大江健三郎のレビュー一覧

  • 万延元年のフットボール

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     1967年発表、大江健三郎著。友人が死んだ主人公、アメリカから帰ってくる弟、障害児を生んだ主人公の妻。彼らは故郷である四国の村へ向かう。そこで弟の主導の元、スーパーへの略奪が起こり、万延元年の一揆をなぞるように、村全体を巻き込んだ暴動が始まる。
     今まで読んだ著者の作品の中で一番面白かった。思想や人間心理や土着的な知識が混然となっていて、何だかラテンアメリカ小説に似た熱を感じる。
     著者が本小説の前に書いた「個人的な体験」では少し荒さが目立った気がしたが(特にご都合主義的なラストシーン)、この小説ではそういった欠点がしっかり取り除かれている。序盤は確かに少し退屈だが、ストーリーが村に行き着く

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    2014年07月21日
  • われらの時代

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    遅く生まれてしまった世代の苦悩、鬱屈、閉塞感が伝わってくる。
    そこから抜け出したいのに抜け出せず絶望する。
    兄弟二人は抜け出せそうになったのに結局抜け出せず絶望する。
    時代が変わっても同じような苦悩がある気がする。

    読んでて気持ちのいい内容じゃないのに、
    ページをめくる手が止まらなかった。
    特に後半の展開は圧倒的だった。

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    2014年07月15日
  • われらの時代

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    大江健三郎って下手にノーベル賞取ってしまったから何やかんや言われるけど、初期の作品の衝動というかみずみずしさというのは素晴らしい。これは現在進行形で若者である人間にしか書けないだろうし、個人的な体験に並ぶ傑作だと思う。

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    2014年04月30日
  • ヒロシマ・ノート

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    最初の2章くらいが面白くなくて、“これがそんなに話題作か~”って感じで匙を投げかけたけど、そこでぐっとこらえて読み進めると、後半になるにつれてより入れ込める感じになってきた。原爆のことを考える機会も久しぶりに持てた気がするし、そういう意味でも意義深い時間を過ごせました。

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    2014年02月18日
  • 空の怪物アグイー

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     大江健三郎、著。精神病院から逃げ出した患者を探して町をさまよう「不満足」、新興宗教団体から脅される記者の心理的葛藤「スパルタ教育」、寝たきりの老人に現代社会は明るいと嘘をつくアルバイト「敬老週間」、原爆被害者の孤児を引き取った男の真意「アトミック・エイジの守護神」、生まれたばかりの障害児を殺した男が憑りつかれた赤ん坊の妄想「空の怪物アグイー」、突如消えた森林の奥の集落「ブラジル風ポルトガル語」、非行少年が住む世界「犬の世界」の七つの短編を収録。
     長編「個人的な体験」や「万延元年のフットボール」を書く過渡期の短編集らしく、初期の作風から抜け出そうという工夫が感じられた。特に「敬老週間」「アト

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    2014年01月29日
  • 見るまえに跳べ

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    話の筋がある。読んでいてとても緊張感があった。そのうえ、なにかしらのテーマがある。そしてなにより粘っこい文体。おそろしい。

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    2014年01月03日
  • 人生の親戚

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    大江健三郎さんらしからぬ面白さだ。まり恵さんは「本当の回心」出来たのだろうか?熱望しても叶わなかっただろう。ヤッテも・ヤラなむてもたいしたちがいはない。まり恵さんが瀬戸内寂聴とダブッて凄まじい。

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    2013年10月26日
  • 個人的な体験

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    鳥(バード)という男の 個人的体験についての物語

    妊娠 そして 出産
    27歳四ヶ月   生まれたのは 脳ヘルニアの赤ん坊だった。
    飼育される バード
    檻の中で アフリカに行くことのみが 願い。バードの希望。
    なぜ飼育されるようになったのか?
    誰に飼育されているのか?

    大学院の中退 アルコールの飲み過ぎによる。
    自由なバードからの変化  義父、義母、妻に 飼育された。

    火見子とバードの奇妙なつながり。
    赤ん坊が死ぬことへの熱望
    火見子との共同作業。殺すことへの共同策謀。

    ソビエトの核実験とのかかわり合い。

    結果として 脳ヘルニアの子供を たとえ 植物的な存在になろうとも
    命を大切にしよ

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    2021年10月22日
  • 叫び声

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    ネタバレ

    僕(主人公)という人間が大学生のころに出会った4人の物語。僕、ダリウス・セルベゾフというアメリカ人、虎、呉鷹男が共同の目的の元、一つの屋根の下で生活を共にする。ダリウスが造船中である友人たち号(レ・ザミ)というヨットで外国に行く話を持ちかけた。3人は同意する。それぞれの思いのもとレ・ザミに思いを馳せる。そうした中、様々な出来事が起こり4人の考え、行動、態度、環境にも変化が訪れる。そういったストーリー。言葉のユーモア、人物描写の鮮やかさがこの本には溢れている。

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    2013年06月23日
  • あいまいな日本の私

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    1990年代に日本人とは何かについて考え、それを絞り出すように言葉を選び、発信していった講演がまとめられた良書。2014年の今でも著者の主張は錆びていないと思う。まだ私には経験が浅く、著者の主張を受け止めきれていない部分があるが、年を取り経験を積み読み返すことでまた新たな発見が得られると思う。

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    2013年04月22日
  • 小説のたくらみ、知の楽しみ

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    ブレイクの救済のヴィジョン、エリアーデの元型の理論、「indestructiblity of human existence」、山口昌男の記号論的人類学、ロシアフォルマリストの異化の理論に影響を受け、それらを時代の課題と自分の問題において書く、という大江の文学の姿勢に胸を打たれる。

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    2013年04月04日
  • ヒロシマ・ノート

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    この本を理解するのはちょっと難解です。
    ですが、私たちがいかに原爆という出来事を
    知らなかったか、ということを理解できるでしょう。

    どうしてもあのようなものが落ちて来ると
    根こそぎ、という印象を抱きますが
    そうではなく、それでも体に爆弾を抱えつつも
    生きていた人がいたこと…

    そう思うとアメリカの言いなりとなった
    日本がふがいなく感じます。
    さらに言えばこんな絶望的な出来事に
    見舞われたのにまたも私たちは
    過ちを犯してしまいましたし。

    もう繰り返してはいけません。
    絶対に、絶対に!!

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    2013年03月27日
  • 性的人間

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    セブンティーンが鮮烈。あのどうかしちゃっているほどの自意識が本当に痛々しい。政治的背景は、出版当初からはだいぶ変わっているが、描かれているものは普遍的。

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    2013年03月23日
  • 遅れてきた青年

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    青年の純粋さが突き抜け過ぎていて狂気でした。
    みんな狂気。

    こういう本を定期的に読まないと、気が済みません。

    13.03.16

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    2013年03月20日
  • 性的人間

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    どの作品も短篇らしく表現が直截的で、引き込まれて一気に読み切った。大江作品を読むと時代背景は違えども、人間の精神に内在する狂気について考えさせられる。すごい作家だと思う。

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    2013年03月05日
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ

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    5本の短編(中編)集。それぞれの物語にて人間のグロテスクな内面が描かれている。どの作品も面白かった!

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    2013年02月23日
  • 「雨の木」を聴く女たち

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    この本は好きだ。表紙がとてもキレイだったし。この写真のような表紙ではなくて、最初に出てた本は、もっと薄いブルーだった。
    それから、アレンギンズバーグが出てくるとこ。
    彼が若い男性の恋人と一緒にいるシーンがあったように記憶してる。昨晩やりすぎて疲れた顔をしてる、とか、そんな描写だったような。

    大江健三郎は、すごい。原発のデモでも彼の存在感は大きかった。彼には、空想的な理想主義者みたいなところがあってバカにする人もいるけど、そういう理想主義者も必要なんだよ。

    大江健三郎の本は、難しすぎて、誰も読まないし、オレも上手く読みこなせないし、村上春樹みたいな誰でも読める分かりやすい人気作家に比べれば、

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    2017年07月25日
  • 水死

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    ネタバレ

    読みかけて途中で挫折した大江健三郎の本が沢山ある。この本を最後まで読みきったということは、年をとってあらゆることに興味を持つようになり、多少とも読解力がついた証左である。
    国語が極端に苦手な子供に少しでも分けてやりたい。
    大江健三郎の作品は確かに読みづらい。私小説的であり、背景にあるものの説明は全くない。
    この小説も水死という題名で終戦直後に亡くなった実父の謎をたどろうとしたのだが、早い時点で諦め、ウナイコという演劇女優や自分の周辺を取り巻く話が脈絡もなく、展開し、どうなることだろうと読み進めていくが、最後に衝撃的な事件が起きて、何とか小説的な幕引きとなる。
    この分かりにくい、途中で投げ出した

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    2013年01月23日
  • われらの時代

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    大江健三郎(1935-)初期の長編小説、1959年の作。

    日常性という倦怠、鬱屈、閉塞、虚無。そこは、無限遠に縁取られた外部無き空虚。溢れているのは、その媒介性によってそれ自体が虚偽の手段であると同時に虚偽そのものになってしまった、言葉。

    他者関係が、言葉=媒介という虚偽によって空転するしかない communication として、内的関係からの疎外でしか在り得ない、公的空間。実名の虚語と匿名の憎悪に塗れ、言葉が記号的虚偽以外では在り得ない、匿名空間。それに囲繞された私的空間に於いて、手足を捥がれた無限小の一点となる。それは、眼球であるか、口の虚空であるか、性器の虚点であるか。ベッドは

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    2013年01月14日
  • 僕が本当に若かった頃

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    私小説的枠をとった連作短編集のうちの一つ。後期の大江はだいたいそうだが文体は凝ったもので一筋縄ではいかない。しかし経験を言語として、徹底的に自己をテクスト化してゆき、多層的に織り上げられたそれに、言葉に対する著者の姿勢、執念、愛着を感じる。『治療塔』、『夢の師匠』には著者の、暗いながらもかすかな希望のある新しい人に対するビジョンをみて感動的である。解説、作家案内も共に優れたものであった。

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    2015年12月09日