大江健三郎のレビュー一覧

  • 性的人間

    Posted by ブクログ

    中編3つ。三作とも自己の内面を追求した(押しやられた)結果、陥穽に落ちた青年の話。青年ならではの心の動きとも言えそう。「共同生活」が一番わかりやすくてよかった。「セブンティーン」の終わり方が半端で、作者が右翼とは思えず不可解だったが、実は第ニ部があって公開されていないということを知って納得とともに興味をもった。2019.6.26

    0
    2019年06月26日
  • 芽むしり仔撃ち

    Posted by ブクログ

    解像度の高い文章。読んでいて心地よい。
    「蝿の王」っぽい設定だが、少年たち同士の対立は弱い。
    章の題名は分かりやすくする効果があるが、ネタバレにもなるから一長一短だと思う。

    0
    2019年06月23日
  • 遅れてきた青年

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    大江健三郎の描く戦後文学は、戦後生まれの僕達にとって、もはや神話である。
    鬱屈した自意識過剰な主人公。
    19世紀西洋小説的。
    ロマン・ロラン的。
    文庫本あとがきによると、大江健三郎自身が終戦当時、そのような感慨を抱いていたらしいが、この長編は、第2次世界大戦の戦線に立つのに”遅れた”という意識を持つ青年が主人公であるところが、戦争を全く知らない僕には興味深い。
    ある意味、必然的でない後半の犯罪が、小説に影を彩る。

    0
    2019年11月27日
  • 水死

    Posted by ブクログ

    天皇主義の戯画を演じて死んだ三島由紀夫に対し
    戦後民主主義の戯画を引き受けて生きる大江健三郎は
    三島の死をトリックスターのそれと決めつけ
    影響力を無効化するために
    天皇との和解を目論んだのだと思う
    「あいまいな日本の私」とは、まさに天皇のことでもあるわけだ
    それはもちろん逆説的に不敬だった
    とはいえ、天皇との和解
    小説を使ってのことにせよ
    さすがの大江も、そんなご都合主義をやらかすほど
    恥知らずにはなれなかった
    それはあるいは、障害持ちの息子という心残りを置いた
    老年の弱気なんだろう
    そこでかわりに、三島のホモソーシャル志向を叩くべく持ち出したのが
    メイトリアークという概念だった
    天皇の家系を

    0
    2018年12月11日
  • ヒロシマ・ノート

    Posted by ブクログ

    1963年から65年にかけて、広島を訪れた著者が、いまもなおのこる原爆の後遺症にさいなまれながらも静かに今を生きている人びとの姿をえがいたノンフィクション作品です。

    すこし気になったのは、「偶然にひとつの都市をおとずれた旅行者が、そこで困難な事件にまきこまれ、それをひきうけて解決すべくつとめる、というのは、ポピュラーな小説家が、たびたび採用してきた公式だった」という、蓮實重彦の問題提起を思わせるような文が記されていることです。本書には、政治的に対立する陣営の喧騒から距離を置くことで、文学を生業とする著者自身の観点から広島の真実にアプローチをおこなっているのですが、上の問題はそうした著者の態度

    0
    2018年10月26日
  • ピンチランナー調書

    Posted by ブクログ

    1回目はスラップスティックについていけず、再読して漸く面白く読めた。
    まず、われわれの子どもについてを巡る対話が面白い。「私小説ではない」のだか、こういった挿話はまさにリアルな感情に根差していると感じられる。転換のドタバタはまさに道化の語りだが、ピンチランナーという言葉に込めた祈り、決意は、この長大なアンチクライマクスの物語を作り上げる作家の祈り、決意そのものであり、敬意を禁じ得ない

    0
    2018年06月16日
  • 「雨の木」を聴く女たち

    Posted by ブクログ

    甘ったれた男の物語と読むこともできる。初期の短編の完成度に比べれば、どこか未整理なままを見せることを目的としているような節もある。ただ、凝り固まった思い込みを捨てれば、やっぱり豊かなイメージに溢れた氏の作品は単純に面白く(首吊り男は笑っちゃうし、泳ぐ男はミステリー調にも読める)、短編は読みやすい。

    0
    2018年05月28日
  • 空の怪物アグイー

    Posted by ブクログ

    「敬老週間」はちょっと大江らしくないので意外であったが、あとは読んでいてニヤニヤしてしまういつもの大江であった。「ブラジル風のポルトガル語」なんかはいつにも増して他者性というものがきわだって描かれていたように思う、けっこう好きな作品が多かった。

    0
    2018年04月09日
  • 遅れてきた青年

    Posted by ブクログ

    10年ぶりくらいに再読。以降の長い作家生活の中での作品を思うと、これは初期の総括と言える作品かもしれない。政治的と対比させた大江健三郎の性的な、負け犬的なモチーフが些か中二病的な趣きを讃えながら、漲っている。

    0
    2017年12月24日
  • 万延元年のフットボール

    Posted by ブクログ

    「万延」と「フットボール」というミスマッチな単語を重ね合わせた軽妙な題名とは異なり、推敲に推敲を重ね無駄を排した独特な文章と、段落を極力無くし畳み掛ける緻密な描写は読者に緊張さえ与える。初めての大江健三郎作品であったが、いやはや鬼気迫る作品であった。

    日本人に古来より根付く暗澹たる気質を浮き彫りにし、万延元年の一揆と鷹四が隆起する暴動の共通項による事件性を謳いながらも、結局は大江自身の自己反芻の物語であるのかもしれない。内包する狂気性が自己に向かった場合に起こることを鷹と蜜という対立軸で思考実験を重ねた産物のように思えた。

    0
    2017年08月21日
  • 懐かしい年への手紙

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    評価が非常に難しい本(笑) 巨大な物語であり、作者なりの大きい構成(目次)などを見てもそれはワクワクするのだが、登場人物たちにいちいちイライラさせられるのである笑 基本的にはギー兄さんの物語(を僕のいじらしい視線によって眺め通す)ということになるのだが、ギー兄さんも魅力的とは言えないし、あと大江らしき主人公の妹のムカつくこと。なんともいえない読後感です。まぁ大作だとは思いますが。作者にとって重要になったという点では間違いないと思うのですがねぇ……。

    0
    2017年04月27日
  • 芽むしり仔撃ち

    Posted by ブクログ

     第二次世界大戦末期、現在の少年院にあたる「感化院」の少年たちはある僻村へ集団疎開させられる。しかし到着直後に疎開先で疫病が流行り始め、村人たちは村外へ避難し、感化院の少年たちを置いて村を隔離してしまう。山村に監禁された少年たちを襲う不安と恐怖、しかし彼らは健気にも自分たちの「自由の王国」を創り上げようとする。だが狩りの成功を祝す祭りの後に少女が発症し、彼らは再び恐怖の底へと突き落とされる。そして村人たちの帰村により、その恐怖は絶望へと変わる…。ノーベル文学賞作家・大江健三郎のデビュー1年後に発表された初の長編小説。

     著者の作品は初めて読んだが、圧倒的な表現力に驚かされた。力強く緻密な情景

    0
    2017年03月25日
  • 性的人間

    Posted by ブクログ

    「性的人間」
    フリーセックス思想の限界に触れて
    彼はテロリストになった
    すなわち痴漢である
    加虐者であり、被虐者である彼は
    同時にあきらかな敗北主義者でもあったが
    たのもしい2人の痴漢仲間とともに
    めくるめく性倒錯の世界を切り開いてゆくのだった
    その終わりには何があるというのだろう?
    本当にろくでもない

    「セブンティーン」
    ナショナリズム・パトリオティズムに対しては誰もが恐れと羨望を感じ
    とりあえず悪と決めつけるしかない
    そんな時代
    与えられた自由よりも、あえて選び取った束縛に
    身を投じることでしか反抗期を得られなかった少年の
    悲しみと恍惚を描いた物語である
    二律背反が彼を果てしのない狂熱へ

    0
    2017年03月12日
  • 性的人間

    Posted by ブクログ

    読後感はすこぶる悪いです。主人公が内省的で閉塞感が強く、読んでいてへこんでしまいます。ただ、これは好きか嫌いかの次元の話であって、作品に力があるということには相違ないのでしょう。記憶に残る作品ですね。

    0
    2017年01月30日
  • 美しいアナベル・リイ

    Posted by ブクログ

    ポーのアナベルリーを原文で読み終えた後で、再読。登場人物の鮮やかなキャラクター設定にため息は出たが、前半は時間の移動もあってやや退屈気味。中間部、サクラさんの体温が上がり始めてからはこちらも一気に読み終えた。人が年をとる、ということを考えさせられた。

    0
    2017年01月26日
  • あいまいな日本の私

    Posted by ブクログ

    今期,大学の非常勤でテッサ・モーリス=スズキの『日本を再発明する』を教科書として使っている。今回はとてもいい選択だったと思う。とても授業がやりやすいし,学生の反応もまずまず。もちろん,理解が浅い部分もあるが,そのくらいの難しさを兼ね備えているところも理想的。
    ということで,レポートのテーマとして「日本論・日本人論・日本文化論を読む」という課題を設定した。この件については,西川長夫『地球時代の民族=文化理論』を読んだ時にも,主要な日本論については読んでおかなくてはと思ったが,今回そのいくつかをレポートの課題図書として設定することで自らも読むことにした。
    まず,読み始めたのがこちら。ノーベル文学賞

    0
    2016年07月01日
  • 芽むしり仔撃ち

    Posted by ブクログ

    圧倒的な表現力。植物の匂いや動物の生臭さが読み手に伝わってくるようで、ぐいぐいその世界に引き込まれた。
    物語のひとつのテーマである「中と外」という対立関係は、決して特殊な環境ではなく、私たちの身近な生活の中もあるのだと気づかされる。

    0
    2016年05月04日
  • ヒロシマ・ノート

    Posted by ブクログ

    後にノーベル文学賞を受賞(1994年)した大江健三郎が、1963~1965年に雑誌「世界」で発表したエッセイをまとめたものである。
    大江氏は、その期間に繰り返し広島を訪れ、多くの、20年を経てもある日突如として死の宣告を受ける被爆者たち、そうした被爆者に対して献身的に治療に当たる医師たちと話をし、戦争の悲惨さと人間の威厳を訴えるメッセージとして本作品を著している。
    私にとって強く印象に残ったのは、“人間の威厳”として、「広島で生きつづける人びとが、あの人間の悲惨の極みについて沈黙し、それを忘れ去るかわりに、それについて語り、研究し、記録しようとしていること、これはじつに異常な努力による重い行為

    0
    2016年01月17日
  • 静かな生活

    Posted by ブクログ

    読むのにとても時間がかかった。べつに言葉や内容が特別難しいというわけではないが、唐突に話が始まるような瞬間が何度もあって、語り手に追いつくのがワンテンポ遅れるような感覚になることが多かったから。
    それでも、それが嫌ではなくて、奇妙なテンポに振り回されるのがむしろ楽しかった。
    そして何より、この物語に登場する3兄弟イーヨー・マーちゃん・オーちゃんが魅力的で、心地よかった。

    0
    2016年01月13日
  • 万延元年のフットボール

    Posted by ブクログ

    数年前に一度挫折して、なんとか再読で読みきった。文章の熱量がすごく、情報量がとても多くなかなか読みすすまなかったけれど、これぞブンガクという作品に出会ったのはとてもひさしぶり。村上春樹の『1973年のピンボール』はここからタイトルを捩っているんだろうけれど、内容的にも重なるところがあったり。大江がノーベル文学賞を受けているのできっと春樹は永遠の有力候補のままで終わりそうだ。

    0
    2015年12月21日