大江健三郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
64年
あの夏の日からの、永い永い時間
ヒロシマを生き延び続けている
「日本人」の名に於いて、
否定的シンボルであるあの日の原爆を、私たちは
世界へ発信することが出来ているだろうか
あの夏の日から
すぐさま活動を開始した医師たちの努力が
原爆そのものの悪の重みに匹敵する為
広島を忘れることも、無知でいることも
私たちには許されないはすだ
最悪の状況に立ち向かい
草の根の活動を続ける人々の存在を
決して見過してはならない
この本が書かれてからもう何十年も経つが
内容は全く色褪せることなく、
戦争を知らない世代にあの日の惨劇を伝えている
これからも読み繋げら -
Posted by ブクログ
びっくりしました。
大江健三郎は過去の作家ではなく、今でもかつて「同時代ゲーム」を書いた時と同じ意味で同時代性を持った作家であることが、この本から確認出来ます。
興味のある人は、村上春樹の「海辺のカフカ」と本書を丹念に比較して見るといいでしょう。
2つの小説の構造を丹念に解き明かしていくならば(本書の言い方にならってRe-readingするならば)、この2つは実は中心点がほぼ同じところにあることが分かるはずです。
ただ、惜しむらくは現在の大江健三郎がライターズライター(小説家のための小説家)になっていることでしょう。
コアな読み手、あるいは小説を書くために読んでいるような読者でなければ伝わ -
Posted by ブクログ
薩摩の血を持つ北海道人のシャモである当方にとって、この本はまた別の意味を持つ。
琉球王室の、薩摩の、日本の暴力に常に晒されてきた沖縄が戦後日本の生贄として米国に支配される状況、そのあらゆる意味を、大江氏は日本人である自分を絶えず問い直すことで可能な限り誠実に可視化しようと試みる。沖縄の状況の、なんと北海道侵略及び支配に似通っていることか。そしてその沖縄がベトナム侵略のベースとなり、北海道がイラク侵略のベースとなるさまのなんと似通っていることか。
琉球の人々をかくのごとく搾取した薩摩が近代において北海道でこれを上回る過酷さをもって先住民族の命と文化を破壊したのは偶然ではあるまいと思う。
当時の日 -
Posted by ブクログ
僕が思う良い小説ってのは実は読むのがどれだけ苦しかったかってことに起因しているかもしれない。
この『叫び声』はまさに僕が思うそれ的な小説だということが出来る。(今回は電子辞書が手放せない位生きていく中で聞くことの無い響きの言葉が頻出していてそういう面でも苦しんだ;; 純文学度が高いってこと?)
自分の核をどれだけ深く下げて生きていくかが、精一杯生きるってことなのかなとも思った。ずっとどうにか追いかけてきたんだけど呉鷹男の第四章怪物で完全においてかれてしまった。
僕が一番好きな小説家、伊坂幸太郎さんが影響を受けた本ということで何度かあげていたので読みたいと思っていた。
確かに影響を受けているなと -
- カート
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試し読み
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Posted by ブクログ
一度読んだ本は、よっぽど気に入るか、読んだことを忘れていない限りは再読しないのに、
なぜかこの本は3回読んでいる。理解している自信はまったくないにもかかわらず(ノーベル賞で一瞬ブームになったとき、「燃え上がる緑の木」などを買い求めた人々はちゃんと読破できたのであろうか)。
いつも同じシーンでどきっとする。息子ふたりを、あまりにもむごい出来事で同時に失ってしまったまり恵さんが、
「こんなに疲れ果てているのに、死んでしまったら、あの子たちのことを覚えている人間が残らなくなってしまう、だから死ねない」というようなことを話すところ。
愛していたから死にたいのに、愛しているから死ねない。強く過酷な人生の