大江健三郎のレビュー一覧

  • 芽むしり仔撃ち

    Posted by ブクログ

    生々しい異質たる文体。その異質さは妙に現実味を帯びており、より奇妙である。坊主であろう少年たちの、小さなどんぐりのような性器も、糞に犯された血まみれの尻も、汚くも輝きは純白な恋も、動物の重層化した液体も、その色が、その匂いが、その形が、まるで叩き込まれるように脳内に浮かんでくる。少年たちと少女。これらの、関係性が本当に好きで好きで仕方がない、主人公が少女と恋仲になり、仲間には口笛を吹かれ、冷やかされる。その様は、微笑ましいがら白々とした雪の世界の中で起こるのは、赤色の糞に塗れ、紅の血を吐き出し喘ぐ少女の姿。異質たる文体がより一層に、それを充満に華々しく、血生臭くしている。ここの描写愛おしいほど

    0
    2026年03月17日
  • ヒロシマ・ノート

    Posted by ブクログ

    ノーベル賞作家である大江健三郎が、1963年夏から数回にわたって広島を訪れ、被爆者や医師たちへの取材を通じて書き下ろしたルポルタージュ。
    著者の感情に訴える文体や天才的な比喩表現が如何なく発揮されており、単なるノンフィクションとは決定的に違う読み応えがある。
    発行から60年以上経った現在でも、全く色褪せることのない平和へのメッセージに胸を打たれる。

    「Ⅰ 広島への最初の旅」では、1963年夏の原水爆禁止世界大会に揺れる広島の様子が描かれる。本章では、ソ連の核実験を支持する共産党と、いかなる国の核兵器も認めない社会党の無意味な対立を批判的に書き留めている。そして、原爆病院長の重藤氏への取材を経

    0
    2026年03月14日
  • 死者の奢り・飼育

    Posted by ブクログ

    ノーベル文学賞受賞作家の初期の短編し6作品を収録した一冊です。6作品の中からタイトルとなっている「死者の奢り」と「飼育」を紹介します。

    まず「死者の奢り」。

    主な登場人物は、「僕」「女子大生」「管理人」で名前は無し。従って、登場人物のパーソナリティや物語性ではなく、彼ら彼女らの言葉や行動に描かれる心象描写に、著者「大江健三郎」さんの主張が込められているのだと思いました。

    「僕」は文学部の学生で、「僕は希望を持っていない。毎日の生活に希望はいらない。子どものとき以外は希望を持って生きたことが無いし、その必要もなかった。」と、はっきり言いきるほど虚無的な思想を持った学生で、目的は分かりません

    0
    2026年03月13日
  • ヒロシマ・ノート

    Posted by ブクログ

    大江健三郎による、広島に関するエッセイ。
    原爆後の状況、悲惨さ、それを乗り越えていく人間の力などが書かれている。
    原爆投下による地獄であるなかで、それを乗り越えて生きてきた人の状況が克明に描かれている。
    何度も読むと、その度ごとに印象に残るフレーズがある。

    0
    2026年03月09日
  • 個人的な体験

    Posted by ブクログ

    人生でこれからも読み続けていくであろう一冊になりました。

    畢竟、人は自分のために生きるべきである。うん、きっとそうです。人生で遭遇する幸も不幸も、それに伴する個人的な選択は必ず良いものではあるとは言えない。しかーし!余生での幸を慮り、果てしなく永い時間思い悩んで出した選択であれば何もその先を思いやられる必要なんてない!お前の選択だ!エレンイェーガーも言ってました。お前が始めた物語だろってね。これはフランスの実存主義者の言葉ですか?



    しかーし!!
    バードよ!君は表現力が豊かすぎるあまりグヌヌ!!と言う気持ちにさせられましたよ!もうかなんわ!男はセクースをしたくなるとIQが著しく低下すると

    0
    2026年02月24日
  • 死者の奢り・飼育

    Posted by ブクログ

    『飼育』大江健三郎の短編小説。芥川賞を取った作品です。この小説は文章、構成、筆致と流石の巧みぶり。
    23歳の天才。初期作品はみずみずしい。
     難点はセンテンスが長い。だが、このことで視点や焦点がぼやけないのが素晴らしい。他の作品にも挑戦してみたい。

    0
    2026年02月21日
  • 万延元年のフットボール

    Posted by ブクログ

    自己処罰の欲求は本質的に「罪悪感(恥)」に関わる。そこに多少の前後関係はあろうとも、一方は他方を必要とし、他方は一方なしには生きられない。その意味で、主人公が暴力的な子供たちの前に片目を失ったのは、後に来る「罪悪感(恥)」に対する自己処罰の前払いのような物であったと言えよう。
    自己処罰は欲求であり、手段である。原因は罪悪感(恥)にある。つまり、我々は罪悪感(恥)から逃れるために進んで自己処罰を欲求するのであり、それはさながら、亡者が永遠の地獄の業火に包まれ、金棒を手にした鬼に殴られながらも、そこに相互関係を見出し、鬼に親しみを覚え、業火に心地よさを感じるようなものである。

    0
    2026年02月15日
  • 個人的な体験

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    火見子の多元宇宙論を聞いて余計に頭を悩ませる鳥のシーンが、読み終えた後も頭に残る。それは慰めにはならずむしろ鳥を悲観的にさせてしまったから。

    鳥と正反対の人間として、医者と闘う肝臓のない子の父親や女プロデューサーを登場させるのが良かった。鳥の目からは彼が理想であり、同時になぜそんな子のために行動できるのかと奇怪に思える人物だったのではないか。エゴイズムのかけらもない彼は昔の日本人らしいと私には映った。彼女は鳥の自己欺瞞を指摘するが、父親とは違い責任の無い立場から自由に見解を述べているだけなので反駁する気持ちが強く鳥に宿ったのだと思う。鳥の意志を揺らがせるという点では2人は共通しているが。

    0
    2026年01月29日
  • 個人的な体験

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    社会的規範(倫理的規範)の中には位置付けることのできない欲望(それは我が子の死を願う欲望であり、現実逃避のために火見子との性交に身を任せる欲望である)、そしてそうした欲望を抱える自分を恥じる葛藤を、読んでてドキッとするくらい、剥き出しに描き出す。もし自分の息子が障害を持って生まれてきたらどうするのか。誰もが心の中では考えたくない、目を背けたいことを、真正面から突きつけられる。退廃的な作品なのに、なぜかずっと読み続けてしまう大江健三郎の凄さ。

    0
    2026年01月23日
  • 個人的な体験

    Posted by ブクログ

    今年初めて読み終わった本。
    (in ウィーン)

    あなたのもとに突然、重度の身体的な障害、そしておそらくは知的障害をも持つ赤ちゃんが生まれたとしたら、そのすぐ直後に心の準備ができていますか?

    もちろんその子を愛し、支える覚悟がすぐに持てるのかもしれないけど、心のどこかでは逃げたいという気持ちも生まれるのではないかという、とてもセンシティブな題材を文学的に表現しているのが、こちらの作品だと思います。

    まず、子どもを持つということについて、その子が障害があるかないかは別として、初めての子が生まれて親になった途端急に、今までの自分の自由が奪われるという、ある意味「ショック」が、洗礼の様な形で初め

    0
    2026年01月09日
  • ヒロシマ・ノート

    Posted by ブクログ

    学生時代から何度か読み返してきた本だが、手元に見当たらず買い直した。
    『ヒロシマ・ノート』は、1963年、参加団体の政治的立場の違いによって分裂した原水爆禁止世界大会を、現地で苦々しい失望とともに取材した大江健三郎が、その後に重ねた数度の広島訪問を通して、人の生き方について考え続けた記録である。そこで出会った被爆者や医療現場で働く人々は、希望に陶酔することも絶望に沈むこともなく、きわめて現実的で忍耐強い態度で日々暮らしている。
    今読んでも、原爆投下から約20年後の社会状況が生々しく伝わってくると同時に、それからさらに60年を経た現在においても、核兵器を廃絶できていない現実や、近年の大規模な自然

    0
    2025年12月30日
  • 個人的な体験

    Posted by ブクログ

     バードがしっかり責任を果たしてくれてよかった。自らの行動や状態を捉えることは大切であり、バードのそれを7分で見抜くゲイすげえと思った。でも確かにゲイってそこら辺鋭いイメージある。この認識って昭和からあったのか?

     自分の手で赤ちゃんを殺すか、それとも受け入れるか、その2択のみが責任を果たすということであり、そして責任を果たすのは自分自身のためというのが印象深い。もし自分だったら浅はかに赤ちゃんのためだとかいってしまいそう。

     不気味で陰湿な表現が上手だなと感じた。バードが赤ちゃんと同じ仕草をし始める所とかすごくキモかった。

    0
    2025年09月20日
  • ヒロシマ・ノート

    Posted by ブクログ

    アメリカが広島に落とした原爆はグロテスクに広島の人を変えた。肉体も精神も。身体がグロテスクに剥がれ落ちた人。一見普通に見えても、遺伝子や細胞、心に治らない傷がついた人。
    原爆の被害者として生きることを宿命付けられた人たちの記録。

    0
    2025年09月09日
  • 死者の奢り・飼育

    Posted by ブクログ

    閉塞感むきだしで、そのなかにある生身の人間関係。今日明日の生存に無駄なものを削ぎとったギリギリの状態の人間性。反戦のメッセージと偽善者に対する嫌悪感が私達を締め付ける。

    0
    2025年09月08日
  • 万延元年のフットボール

    Posted by ブクログ

    読み終わった後しばらく放心して、自然と一人一人の決断や行動の意味をずっと頭の中で考え直していました。読む人によって受け取り方が大きく変わる、そして考えさせる非常に奥深い作品でした。
    一言で到底言い表せないけど、「破壊」と「再生」という言葉が私にはキーワードとして浮かびました。

    登場人物の多くは、地獄とも呼べるような現実と葛藤しながら闘い、自らの意志で決断し、行動を取っています。そこには凄まじいほどの「覚悟」があり、読んでいて、鬼気迫るものが感じられました。

    大江さんの文体の特徴として、さまざまな比喩表現やバリエーション豊富な形容詞を用いて文章を修飾しまくっています。そのため、一つ一つの文章

    1
    2025年09月07日
  • 大江健三郎自選短篇

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    最初に描かれるのは、犬の殺処分や大学病院での死体管理といった題材。そこで主人公は「死」と真正面から対峙するのではなく、ただそこにあるものとして淡々と受け止めているように感じた。生と死の境界が明確でありながら、強く拒絶もせず、平静さをもって描かれている点に独特な世界観を感じた。

    続く作品では、日本人の共同体に現れる外国人兵士がいくつか取り上げられる。閉じられた共同体に異物が入り込み、風景が歪む。その異物に人々が慣れ、同化したかに見える瞬間があっても、再び異質さが露呈する構成となっており、その不気味さが際立っていた。

    「空の怪物アグイー」がとても印象に残った。作曲家には、これまでの人生で失った

    0
    2025年09月10日
  • 万延元年のフットボール

    Posted by ブクログ

    今の我々、若者にはこのフットボールの精神などはない。ましてや、一揆などという気概は殆どといっていいくらいない。それが良いか悪いかではなく、自分の内として経験ないことがこの評価たらしめる要因ではあった。(蜜にもないと思う人もいるが、蜜自体は一連の流れに身を任せていないだけで経験はしている。)
    だからこそ、この一点につき、私はこの本を推薦したいと思うのだ。我々の内に秘めたる鷹のような心。社会的な後ろめたさ、挫折感、そう言ったマイナスな感情を幼い時分から持っている、同世代がこの本を読む。言葉に刺される。そして、動く。そしたら、令和幾年のフットボールとして、社会に発現する時が来るかもしれない。私はその

    0
    2025年08月31日
  • ヒロシマ・ノート

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    戦後80年企画で、ついにこの本を。毎年夏になると、戦争関連読書を行いたいと思って手に取るのだが、見ているNHKの番組と情報量が多く引きずられがちで、断念しがち、、なので、今回は読み通せて良かった。林京子作品も読みたいんだよなー

    ヒロシマ・ノート、これは人類必読の書では?という感じで、今まで読んでこなかったのが恥ずかしいレベルだった。新書だし、多くの人に読んで欲しいと思う。

    「広島的なるもの」と形容されるものは何か?それは色々な角度から定義されている。

    …彼女たちにもまた、沈黙する権利がある。もしそれが可能なら、彼女たちには、広島についてすべてを忘れ去ってしまう権利がある。…ところが、たと

    0
    2025年08月12日
  • 個人的な体験

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    障害を持った子が産まれてくるという状況で、自身の感情と世界での倫理に挟まれるとても苦しい状況。その中で葛藤や矛盾を繰り返す心理描写が本当に現実的であり、感動した。最後は倫理を優先するが、それは結局、社会からの圧力に敗北するしかなかったのではないか。私は、簡単にハッピーエンドだとは捉えられなかった。それを含めて非常にリアルな作品だった。

    0
    2025年07月08日
  • 死者の奢り・飼育

    Posted by ブクログ

    初めて大江健三郎を読んだが、三島由紀夫の金閣寺を読んだときの感覚に近いものを感じた。

    「人間の羊」と「不意の啞」が特に良かった。両作品とも進駐軍をテーマにしたものだが、どうやってプロットを練ったのだろうか。まさか実体験ではないだろうし...

    また一人、作品を渉猟したい作家が増えた。

    0
    2025年05月31日