大江健三郎のレビュー一覧

  • 性的人間
    どの作品も短篇らしく表現が直截的で、引き込まれて一気に読み切った。大江作品を読むと時代背景は違えども、人間の精神に内在する狂気について考えさせられる。すごい作家だと思う。
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ
    5本の短編(中編)集。それぞれの物語にて人間のグロテスクな内面が描かれている。どの作品も面白かった!
  • 「雨の木」を聴く女たち
    この本は好きだ。表紙がとてもキレイだったし。この写真のような表紙ではなくて、最初に出てた本は、もっと薄いブルーだった。
    それから、アレンギンズバーグが出てくるとこ。
    彼が若い男性の恋人と一緒にいるシーンがあったように記憶してる。昨晩やりすぎて疲れた顔をしてる、とか、そんな描写だったような。

    大江健...続きを読む
  • 水死
    読みかけて途中で挫折した大江健三郎の本が沢山ある。この本を最後まで読みきったということは、年をとってあらゆることに興味を持つようになり、多少とも読解力がついた証左である。
    国語が極端に苦手な子供に少しでも分けてやりたい。
    大江健三郎の作品は確かに読みづらい。私小説的であり、背景にあるものの説明は全く...続きを読む
  • われらの時代
    大江健三郎(1935-)初期の長編小説、1959年の作。

    日常性という倦怠、鬱屈、閉塞、虚無。そこは、無限遠に縁取られた外部無き空虚。溢れているのは、その媒介性によってそれ自体が虚偽の手段であると同時に虚偽そのものになってしまった、言葉。

    他者関係が、言葉=媒介という虚偽によって空転するしか...続きを読む
  • 僕が本当に若かった頃
    私小説的枠をとった連作短編集のうちの一つ。後期の大江はだいたいそうだが文体は凝ったもので一筋縄ではいかない。しかし経験を言語として、徹底的に自己をテクスト化してゆき、多層的に織り上げられたそれに、言葉に対する著者の姿勢、執念、愛着を感じる。『治療塔』、『夢の師匠』には著者の、暗いながらもかすかな希望...続きを読む
  • 静かな生活
    フィクションだって分かっているのに、どうしても、この本は大江健三郎じゃなくて大江健三郎の娘さんが書いているんだという意識で読んでしまった。最後まで。
  • あいまいな日本の私
    たいへん良かったです。
    文学に対して、このくらい真剣に考えていないと、素晴らしい話は書けないですよね。
    「あいまいな日本の私」って、川端康成のスピーチを受けてのことだったんですね。

    これを読みながら、ノーベル文学賞の発表を待っていたのですが・・・今年も残念でした。

    12.10.14
  • 美しいアナベル・リイ
    アナベル・リイの夏目訳が読みたくて気になる。”ろうたし”がきいてる。それから強烈な甘い思い出。追体験してみたくもなる。
    誰しも心の中に”アナベル・リイ”なり”ロリータ”なるファム・ファタールがいるものだろう。彼女はわすれられない思い出をまとって、甘い甘い魅力をふりまきながらふてぶてしくどうどうとして...続きを読む
  • 「雨の木」を聴く女たち
    雨の木のイメージをめぐる様々な物語。どの登場人物も心に傷を負っていて、その心のひだや闇が、優しく、神秘的に描かれている。メッセージがまだ読み取れていないので、また読み返したい一冊。
  • みずから我が涙をぬぐいたまう日
    ここ一年ぐらい封印していた「大江氏を読むこと」を、ついにやぶってしまった。

    相変わらず、ずるずると引きずり込まれる、この人の世界に。

    「みずから我が涙をぬぐいたまう」という不思議なタイトルについて、読み進めていって、なるほど、とわかった。

    また、「懐かしい年への手紙」などと通じるモチーフが随所...続きを読む
  • 静かな生活
    ここ数年前から、大江さんの作品をコンスタントに少しずつ、味わいながら、読み進めていこう、と暗に決めている。これは伊丹十三の映画のほうは見たけれど、原作としては読んでいなかったので。面白かったなぁ、ほんとに、この人の作品は、読んでいて、楽しい。(12/1/4)
  • 静かな生活
    私小説に近い作風の小説。イーヨー、マーちゃん、オーちゃんの3兄弟が遭遇するちょっとした事件や、心的風景がテーマとなった6つの短編から構成される連作です。
     読後、知的障害を持つイーヨーの一貫した純粋さ、明るさに救われた気持ちになります。
  • 同時代ゲーム
    物語として内容を読み取ろうとすると、難解で冗長とも感じられるこの作品、最後まで読んでみると、その文脈を楽しんでいけばいいのだなと気づきます。
    その世界観は、のちの宮崎駿や村上春樹にも影響を与えたのではというところがあります。
  • 日常生活の冒険
    われわれが日常生活で想像力を働かせるというのは、過去の観察のこまかなな要素を再構築してひとつの現実をくみたてることにほかならない。p417

    「この長編の題名には、その冒険の可能性なき世界を冒険的いきなければならないというひとつのモラルが、すでに含まれている」(渡辺広士の解説より)
  • 性的人間
    「性的人間」について

    痴漢歴のある人に読んでもらって感想を聴きたい作品。
    この痴漢嗜好はどこまでリアリティを持っているのか?

    後半の詩人が最期に出した結論は何だったのか。
    彼は嵐のような詩を書くために、自身が最大級の興奮を得られる痴漢を実現しようとしていた。
    その結果彼が起こした行動は、幼女を誘...続きを読む
  • ヒロシマ・ノート
    プロローグで、広島の人が「ヒロシマ」でひとくくりにされることの苦痛の吐露、そして、沈黙する権利がある、とのくだりを常に、心の片隅に置きながら読むべき本だろう。それを意識しないと、大江氏の感情の起伏の激しさに呑まれてしまうからだ。はっきり言って冷静さを欠いていると思う。

    しかし、大江氏の優れている...続きを読む
  • ピンチランナー調書
    全体の構成がこれほど奇異な長編もなかなかないだろうけど、その中で章を追うごとに小説の中の常識・世界観・思想がずれて現実から全く掛け離れていく感覚がある。もともと始まりから常識とは微妙に違う位相にあるようで、それが他者の言葉を受け止める・投げ返すという構造に途中から変わるとまったく新しくもはや手に余る...続きを読む
  • 美しいアナベル・リイ
    物語は、現在、70代になった作者が、大学時代の級友、木守に再会する場面から始まります。
    そこから、二人が30年前に、とある映画を撮影する企画を通して再会し、また疎遠になっていく過程が回想されます。

    国際的に映画のプロデューサーをしていた木守は、計画中の映画のシナリオを書かないか、と、級友だった作者...続きを読む
  • M/Tと森のフシギの物語
    今までにない魅力のある本。四国の山間の村に伝わる神話と幕末の歴史及び、作者が何故これに深く関わるか?が書かれた本。

    作者が神隠しに会い、神秘的な体験を通して、村の物語の継承者として選ばれた理由。また、作者の知能障害の息子と村の繋がり。

    人の一生は産まれたときから死ぬときではなく、「かれがふくみこ...続きを読む