大江健三郎のレビュー一覧

  • 芽むしり仔撃ち

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    小説における舞台としては現実から遠い感じはするが、世間から一方的な印象で除外されてしまう少年たちの姿はいつの時代にも通じる。

    置かれた状況から否応なしに犯してしまう行動は残酷なのだが、登場する少年たちには仲間意識、心底にある強さや優しさがある。
    そしてところどころにみられる詩的な表現に動揺しながら、樹木や土、腐蝕した(何者かの)匂いまでもが漂う錯覚があり、疫病を恐れて無人になった山里の陰鬱な情景の中に引き込まれていく。

    リアルな表現なだけに不快な気分になりながらも、差別問題や疫病に対する意識などの重大なテーマがあり、必要な読書ではあった。
    大江健三郎さんが「監禁状態」をテーマにして描いた小

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    2023年05月07日
  • 空の怪物アグイー

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    なかなか難解ではある。
    最後の解説を読んで何となーくテーマが明らかになる。

    人間の恒常的な状態は恐怖である。
    現代人間の欠落した内面は、恐怖という非存在によって埋められる。→恐怖の発見と、その恐怖からの逃亡の拒否(という矛盾)によって人間は成立する。


    「恐怖の前での自己欺瞞」
    が全体のテーマとして描かれているらしい。

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    2023年04月16日
  • ピンチランナー調書

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    本作品「ピンチランナー調書」は雑誌「新潮」に、3カ月に渡って連載されたものを1976年10月に書籍化したものである。私は、高校生の頃から、大江健三郎の初期の作品を中心に読んでいた。この「ピンチランナー調書」が発行されたのも、私が高校生の頃であるが、実際にこの本を読んだのは、大学生の頃だったと思う。当時の私には、この「ピンチランナー調書」は難解すぎるものであったし、ストーリーとしても、当時の私には、決してわくわくするようなものではなく、むしろ、退屈な話に感じられ、途中で読むのを断念した記憶がある。そういう意味では、今回、私にとっては、この「ピンチランナー調書」を読むことは、それから40年以上を経

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    2023年03月31日
  • 見るまえに跳べ

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    前に読んだ「死者の奢り・飼育」は主に監禁状態を主題とする作品群だったが、今回は政治的人間と性的人間を主題とした作品群だった。
    大江さんの初期作品の新潮文庫版は主題で分けられているので、1冊の本として読みやすかった。
    三島、川端、大江という戦後の文豪の素晴らしい作品を今後も折に触れて読んでいきたい。

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    2023年03月09日
  • 芽むしり仔撃ち

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    この粘着質な文章な何でしょう。内容のせいなのか、作者に起因するものなのか。
    未だ、最後に救いがあったのなら印象も違ったのに。

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    2022年12月31日
  • 芽むしり仔撃ち

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    ネタバレ

    閉鎖的な環境に閉じ込められるが朝鮮人の友人や少女との出会いにより、青春小説のように希望を持てる瞬間もあったがそれらがとても脆いもので簡単に壊れてしまう様が悲しく読み応えがあった。

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    2022年11月21日
  • 懐かしい年への手紙

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    ネタバレ

    大江健三郎ならではダンテの神曲を頼りに自作の捉え直しを含んだ「自伝」的小説。
    個人的には発表順に氏の著作を読んで来たので、面白く読んだ。ただ、この前に読んだのが「M/T〜」と「同時代ゲーム」の再読だったので、物語としてのダイナミズムは少し欠けるかと思った。

    「懐かしい年」というのは、文字通りのイメージの昔を懐かしむという事ではなく、まさにここ数年の流行りの並行世界(しかもタイムリープ)と捉えられるのが面白い。(この後には純粋なSFにもトライすることになる。)

    ただ、必ずしもここでの(懐かしい年そのものである)ギー兄さんの死がその(理想的な)世界が失われたことを表すわけではないのだけど、再生

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    2022年11月10日
  • 叫び声

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    伊坂幸太郎を筆頭に、絶賛される事の多い本作だが自分はハマらなかった方。
    エネルギーを加えて描くべき人物が分散されていていたり、ギトギトした人物の描写が少なく薄口に感じた。

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    2022年09月27日
  • 新年の挨拶

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    雑誌『図書』に連載された著者のエッセイをまとめた本です。

    あつかわれている主題はさまざまですが、障がいをもつ息子の光との関係や、彼の音楽活動をめぐる文章が、やや多いように感じられます。心理療法家である河合隼雄について述べた文章でも、河合のことばから著者と息子との関係へと連想が動き出し、河合の「コンステレーション」ということばが、著者とその家族のありかたについて著者自身が考えをおよぼす契機となって、著者のなかで河合の方法論があたらしく息づきはじめたことが述べられています。

    著者自身の作品について語った文章では、「雨の木」(レイン・ツリー)をめぐる著者の考えの変遷がうかがえるものが含まれており

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    2022年09月12日
  • 沖縄ノート

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    少し難しくて読みづらかったです。
    筆者の尊敬してる方に対する思い、沖縄に対する思いや第二次世界大戦後の沖縄の在り方など事実も知れて良かったです。

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    2022年08月25日
  • 同時代ゲーム

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    ネタバレ

    妹への手紙という形で語られる、四国の山奥にある故郷の村の歴史と伝承、兄弟の逸話。序盤は、現在の生活と村の神話・歴史がリンクするかたちで語られるので頭のなかで整理する必要があるが、次第に神話と歴史にフォーカスされていく。

    面白いが、クセのある文章ですこし読みづらい。


    以下、村の神話と歴史における主な出来事、および語り手の家族について

    ・藩を追放された武士集団が「壊す人」を主導として川をさかのぼり、行き詰まりの大岩塊を爆破して、森に囲まれた盆地に隠れ住む。(そのときに流れ出した大洪水によって追跡隊は押し流される) のちに「吾和地(あわじ)」と呼ばれるようになる。

    ・村の開拓がひと段落した

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    2023年02月27日
  • 僕が本当に若かった頃

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    聖書の物語は、神に選ばれた者たちを中心に進行するが
    大江健三郎の場合
    「選ばれなかった者たちの語り」としての神話を
    構想していたようである
    例えば「治療塔」のストーリーにそれは明快であるし
    また、そう考えれば
    解体と再構築の作業を読者に強いるがごとき難渋な文体も
    集合的無意識の行なう要領を得ない語りであると
    説明することはできる
    そしてその根底に
    「母」の存在が担保する性善説の世界観があるわけだ

    ただし、そういった方向性は
    ノーベル賞に「選ばれた」ことで骨抜きになったし
    なにより作品として読者を選ぶものだった

    「火をめぐらす鳥」
    若い頃、伊東静雄という詩人に影響を受けた筆者は
    その詩の一節

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    2022年02月04日
  • 沖縄ノート

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    沖縄の話を知らなきゃいけなかったので、2冊目として選んだ本でした。
    沖縄返還運動の話とか日本の悪いところがレポートされてる本に感じました。
    戦争のことを考えるとメチャクチャ、沖縄が犠牲になっていたこと、今も犠牲になっていることを知っていたけど、それ以上にヒドい惨劇なのがよく分かる本でした。

    ただ、文章の表現がちょっと前なのかなって思い、読みづらいところもありました。

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    2021年12月24日
  • M/Tと森のフシギの物語

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    M/Tと森のフシギの物語


    土地に伝わる伝説がやがて身内のできごととしてせまりくる。
    もしくは、身内の出来事から歴史を手繰り寄せる。
    輪廻はその森深い土地を媒介に自分に降り、次の世代に受け継いでゆく。

    特定の土地という場所から浮遊し、“風土”と呼ぶにふさわしいかもしれない。
    人はそんな土地や風土といったものに支配されている。
    それは“人”からみた視点で、本当は僕らの知らない土地では考えられないような物語を紡いでいるんだろう。

    僕にまとわりつく風と土地は、僕をどんな物語のどんな役どころを演じさせているのかと夢想する。

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    2021年12月13日
  • 性的人間

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    2021年 41冊目

    「性的人間」 
    性的少数派の嗜好の追及を描いた作品。最初の妻を自殺に追い込んだ嗜虐的趣味のある青年が痴漢行為に傾倒する。孤独感を抱える退廃的な作風を更に冷めた目線で読んでしまうのは令和世代だからかしらん。。独り善がりで作品丸ごと自慰行為を見せられてるようで好みでなかった。

    「セブンティーン」
    現代において確固たる主義や思想を持ち声高に発言する人はそう多くないだろう。主人公の少年は最初左翼だが、彼の政治意識は観念的なものにすぎない。不安定な10代。ある日右翼の党首の演説を聞いて右翼活動にのめり込む。不吉な変身の瞬間。死を以て人を脅迫し自ら死に飛び込む右翼青年を形付けるの

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    2023年04月15日
  • 見るまえに跳べ

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    著者初期の作品集。学生運動盛んな時期の若者の自己欺瞞と鬱屈、葛藤といったドロドロした感触が伝わってくる。2021.22

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    2021年06月22日
  • 静かな生活

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    冷静と情熱のあいだRosso に登場した作品なので気になって読んでみた。初めて読む文体で、少々読みにくい。イーヨーの冗談はほっとする。

    イーヨーの妹マーちゃんの献身ぶりを読みながら、小学生の時、同級生である障害者の弟君が、全校集会で、障害者の姉についての作文を読み上げたときの何とも形容が難しい、けど、凛々しい表情を思い出した。

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    2021年06月19日
  • ピンチランナー調書

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    大江健三郎作品を読むと日本語の可能性を感じる。
    同時に、『宙返り』までの大江健三郎作品には、戦後的暗さを感じる。
    この本自体が一つの革命調書のようになっている。

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    2021年03月28日
  • 大江健三郎柄谷行人全対話 世界と日本と日本人

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    「文学とは、小説とは、哲学とは、そこから見えてくる世界とはこういうものである/こういうものであった」という点においては色褪せず参考になる本だと思う。しかし、「こうなるであろう」という点においてはコロナ前に書かれた本であるため、「本当に?」となる。そのくらいコロナで世界は不可逆に変わってしまった。文学も小説も2人の言う通りエネルギーを無くして、2人の願い叶わず衰退はするだろうけど、そこまでの道筋はこのとき見えていたものと大きく変わってしまったと思う。たとえば誰かの抱えた花束が手放されるのは、花が枯れたときではなく、その人が死んだ時かもしれない。

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    2021年03月06日
  • 宙返り(下)

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    ちょっと感想しにくいな。読み終わった直後の余波に影響されてて。
    宗教の捉え所のなさは日本的な捉え方かもしれんな。
    師匠(パトロン)の最後の言葉より、木津先生の最後の言葉の方が後に来てるのもそのためかもしれない。
    まさかギー兄さんとは思わず、読み始めたが、大江さんが愛媛の土地に愛着を持ってるのを感じる。燃え上がる緑の木を読んでから、もう一度読もう。
    そうか語り部は無邪気な青年だった人か・・・

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    2021年03月03日