大江健三郎のレビュー一覧

  • 治療塔
    大江健三郎の20年近く前のSF小説。とはいっても、SF的な設定・話は最初と最後(特に最後)に出てくるだけで、多くはそれとはあまり関係ないところで話が進んでいく。チャレンジャー号爆発事故とイエーツの詩から主要なイメージを得ている。宇宙開発競争や階級分化に代表される科学主義と資本主義という現代の進化の方...続きを読む
  • 小説のたくらみ、知の楽しみ
    1983〜1984年に雑誌に連載されていたエッセーを集めたもの。創作法、読書法、作家論、日常生活、昔の話などについて率直に(しかし下品にならずに)語られていて、楽しく読める。ブレイクやエリアーデ以外にヴォネガットやケルアックについて語られているのは珍しい。
  • ヒロシマ・ノート
    原爆の悲惨さを伝える本。
    著者曰く,原爆の威力の悲惨さは広く知られているが,
    落とされた側のその後の悲惨さは十分に知られていない。
    物理的なことだけに留まらず,
    思想的な部分にも触れられている。
  • 空の怪物アグイー
    長編で使われたモチーフが色濃く出ている、短編集と言うよりは、まさに長編の副産物と言っても良いと思う。しかし大江健三郎が書くと、副産物であれ非常に密度の濃い内容に仕上がってしまう。個人的には表題の作品以外にも「アトミックエイジの守護神」が良かった。
  • 見るまえに跳べ
    高校生の頃読んだものを思い立ち再読。収録されている10編の短編のうち5編を読む。「奇妙な仕事」大江健三郎の処女作。実験用の犬の処分を大学から引き受けた男に雇われた犬殺しとアルバイトの3人の学生。何かに熱中するには若すぎるか年を取りすぎてしまった「僕」と笑い方を忘れそうな女子学生と負けず嫌いな私大生。...続きを読む
  • 空の怪物アグイー
    大江健三郎っぽくない短編がいくつかあって新鮮な気持ちで読みました。敬老週間とか、ちょっと星新一っぽくないですか?
  • 河馬に噛まれる
    ウガンダで河馬に噛まれたことから、「河馬の勇士」と呼ばれる元革命党派の若者。彼と作家である「僕」との交流をたどることで、暴力にみちた時代を描く。
  • 持続する志 現代日本のエッセイ
    第一エッセイ集である『厳粛な綱渡り』(講談社文芸文庫あとがき)で、小説家がエッセイを書く行為を危険な行為であると述べている。
  • 見るまえに跳べ
    <収録作品>
    奇妙な仕事(昭和32年5月「東京大学新聞」)
    動物倉庫(昭和32年12月「文学界」)
    運搬(昭和33年2月「別冊文芸春秋」)
    鳩(昭和33年3月「文学界」)
    見るまえに跳べ(昭和33年6月「文学界」)
    鳥(昭和33年8月「別冊文芸春秋」)
    ここより他の場所(昭和34年7月「中央公論」)...続きを読む
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ
    <目次>
    第一部 なぜ詩でなく小説を書くか、というプロローグと四つの詩のごときもの
    第二部 ぼ自身の詩のごときものを核とする三つの短編
     走れ、走り続けよ
     核時代の森の隠遁者
     生け贄男は必要か
    第三部 オーデンとブレイクの詩を核とする二つの中編
     狩猟で暮らしたわれらの先祖
     父よ、あなたはどこ...続きを読む
  • われらの時代
    1959年に書き下ろしとして刊行された長編。外国人相手の中年娼婦である頼子、そのヒモとして同棲している主人公の靖男、その弟の滋がピアノを弾いている十代のジャズトリオ<アンラッキー・ヤングメン>。「若さ」という残酷さと如何に向き合うか。
  • 叫び声
    十七歳の虎、十八歳の呉鷹男、二十歳の「僕」の三人の《黄金の青春の時》とその結末を描いた長編小説。「現に青春にある者が、それも自分が内面において衰弱し、病んでいることを自覚している者が、恢復をめざして青春を書いた小説」
  • 空の怪物アグイー
    1962年から64年の間に書かれた短編集。<収録作品>
    不満足
    スパルタ教育
    敬老週間
    アトミック・エイジの守護神
    空の怪物アグイー
    ブラジル風のポルトガル語
    犬の世界
  • 日常生活の冒険
    斎木のモデルは故伊丹十三であったとか。高校の時に伊丹十三と知り合う。1960年、伊丹万作の長女ゆかり(伊丹十三の妹)と結婚。1994年ノーベル文学賞受賞。
  • みずから我が涙をぬぐいたまう日
    「みずから我が涙をぬぐいたまう日」と「月の男(ムーン・マン)」という、狂気をユーモラスにかつ哀切をこめて描いた二つの中篇からなる本。
  • 新しい文学のために
    文学を読み書くための本。
    全体として自分にとっては難解であった。
    ただ、日常で使っている言葉を、
    いかに小説や詩において特別な意味を持たせるか、
    そこまではいかなくとも特定の効果を働かせるか、
    という異化の章はなるほど!と思った。
  • 燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―
    16歳の私を「文学とはいかに難解で深遠なものか」と嘆かせた作品。
    今思うと、もしかして簡単かもしれない「癒し」をここまで突き詰める、そういう作家がいること自体に価値を見出すべきなのかもしれない。
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ
    走れよ、走り続けよ!が好きです。後は何というかまあ、いつもどおり。というか。まあすべていつもどおりですが。しかし短編と長編でこれだけイメージが揺るがないというのも珍しいんじゃないかという気がしますよ。どうだか知りませんが。「食べ物をいかにもまずそうに描写する」のが上手ですよねー。コーラと排骨麺って絶...続きを読む
  • 空の怪物アグイー
    『個人的体験』と同時期に読むことをオススメします。
    『個人的体験』と同時期にかかれ、全く逆の「答え」を与えているからです。(表題作)
  • 遅れてきた青年
    遅れてきた青年は、早すぎる未来に復讐を試みるが、やはり早く去りすぎた戦争という過去にはただ憧れるのみで、恨む事は永遠に無いのである。それはひとえに、青年にとっての戦争(過去)が現実に起こった事ではなく、お伽話の空想事と同じ意味合いの存在に過ぎないのであり、それ故にやはり青年は遅れてきた青年なのだ。仮...続きを読む