大江健三郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大江健三郎著。詩を書くために痴漢を行う少年と性倒錯した主人公達「性的人間」、劣等感の塊である少年が右翼思想に目覚める「セヴンティーン」、部屋で謎の猿達との生活を送る「共同生活」の三篇収録。
性的人間:前半の乱交をする人物達の話はさほどインパクトがなかったが、後半の痴漢の話はすさまじいものがあった。そもそも詩と痴漢が結びつくことが驚きだし、それを深く見つめて実存的問題にまで繋ぎ、振り切るようなエネルギーでラストシーンを描いている。痴漢について、単に表面的なグロテスクな部分だけでなく、哲学的に描けるのは大江健三郎だけだろう。長編小説を読んだような密度だった。
セヴンティーン:まず、大江健三郎 -
Posted by ブクログ
・大江健三郎「大江健三郎自選短篇」(岩波文庫)を 読んだ。帯に「全収録作品に加筆修訂が施された大江短篇の最終形」とある。本書収録の23編に関しては、以前の「全作品」や「全集」ではなく、これが最終形、もしかしたら定本になるといふことであらう。それを意識して読んだと書いたところで、私にはそれ以前との違ひなど分かりやうはずがない。ただ、かうして初期から最近の作品まで通して読むと、大江の変貌の具合と文体の推移、つまり読みにくくなつていく過程がよく分かる。私が大江を読み始めた時、既にかなりの作品が文庫になつてゐた。それらは初期の作品であつたはずだが、それゆゑにそんなに読みにくいとは思はなかつた。もちろん
-
Posted by ブクログ
1967年発表、大江健三郎著。友人が死んだ主人公、アメリカから帰ってくる弟、障害児を生んだ主人公の妻。彼らは故郷である四国の村へ向かう。そこで弟の主導の元、スーパーへの略奪が起こり、万延元年の一揆をなぞるように、村全体を巻き込んだ暴動が始まる。
今まで読んだ著者の作品の中で一番面白かった。思想や人間心理や土着的な知識が混然となっていて、何だかラテンアメリカ小説に似た熱を感じる。
著者が本小説の前に書いた「個人的な体験」では少し荒さが目立った気がしたが(特にご都合主義的なラストシーン)、この小説ではそういった欠点がしっかり取り除かれている。序盤は確かに少し退屈だが、ストーリーが村に行き着く -
Posted by ブクログ
大江健三郎、著。精神病院から逃げ出した患者を探して町をさまよう「不満足」、新興宗教団体から脅される記者の心理的葛藤「スパルタ教育」、寝たきりの老人に現代社会は明るいと嘘をつくアルバイト「敬老週間」、原爆被害者の孤児を引き取った男の真意「アトミック・エイジの守護神」、生まれたばかりの障害児を殺した男が憑りつかれた赤ん坊の妄想「空の怪物アグイー」、突如消えた森林の奥の集落「ブラジル風ポルトガル語」、非行少年が住む世界「犬の世界」の七つの短編を収録。
長編「個人的な体験」や「万延元年のフットボール」を書く過渡期の短編集らしく、初期の作風から抜け出そうという工夫が感じられた。特に「敬老週間」「アト