大江健三郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ自分にとっては内容が難しく、さらっと読み流した部分が殆どとなってしまった。
その上で書くとしたら。
この本が書かれたのは沖縄返還前であることを理解している。その上で、作者は今後の沖縄をどんな安全保障、制度のもとに置きたかったのかというところが理解できず、読み始めてしばらくは話の落とし所がわからなかった。
また、この内容はかなり左派性を帯びているように感じたが、当時の感覚としてはどうだったのかなども気になった。
徐々に政治的な議論と言うよりも、「沖縄を通して日本人のあり方を問う」内容であると理解し始め、読みづらさもなくなった。ただし、作者の感覚そのものを受容することもなかなか難しいように思ってしまうのは現代的な感覚のためか。 -
Posted by ブクログ
ひとつひとつの短編がとても衝撃的で、強く印象に残る。白人や黒人の肌の質感や、死体の生々しい描写がリアルで、実際に見ているかのような感覚になった。
戦争という特殊な時代背景の中で、日本人が外国人に対して抱いていた反抗的な態度が描かれており、当時の人々の感情を感じることができた。
今の時代は、外国人と交流したり、仲良く過ごしたりすることが当たり前のように感じられる。
しかし、【飼育】に出てくる黒人のように、良好な関係に見えていても、戦争みたいな何か大きなきっかけがあれば、昨日まで仲良くしていた相手が敵になってしまうこともあるのではないかと考え、少し怖さも感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「死者の屠り」
「物」になる過程と、「人」が産まれる前の描写が印象深い。死と生のあわいに位置することとなった語り手が、生者の幾つもを死側から向ける冷ややかな目線が妙に生々しくて、良かった。
「飼育」
捕虜となった黒人と、語り手含む少年少女との関係は、飼われる者と飼う者であった。それは事実としてあって、子供は彼をいかにも「人間的」な生き物として扱い、子供と同じ遊びに混ぜて快楽を得た。硬い表皮の外からやってきた自身らとは異なる生物は、子供の関心を総なめするには充分で、加えて飼育する立場にあるのだから、尚更だろう。人々は、捕虜という立場を忘れ、愛玩対象として黒人を扱うことに慣れてしまった。本来の彼は敵であって、今の飼育関係においてもそれは不変であるはずにも関わらず、語り手含む村民はそれが分からない。戦禍の真っ只中、人的な感情を表に置いてみせた黒人に、愛着が湧いたのか。戦争によってこの村にやってきた黒人は、戦争によって語り手との立場が逆転する。黒人が上に這い上がるというよりは、語り手が堕ちてくるというのが正しいかも知れないが、その事を語り手が分かっていなかったというのが大切だと思う。語り手は戦争によって、大人になり得る。自らを踏み躙った存在は、戦争によって生まれた大人であって、黒人であったからこそだろう。それでも、弟に対する愛や、友人に対する情は捨てて欲しく無いと思えるからこそ、好きな一篇だった。
自らの世界の外からやって来たものは、どんな形であれ自らに多大な影響を及ぼし、それは望んでいたものかはたまた逆か、何れにせよその過程を描いた本書は面白い。戸惑いや昂りが、とんでもない筆力で描かれるのだから、閉塞的な世界が好きな自分は熱中せざるを得ない。上記以外の作品なら、「人間の足」が印象深い。語り手に自らを預けることとなった故、私に似た視点が楽しめた。
本書のように、文学界の中でも屈指の名作を読んだ時、私でも楽しめるのだなとどこか安心する。読解力や、文学性の有無の判断力は全くといって無いような私でも、素晴らしい作品だと分かるからこそ、時代を超えて多くの人々に愛されるのだなと思う。 -
Posted by ブクログ
2ヶ月くらい前からおすすめと言われて貸してもらってずっと放置していた
繰り返し読みたくはならない
気に入ったのは「他人の足」。それ以外はふつうかなー
身体中の孔が粘ついた腐敗臭で満たされていくような閉塞感が不快だった、じめじめしすぎていた。
でもその湿っぽさこそが、死者や胎児のような物体、飼育されて観察対象となった黒人兵士と一般的な人間とを隔てている気持ち悪さなのだろうけど(湿気は人間側の特徴として
何かに身を費やさないと存続できないのかというほど無意識に観念に追い立てられ、根拠で生を掌握しようとする様子も嫌気がさす
そしてその差を感じることで優位(人間側としての優位性ではなく、存在としての違いを理解しているかのような立場にたって中途半端にどちらをも見下すような)に立っているような幻想を抱くのはもっと嫌だ
生理的不快感のある描写を全部拒絶したいわけじゃないんだけどもっと淡々としていた方が読みやすいな
「人間の羊」にあったような、正義や自分の納得のいくストーリーに他を当てはめ、燃え上がる感情で先を照らして突き進もうとする盲目的な態度(「他人の足」の学生も)は、同じ側に組み込まれていたら違和感なく受け入れられるのかもしれないが、羞恥心すらも彼らの都合のいいストーリーに利用される動物側だと、話の通じない異生物にしか感じられない
教師のような直接的接触はなかったとしても、この構図は普段の生活でよく見られるものだと思う
「戦いの今日」は親愛で結ばれているように見える人間関係も結局は、日本人-外国人、庇護者-保護対象など先に存在する関係性があって無条件にそれに騙される形で自分の感情や正義が形成される
気づかずに役を全うし、結局は、心のうちではこういうふうにあるべき、あるはずのものと相手の姿をコントロールしているという意味で、互いに互いを見下げ合い、あらゆる人間関係は人間-動物のような関係と大差ないように感じられてくる
最初人間を人間たらしめるものとして湿気があるのかなと思っていたけど、関係性において動物も物体も人間も差がなく全てがじめっとした一塊となってお互い通じ合えないグロテスクさが最後に残った
読んでいる最中弱いもの側というか主人公がいる側に同調していたが、どっちもどっちだし、そのグロテスクな一塊に、話が通じない種々の異生物が混じり合っているのがやっぱり気持ち悪すぎるなー
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Posted by ブクログ
大江健三郎が三島由紀夫による自決を受けて執筆した小説と知り、興味を持って手に取った。三島は簡単にいえば右翼的な思想、大江はおなじく左翼的な思想で知られているが、それがどのように結節して小説に反映されているのか、注目しながらまずは表題作を読んでみた。しかし、たしかに天皇に対する言及は存在するが、なかなか理解が難しい小説で、まず、主人公が通常の状態ではない。みずからをガンに罹患して瀕死の状態にあると思い込んでいるという特殊な設定で、そうなると当然そのなかの物語もストレートに受け止めることはできなくなる。あるいはこの描きかたじたいが、天皇を語りづらいものであると暗に示しているのかもしれないが、どうにもうまく吞み込みがたい。ただ、大江にとっても天皇というものの存在が大きなものであったことはよくわかった。三島が自決に向けたようなエネルギーを大江は持たなかったが、けっして軽んじていたわけでもないだろうというのが読んで思った感想で、そうなると冒頭で触れたようにほんとうに左翼的だったのかどうかということをまず問い直さなければいけない。大江は大江でこれもまたひとつの右翼的愛国的な態度なのだという解釈はありうるだろう。そういうあらたな大江像が「発見」できたという点で、本作を手に取ってみて正解だったといえる。