あらすじ
「縮む男」は処刑され、もと自衛隊員は逃亡に失敗して自爆した。現代のノアの洪水に船出した「自由航海団」は、いまや機動隊に包囲され、すべてが宙ぶらりんのまま、そのむこうに無が露出している。銃を手にした大木勇魚(いさな)は「樹木の魂」「鯨の魂」に向けて、最後の挨拶をおくる、すべてよし! 人類の破局とその未来を黙示録的な電光のもとに浮かびあがらせて稀有の感動を呼ぶ雄編。
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Posted by ブクログ
アンチクライマクスが代名詞のような大江にあって、驚くほどストレート、かつ見事なカタストロフィ小説。ここまでコートームケイなストーリーでありながら絶妙に現実とリンクする、この時期の大江の咲き乱れる想像力の凄まじさ、充実は何度考えても震えがくる
Posted by ブクログ
タイトルから受ける印象が読み終えたことで確定され、どうしようもない気持ちになる。やはり解説はとても良く、よくもこんな短い文章でこの本のエッセンスをまとめられるなと思う。ヴァルネラブルな魂、、
それにしても洪水のイメージを遡及的に、読み終えてタイトルを眺めてる時に実感したのでその瞬間の重さに一瞬耐えきれなかった
あ、ああー、理想欲望暴発ですよ
先を読みたくなる作品だった理由の
2つ目は、破滅に向かうような
ダークな事件が連発していくことだ。
「……ですよ」と鳥の声を識別する
声のリフレインの中、何を目指すのか
わからない若者たちにとって、祈りは
聖なるものではなく熱中と解釈され、
『地下室の手記』的に先の読めない
自由が追求される。
主人公は、陸上では動けない樹木や
鯨の代弁者で、幼児を守る、知的存在
だが、一方、青年たちに好感を持つ中で
その無茶が樹木を傷つけるのを黙認し、
それは機動隊の指揮官が私刑的なことを
黙認するのと同じだし、政治家の秘書
だった時に少年に対する大罪を犯して
おり、中庸ある理性的人間ではない。
さて、鯨は水中で動けるが、本来
地上の存在人間にとっての洪水とは?
Posted by ブクログ
わたし、自由航海団の思想がまっったく理解できなくて、
「結局は暇を持て余したおバカさんたちの誇大妄想やん」
なんて思っていたのですが・・・
なんだかあそこまで必死になられると、もう認めざるを得ないというか。
ラスト10Pまでは、今回イマイチかなーなんて思ったりもしましたが、もうやられました。
最後まさしく「洪水はわが魂に及び」でした。
なんでこの人は毎度バッチリなタイトルをつけられるんや・・・!
これがノーベル文学賞作家か、恐ろしい子・・・!!
09.06.28