大江健三郎のレビュー一覧

  • 燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―

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    大江健三郎の作品の中に出てくる登場人物たちが真剣に読書している姿を読むのが好き。その読み方はきっと作者自身の読み方と本との向き合い方なのだろう。この作品の中では、イェーツという詩人が読まれていたが、他の作品ではブレイクだったり様々で、なんというかそういう描写に勇気づけられる。
    イェーツを一日中読むことを魂のことをする、という表現を登場人物はしていたが、自分にとって魂のことをするというのならそれは大江健三郎になるのではないだろうかと考えたりもした。

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    2025年02月23日
  • 芽むしり仔撃ち

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    まったくもって好みである。これは性癖の告白だといっても間違ってはいない。そこに羞恥心はなく、むしろ堂々と胸を張った自分がいる。

    どういったジャンルなのかと聞かれても答えようがない。どうしてこんなにも変態的な性的描写をするのだろう。書かなくてもいいのにと思うのだけど、読後なぜか耳鳴りのような余韻が残り、その響きに共鳴してしまっている自分がいて、喜びを感じ感動し、さらには感謝さえしている。

    芸術としての文学に改めて感動させてもらった。

    一度読んだが自分にはあわず、十数年間読まずにいた本。ちょっとした敬遠もあった。なのにずっと手元に置いてあった。すべてはタイミングなんだと改めて思った。

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    2025年02月16日
  • 個人的な体験

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    数年前、引越しの際に持っていく本を選別した。千冊ほどの中から百冊ほどに絞った。その選考基準は、再読するかどうか、あるいは再読したいと思うかを基準とした“再読指数”によるものだった。その基準を突破した本の中に、大江健三郎の作品があった。中古で買ったものばかりだった。
    「飼育」を読んだことがあったが、よく分からず、冷たくて薄暗い空間で過ごした時間のような感覚だけが残った。ただなんとなく、いつか読むような気がして、数冊の積読本を持ってきた。そして最初に読んだのが「性的人間」だった。
    表題作のほかに「セブンティーン」「共同生活」が収められている。読み始めはなかなか文章を捉えられず、集中が途切れたが、数

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    2025年02月06日
  • 性的人間

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    ありのままの姿、自己を表現したときに、それが受け入れられるものでありたいと願い、孤独を拒否し容認せず、繋がりを求めて、安心をえたい。
    けどそれは不安をともない、だから自己欺瞞する。そこには葛藤とフラストレーションが生まれる。その度数が高ければ、それを満たすための仮の表現方法も過激になり、また閉じ込めれば神経症になったりもするのでしょう。だからといって、それは社会では容認されることではなく、阻害されることにもなり、孤立をうむことにもなる。

    やはり思うのが、そこにはもって生まれた特質、性質を理解したうえで社会に自己を投企する為の技術が必要であるということである。未知であるが故に不安が付き纏うのは

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    2025年01月27日
  • 死者の奢り・飼育

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    深い孤独感や戦争の影響、死の意味が何であるかを読者に強く投げかけてくる作品。
    言葉遣いは美しいものの、内容が重たく読みにくく、詠み終わったあとも憂鬱な気持ちになる。
    簡単には、人にオススメできない作品となっている。


    【主人公の孤独と隔たり】
    本作の主人公たちは他者との間に大きな隔たりを抱えており、その孤独感が物語の根底に流れています。主人公の内面的な葛藤や感情の複雑さが際立っています。

    【主人公の内的葛藤】
    主人公は、死体を「物」として扱う一方で、死を意識の面で捉えようとします。仕事を終えた後の快楽的な感覚と、他者からの軽蔑を感じることで生じる苦悩が対照的に描かれています。こ

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    2025年01月23日
  • 個人的な体験

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    ネタバレ

    脳瘤がある息子と向き合えず、アルコールとセックスに溺れて現実逃避する男という、まあ近現代文学あるあるな内容にそっか〜なんて思いながら読んでたんだけど終盤に全部持ってかれて今割りと呆然としている。
    こういうストーリーで近現代といったらめっちゃ辛いラストになっちゃうんだろうなとか疑った私が大馬鹿だった。
    ウルトラハッピーエンディングを掴み取って譲らない大江健三郎が凄すぎてちょっと泣いてしまった。
    これ、本当に1960年代に書かれた小説なのか??????????
    正直読んでてうげえってなるところもあるのは確かだが(現実逃避をする男のために尻の穴まで捧げちゃう女友達が本当にわからない。どういうこと??

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    2025年01月05日
  • 個人的な体験

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    この作者の作品を初めて読んだが、村上春樹の作品に近い印象を受けた。物語の流れや内容というより、文章の上手さや美しさが素晴らしいと思った。生まれた主人公の息子の頭に異常があったという話。ダラダラと最後まで話が進んでいくかと思ったが、最終盤に展開があって良かった。

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    2025年01月02日
  • 死者の奢り・飼育

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    飼育に関して……
    心理描写が凄いのかなー、細かいっていうのか。
    セクスって言葉がちょいちょい出てくるなー。
    表紙がなんか怖い。

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    2025年01月08日
  • 死者の奢り・飼育

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    ノーベル賞作家として名高い大江氏による芥川賞受賞作も含む初期短編集。どれも政治的・社会的テーマで、とても二十代が書いたとは思えない内容であった。好き嫌いの分かれる作家のようだが、共感する部分は多く、個人的には面白く読めたので、他の作品も読んでみたいと思う。

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    2024年11月14日
  • 死者の奢り・飼育

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    生々しくて厳しい世界観。その中で生きていく人間の、生物としての生命の躍動をどくどくと感じられる。
    場面は端から一つ一つ丁寧に、そして正確に表現されていく。それによりじわじわと空気感が体に染み渡っていく読書感がクセになる。
    文体に関しては熟語が多く、厳格でかちっとしていて、これも世界観にマッチしていて好み。
    大江健三郎いいな。この作品で初めて読んだが、かなり好きだなと思える作家で、出会えて嬉しい。

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    2024年10月25日
  • 個人的な体験

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    鳥(ばーど)の成長(といっていいのだろうか)の記録みたいな小説。登場人物である鳥は大江自身だと思われるが、あとがきによると小説内で共通しているのは障害をもった赤ん坊を持ったという点のみだそうだ。正直なところ初期作品のような緊張感のあるじめっとした感じの筆致が重苦しい。
    なにより不憫なのは火見子じゃないかと思う。p.291では火見子の後ろ姿を見て最良の教育を受けたがそれを生かせず子供を持ちそうにない彼女に憐憫を感じたとあるが、そう思ってもこの時点で鳥は彼女を利用し自分のために行動していた。最終的には鳥は父親として子供の人生を請け負うと決めたが、その時の彼女の心境は…。彼女の救いはどこにあるだろう

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    2025年01月14日
  • 万延元年のフットボール

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    ネタバレ

    久々に徹夜で一気読みしてしまった…

    【追記】
    書き出しから執拗に繰り返される異様な友人の死に様やアル中気味の赤い目などの露悪的な描写が不快感を掻き立てる。もちろん作者はこれに意図的で、主人公が不快な現実を前に退嬰的な姿勢を取っていることを際立たせている。これがラストで「しらふ」で「本当のこと」と向き合う姿勢に変わることで主人公と妻は新しい生活に抜け出せたのだろうが、向き合いきれなかったからこそ、鷹四はあの結末を迎えざるをえなかったのかもしれない。

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    2024年10月25日
  • 万延元年のフットボール

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    大江健三郎作品はいくつか読んだことがある。だが何故か『万延元年のフットボール』だけは何度も挫折している。
    毎回200ページに届かないあたりで止めてしまっていた。
    そんな『万延元年のフットボール』をやっと最後まで読み切った。
    淀んでドロドロした原液を飲み込むような密度が濃い読書体験だったせいか、目眩がするようだったし、とても疲れた……笑
    1回読んだだけじゃ到底理解出来ない。だが、これが最高傑作と言われるのも頷けた。

    どこに向かっているのかわからないが、描かれる事象の数々は現実の出来事とぼんやりと結びつくようだった。だがそれを考えれば考えるほどわからなくなる。
    自分は基本的にわかるとかわからない

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    2024年09月23日
  • 大江健三郎自選短篇

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    読み終わるのに長い時間がかかりました。この本を手に取ったきっかけは『個人的な体験』や『万延元年のフットボール』という代表作を読んでみたいという思いがあったのですが、初期のものから(そして短編ならば)読めば、それらの作品に入りやすくなるのかもしれない?という風に勝手に感じたからです。

    構成としては初期、中期、後期と分かれていて初期と中期がほとんどを占めていた。初期はデビュー作を始め芥川賞の『飼育』などが収録。どれもなんか緊張感のあるねっとりしたような暗い話が多かった。ところが中期作品になるとそういった緊張感みたいなものはなく、ドキュメント風?自伝小説?みたいになっていた。有名な作品や詩を引用す

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    2024年09月12日
  • ヒロシマ・ノート

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    「ピカは人が落さにゃ落ちてこん」

    1945年に世界で初めて広島と長崎に原子爆弾が投下されて20年後、1965年に本著は出版されました。
    原水爆禁止世界大会や被爆者への取材から、克明に描かれた当時の様子。
    それは決して、学校の授業では学べないような凄惨な内容でした。

    本著を読みながら、今は亡き祖父のことを思い出しました。
    生前の祖父は新聞の『読者の声』の欄に、戦争を反対する旨の内容を投稿し掲載されていました。
    その当時は僕もまだまだ子供で、『じいちゃん、また戦争の話してるなー』くらいにしか思っていませんでしたが、今になって思うと色々と聞いてみたかったなぁと思うようになりました。
    それだけ大人

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    2024年08月26日
  • 見るまえに跳べ

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    大江健三郎の短編集。

    『動物倉庫』『鳩』が特に面白かった。

    登場人間がまったく予測できない方向に変身する様は常に驚きと不思議な感動を与えてくれる。

    稚拙な感想だが、どうやったらこんなの話が思いつくのだろうと素朴に思ってしまう。

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    2024年08月24日
  • さようなら、私の本よ!

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    テロリズムに興味はあるか?
     淡々として読みやすい文章の過渡期。『取り替え子』よりも読みやすい。

     この小説で私が興味を覚えるのは、長江古義人とその家族のこと。長江家の経済的事情もつまびらかにされる。長江のなかの若いところのあるやつ。といふ描写も惹かれる。

     一方で、建築家・椿繁の画策する、破壊する建築テロリズムには惹かれない。ジュネーヴとのテロリズム計画は、いささか北軽井沢で完結しすぎてあっさりしてゐる。
     もちろん、その合間にたびたび登場する三島由紀夫との因縁は「セヴンティーン」しかり、北杜夫に宛てた大江の自殺未遂を訊ねる手紙しかり、興味深いものだ。

     やはりメインは死への観念を書い

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    2025年08月05日
  • 万延元年のフットボール

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    一種通俗的な物語
     ショッキングと希望がなひまぜになって、冒頭からおよそ言葉の洪水の暴力がなだれこんでくる。自殺した友人のイメージがショッキングで、同時に惹きつけられる。
     四国の山奥を卑下して大丈夫なのかと思ったほどだが、ある種普遍的な話だ。神話とからめて語る人が多いが、むしろ昔の一揆との連続性を蘇らせる現代の騒動を描いたもの。鷹四のやうな人間も、いくぶん誇張されてゐるとはいへ、ゐないわけではない。蓮實重彦や小川榮太郎が書いてゐたが、部分的には通俗的でもある。

     やはり一種難儀なのはながながしい主人公の独白で、興味の持続を断念するひとも多いはず。動物や自然を用ゐた比喩や、川流れのエピソード

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    2024年06月16日
  • あいまいな日本の私

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    おじいちゃんの書斎からくすねてきた。私がずっと聴いてきた國光の音楽と、おじいちゃんが色んな本を読んで考えてきたことが繋がるような気持ちになった。
    私が初めて天皇陛下を見た時に思ったのは、空虚だ、ということだった。日本というのは曖昧な抽象物であり、実は天皇にも象徴されるように中心が空っぽなのだろう。そしてそこから生じる曖昧さとうちに閉じてしまう感じ。

    また、周縁たる田舎。そこで心的感覚麻痺に落ち込み、乗り越え、再生する。これはそのまま再生の風景ではないか。

    あいまいと言うことが何かはっきりと語られない(かろうじて両義性?)ものの大きな示唆のある一冊だった。

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    2024年06月16日
  • 死者の奢り・飼育

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    ネタバレ

    芥川賞受賞の表題作「飼育」を含む初期の短編をまとめたもの。

    ほかにもノーベル賞も受賞。受賞理由はからっきし意味不明ですが、ネットに落ちているNHKの方の解説を読むと、どうやら現代日本社会を描いたから、ということ!? よくわからん。

    ただ、本作を読んでありありと感じたのは、偽善へのシニカルな目線・退廃的ムード・諦めと閉鎖性、このようなワードが思い浮かぶ作品群であったと思います。

    ・・・
    以下は作品と寸評です。

    「死者の奢り」・・・表題作。解剖用死体を大型水槽からもう一つへ移し替えるというバイトをした「僕」。場面設定が特殊であるものの、得も言われぬ退廃的なムードが印象的な小品。

    「他人の

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    2024年04月22日