ちにさせられましたよ!もうかなんわ!男はセクースをしたくなるとIQが著しく低下すると

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    2026年02月24日
  • 死者の奢り・飼育

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    『飼育』大江健三郎の短編小説。芥川賞を取った作品です。この小説は文章、構成、筆致と流石の巧みぶり。
    23歳の天才。初期作品はみずみずしい。
     難点はセンテンスが長い。だが、このことで視点や焦点がぼやけないのが素晴らしい。他の作品にも挑戦してみたい。

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    2026年02月21日
  • 万延元年のフットボール

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    自己処罰の欲求は本質的に「罪悪感(恥)」に関わる。そこに多少の前後関係はあろうとも、一方は他方を必要とし、他方は一方なしには生きられない。その意味で、主人公が暴力的な子供たちの前に片目を失ったのは、後に来る「罪悪感(恥)」に対する自己処罰の前払いのような物であったと言えよう。
    自己処罰は欲求であり、手段である。原因は罪悪感(恥)にある。つまり、我々は罪悪感(恥)から逃れるために進んで自己処罰を欲求するのであり、それはさながら、亡者が永遠の地獄の業火に包まれ、金棒を手にした鬼に殴られながらも、そこに相互関係を見出し、鬼に親しみを覚え、業火に心地よさを感じるようなものである。

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    2026年02月15日
  • 個人的な体験

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    ネタバレ

    火見子の多元宇宙論を聞いて余計に頭を悩ませる鳥のシーンが、読み終えた後も頭に残る。それは慰めにはならずむしろ鳥を悲観的にさせてしまったから。

    鳥と正反対の人間として、医者と闘う肝臓のない子の父親や女プロデューサーを登場させるのが良かった。鳥の目からは彼が理想であり、同時になぜそんな子のために行動できるのかと奇怪に思える人物だったのではないか。エゴイズムのかけらもない彼は昔の日本人らしいと私には映った。彼女は鳥の自己欺瞞を指摘するが、父親とは違い責任の無い立場から自由に見解を述べているだけなので反駁する気持ちが強く鳥に宿ったのだと思う。鳥の意志を揺らがせるという点では2人は共通しているが。

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    2026年01月29日
  • 個人的な体験

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    ネタバレ

    社会的規範(倫理的規範)の中には位置付けることのできない欲望(それは我が子の死を願う欲望であり、現実逃避のために火見子との性交に身を任せる欲望である)、そしてそうした欲望を抱える自分を恥じる葛藤を、読んでてドキッとするくらい、剥き出しに描き出す。もし自分の息子が障害を持って生まれてきたらどうするのか。誰もが心の中では考えたくない、目を背けたいことを、真正面から突きつけられる。退廃的な作品なのに、なぜかずっと読み続けてしまう大江健三郎の凄さ。

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    2026年01月23日
  • 個人的な体験

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    今年初めて読み終わった本。
    (in ウィーン)

    あなたのもとに突然、重度の身体的な障害、そしておそらくは知的障害をも持つ赤ちゃんが生まれたとしたら、そのすぐ直後に心の準備ができていますか?

    もちろんその子を愛し、支える覚悟がすぐに持てるのかもしれないけど、心のどこかでは逃げたいという気持ちも生まれるのではないかという、とてもセンシティブな題材を文学的に表現しているのが、こちらの作品だと思います。

    まず、子どもを持つということについて、その子が障害があるかないかは別として、初めての子が生まれて親になった途端急に、今までの自分の自由が奪われるという、ある意味「ショック」が、洗礼の様な形で初め

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    2026年01月09日
  • ヒロシマ・ノート

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    学生時代から何度か読み返してきた本だが、手元に見当たらず買い直した。
    『ヒロシマ・ノート』は、1963年、参加団体の政治的立場の違いによって分裂した原水爆禁止世界大会を、現地で苦々しい失望とともに取材した大江健三郎が、その後に重ねた数度の広島訪問を通して、人の生き方について考え続けた記録である。そこで出会った被爆者や医療現場で働く人々は、希望に陶酔することも絶望に沈むこともなく、きわめて現実的で忍耐強い態度で日々暮らしている。
    今読んでも、原爆投下から約20年後の社会状況が生々しく伝わってくると同時に、それからさらに60年を経た現在においても、核兵器を廃絶できていない現実や、近年の大規模な自然

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    2025年12月30日
  • 個人的な体験

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     バードがしっかり責任を果たしてくれてよかった。自らの行動や状態を捉えることは大切であり、バードのそれを7分で見抜くゲイすげえと思った。でも確かにゲイってそこら辺鋭いイメージある。この認識って昭和からあったのか?

     自分の手で赤ちゃんを殺すか、それとも受け入れるか、その2択のみが責任を果たすということであり、そして責任を果たすのは自分自身のためというのが印象深い。もし自分だったら浅はかに赤ちゃんのためだとかいってしまいそう。

     不気味で陰湿な表現が上手だなと感じた。バードが赤ちゃんと同じ仕草をし始める所とかすごくキモかった。

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    2025年09月20日
  • ヒロシマ・ノート

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    アメリカが広島に落とした原爆はグロテスクに広島の人を変えた。肉体も精神も。身体がグロテスクに剥がれ落ちた人。一見普通に見えても、遺伝子や細胞、心に治らない傷がついた人。
    原爆の被害者として生きることを宿命付けられた人たちの記録。

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    2025年09月09日
  • 死者の奢り・飼育

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    閉塞感むきだしで、そのなかにある生身の人間関係。今日明日の生存に無駄なものを削ぎとったギリギリの状態の人間性。反戦のメッセージと偽善者に対する嫌悪感が私達を締め付ける。

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    2025年09月08日