大江健三郎のレビュー一覧
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プロローグで、広島の人が「ヒロシマ」でひとくくりにされることの苦痛の吐露、そして、沈黙する権利がある、とのくだりを常に、心の片隅に置きながら読むべき本だろう。それを意識しないと、大江氏の感情の起伏の激しさに呑まれてしまうからだ。はっきり言って冷静さを欠いていると思う。
しかし、大江氏の優れているのは、たしかな耳と眼をもっていることである。大江氏の洞察は決して深くはない。しかし、事実を探り当て、拾い出し、ありままに記述する、たしかな耳と眼があることは信じられる。
今の時代の若い人には、歴史的、政治的な背景が分からないために、著者の悔しさは伝わりにくいかもしれない。けれども、原水爆禁止運動 -
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全体の構成がこれほど奇異な長編もなかなかないだろうけど、その中で章を追うごとに小説の中の常識・世界観・思想がずれて現実から全く掛け離れていく感覚がある。もともと始まりから常識とは微妙に違う位相にあるようで、それが他者の言葉を受け止める・投げ返すという構造に途中から変わるとまったく新しくもはや手に余るものになってしまった。
所々で(やたら)現れるカタカナで書かれた台詞(というか切実な叫び)は読みにくくて苛々するけれど、わざと読みにくい小説を読むような人間にはいいみたい。転換後の森・父はいい具合にたがが外れているし、作中の人物が驚いたときにあげるン!?といった書き方もなぜか"残る&quo -
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物語は、現在、70代になった作者が、大学時代の級友、木守に再会する場面から始まります。
そこから、二人が30年前に、とある映画を撮影する企画を通して再会し、また疎遠になっていく過程が回想されます。
国際的に映画のプロデューサーをしていた木守は、計画中の映画のシナリオを書かないか、と、級友だった作者を訪ねて来ます。その時、木守が連れて来た、海外で活躍する日本人女優のサクラさんは、作者が高校生の頃に故郷で偶然観た、プライベートに作られた映画、『アナベル・リイ』に登場した少女でした。
今回作られようとしている映画は、原作が外国のものですが、それを日本の農民一揆に置き換えようという事になり、そこで、 -
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純文学を大きな声で好きだといえる人でないかぎり読みきれないでしょう。それくらい難解で、ストーリーの流れなどから簡単に面白いと感じるところはない作品です。ですがノーベル文学賞作品ですから純文学好きには避けられないところなんですね。実際に読んでみるとあまりの文の巧みさに驚き、慣れないうちは1ページに10分ほどかかることもあるでしょう。読んでて暗記してしまうフレーズを例として「大岩塊、あるいは黒くて硬い土の塊」、なんてのが頻繁にでてきます。何がおかしい、とか思われるかもしれませんが、あまりに何回も出てきます。この岩の話は最初から最後まで出てくるのですが、そのたびに毎回「大岩塊、あるいは黒くて硬い土の
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[ 内容 ]
米軍の核兵器をふくむ前進基地として、朝鮮戦争からベトナム戦争にいたる持続した戦争の現場に、日本および日本人から放置されつづけてきた沖縄。
そこで人びとが進めてきた苦渋にみちたたたかい。
沖縄をくり返し訪れることによって、著者は、本土とは何か、日本人とは何かを見つめ、われわれにとっての戦後民主主義を根本的に問いなおす。
[ 目次 ]
プロローグ 死者の怒りを共有することによって悼む
1 日本が沖縄に属する
2 『八重山民謡誌』’69
3 多様性にむかって
4 内なる琉球処分
5 苦が世
6 異議申立てを受けつつ
7 戦後世代の持続
8 日本の民衆意識
9 「本土」は実在しない