感情タグBEST3
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だれか一人が遥かな救いを求めて叫び声を上げる時、それを聞くものはみな、その叫びが自分自身の声でなかったか、考えたくなるものだ。
小説の中に描かれた人間模様は、「青春」とか一言で表されるような生易しい様相ではなかった。しかし若者たちの抱える叫び声は、少しずつ自分の中に染み込む気がしたのも事実である。叫びの重なり、とふと思わされた。
私は。激しさの中に潜む純粋な欲や願望に久しく触れてなかった気がした。マネはできないし、しようとも思わないけれど、生きている上で、この渇望を永久に忘れないことが必要なんじゃないかと思う。
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芽むしり仔撃ち~性的人間の間くらいの時期、のはず。序盤の陽気さからそれぞれ破滅に向かっていく様子は、若者特有の精神的な危機をなぞるかのよう。大江健三郎を未読の人におすすめしたい。
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フィクションをあまりに切実に受けとめすぎるというのは欠点である。しかし記憶に残るのは自分と合わせ鏡のような小説ばかりだ。おもしろい小説は苦痛を伴う。
ところで岸政彦には彼ら3人にまたこう言って励ましてあげてほしい。
「若いやつ頑張れよ。だいじょうぶやで、もうすぐ若くなくなるから。そうなったら楽になるからな。」
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かなり読みやすい。
皮膚をえがくのにもいちいちつきまとうじめじめとした失望感が、青春のどうしようもなく輝かしい・淡い希望にもおよんで、彼らを失意の底に陥らせる。
この青年たちに固有の絶望感はしかし、やけに生々しく実に青春的で、どこか清々しい。
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うわぁぁぁーーーーーっ!
確かに、しっかりと、その「叫び声」を聞いた・・・。
「人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫び声が自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑う」(ジャン=ポール・サルトル)
生臭さと、鋭利さと、ざらつきが一度に迫ってくるような、そんな小説。
エロスとグロテスクとタナトスに彩られ、眉をひそめるような嫌な感覚がびしびし伝わってくるのだが、それがまた生々しくて、小説の状況とは裏腹に活き活きとしていて、とても面白かった。青春群像劇特有の疾走感も良かったのかもしれない。
サルトルの言葉からイマジネーションを受けた大江は、社会から疎外された、僕、呉鷹男、虎の若者3人とダリウス・セルベゾフとの奇妙な同居生活、そして、彼ら共通の夢、レ・ザミ号での航海を目標とするところから端を発して、それぞれが声なき「叫び声」を発するにいたるまでの人間模様を鮮烈に描いている。
希望を打ち砕かれ、閉塞感が漂いながら、しかし、孤立な生き方しかできない若者たち。社会は決して受け入れてくれず、また、社会に馴染もうとせず、最後の居場所として集った若者たち。若者時代に感じたこうした何かを少しでも思い出せれば、彼らの叫び声はまさに真に迫ってくるものとして感じられるだろう。
大江の創作した若者たちはかなり極端である。そして、性的な色を放ち過ぎている。しかし、だからこそ僕らは矮小な自分として、こうした感覚が呼び醒まされてくるのだ。
大江の放つ「言葉」はみずみずしくも研ぎ澄まされている。1960年代という時代に対して、大江自身の「叫び声」として真っ向から対峙し、勝負した作品であったのではないだろうか。
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人種も年齢も違う4人の青春劇。
最初は本当に明るい青春劇のような始まり方なのですが、(一人のアメリカ人青年の呼びかけで、ヨットでアフリカに行こうという計画の元に4人が集まる)少しづつ、それぞれの倒錯している部分が事件を引き起こしていって、それがすべて最初にアメリカ人青年が起こしたある事件に起因していて、ラストもそれに終わるという…。
叫び声を上げたい気持ちがよく伝わってきますね。堕落した青春時代は楽しいよなぁなんて思ってたけど、中盤越えた辺りからどっと深みにはまっていきました
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僕が思う良い小説ってのは実は読むのがどれだけ苦しかったかってことに起因しているかもしれない。
この『叫び声』はまさに僕が思うそれ的な小説だということが出来る。(今回は電子辞書が手放せない位生きていく中で聞くことの無い響きの言葉が頻出していてそういう面でも苦しんだ;; 純文学度が高いってこと?)
自分の核をどれだけ深く下げて生きていくかが、精一杯生きるってことなのかなとも思った。ずっとどうにか追いかけてきたんだけど呉鷹男の第四章怪物で完全においてかれてしまった。
僕が一番好きな小説家、伊坂幸太郎さんが影響を受けた本ということで何度かあげていたので読みたいと思っていた。
確かに影響を受けているなと感じた。特に、伊坂さんの中で一番僕が好きな『砂漠』はまさに伊坂版『叫び声』だなと気付いた。(全く違うけれど雰囲気や設定が?)
誰もが一度は経験する《黄金の青春の時》を経て、絶望的に帰ることの出来ない現状を嘆く。奇抜な仲間に対して一歩引いた主人公の立ち位置から見た青春模様。はぁ。
読んでいる期間は(読んでいる以外の時間でも)溜め息が止まらなかった。むなしい・・・ 何が言いたいのか分からない僕もまた、むなしい・・・
(2008.08.09)
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ものすごい作品だった。特に怪物の章は身震いした。よくこんな文章書けるものだ。大江さんしか書けないだろうな。
複雑の想像つかない驚異的な言い回しで笑っちゃう時もあるんだけど、慣れてしまえばこの文章が病み付きになる。
いろんな意見があるかもしれないが、自分は大江さんはノーベル文化賞に抜群にふさわしい方だと思う。
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僕(主人公)という人間が大学生のころに出会った4人の物語。僕、ダリウス・セルベゾフというアメリカ人、虎、呉鷹男が共同の目的の元、一つの屋根の下で生活を共にする。ダリウスが造船中である友人たち号(レ・ザミ)というヨットで外国に行く話を持ちかけた。3人は同意する。それぞれの思いのもとレ・ザミに思いを馳せる。そうした中、様々な出来事が起こり4人の考え、行動、態度、環境にも変化が訪れる。そういったストーリー。言葉のユーモア、人物描写の鮮やかさがこの本には溢れている。
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相変わらず盛り上がりまでがスローな大江健三郎氏のご本。
物語の2/3を過ぎたあたりからガンガン負の方向に展開していってもう大好きです。
物語の最後は最低でした。
読むんじゃなかった、金返せ!の最低ではなく、鬱なシメ方というのでしょうか、こういう類の最低な話は素晴らしい。
11.05.08
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伊坂幸太郎を筆頭に、絶賛される事の多い本作だが自分はハマらなかった方。
エネルギーを加えて描くべき人物が分散されていていたり、ギトギトした人物の描写が少なく薄口に感じた。
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大江健三郎が描く、黄金の青春時代とその幻影についての作品。過激な性描写とトピックスが荒々しい青春の光と影を描写する。
若者特有の青春に対する焦燥感や孤独感を、性描写や突飛な行動で荒々しく描写することで、がつがつとした雰囲気を巧みに表現されている。それが読む人の心にずかずかと突き刺さる感じがする。しかし、ずかずか部分が太すぎて、表現が痛い。読んでいて辛い。青春の明るさよりも、野放図に取り組み、跳ね返される、まるでドン・キホーテを地で行っているような。ドン・キホーテは正しいと信じる道を、たとえ勝ち目はなくとも突っ込んで行くという正しさへの希求があるが、本作品では正しいかどうかよりもやりたいかどうか?に重きが置かれている。それが青春だと言われればそうかもしれないが、一方では可物になるのだ、という思いを実現していく精神状態とはいったい何なのか?青春のベースとなるものがやっぱり出自や環境なのか?そこに暗い『叫び声』を感じてしまうのだ...
各人が持つ性癖や出自に縛られ、目指していた夢が破滅へとつながってしまう。それが仲間からの離脱につながり、孤独に陥ってしまう。「荒涼として荒涼と荒涼たり」とつぶやき、孤独と挫折のなかで僕は叫ぶのだ。
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著者の作品は初めてなのですが、少し難しい本であると感じました。
落伍する若者を描いているためか、そこに何か寓意があるのではないかとか、これは主人公の成長を描いているのかなど、考えながら読んでしまったためです。
安保闘争の時期の作品で、主人公の仲間はみな外国の人間だったので、そうしてもそんな気になってしまいます。
もう少し、話を純粋に楽しめばよかったですかね。
といっても、やや暗い気持ちにならなくもないですが。
ここにファンタジーっぽさを加えると村上春樹のようになりそうです。
Posted by ブクログ
「性的人間」に連なっていく、青春の渇きや絶望的な生を描いた、印象的な作品。三人の若者がそれぞれの希望と絶望から生まれる妄想のような日常をそれぞれのやり方で必死に生きる姿は、今も僕らの心の中に眠る憧れのある形なのかもしれない。