大江健三郎のレビュー一覧

  • 定義集

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    大江健三郎の初期作品は、いかにも小説らしい小説で、日本的な平穏さ(退屈さ)や湿潤さを抜きにした、それでいて三島由紀夫のような嘘くささはない、期待の作品群だった。それが、障害をもって生まれた息子の誕生によって、残酷な運命の一撃を食らったように彼の小説世界は一転し、私小説ででもあるかのような、個人的なリアルに密着した地点から物語が紡がれるスタイルに変わってしまった。
    『個人的な経験』以降の作品は、私はあまり好きではなかったが、「翻訳調」と初期から言われていたぎくしゃくしたまがりくねった文体は健在で、一方、反核、沖縄擁護の運動家としての活躍についていくぶん知っていた。
    本書は最近、つまり老年期の大江

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    2017年05月09日
  • 晩年様式集

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    難しい。複雑な事情を複雑なまま表現していようとしているんじゃないかと感じた。はちゃめちゃな文体だ。そしてそれは、確かに読者をいい具合にも刺激させる。

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    2017年04月01日
  • 晩年様式集

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    試みが成功しているかはともかく、相当意欲的な作品だ。群像での連載時に最初の数回のテンションに、これは!と思ったけど、ギー・ジュニア登場以降について行けなくなり一旦断念。文庫化で読み直したけど、そこの印象は変わらずも何とか読破。しかし、途中でそのようなブレに対して作中の登場人物(真木)が同様の批評をしていたのにはちょっと笑った。

    自らのテキストをメタ的に批評する手法、社会状況を個人の体験と重ねて消化しようとする手法。前作では長年の宿題としていた父の死に対し、今回はまた伊丹十三、また後期作品の核であるギー兄さんの死に向き合う。自らの老年の危機、それと直結するアカリ、家族の危機、また、長年のテーマ

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    2017年01月16日
  • 芽むしり仔撃ち

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    疫病が発生し始めた僻村に棄てられた感化院(今の児童自立支援施設)の少年と仲間の話。垢、傷、泥にまみれた臭いが伝わってきた。どうしようもなく大きなものに踏み躙られながらも、断固として抗う少年は(使い古された例えだけれど)硝子の破片を思わせた。割られてバラバラにされてしまったが、その先は鋭い。

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    2016年09月21日
  • 持続する志 現代日本のエッセイ

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    ネタバレ

    初読。分厚い本で時間がかかりました。書かれた時期は1960年代、時代の色が出ている内容で、知っているようで実は知らない時代の空気に大江さんを通して触れることができました。でもその空気は確実に現在にまでつながっていることを感じ、大江さんの変わらない姿勢に思いをはせました。

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    2016年06月09日
  • 大江健三郎自選短篇

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    初期短篇に含まれている、「奇妙な仕事」「死者の奢り」「飼育」などは再読でも十分楽しめました。ところが中期短篇でさっぱりわからず1年ほどほっておいて、続きを読み始めました。とにかく読み終えようとして読み終えましたが、なにも得るものは無し。評価は初期★★★★、中期後期★★、自分で理解できない為

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    2016年02月10日
  • われらの時代

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    初めての大江健三郎。自分にとって大江健三郎は、人の良さそうなおじいちゃんというイメージだったのでびっくり。


    時代の違いなのか、描かれている若者達が持つ焦燥感、閉塞感、性へのこだわりや嫌悪感、その場限りの衝動、くだらないこだわり等自分には理解できない。

    突飛に感じる箇所も幾つかあり、正直言えば、大江健三郎の作品でなければ、途中で止めていたかもしれない。物語終了間際のストーリー展開には否応なしに引き込まれる。

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    2015年11月24日
  • 万延元年のフットボール

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    大江さんの作品は難解と言われたり、考察しながら読むべきとの見方があるかもしれないが、私にとってこの小説は感情にまかせて読んでしまうものだった。集団行動の不条理さや、行動的であることへの嫉妬心のようなもので、感情がかき乱され続けた。エネルギーに満ちた小説。

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    2015年09月26日
  • われらの時代

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    3.5
    らすとの畳み掛けは読みながら死ぬかと思った

    p90
    弟は幸福な人間を見るようにかれを見つめて笑っていた。靖男は弟を殺したかった。肉親にたいしてもちうる感情は殺意か愛かの二つしかない。

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    2015年09月03日
  • 「雨の木」を聴く女たち

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    正直この小説はよくわからない。理解し得たという実感がない。しかし何かが面白いのだ、だからずんずん読んでいる。

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    2015年07月14日
  • 人生の親戚

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    それぞれ知恵と身体に障害を持った兄弟を自殺で亡くした母の生きざまが勇気を与えてくれる。2015.6.6

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    2015年06月06日
  • 沖縄ノート

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    今となっては、ちょっと偏っているかなと思うが、太平洋戦争~日本国復帰に当時を過ごしたのであれば、そうであるのかなと思う。

    現在の日本政府の対応を見ると、沖縄独立運動は起こってもしょうがないかなと思ってしまう。

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    2015年03月01日
  • われらの時代

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    状況からの脱出をはかる兄弟。兄はフランス留学による現状打破を目指すが外人相手の娼婦を職業とする愛人との関係から逃れられない。閉塞した状況の中、暴発寸前の弟とその仲間は一発の手榴弾に希望を見いだそうとするが惨めな失敗の中、最悪の状況に墜ちていく。
    自ら状況を悪化させていくような彼らの生き方は当時の若者からは共感を得られたけど、今の時代には流行らないかもしれませんね。

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    2015年01月23日
  • 取り替え子

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    とても難しい純文学小説。著者の大江健三郎自身と、自殺した映画監督で大江の義兄、伊丹十三をモデルにしているということで興味深く読んだ。
    作家の古義人は、映画監督の義兄、吾良の自殺の理由を探ろうとする。吾良が古義人に残した録音メッセージとの対話や、映画の絵コンテから、共通のトラウマである少年時代の記憶がよみがえる。ただし、その核心は本書からだけではよくわからない。
    また古義人の妻であり吾良の妹である千樫も重要な位置づけを担っている。本書のテーマの一つである、「取り替え子」は生み替えともいえるだろうか。趣旨は少し違うが、トニ・モリソンのSulaという本を思い出した。
    大江は義兄の自殺を悶々と悔やんだ

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    2015年01月13日
  • 万延元年のフットボール

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    下手な翻訳文のような、注意深く選びとられて長々と装飾された言葉の羅列に息が詰まる。
    会話になると急に世界が矮小になったと感じる。五感でさえ人間を中心に存在しているわけではない、この退廃的で重苦しい空気が表現されています。

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    2014年10月04日
  • 美しいアナベル・リイ

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    【本の内容】
    かつてチャイルド・ポルノ疑惑を招いて消えた映画企画があった。

    それから30年、小説家の私は、その仲間と美しき国際派女優に再会。

    そして、ポオの詩篇に息づく永遠の少女アナベル・リイへの憧れを、再度の映画制作に託そうと決意するのだが。

    破天荒な目論見へ突き進む「おかしな老人」たちを描く、不敵なる大江版「ロリータ」。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    長く小説を書いてきた作家である「私」、少女の頃「アナベル・リイ」という8ミリ映画に撮られ、今は国際派女優のサクラさん、新しい映画のプロデュースをする大学時代の同級生……幾重にも時間が重なり、四国の森で起きた一揆の記憶が読み返される

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    2014年09月11日
  • 性的人間

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    【性的人間 改】

    字面だけ見るととんでもない官能小説のようだが、中身は人間の欲求の奥深さや潔さ、外に出せば醜い塊だが己のなかでは宝石のようなものを描いている。

    読みやすくはないがのめり込む。再読必須の一冊。僕の自意識は今日も正常か?平常か?

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    2014年08月13日
  • 取り替え子

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    大江健三郎の義兄、伊丹十三が飛び降り自殺。生前、彼から託されていた田亀というカセットを通じて、大江は伊丹と会話を続ける。我慢して読んでみたが最後まで頭に入ってこなかった。残念。

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    2014年08月11日
  • 万延元年のフットボール

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    隠喩に富んで、いたのだろうか。

    大江に先にはまったのは、私の方だった。ただ、万延元年のフットボールだけは友人が先で、とにかく感銘を受けたからと、こちらの積ん読を一つずつ崩す楽しみを無視して割り込まんとしてきたのである。しかし、このような義務感から、技巧的にもテーマ的にも考え抜かれたであろうこの著書をあらぬことか斜め読みしてしまったのである。

    含蓄やギミックの多い物語を斜め読みすることは、一夜の夢を見るようだ。思考は途切れ、飛び、気まぐれに繋がり、そしてまた散る。同じくノーベル文学賞を受賞した莫言との比較や、スーパーマーケット襲撃を百姓の一揆と重ねたようなストーリーを、次には関東大震災時の朝

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    2014年07月29日
  • 同時代ゲーム

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    壮大な御伽噺、生々しい神話、それらに捉えられた剥き出しの魂。本当に壊す人と創建者たちが切り拓いた〈村=国家=小宇宙〉が存在したかのように「僕」の魂の物語が迫ってくる。
    人々が生き、生き続け、生き残り、繋いでいくそれぞれの土地には、それぞれに紡がれて行く物語があるはず。
    読んでいる時には〈村=国家=小宇宙〉が特別な世界に思えたのに、読み終えると、僕の生きた土地にもこんな神話があるんじゃないかと自然に思えてくるから不思議だ。

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    2014年02月19日