大江健三郎のレビュー一覧

  • 遅れてきた青年

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    人間が自分の運命的な出自に対して、どこまで抗えるかの挑戦を描いた作品。

    戦後期という混乱の時代だからこそ成しえた生き様は、只々鮮烈。

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    2013年04月25日
  • われらの時代

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    死者の奢りや飼育を読んだ時のような震えるほどの感動とか、これこそが魂の救済かもしれないと思う実感とか、そういうものは全くなかった。長編として均整の取れていて主軸もしっかりしていて日本文壇的な作品。でもデビュー時の何が何でも、というようなみずみずしさとか絶望感とかが感じられない。優れた文学と、性への執着はわたしに古風な日本文壇を思い起こさせて、三島由紀夫のような、そんな。死者の奢りがあまりに心を震わせる素晴らしいものだったので意気込んで読んだところを挫かれた感じ。春樹が周囲は大江健三郎を読んでいたが自分は好んで読むことはなかったみたいなことを言っていたのが、分かる気がする。いき過ぎた執着は気持ち

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    2013年04月17日
  • 燃えあがる緑の木―第二部 揺れ動く―

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    何か頼み事をするときにメイスケさんが持ち出されるのは構わない。だけど各々が体験する「一瞬よりはいくらか長いあいだ」を名付けることはできまいと私は思う。だけどイェイツの言葉の頻繁な引用、パンフレットに聖書と、ついには祈りの言葉が生まれそうになる、という「教会」が確固としたものになっていく、すべてに名前が付けられて儀式化して行く過程が私には非常に胸苦しい。教会を通じた集団的陶酔が劣るとは言えないとしても…この瞬間の体験は名付けられてはいけない、宗教化してはいけない…。3部まだ読んでないからハラハラしてる。

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    2013年04月06日
  • 燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―

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    「一瞬よりいくらか長いあいだ」としての「永遠」!このくだりを見たとき私は大変驚愕して、というのも大江健三郎がここまではっきりこの言葉を口にするとは思ってもいなかったので…『嘔吐』では似た言葉が、存在の罪が一瞬だけぬぐわれるとき、などという表現されていたアレ…『嘔吐』以後サルトルが触れなくなってしまったアレ…。私にとってはこの「瞬間としての永遠」はサルトルとバタイユをつなぎ、または作中に引用されているランボーとも、プルーストとも強固に繋がるキーワードである。しかしこれを掲げて宗教を始めることが可能なのか…。自分の存在というものの途方もない無意味さ、偶然性を乗り越えることが出来るのは、自分の身を以

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    2013年04月06日
  • 水死

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    ネタバレ

    読みにくくてなかなか読み進められなかったが、二日目には慣れることができた。とは言っても、なかなかさらりとは読めない文章で、苦戦させられた。
    意外性があって面白い。それに、ウナイコとリッチャンのキャラクター性が良い。でも、最後に何を伝えたかったのかが分からない。長江先生の意思が受け継がれている、ということ?急に監禁されてしまうという展開にちょっと着いていけなかった。
    ウナイコのように自分を表現するようなことをしてみたいと思った。何があっても自分が伝えたいことを人々に伝えようと思う意思の強さと熱意に憧れた。

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    2013年01月24日
  • 見るまえに跳べ

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    "跳ぶ"ことによって、その成否にかかわらず変化が訪れる。そしてそれは、過去の自分から変化していくために必要なこと。跳ぶ機会を逃すな。

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    2012年12月15日
  • 同時代ゲーム

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    世界が「何コ」かあるのか?それとも世界の記述方法が「何コ」かあるのか?そのどちらかであると思わざるを得ないなあ。あるいはその両方。

    挑戦的だなあという気もする。実験なのかもしれない。
    いわゆる「文学」を冠する著者・著書はどれも…その客体は読者だったり、社会だったり、テキストそのものだったり、そして著者自身だったりします。

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    2013年05月07日
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ

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    ネタバレ

    概要
    狂気と自由,作家と障がい者の息子,閉塞的な集落・田舎町などを共通の要素とする3つの短編と2つの中編を収録。1969年発行。

    ・走れ,走りつづけよ
    ・核時代の森の隠遁者
    ・生け贄男は必要か
    ・狩猟で暮らしたわれらの先祖
    ・父よ,あなたはどこへ行くのか?

    感想
    大江健三郎の作品を読むのはほぼ初めて。10年以上も前に初期の作品を読んだ気がするけれど,まったく覚えていない。

    正直なところ,難解でよくわからなかった。しかし,よくわからないながらも,つい読み進めてしまう魅力のある中短編集だった。通常,難解な小説というのは読み進めるのが苦痛なのに,この作品はそんなことはなかった。ただし,「父よ

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    2012年08月19日
  • 燃えあがる緑の木―第三部 大いなる日に―

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    もうこれ、たいへんだー。
    大江健三郎さんは本当に妥協しない人ですね。
    信仰を背負う人を真面目に書くって、もうとんでもなく疲れるはずなのに…

    新・ギーおにいが現代のキリストでありブッダであって、でも宗教=インチキの図式も人々の中にある。
    宗教や奇跡や祈りなんて曖昧なもの、今時力を持たないんですよね。
    原発の方が余程信頼されてしまう。
    そういう部分を物語に都合よく誤魔化したりしないで、新・ギーおにいの葛藤をちゃんと言語化して、投石で殺してしまう。

    あまりに真っ当過ぎてハラハラ感がなかったのは残念ですが、もうこういう話が書ける作家なんてほとんどいないんだろうなぁ。

    12.06.25

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    2012年06月26日
  • 燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―

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    第2部に移ります。

    12.06.05(再読)


    いきなり転換とかギー兄さんの話を持ってくるなんて、これ、今までの大江作品を読んでいないと何のこっちゃ分からないのでは??
    全3巻だから、後に分かるようになってるのかしら。

    とりあえずスロースターターな今までの大江作品に違わず、1巻はまったり気味です。
    とは言えテーマ的に底が深くて暗そうなので、ちゃんと全てを理解したい。
    なのでもう1回読んで、2巻に移るとします。

    12.05.29

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    2012年06月06日
  • 叫び声

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    ネタバレ

    著者の作品は初めてなのですが、少し難しい本であると感じました。
    落伍する若者を描いているためか、そこに何か寓意があるのではないかとか、これは主人公の成長を描いているのかなど、考えながら読んでしまったためです。
    安保闘争の時期の作品で、主人公の仲間はみな外国の人間だったので、そうしてもそんな気になってしまいます。
    もう少し、話を純粋に楽しめばよかったですかね。
    といっても、やや暗い気持ちにならなくもないですが。
    ここにファンタジーっぽさを加えると村上春樹のようになりそうです。

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    2012年05月13日
  • 性的人間

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    教授のおすすめの一冊。
    大江健三郎も初めて読んだ。

    とりあえず性的人間についてだけ。
    おそらく2部構成で1部は乱交の話。
    2部は痴漢の話。

    痴漢の話がすごく印象的。
    危険のない痴漢はにせものの痴漢。
    反社会的な行動。
    感動もないし怒りも起きない。
    ただ、なにか感情を突き動かすものがある気がする。
    不思議な読後感だった。

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    2012年05月05日
  • 性的人間

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    短編集「性的人間」「セブンティーン」「共同生活」
    共同生活は未読。おなかいっぱいで読めませんでした。

    大江健三郎ってなんだか凄いわと思った。
    思春期に読まなくて良かった。凄いが胸が悪くなる。
    この頃のタブーが「性」だからこんなに性描写が多かったり、性倒錯な人物が出てくるのかな。それさえ出しとけば「前衛」気分な人よりは全然「ホンモノ」だと思ったけど、登場人物の心情、葛藤、社会からはみ出た行詰まった人生をそこでしか表現し得ないのかなぁ。うーむ。

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    2012年03月23日
  • 取り替え子

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    某サイトのレビューでは、わかり易くて大江作品を理解する上で役立つということだったが、あまりそうは感じなかった。

    むしろ「万延元年のフットボール」などのような大江健三郎らしい粘度の高さもなく、登場人物の内面への掘り下げがいまいちだと思った。

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    2012年03月04日
  • 空の怪物アグイー

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    大江健三郎はどうやら合わないのか、なんら感動というものは得られなかった。印象に残ったのは本のタイトルにもなっている「空の怪物アグイー」。
    最後の方で、子どもに石を投げられて目に当たるという場面がある。その子どもたちは何を思ったのか、そしてアグイーを思った主人公はどうも落ち着いていて、腑に落ちなかった記憶があった。

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    2014年11月18日
  • 新しい人よ眼ざめよ

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    大江健三郎のブレイクへの傾倒ぶりと、イーヨーが大部分を占める生活がまざまざと。
    イーヨーの弟妹たちは大江健三郎に対してどういう気持ちを抱いているんでしょう。それが気になって仕方ありません。

    それにしてもどうしてこの人は色んなところに責任負わされ続けなきゃならんのでしょう。だんだん辛くなって来た…

    12.02.28

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    2012年02月29日
  • 叫び声

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    「性的人間」に連なっていく、青春の渇きや絶望的な生を描いた、印象的な作品。三人の若者がそれぞれの希望と絶望から生まれる妄想のような日常をそれぞれのやり方で必死に生きる姿は、今も僕らの心の中に眠る憧れのある形なのかもしれない。

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    2012年02月14日
  • われらの時代

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    「戦争が終わったあと、その当時の人々は無条件に喜んで、戦争なんかもう2度とごめんだと思った」と私は思っていた。
    しかしこの本を読んでその考えは間違っていたと思った。
    戦中の教育を受けた人間の中には本作の主人公のように「英雄的に死にたい」と思い、平和になった世の中を「人を殺す機会もない老後までの執行猶予」としてみていた人もいたのかもしれないと気づかされ、愕然とした。「平和=無条件によいもの」という考え方を自分は教育を通して感じていたが、それは一面的なものの見方だったのかもと思った。

    果たしてこの作中には希望が感じられないが、この閉塞感は現代ではなお増幅されている気がする。
    物語として、この内容

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    2012年02月08日
  • 「雨の木」を聴く女たち

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    ネタバレ

    大江健三郎の本は初めて読んだ。

    会話の途切れ目が分からない会話文が特徴だと感じた。
    官能表現を、あえて官能に訴えない直接的な表現にすることで、視覚的な刺激を受けたように感じさせるような手法(であるかどうかは別として)には驚いた。

    レイン・ツリーという共通したメタファーを探る幾つかの物語だが、それぞれの物語に固有のメタファーも存在し、短編としても、長編としても楽しめる作品だと感じた。

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    2012年02月08日
  • われらの時代

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    この時代は、「おれたち」と言える共同意識があったのだろう。
    こんな観念的な自殺を考えて生きられるほどの精神的余裕もあった。
    50年後の今、自殺者数は年間3万人を超えるようになって久しい。
    それも、誰にも助けを求められない中高年が生活苦で死ぬのが大半だろう。
    思想や観念など何もなく、「おれたち」なんて意識は欠片もない孤独に晒されて虚ろに死ぬ。
    そんな死に方(あるいは生き方)は、今後ますます当たり前になっていく。
    そんな時代を生きる僕らの心を、文学にこそ救ってほしい。

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    2012年02月03日