大江健三郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ブレイクの詩が私には難解でどう解釈したら良いのかさっぱりわからなかった。ブレイクの詩を理解できたら、この本への理解もまた変わりそうだけれど、
不思議な光さんの言動に、人間の本質が表れているような気がして、光さんの言動を、よく理解しようと思いながら読みました。寄宿舎から帰ってきた時、イーヨーと呼ばれることに抵抗した。イーヨーと呼ばれること、光と呼ばれることの違いをどう感じたのかな?
それから、誘拐された時に辛かった想いは、なぜ吐き出さずに内に留めようとするのかな?
光さんは頭が良くて、内にたくさんの情報を溜め込んでいるのに、「父は死んだ」と思い込み、「善い足」の定義が思い浮かんだことで、よみがえったように父が生きていることを認識した・・・ということ?うーん難しい。
光さんの弟、妹の思いやりの深さに何度も感動した。 -
Posted by ブクログ
大江健三郎が亡くなったニュースをみて、この作家の本を全く読んでいないことに気づいた。あれから数年が経ち、読む機会を得ることが出来た。
それぞれの作品ごとの感想を書くと長すぎるので、全体の感想のみまとめる。
初期短編は有名な死者の驕りをはじめ、大江作品としては読みやすい。ただ暗鬱な世界観ではある。そして覇気がない主人公(セブンティーンは覇気だらけだが、あれは異質だろう)でありながら、作品そのものには強い推進力があるのが特色だろう。どの作品も面白い。傑作といってよいのではないか。
問題は中期以降だ。ここから主人公が大江自身をモデルにした小説家となることが多く、思考がいろんなところに飛んでいく。読者はそれに付き合う羽目になるのだが、それが読書のテンポを大きく崩す。大江作品は文章が独特で読みづらいというが、この構成のことではないか。
そして中期以降(初期でもアグイーのような作品はあるが)では、障害を持った長男が軸になっているのが特徴である。また娘の視点から書いた作品もある。大江自身をモデルにすると、小難しい思考になるが、娘の視点は分かりやすく、また家族の愛情を感じる。
後期作品は、長男を軸にした話は少なく、最後の火をめぐらす鳥だけだった。これはあえて、そのような構成にしたのかもしれない。鶯を火の鳥と象徴させ、一遍の詩で終わらせる構成。そういえば最後の長編も詞で終わらせていた。大江の感性だろう。そして、これにより一人の小説家としてのクロージングをさせようとしたのではないか。これは非常に興味深い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ学生時代、友人が、卒論代わりに大江健三郎の書誌を作った。
身近に大江健三郎を読む友人などいなかったので「好きなの?」と聞いたら、「難しいけど、好きなんだよね。特に『芽むしり 仔撃ち』が」との返事に、「めむしりこうち」という音が意味するところが分からず、当惑した。
後に漢字表記を見て、間引きの話か、と思った。
感化院(昔の少年院)の少年たちが、集団疎開のために山奥の村に連れてこられる。
彼らはもちろん良い子ではないが、イメージするほど悪い子たちだとも思えない。
戦時中という時代を考えれば、子どもたちの心がすさんでいるのもしょうがないと思う。
谷を渡るトロッコに乗らなければ村に入ることはできない。
村の手前で、脱走兵を探す予科練の生徒たちと出会う。
閉塞感が増してくる。
農家の手伝いをしたら、生活の面倒を見てもらえる。
そう思ってやって来た子供たちの期待は、引率の先生がいなくなった途端に打ち砕かれる。
村の人たちは猟銃や竹槍や鍬などを持ち子どもたちを閉じ込め、常に白い眼を向けながらこき使い、必要最低限の食事を与えるのみ。
そんな中、村に疫病が発生する。
村人たちは、子どもたちを閉じ込めた家に錠をおろし、食事も何も与えないまま放置し、隣村へと避難する。
残された子どもたちはなんとか脱出し、村を出ようとするが、トロッコの前には壁が作られ見張りを置かれ、病とともに村に取り残される。
最初は疎開が「間引き」だと思った。
親はもちろん、空襲がなく食事もさほど不自由していないだろう田舎に送ることが、子どものためだと信じている(人が多いと信じたい)。
しかし、国や町の偉い人たちは、少ない食料を働き手にならない子どもに分けることを避けたとも考えられる。
感化院の子どもたちなどは、都会でも田舎でも、ただの無駄飯食いなのだ。
いなくなってくれればよい、と思っていなかったとは言えない。
疫病の発生を知って残される子どもたち。
その中で、なんとか生き延びた子どもたちを迎える運命の非情さ。
だって、子どもたちは、村に残っている食料をかき集めて食べないと、生きていかれないんだもの。
それを、後に帰ってきた村人たちが強奪だ、略奪だというのはおかしい。
大人としての義務も優しさも持たず、ただつらく当たる。
村も食うに困っていたならまだしも、ある程度食料はあったわけだし、村長の家など言わずもがななのに。
「おまえのような奴は、子供の時分に絞めころしたほうがいいんだ。できぞこないは小さいときにひねりつぶす。俺たちは百姓だ、悪い芽は始めにむしりとってしまう」
生き残るための間引きではなく、自分たちと違うものを排除する間引き。
視野狭窄で排他的な村人たちのおぞましさ。
生き延びるために村人たちにしたがう子どもたちと、ただ一人したがわず追放された語り手の少年。
しかし彼が生き延びられる可能性は低いように思った。 -
Posted by ブクログ
大江健三郎の長編小説。叙事詩的な展開で、歴史と時間を切り抜いて、村=国家=小宇宙として大江の創造空間を存在させる試みである。とても大きなスケールで読み進めていくのにずいぶん時間がかかったが、不思議に読み通していきたいとエネルギーをもらえる小説だった。不順国神(まつろわぬくにかみ)不逞日人(ふていにちじん)とのろしを上げて大日本帝国と屹立する戦いを始める展開はスリリングであったし、何をものみこんでいく巫女の妹の存在も魅力的であった。登場する一人一人の姿が浮かび上がるように緻密に作られた世界が最後まで展開されていく。大江ワールド感服しました。四国の奥深く分け入った山間地を想像しながら、大江が生まれ育った土地で育まれたリアルな感覚を持って書き上げていると感じた。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ大江健三郎は以前読んだ短編集が途中でしんどくなってしまったのでこれもあまり気は進まなかった。読んでみると読みにくいところはあるものの面白くて一気に読んでしまった。
ページ数も少ないのに内容が濃くて何ヶ月にもわたる話かと思っていたら5日程度の話と明かされた驚いてしまった。
結末は当初いまひとつに感じたが習俗の壁に屈服せず突破したという解説を読んですごく腑に落ちた。
この解説がすごく秀逸でここまで読んで1つの物語とすら思う。読んでる間ずっとちらついていたそもそも感化院が3週間の行軍で疎開するって言うのが現実味があるのか断じてくれたのも良かった。
実際刑務所とかって空襲どうしていたんだろう?破獄は戦時中も含まれていたはずだけど覚えていない。敷地内に防空壕掘って避難した程度だったのかな? -
Posted by ブクログ
短編集といえど、800ページ以上あり、全て読み終わるのに4ヶ月半ほどかかった。
本書は初期、中期、後期で分かれて読むことができたが、初期は面白く読める作品が多かったが、中期から後期にかけては私小説風に描かれる小説が増え、個人的にはそのあたりから面白さが減退した。
初期短編は全部面白かった。といっても暗めの話が多かった。特に「死者の奢り」は大学でそれにまつわる論文をまとめ、発表する機会があり、思い出深い。
中期短編は私小説が強めで、あまり面白くなかったが、「静かな生活」と「河馬に噛まれる」はよかった。
後期短編も印象深いものはあまりなかったが、「マルゴ公妃のかくしつきスカート」はかなりよかった。
全体として、大江健三郎はエロ(性)とグロ(死)がテーマとしてあり、いずれか片方に寄ったテーマが作品に出るというより、その二つのどちらもが溶け込んだ作品が多く、いろいろ読んで大江健三郎のそうした作風が分かった気がする。
本書は大学での(授業での)読書会で使用し、そこで初めて積極的に院生の方々と関わって、仲間内に入れてもらい、いろいろと勉強になって思い出深い一冊になった。
自分一人で読んだだけでは学べなかったこと、考えなかったこと、そして本を読むということを、院生の方々との読書会を通じて教わった。カッコいい先輩方が実践しているような読書を目指してこれからも本を読もうと思う。 -
Posted by ブクログ
自由思想について書かれていると感じた。
いかに自由意思にもとづいて生きることが難しいか。。。
無人になった村で初めて自由に生きる子どもたち。
でもせっかく自由を手に入れたのに、大人の指示が恋しくなるのがアイロニカルである。
人の残酷さ、冷酷さ、自己中心性は環境によってどこまで強化されるのか。
本作はノンフィクションであるが、現実感がある。解説者は設定が非現実的であると執拗に固執するが、戦時下で起こり得る、起こっていたかもしれない事態ではある。間違いなく、大人の保護下になかった子ども達が大人達から非人道的な扱いを受けることは日常であっただろうと思う。
芽むしり、仔撃ち。
日本でもほんの少し前まで違和感ない感覚であったことに現実感がない。 -
Posted by ブクログ
前半の「異化」や「想像力」のくだりがめちゃくちゃ共感できますし、このように解説されることで、自分の小説を読む態度が改められ、再読も初読もより楽しめるようになると感じました。
自己の想像力を使って小説を能動的に受けとめる、このような態度はショーペンハウアーの『読書について』でも語られていたなと思いました。
また、ここで引用されている夏目漱石や井伏鱒二、チェーホフなどの作家が悉く私の好きな人たちだったのも即買いポイントです。(^^)
ただ今のところ、ラストの『ヒロシマノート』にまつわる話をなぜ挿入したのかイマイチわからなかったです(序文でそれについて述べていますが)。再読のときにわかればいいなと思います。