大江健三郎のレビュー一覧

  • 静かな生活

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    小学校のときに障害児と関わっていて兄弟のように仲が良かったからか、大江健三郎の実体験から書かれた作品は、読んでいて親密さを覚えることが多い。この作品もそのひとつである。イーヨーのことを何か不具合のあるように描くこともなければ、特別清い存在のように描くこともない、その距離感が心地よく感じる。

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    2024年03月20日
  • 親密な手紙

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    著者のこれまでの読書歴や交友歴。特に息子、光氏の事や、義兄の伊丹十三氏との交流については興味深く拝読。丁度、東日本大震災、フクシマを前後に書かれたエッセイで、反原発集会についての記述も多々あり、時代の変化を感じてしまった。

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    2024年03月13日
  • M/Tと森のフシギの物語

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    大江の本の中で、エロも酷薄な殺人(描写)も出てこない、珍しい作品。だからこの文庫の裏に紹介されているように「海外で最も読まれている大江作品」なんだな。乱歩が少年探偵ものに自作を書き換えたようなところがあって、もとの『同時代ゲーム』とくらべると、熱がなく、こじんまりとまとまってしまっている感がある。ただ、語り直しだけあって、こちらの方がメッセージはよりダイレクトに伝わってくる気がする。それが文学作品としていいのか悪いのかは何とも言えないが。いずれにせよ、一番読みやすいし、何か一冊読んでみたい人にはこの作品がまずは入り口としてはいいと思う。

    岩波文庫版も持っていて、漢字の読みなどの確認のため(岩

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    2024年03月15日
  • 懐かしい年への手紙

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    大江健三郎が自身の小説家への精神的成長過程を虚構を織り混ぜて書き上げた長編小説である。四国の山間の村、メンターとしてギー兄さんを措定し、彼のイエーツの詩やダンテ『神曲』愛読の影響を受け、語学や文学を学び入試対策の教えも受ける。地元の名士ギー兄さんの相続した山村で展開する「美しい村」や「根拠地」のコミューン作りを横目に、主人公の読書や受験勉強と自慰や性行動覚醒の顛末など、成長期の日常生活が赤裸々に連綿と綴られる。一方で郷里の森の霊性帯びる清澄な大自然や透明感溢れる異世界の描写がこの物語を深く厚みのあるものにする。浪人の後大学に進学し郷里を離れて上京し小説を書き始める。
    ギー兄さんは強姦殺人事件を

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    2024年02月25日
  • 親密な手紙

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    大江健三郎のエッセイ集。出会いと別れの中にちりばめられた数々の本。年齢のせいか哀しい話が多いが、読後感は温かい。

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    2024年01月12日
  • 大江健三郎全小説 第9巻

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    「人生の親戚」を読みました。
    知的障害のある長男ムーさんと、事故で半身不随となった次男道夫君を、自殺で亡くしてしまった女性まり恵さんの話。
    到底了解することの出来ないような悲惨な現実と真っ向から組み合い、最期にVサインをした彼女の姿が印象に残った。
    彼女の生涯を「了解可能な」物語として書いてしまった著者の葛藤も綴られており、他人の人生を題材に小説を書く人としての誠実さを感じた。

    仕事柄だろうか、人に寄り添うってどういうことだろうかと最近考える。
    人が抱える痛みや苦しみは極めて個別のものであり、それを理解し寄り添うなど到底できないと思うこともある。しかし、それぞれがそれぞれの人生の問題に直面し

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    2024年01月07日
  • 静かな生活

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    キルプの軍団の主人公や本作の主人公など、もちろん当人ではないにしろ、ある部分大江の子どもをモデルとしていると思われる細部は生き生きしていて素晴らしい一方、どこかお行儀が良過ぎるのではないかと思ってしまう。ただ、いつもにもまして小説家に対しては手厳しいところがあって笑える。

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    2023年12月21日
  • 個人的な体験

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    大江健三郎の2冊目。昭和39年8月に出版されたこの小説の20代後半の主人公と大江とは合い重なる設定。大江の子供「光」も脳瘤によって知的障害者として生きている。新潮文庫の巻末には大江が昭和56年1月に書いた一文が置かれている。その中で小説の終幕への三島由紀夫などの批判に対して、「経験による鳥(バード)の変化・成長を表現するという、最初の構想をまもりたかった」と記している。20代の大江が突っ伏して動けなくなるほど困惑していた子供を抱えた父親としての姿は、大江自身の言葉のように「青春」そのものを切り取っていると感じた。これから読み進めていこうと思っている大江の作品が楽しみになってきた。

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    2023年12月17日
  • ピンチランナー調書

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    正直訳わからない作品だが、その訳わからなさがメチャクチャ面白い。難解は難解なんだけど、大江流の独特な文体で、これはコメディなのかと一瞬思ってしまう。
    テーマは核開発、反原発なんだけど、親子の在り方が、大江さん親子との繋がりを意識すると、その宇宙的な在り方もありだと思う、実は難解に見えてとてもユーモアな面白い作品。
    というかこちらもなに言ってるのか訳わからなくなるが。

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    2023年11月19日
  • 叫び声

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    ものすごい作品だった。特に怪物の章は身震いした。よくこんな文章書けるものだ。大江さんしか書けないだろうな。
    複雑の想像つかない驚異的な言い回しで笑っちゃう時もあるんだけど、慣れてしまえばこの文章が病み付きになる。
    いろんな意見があるかもしれないが、自分は大江さんはノーベル文化賞に抜群にふさわしい方だと思う。

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    2023年10月28日
  • 死者の奢り・飼育

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    テーマがすごい。描写がすごい。
    冒頭の一節から、足し引きのない形容によって衝撃的な光景が生々しく描かれ、作者独特のその描写は最終話まで途切れることなく続きます。閉鎖された空間、そこに置かれた人たちの心理、行動、息遣い、発する言葉、見えないけれども確かに存在する外界との境界、その全てに生臭い人のさがが見え隠れします。ページをめくる度にその隙間から体臭の混じる湿り気を帯びた空気が漏れ出てくるようです。

    好みはさておき、すごい作品群です。気になる一節を読み返してみると、作者の意図する世界感を体温や感触をともなって自分なりに体現できて、よくこんな文章が書けるものだと感心してしまいます。芥川賞、ノーベ

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    2023年10月24日
  • 死者の奢り・飼育

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    死者の驕りはすれ違った老人のシーンがビシッと印象に残ってる。1番好きなのは飼育で、短編として完璧すぎると思ったのは他人の足、最後の一文が忘れられないのは人間の羊、でしょうか。

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    2023年10月11日
  • 個人的な体験

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    子どもが産まれる前の「自分の生活が変わってしまう」という不安、障害があるってわかってからの「道徳的には育てるべきだが育てられる自信がない」という葛藤が、非常に巧みに言語化されている。自分がすでに子持ちだから、共感できる部分は大いにあった。

    子どもが産まれるのはすばらしいことだけれども、障害の有無に関わらず、子育ては綺麗事ばかりではない。鳥の現実からの逃げ方はまさにクズと言える所業。しかし、自分にも通ずる部分があると考えさせられた。

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    2023年10月04日
  • 取り替え子

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    ☆4.5 奇妙なスルメ小説
     最後の千樫の推測のくだりで身震ひする気持になったが、なんとも奇妙な小説だと加藤典洋の書いてたままに評しよう。
     どうも前半までは平坦だとおもってゐたが「覗き見する人」以降おもしろかった。ギシギシの挿話に熱中させられるものがあった。
     かういふ小説は、事実背景を知ったうへで再読するとより面白く感じられるとおもふ。実際、いま再読して前半もおもしろい。
     まあ評判を聞かずに読むのがいい。たぶん勝手に期待するとぴんとこない。斎藤美奈子や松岡正剛がぴんとこなかったのもわからなくはない。大江健三郎に関心がないと読めないのである。
     なにしろその続篇として『憂い顔の童子』がある

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    2023年09月22日
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ

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    初期の短中編5編が入っている。この大江健三郎さんの独特の文体は初めて読んだときはまどろっこしくて戸惑ったが、慣れてくると逆にこの詳細な遠回しな比喩含めた文体が、気持ちよくなってきてこれじゃないと駄目だなと思ってしまうほどだ。
    どの作品も興味深かったけど、「走れ、走りつづけよ」が自分的にはブラックユーモア的にも感じ、大変面白かった。
    「核時代の森の隠匿者」は名作【万延元年のフットボール】の後日談的な話なので、さきに【万延~】を先に読むのをお勧めします。

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    2023年09月18日
  • 死者の奢り・飼育

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    芥川賞受賞作「飼育」を含む6編の短編集。
    初めて大江健三郎氏の作品を読んだが、大変良かった。
    時代を背景に、生と死、田舎の村の閉塞感、米兵と日本人の関係、子どもの好奇心と残酷さ、罪悪感と勝手な正義感、大人になるという事…などが描かれている。
    ジワジワ追い詰められていく感じが、たまらない。
    本作のテーマを理解できたかどうかはわからないが、共感、納得できる箇所は随所にあった。
    どの作品も深くて、読後は余韻が残り考えさせられる。文学の良さって、こういう事か。
    印象深かったのは、「死者の奢り」「飼育」「人間の羊」
    今後は、大江氏の作品を少しずつ読み進めながら、
    追悼の意を表したい。

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    2023年09月17日
  • ピンチランナー調書

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    自身は一般的に言われている程難解ではないと感じた。
    “転換”という要素も、作者が息子との関係に求めたifの一部分に過ぎない気がする。
    息子の光氏が題材にされている作品群の中でも、SFや動きを加えた大江流エンタメ小説として読むと割合違和感を感じず楽しめる。

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    2023年09月08日
  • 大江健三郎 作家自身を語る

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     各章は時系列に沿って複数の作品をテーマにしている。私は彼の作品を全て読んでいるわけではなく、特に万永元年のフットボール以降の作品はほとんど読んでいないので、読んでいない本がテーマになっている章は読み飛ばした。
     尾崎真理子さんという聞き手もとても力を持っている人物である。彼女の質問によって彼が気づくと言うシーンが見られた。

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    2023年09月03日
  • みずから我が涙をぬぐいたまう日

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    1文が10行にわたることもあり、さらに側から見れば発狂した者の口述記録でもあるため、完全に排他的な文体となっており、私も数ヶ月前に一度読み始め、途中で断念することとなった。
    今回また読み始めたのは、大江の晩年の作品『水死』を読むことを目指すにあたって避けては通れない作品だからである。

    「純粋天皇」というセンシティヴかつ荘厳なテーマを、なかば発狂した者の口述を通したユーモラスな文体を採用したおかげで、また小説という“フィクション”が保険として働いてくれるおかげで、重々しくなり過ぎずに扱えている。

    この本を読んで、自分は大江作品の中でも神秘主義に重きを置いた作品の方が好きだと気づいた。もちろん

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    2023年09月01日
  • 空の怪物アグイー

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    相変わらず、大江健三郎さんの短編集は、どの話もダークな雰囲気の中に皮肉や人間の本質が描かれていてとても面白い。これは他の短編集に比べるとちょっと難解だったかな。
    しかし、「敬老週間」はとても皮肉が込められたラストで笑っちゃうし、「スパルタ教育」「犬の世界」などは自分は大好物。「空の怪物アグイー」は長編「個人的な体験」の逆のモチーフでとても興味深かった。
    大江作品は亡くなってから読み始めたけど、こうなったら全作品読破するしかないな。

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    2023年08月14日