大江健三郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレまず、表紙裏の解説には「老人たちの奮闘記」てなことが書いてあったけど、私は全くそうは感じなかった。
虐待にあった女性が傷へ向き合い、再生へ。
それが「ミヒャエル・コールハース計画」を通して語られている。
主人公は大江自身を思わせる作家であり(私は大江作品を初めて読んだのでいつもこうなのか定かではないが)どこまでが現実なのかどこからがフィクションなのかわからなくなる。その境界から、読み手はいつの間にかフィクションの世界に誘われていくのか。
でも私は全くフィクションのほうが入り込みやすいな。
こういう設定だと書き手は人物設定が簡単で済みそうな気がする。
きっと、木守は映画の完成を待たずに亡く -
Posted by ブクログ
かなり前から寝る前に読んでいた本。
ノーベル文学賞受賞者の彼が講演で語った内容をまとめた本。
正直、私には少し難しく感じる場面もあったが、じっくりと語られるその内容は大江健三郎氏そのものであるのだろうと思う。
彼の息子「光」君を授かった事も含めて、氏のぐっと奥にある何かが垣間見えるものだった。
読み進んで行くうちに私は例え様の無い何かを感じ始めていて、それは「何か大切な疑問を抱く」というような,あるいは「気付き」みたいな物を感じ始めていた。
このままでは いけない ような気がする。と思った...が、何をどうしたらいいものなのか?
穏やかな語り口と、言葉の深さに感動した。
そして、この本を -
Posted by ブクログ
わたし大江健三郎と同郷なのに初大江でした。
近未来、人類が「新しい地球」に移住する「選ばれた者」と、資源が枯渇し汚染された地球に残る「残留者」に分かれた世界を描く。それも「残留者」側の女性からっていうところが面白い。考えるSF、議論するSFで、冒険譚などではないので、レツゴー宇宙移民!!みたいなのを期待して読み始めるとガッカリするに違いない。
階層社会とか科学文明とか近現代の人類をとりまく様々な要素を取り入れながら、宇宙に出て超常現象的な恩恵を受けてまで人類が存続する価値があるのか、とか、そもそもそういう人間は「人間」と呼べるのか、じゃあ人間ってなんだよ、とポロポロ疑問を投げかけてこられ -
Posted by ブクログ
こないだ読んだ短編に比べて全然パッとしない上に、イライラさせるし、なんだかなーって思ってたけど、約半年の後に思い出に残ってるのはこっちのほうです。
よほどムカっとしたというか、本当イラついた。
私はわからずやは嫌いだし、そんなわからずやを、「しょうがないな〜」なんて言いつつかまってあげるような人も好きじゃない。
なにより難しすぎて何が言いたいのかわからない、それでいてめちゃくちゃ。
まるで現実じゃないみたい。
もちろんこれはお話なんだから現実じゃないみたいなんて表現はもともと合ってないんだけど、なんというか堅く知的な文章であるにも関わらず浮足立ってる、どこか宙に浮いてて捕まえとかないとどっか -
Posted by ブクログ
大江健三郎の20年近く前のSF小説。とはいっても、SF的な設定・話は最初と最後(特に最後)に出てくるだけで、多くはそれとはあまり関係ないところで話が進んでいく。チャレンジャー号爆発事故とイエーツの詩から主要なイメージを得ている。宇宙開発競争や階級分化に代表される科学主義と資本主義という現代の進化の方向と、それとは反対の「人間主義」(とでも呼びそうなもの)や自然主義との相克が描かれる。そして、その中に人類に対する「悲しみ」が漂う。ただ、宇宙開発、科学主義、階級、工業化といった色々な問題の一つ一つは簡単に触れられる程度で、何らかの主題が深められることはない。(著者自身による感想でも強調されている)