【感想・ネタバレ】性的人間のレビュー

あらすじ

性に耽溺し、政治に陶酔する右翼少年の肖像『セヴンティーン』。痴漢をテーマに“厳粛な綱渡り”という嵐のような詩を書こうとする少年と青年Jを主人公に、男色、乱交などあらゆる反社会的な性を描き、人間存在の真実に迫る問題作『性的人間』。現代社会の恐るべき孤独感を描いた『共同生活』。政治的人間と性的人間との交錯に、60年安保闘争前後の状況を定着させた3編を収める。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

今回も著者の問いが感覚的にわかりやすく面白い作品集だった。
3作品に共通して、「視覚」による拘束からの、逸脱や脱走がテーマに描かれている。
現在は、監視カメラやSNS等の「視覚の権力が」強いパノプティコン的な社会だからこそ、本作のような視覚からの逃避を目指す作品は痛烈に、現代社会への問いを提示するのでは無いか。

全部面白かったな。まじで。

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2023年01月31日

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生物が元来脈々と受け継いできたという意味で大いなる他力である性に自己実存を委ねることを、全て肯定できるかというと、突っかかるところがある

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2013年08月14日

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短編集「性的人間」「セブンティーン」「共同生活」。「セブンティーン」は日本社会党委員長・浅沼稲次郎刺殺事件を題材にしていて、主人公の青年が右翼に目覚めていく様子が、迫力の筆力で描かれいます。

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2013年03月15日

Posted by ブクログ

「セヴンティーン」が読みたくて。
人間の生と性。しれっと、社会と関わっていながらも、人間は孤独で変態。

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2012年09月10日

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これが初めて読んだ大江だったのですが、そんなに読みにくいと感じることもなく読みました。いろんな意味で衝撃。60年代の若者も迷走してたんですね。「セヴンティーン」は痛いです。軍服着て風俗行く十七歳…。

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2011年11月24日

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思春期に一回読んで成人して一回読んで社会人になってから一回よんでその後毎年6月くらいに読むべきだと思う

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2010年04月28日

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何度読んでも、このドロドログズグズ具合がたまりません。
どのお話も凄すぎます。

12.05.07

なんてこった!こんなのが読みたいと思っていた、そのままの作品に出会ってしまった!

暴力っていう安易な表現を使わずにグロさと病んだ雰囲気を描いた本ってなかなか無いから狂喜しました。
これ、星10個くらいつけたいです。
狂気に向かって上り詰めながら終わるところも良いな。

矛盾や欺瞞や情緒不安定を適当に流さず突き詰めていく描写が素敵。
あー、大江健三郎もっと読もう。

09.05.08

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2012年05月09日

Posted by ブクログ

大江健三郎の変態度maxの小説を集めた中・短編集ですね!アホらしい程下劣で変態なんだけど、人間の生きる意味や方向性なんて所詮はその下劣な欲望に基づいてるんじゃないかと、不思議な説得力と文学的な高尚さも感じます。
特にセヴンティーンが素晴らしかったですね!女子生徒が生理で体育を休んでいる日をチェックして全生徒の生理日を把握し、且つオギノ式で安全日も割り出すアホ同級生に何故か愛しさを感じてしまいました。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

ありのままの姿、自己を表現したときに、それが受け入れられるものでありたいと願い、孤独を拒否し容認せず、繋がりを求めて、安心をえたい。
けどそれは不安をともない、だから自己欺瞞する。そこには葛藤とフラストレーションが生まれる。その度数が高ければ、それを満たすための仮の表現方法も過激になり、また閉じ込めれば神経症になったりもするのでしょう。だからといって、それは社会では容認されることではなく、阻害されることにもなり、孤立をうむことにもなる。

やはり思うのが、そこにはもって生まれた特質、性質を理解したうえで社会に自己を投企する為の技術が必要であるということである。未知であるが故に不安が付き纏うのは当然であり、ただたんに、その人の感性、感度、解像度によりレベル指数が違うことだとも思う。

生き方というものが技術ようするとしたら、そこには器用さが影響してくると思う。愛することが技術であるように。

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2025年01月27日

Posted by ブクログ

「性的人間」「セブンティーン」「共同生活」と衝撃的な三篇収録。
特に「性的人間」「セブンティーン」は今の時代コンプラ的にもアウトだと思うが、今こうして売られている。大江健三郎さんはやはり凄い。どんなに性的な話も独特の文体で高尚な作品に仕上げる。考えてみたら滑稽な話ばかりなんだけど、高尚な話を読んだ気分になって読後の満足感は最高である。
痴漢クラブって……笑っちゃうけどメチャ面白い。
人間と性と変態性、きってもきれない関係。

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2023年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『性的人間』の「痴漢は捕まって罰せられるまでが痴漢」という考え方や、『セブンティーン』の漠然とした不安から一時的に逃れるために自涜するところがすごく良かった。

ただ、最近は本を読めるタイミングが早朝か公園で子どもを遊ばせているのを横目で見ているときくらいしかないので、精神的にも環境的にもこの本を楽しめる状況というのがなかなか整わなくて読み進められなかった。

大江健三郎の積ん読はまだまだあるのでまた読み進めていきたい。

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2021年02月19日

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中編3つ。三作とも自己の内面を追求した(押しやられた)結果、陥穽に落ちた青年の話。青年ならではの心の動きとも言えそう。「共同生活」が一番わかりやすくてよかった。「セブンティーン」の終わり方が半端で、作者が右翼とは思えず不可解だったが、実は第ニ部があって公開されていないということを知って納得とともに興味をもった。2019.6.26

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2019年06月26日

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「性的人間」
フリーセックス思想の限界に触れて
彼はテロリストになった
すなわち痴漢である
加虐者であり、被虐者である彼は
同時にあきらかな敗北主義者でもあったが
たのもしい2人の痴漢仲間とともに
めくるめく性倒錯の世界を切り開いてゆくのだった
その終わりには何があるというのだろう?
本当にろくでもない

「セブンティーン」
ナショナリズム・パトリオティズムに対しては誰もが恐れと羨望を感じ
とりあえず悪と決めつけるしかない
そんな時代
与えられた自由よりも、あえて選び取った束縛に
身を投じることでしか反抗期を得られなかった少年の
悲しみと恍惚を描いた物語である
二律背反が彼を果てしのない狂熱へと導く
しかし本当に彼は彼の意志でそれを選び取ったのだろうか?

「共同生活」
入社するなり閑職に追いやられた若いサラリーマンが
自宅にては妄想に苦しめられている
その妄想とは、4匹の猿たちが四六時中見張っているというもので
若者は、彼らに対する恐れと共に
ある種の仲間意識を感じている
それはミソジニーと、性欲を恥じる心が呼び寄せた
ホモソーシャルだったのかもしれない

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2017年03月12日

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読後感はすこぶる悪いです。主人公が内省的で閉塞感が強く、読んでいてへこんでしまいます。ただ、これは好きか嫌いかの次元の話であって、作品に力があるということには相違ないのでしょう。記憶に残る作品ですね。

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2017年01月30日

Posted by ブクログ

 大江健三郎著。詩を書くために痴漢を行う少年と性倒錯した主人公達「性的人間」、劣等感の塊である少年が右翼思想に目覚める「セヴンティーン」、部屋で謎の猿達との生活を送る「共同生活」の三篇収録。
 性的人間:前半の乱交をする人物達の話はさほどインパクトがなかったが、後半の痴漢の話はすさまじいものがあった。そもそも詩と痴漢が結びつくことが驚きだし、それを深く見つめて実存的問題にまで繋ぎ、振り切るようなエネルギーでラストシーンを描いている。痴漢について、単に表面的なグロテスクな部分だけでなく、哲学的に描けるのは大江健三郎だけだろう。長編小説を読んだような密度だった。
 セヴンティーン:まず、大江健三郎がここまで乱暴な語り口の主観視点で語っている小説を見たことがなかったので、新鮮だった。ただ、やはり文体が特徴的なのでリアリティーには欠ける。しかし、とにかく語り口に異様な熱がこもっているので、ついつい引き込まれてしまった。
 共同生活:前の二篇に比べて、性的な描写があまりないので、少し異色な感じがする。テーマや話のオチ自体はありきたりと言えばありきたりだが、正体不明の虫が湧くシーンは気持ち悪くてインパクトがあった。猿という暗喩的存在や会社での主人公の立場などから、何となく安部公房の短編にありそうだなと思った。

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2014年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【本の内容】
青年の性の渇望と行動を大胆に描いて波紋を投じた「性的人間」、政治少年の行動と心理を描いた「セヴンティーン」など問題作3編。

[ 目次 ]


[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年11月06日

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セブンティーンが鮮烈。あのどうかしちゃっているほどの自意識が本当に痛々しい。政治的背景は、出版当初からはだいぶ変わっているが、描かれているものは普遍的。

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2013年03月23日

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どの作品も短篇らしく表現が直截的で、引き込まれて一気に読み切った。大江作品を読むと時代背景は違えども、人間の精神に内在する狂気について考えさせられる。すごい作家だと思う。

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2013年03月05日

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「性的人間」について

痴漢歴のある人に読んでもらって感想を聴きたい作品。
この痴漢嗜好はどこまでリアリティを持っているのか?

後半の詩人が最期に出した結論は何だったのか。
彼は嵐のような詩を書くために、自身が最大級の興奮を得られる痴漢を実現しようとしていた。
その結果彼が起こした行動は、幼女を誘拐した上で電車の迫る線路上に幼女を投げ出し、自分の生命と引き換えに幼女救出を自演することだった。

彼の行動は一見、痴漢とはかけ離れている。
救出された幼女の母親は言った。「あの人は神様です」。
つまり母親の本心におさわりしたかったと・・・?
・・・うん、わかんない。


「セヴンティーン」について

自分に自信の持てない17歳の青年が極右化していく話。
読んで得た教訓は「あんまり溜めこんじゃ駄目だな」ということ。

天皇が全ての行為の正当性を保証し、責任を右派以外の世界に転嫁することで、自分の行為にも自信を取り戻すことはできる。
ある意味、「責任をとる」というネガティブな活動を捨てた最も効率のよい自己実現ではある。
しかも他を威圧することで根拠は無くとも自信は手に入るし報酬(他を服従させる)もある。
だからますます深みにはまってしまう。
狂信的な宗教とか政治活動をする人たちの精神構造を垣間見た気がする(あくまでもフィクションだけど)。

あと、本当の自分を認めてくれたり、一緒にいてくれる人ってやっぱり重要なんだと思う。
誰か一人でも主人公を認めている人間がいたら、主人公は自信を回復でき、極右に傾倒することもなかったかもしれない。
でも、そのためには本当の自分を他人に知ってもらわなければならない。
主人公は世間に対して卑屈になり過ぎて、本当の自分を伝えることができなかった。
だからこそ「あんまり溜めこんじゃ駄目だな」と思った。

と、いいつつも、本音を世間にさらすことはやっぱり他人につけいられる隙を作り出すことに他ならないので、さらす人は選ばないと駄目だね。



「共同生活」について

(考え中)

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2012年03月15日

Posted by ブクログ

言葉を的確に重ねていくことで、言語化することの難しいある特殊な状況や心情を読者に飲み込ませる能力がとにかくずば抜けていると感じる。

日常の陰に隠れた微細な心のありようや関係性をファンタジーのような鮮やかさでほじくり出す手法は予測が付かなくて本当に面白い。この人の書くものならどんなものでもきっと面白くなるはずだと、読んでみたいと、そんな風に思わせる視点の豊かさがあった。

表題作の中編『性的人間』が特に良い。

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2012年01月28日

Posted by ブクログ

セブンティーンを勧められ読んでみたが、いまいちだったが
性的人間は、少年の自分を持つためにあそこまでやる気概、深い自己洞察に感銘を受けた
あれだけの使命を見つけたいものだ
共同生活は、一人になれないとストレスがマッハな俺にとって、恐怖以外の何者でもない


死者の奢りは好きになれなかったが
やはり流石か

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2011年05月09日

Posted by ブクログ

はじめて大江健三郎を読み衝撃を受けた。おもしろい。
性的人間の厳粛な綱渡りをする痴漢少年が好きだ。セヴンティーンもニヤニヤしながら読んだ。

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2010年06月11日

Posted by ブクログ

「セブンティーン」と「共同生活」は興味深かった。他者との関わり合いの中で見つめる実存。
いずれの人間も最後は自らが自身を実存づけた。運命などではなく。それを政治と性というモチーフで描き出す。
初大江健三郎だけど非常に興味深い。

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2025年07月30日

Posted by ブクログ

大江健三郎の初期短編3作が収録されている。痴漢、右翼、自慰行為、妄想を扱いながら実存を問うという感じ。時代の中にある作品という感じがして、いまの時代においてはやや鼻白らむ感じは否めない。登場人物が絶望しているようで、どこか希望を持っているから葛藤するわけで。
テーマはともかくやはり文章は上手い。
書に収録されているセブンティーンの後編『政治少年死す』は全集の第3巻に収録されている。

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2023年10月08日

Posted by ブクログ

2021年 41冊目

「性的人間」 
性的少数派の嗜好の追及を描いた作品。最初の妻を自殺に追い込んだ嗜虐的趣味のある青年が痴漢行為に傾倒する。孤独感を抱える退廃的な作風を更に冷めた目線で読んでしまうのは令和世代だからかしらん。。独り善がりで作品丸ごと自慰行為を見せられてるようで好みでなかった。

「セブンティーン」
現代において確固たる主義や思想を持ち声高に発言する人はそう多くないだろう。主人公の少年は最初左翼だが、彼の政治意識は観念的なものにすぎない。不安定な10代。ある日右翼の党首の演説を聞いて右翼活動にのめり込む。不吉な変身の瞬間。死を以て人を脅迫し自ら死に飛び込む右翼青年を形付けるのは右だけでなく左だけでもなく日本全体である。万人の実存を見つめた作品。実存と言う深みでは、政治的で道徳的な価値判断は存在しない。

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2023年04月15日

Posted by ブクログ

読書量が足りないような人間には、睡眠導入剤となる。
寝る前の数分間でコツコツ読んでいたので、読み終わるのに1ヶ月はかかった。
日本文学の古典を読むというようなノリで開始したので、この長期間にわたる性的人間生活は苦にはならなかった。

寝る前の虚ろな状態で読み進めたため、話の内容等に関する感想はほとんどない。カオスティックな情景が常に漂い、暗澹とした雰囲気。寝る前の本としては最適なのでは?

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2019年03月15日

Posted by ブクログ

【性的人間 改】

字面だけ見るととんでもない官能小説のようだが、中身は人間の欲求の奥深さや潔さ、外に出せば醜い塊だが己のなかでは宝石のようなものを描いている。

読みやすくはないがのめり込む。再読必須の一冊。僕の自意識は今日も正常か?平常か?

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2014年08月13日

Posted by ブクログ

薄々気づいてはいたけれども、文学における性的探求の凄まじさ。僕らの時代もそうだったけれども、この圧倒的なパワーに翻弄されてしまう。保守的で性的で強固な日本文壇的で、となったらもうなにを読めばいいの。死者の奢りや飼育にたしかに感じた文学としての震えみたいなものを、こういう内容だと感じることができない自分が嫌だけれども、しょうがないともおもう。あの圧倒的な震えを、確かめたいだけなのに。人間存在の実存を問うという感覚がわたしにはわからなかった。いつかこの本ごと理解できる日が来るのか。

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2013年09月14日

Posted by ブクログ

教授のおすすめの一冊。
大江健三郎も初めて読んだ。

とりあえず性的人間についてだけ。
おそらく2部構成で1部は乱交の話。
2部は痴漢の話。

痴漢の話がすごく印象的。
危険のない痴漢はにせものの痴漢。
反社会的な行動。
感動もないし怒りも起きない。
ただ、なにか感情を突き動かすものがある気がする。
不思議な読後感だった。

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2012年05月05日

Posted by ブクログ

短編集「性的人間」「セブンティーン」「共同生活」
共同生活は未読。おなかいっぱいで読めませんでした。

大江健三郎ってなんだか凄いわと思った。
思春期に読まなくて良かった。凄いが胸が悪くなる。
この頃のタブーが「性」だからこんなに性描写が多かったり、性倒錯な人物が出てくるのかな。それさえ出しとけば「前衛」気分な人よりは全然「ホンモノ」だと思ったけど、登場人物の心情、葛藤、社会からはみ出た行詰まった人生をそこでしか表現し得ないのかなぁ。うーむ。

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2012年03月23日

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