大江健三郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「性的人間」について
痴漢歴のある人に読んでもらって感想を聴きたい作品。
この痴漢嗜好はどこまでリアリティを持っているのか?
後半の詩人が最期に出した結論は何だったのか。
彼は嵐のような詩を書くために、自身が最大級の興奮を得られる痴漢を実現しようとしていた。
その結果彼が起こした行動は、幼女を誘拐した上で電車の迫る線路上に幼女を投げ出し、自分の生命と引き換えに幼女救出を自演することだった。
彼の行動は一見、痴漢とはかけ離れている。
救出された幼女の母親は言った。「あの人は神様です」。
つまり母親の本心におさわりしたかったと・・・?
・・・うん、わかんない。
「セヴンティーン」について
自分に自信の持てない17歳の青年が極右化していく話。
読んで得た教訓は「あんまり溜めこんじゃ駄目だな」ということ。
天皇が全ての行為の正当性を保証し、責任を右派以外の世界に転嫁することで、自分の行為にも自信を取り戻すことはできる。
ある意味、「責任をとる」というネガティブな活動を捨てた最も効率のよい自己実現ではある。
しかも他を威圧することで根拠は無くとも自信は手に入るし報酬(他を服従させる)もある。
だからますます深みにはまってしまう。
狂信的な宗教とか政治活動をする人たちの精神構造を垣間見た気がする(あくまでもフィクションだけど)。
あと、本当の自分を認めてくれたり、一緒にいてくれる人ってやっぱり重要なんだと思う。
誰か一人でも主人公を認めている人間がいたら、主人公は自信を回復でき、極右に傾倒することもなかったかもしれない。
でも、そのためには本当の自分を他人に知ってもらわなければならない。
主人公は世間に対して卑屈になり過ぎて、本当の自分を伝えることができなかった。
だからこそ「あんまり溜めこんじゃ駄目だな」と思った。
と、いいつつも、本音を世間にさらすことはやっぱり他人につけいられる隙を作り出すことに他ならないので、さらす人は選ばないと駄目だね。
「共同生活」について
(考え中) -
Posted by ブクログ
プロローグで、広島の人が「ヒロシマ」でひとくくりにされることの苦痛の吐露、そして、沈黙する権利がある、とのくだりを常に、心の片隅に置きながら読むべき本だろう。それを意識しないと、大江氏の感情の起伏の激しさに呑まれてしまうからだ。はっきり言って冷静さを欠いていると思う。
しかし、大江氏の優れているのは、たしかな耳と眼をもっていることである。大江氏の洞察は決して深くはない。しかし、事実を探り当て、拾い出し、ありままに記述する、たしかな耳と眼があることは信じられる。
今の時代の若い人には、歴史的、政治的な背景が分からないために、著者の悔しさは伝わりにくいかもしれない。けれども、原水爆禁止運動がたどっている悲劇的な状態を理解するためにも、分からない言葉や団体は、丁寧に調べながら、読むことをオススメする。 -
Posted by ブクログ
全体の構成がこれほど奇異な長編もなかなかないだろうけど、その中で章を追うごとに小説の中の常識・世界観・思想がずれて現実から全く掛け離れていく感覚がある。もともと始まりから常識とは微妙に違う位相にあるようで、それが他者の言葉を受け止める・投げ返すという構造に途中から変わるとまったく新しくもはや手に余るものになってしまった。
所々で(やたら)現れるカタカナで書かれた台詞(というか切実な叫び)は読みにくくて苛々するけれど、わざと読みにくい小説を読むような人間にはいいみたい。転換後の森・父はいい具合にたがが外れているし、作中の人物が驚いたときにあげるン!?といった書き方もなぜか"残る"。途中で茶々を入れる森・父を「ナンセンス!」と切り捨てる女子学生もかっこよかったし、自分の小説書くときにはそういうこと言わせてみたい。 -
Posted by ブクログ
純文学を大きな声で好きだといえる人でないかぎり読みきれないでしょう。それくらい難解で、ストーリーの流れなどから簡単に面白いと感じるところはない作品です。ですがノーベル文学賞作品ですから純文学好きには避けられないところなんですね。実際に読んでみるとあまりの文の巧みさに驚き、慣れないうちは1ページに10分ほどかかることもあるでしょう。読んでて暗記してしまうフレーズを例として「大岩塊、あるいは黒くて硬い土の塊」、なんてのが頻繁にでてきます。何がおかしい、とか思われるかもしれませんが、あまりに何回も出てきます。この岩の話は最初から最後まで出てくるのですが、そのたびに毎回「大岩塊、あるいは黒くて硬い土の塊」って出るんですから、こっちはお腹いっぱいになってしまいますよ。まぁ、逆にこういうフレーズが暗に純文学っぽく感じられて自己満足でなんとか読みすすめられるのですがね・・・。そんなわけですので、作者の天才的な文体を楽しむくらいがちょうど良いのではないですかね(汗