大江健三郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
1967年発表、大江健三郎著。友人が死んだ主人公、アメリカから帰ってくる弟、障害児を生んだ主人公の妻。彼らは故郷である四国の村へ向かう。そこで弟の主導の元、スーパーへの略奪が起こり、万延元年の一揆をなぞるように、村全体を巻き込んだ暴動が始まる。
今まで読んだ著者の作品の中で一番面白かった。思想や人間心理や土着的な知識が混然となっていて、何だかラテンアメリカ小説に似た熱を感じる。
著者が本小説の前に書いた「個人的な体験」では少し荒さが目立った気がしたが(特にご都合主義的なラストシーン)、この小説ではそういった欠点がしっかり取り除かれている。序盤は確かに少し退屈だが、ストーリーが村に行き着く -
Posted by ブクログ
大江健三郎、著。精神病院から逃げ出した患者を探して町をさまよう「不満足」、新興宗教団体から脅される記者の心理的葛藤「スパルタ教育」、寝たきりの老人に現代社会は明るいと嘘をつくアルバイト「敬老週間」、原爆被害者の孤児を引き取った男の真意「アトミック・エイジの守護神」、生まれたばかりの障害児を殺した男が憑りつかれた赤ん坊の妄想「空の怪物アグイー」、突如消えた森林の奥の集落「ブラジル風ポルトガル語」、非行少年が住む世界「犬の世界」の七つの短編を収録。
長編「個人的な体験」や「万延元年のフットボール」を書く過渡期の短編集らしく、初期の作風から抜け出そうという工夫が感じられた。特に「敬老週間」「アト -
Posted by ブクログ
鳥(バード)という男の 個人的体験についての物語
妊娠 そして 出産
27歳四ヶ月 生まれたのは 脳ヘルニアの赤ん坊だった。
飼育される バード
檻の中で アフリカに行くことのみが 願い。バードの希望。
なぜ飼育されるようになったのか?
誰に飼育されているのか?
大学院の中退 アルコールの飲み過ぎによる。
自由なバードからの変化 義父、義母、妻に 飼育された。
火見子とバードの奇妙なつながり。
赤ん坊が死ぬことへの熱望
火見子との共同作業。殺すことへの共同策謀。
ソビエトの核実験とのかかわり合い。
結果として 脳ヘルニアの子供を たとえ 植物的な存在になろうとも
命を大切にしよ -
Posted by ブクログ
この本は好きだ。表紙がとてもキレイだったし。この写真のような表紙ではなくて、最初に出てた本は、もっと薄いブルーだった。
それから、アレンギンズバーグが出てくるとこ。
彼が若い男性の恋人と一緒にいるシーンがあったように記憶してる。昨晩やりすぎて疲れた顔をしてる、とか、そんな描写だったような。
大江健三郎は、すごい。原発のデモでも彼の存在感は大きかった。彼には、空想的な理想主義者みたいなところがあってバカにする人もいるけど、そういう理想主義者も必要なんだよ。
大江健三郎の本は、難しすぎて、誰も読まないし、オレも上手く読みこなせないし、村上春樹みたいな誰でも読める分かりやすい人気作家に比べれば、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読みかけて途中で挫折した大江健三郎の本が沢山ある。この本を最後まで読みきったということは、年をとってあらゆることに興味を持つようになり、多少とも読解力がついた証左である。
国語が極端に苦手な子供に少しでも分けてやりたい。
大江健三郎の作品は確かに読みづらい。私小説的であり、背景にあるものの説明は全くない。
この小説も水死という題名で終戦直後に亡くなった実父の謎をたどろうとしたのだが、早い時点で諦め、ウナイコという演劇女優や自分の周辺を取り巻く話が脈絡もなく、展開し、どうなることだろうと読み進めていくが、最後に衝撃的な事件が起きて、何とか小説的な幕引きとなる。
この分かりにくい、途中で投げ出した -
Posted by ブクログ
大江健三郎(1935-)初期の長編小説、1959年の作。
日常性という倦怠、鬱屈、閉塞、虚無。そこは、無限遠に縁取られた外部無き空虚。溢れているのは、その媒介性によってそれ自体が虚偽の手段であると同時に虚偽そのものになってしまった、言葉。
他者関係が、言葉=媒介という虚偽によって空転するしかない communication として、内的関係からの疎外でしか在り得ない、公的空間。実名の虚語と匿名の憎悪に塗れ、言葉が記号的虚偽以外では在り得ない、匿名空間。それに囲繞された私的空間に於いて、手足を捥がれた無限小の一点となる。それは、眼球であるか、口の虚空であるか、性器の虚点であるか。ベッドは