大江健三郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
高橋源一郎氏の文学がこんなにわかっていいかしら (福武文庫)に出てきて、とっても気になっていた本です。
何がいいって、書き出しのサービス精神です。
上述の書籍で、高橋氏が引用しているのですが、書き出しはこんな感じです。
「まずキルプという名前が、気にいったのでした。Quilpとアルファベットで印刷した様子は、ネズミに似ていると思います。これが自分の名前だったらことだぜ、そう考えたと、最初の個人授業の後で忠叔父さんにいいました。―そうかい?ディケンズは、悪役には悪役らしい名前をつけるものやから、という返事だったのですが、現役の暴力犯係長の叔父さんが妙に寂しそうだったので、僕は説明しました。」 -
Posted by ブクログ
個人的な体験でちょっぴり出てくる、バードが精神病者を探し回るエピソード「不満足」が入った、わたしにちょっぴり嬉しい短編集。
どれも短めなのでスイスイ読めました。
「敬老週間」と「アトミックエイジの~」は、シニカルでプッと笑えるオチが大江健三郎っぽくなくて軽く驚きました。
敬老週間はタイトルも素晴らしいですね!
私は表題作のアグイーが一番好きです。「アグイー」っていう響の由来も、胸が痛くて悲しくて、でもどこか眉を顰めたくなるセンチメンタリズム。
美しいだけ、楽しいだけ、こじゃれただけの物語が物足りなくなってきた昨今、やっぱり大江健三郎が大好きです。
10.02.10 -
Posted by ブクログ
こんなにも自由なイメージを喚起させるように描けるものなんだなぁと感心しました。
おとぎ話風の語りですが、森の中は村人達だけでの裁判(昔から限界状況での自治ってモチーフはよく出ますね)や、なんだか超絶に大きな人がいたり、少年としての著者が出て来たり。
少し異色ですが、個人的には好きです。
あの、「どこか木のうろからブーーンという音がして」とか
そういうイメージの植え付けは素晴らしいと思います。
絶対にない、しかも新しい物や気分を教えてくれる点では翁は素晴らしいと思います。
海外不条理映画とはちょっと違う。
D.クローネンバーグ的といえばそうなるかも知れません。 -
Posted by ブクログ
大江健三郎。
私小説というおうか、自分の人生が語られている。
どこまでが事実で、どこまでが小説としてのことなのか、気になるところではある。
登場人物はおそらくほとんど実在の人物。
古くからの友人であり、義兄である吾朗(伊丹十三)の投身自殺からはじまる。
本の中にたくさんのメタファーがあり、何となく読んでいた私は気付いたり気付かなかったり。
四国の森の少年時代の怖い体験や、
吾朗との「田亀」を通じた通信、ベルリンでの100日間を通して吾朗の自殺を追いかけていく。
最終章では千樫(大江ゆかり、大江健三郎の妻、伊丹十三の妹)が引き継ぎ、
センダックの絵本から妹としての立