大江健三郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
こんなにも自由なイメージを喚起させるように描けるものなんだなぁと感心しました。
おとぎ話風の語りですが、森の中は村人達だけでの裁判(昔から限界状況での自治ってモチーフはよく出ますね)や、なんだか超絶に大きな人がいたり、少年としての著者が出て来たり。
少し異色ですが、個人的には好きです。
あの、「どこか木のうろからブーーンという音がして」とか
そういうイメージの植え付けは素晴らしいと思います。
絶対にない、しかも新しい物や気分を教えてくれる点では翁は素晴らしいと思います。
海外不条理映画とはちょっと違う。
D.クローネンバーグ的といえばそうなるかも知れません。 -
Posted by ブクログ
大江健三郎。
私小説というおうか、自分の人生が語られている。
どこまでが事実で、どこまでが小説としてのことなのか、気になるところではある。
登場人物はおそらくほとんど実在の人物。
古くからの友人であり、義兄である吾朗(伊丹十三)の投身自殺からはじまる。
本の中にたくさんのメタファーがあり、何となく読んでいた私は気付いたり気付かなかったり。
四国の森の少年時代の怖い体験や、
吾朗との「田亀」を通じた通信、ベルリンでの100日間を通して吾朗の自殺を追いかけていく。
最終章では千樫(大江ゆかり、大江健三郎の妻、伊丹十三の妹)が引き継ぎ、
センダックの絵本から妹としての立場で小説を閉じる。
あまりにもたくさんの要素が盛り込まれているため、
読んでいて難しいと感じるし、読み終わっても著者の意図が読めたのかどうかはわからない。
とにかく、読みやすいけれども重く、ずっしりとくる話。
背景についていろいろと説明があるわけではないので、自分である程度知ろうとしなくてはいけない。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ自分にとっては内容が難しく、さらっと読み流した部分が殆どとなってしまった。
その上で書くとしたら。
この本が書かれたのは沖縄返還前であることを理解している。その上で、作者は今後の沖縄をどんな安全保障、制度のもとに置きたかったのかというところが理解できず、読み始めてしばらくは話の落とし所がわからなかった。
また、この内容はかなり左派性を帯びているように感じたが、当時の感覚としてはどうだったのかなども気になった。
徐々に政治的な議論と言うよりも、「沖縄を通して日本人のあり方を問う」内容であると理解し始め、読みづらさもなくなった。ただし、作者の感覚そのものを受容することもなかなか難しいように思ってしまうのは現代的な感覚のためか。