大江健三郎のレビュー一覧

  • キルプの軍団

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    高橋源一郎氏の文学がこんなにわかっていいかしら (福武文庫)に出てきて、とっても気になっていた本です。

    何がいいって、書き出しのサービス精神です。
    上述の書籍で、高橋氏が引用しているのですが、書き出しはこんな感じです。

    「まずキルプという名前が、気にいったのでした。Quilpとアルファベットで印刷した様子は、ネズミに似ていると思います。これが自分の名前だったらことだぜ、そう考えたと、最初の個人授業の後で忠叔父さんにいいました。―そうかい?ディケンズは、悪役には悪役らしい名前をつけるものやから、という返事だったのですが、現役の暴力犯係長の叔父さんが妙に寂しそうだったので、僕は説明しました。」

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    2010年02月15日
  • 空の怪物アグイー

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    個人的な体験でちょっぴり出てくる、バードが精神病者を探し回るエピソード「不満足」が入った、わたしにちょっぴり嬉しい短編集。

    どれも短めなのでスイスイ読めました。
    「敬老週間」と「アトミックエイジの~」は、シニカルでプッと笑えるオチが大江健三郎っぽくなくて軽く驚きました。
    敬老週間はタイトルも素晴らしいですね!

    私は表題作のアグイーが一番好きです。「アグイー」っていう響の由来も、胸が痛くて悲しくて、でもどこか眉を顰めたくなるセンチメンタリズム。
    美しいだけ、楽しいだけ、こじゃれただけの物語が物足りなくなってきた昨今、やっぱり大江健三郎が大好きです。

    10.02.10

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    2010年02月11日
  • M/Tと森のフシギの物語

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    こんなにも自由なイメージを喚起させるように描けるものなんだなぁと感心しました。
    おとぎ話風の語りですが、森の中は村人達だけでの裁判(昔から限界状況での自治ってモチーフはよく出ますね)や、なんだか超絶に大きな人がいたり、少年としての著者が出て来たり。
    少し異色ですが、個人的には好きです。

    あの、「どこか木のうろからブーーンという音がして」とか
    そういうイメージの植え付けは素晴らしいと思います。
    絶対にない、しかも新しい物や気分を教えてくれる点では翁は素晴らしいと思います。
    海外不条理映画とはちょっと違う。
    D.クローネンバーグ的といえばそうなるかも知れません。

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    2009年10月14日
  • 性的人間

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    はじめて大江健三郎を読み衝撃を受けた。おもしろい。
    性的人間の厳粛な綱渡りをする痴漢少年が好きだ。セヴンティーンもニヤニヤしながら読んだ。

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    2010年06月11日
  • われらの時代

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    切実な本だ。切実な若者が切実な汗をかきながら切実なるものを探し求めつつも現実的な希望がなく部屋に引きこもって自慰に耽るような、そういう切実さだ。

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    2011年04月06日
  • 取り替え子

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    大江健三郎。

    私小説というおうか、自分の人生が語られている。

    どこまでが事実で、どこまでが小説としてのことなのか、気になるところではある。



    登場人物はおそらくほとんど実在の人物。

    古くからの友人であり、義兄である吾朗(伊丹十三)の投身自殺からはじまる。



    本の中にたくさんのメタファーがあり、何となく読んでいた私は気付いたり気付かなかったり。

    四国の森の少年時代の怖い体験や、

    吾朗との「田亀」を通じた通信、ベルリンでの100日間を通して吾朗の自殺を追いかけていく。



    最終章では千樫(大江ゆかり、大江健三郎の妻、伊丹十三の妹)が引き継ぎ、

    センダックの絵本から妹としての立

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    2009年10月04日
  • 僕が本当に若かった頃

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    ある事件がきっかけで日本を「亡命」し、渡米した人と、その事件に関わった筆者の話。日本人であることを否定しアメリカで生きてきた彼。なーんてね。
    自分が犯した?罪の意識と戦ってきた彼の気持ちが、どこか夏目漱石の「こころ」を彷彿とさせた。まったく違うんだけどね。いろいろな要素がつまってて、引き込まれるような構成になっていて、一気に読んでしまいました。

    個人的にはすごく気に入ったけど、多分今の自分の状況がそう思わせてるんだと思う。。人に依ってはすごくオススメしますが、そうでない人は微妙かも。

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    2009年10月04日
  • われらの時代

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    戦争のない時代に栄光はなくて、
    自殺できるという希望にすがりながら僕達は生きていく。

    そんなメッセージが場末のバーのJazzや民族紛争、手榴弾の音によって明るみにされていく。
    共感は出来ずとも同調は出来る、不思議なパラノイア。

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    2009年10月04日
  • われらの時代

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    これは約45年前に書かれた本だが、現在の若者の生き方、そして彼らがどのように人生を捉えているか、ということを端的に言いあててる!僕たちは死なない程度に生きていて、その惰性につきまとう倦怠感にイライラして、でもなにも自分のしたいことが出来なくて、でも死ぬのは怖いから、生きている。この小説に出てくる三人の若者も、今の若者も一緒だ。それでも世界は進行していく。

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    2009年10月04日
  • 遅れてきた青年

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    文学小説の面白さって共感と、更なる発見だとおもうんだけど、この本にはそれが詰まってた。
    普通の大人はもう忘れてしまっているような、幼少期に感じた懐かしい記憶を忘れずに持ちつづけているという事も、作家にとって大切な要素だと思うけれど、そんな懐かしい記憶を呼び起こし、共感、更なる発見もさせてもらえて充実、満足。
    内容的に時代はまるで過去のものになってしまってはいるけれど、無理なく現代に、自分自身に置き換えて読む事が出来た。

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    2009年10月04日
  • 言い難き嘆きもて

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    71
    大江さんの小説はやたら小難しいけど(失礼)
    エッセイは読みやすい
    そういうものなのかな?

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    2009年10月04日
  • 取り替え子

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    読み終わるまでにだいぶん時間がかかった。

    義弟吾良の自死がテーマ。

    彼の作品は初期のものとごく最近のものしか読んでいなかったので、それらをつなぐ道筋が類推できて興味深かった。

    センダックの絵本は子ども達に読んで聞かせ、親しんできた絵本作家だが、千樫の、自分の手元にぐいと引き寄せた解釈には共感できた。

    作成日時 2007年07月03日 19:24

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    2009年10月04日
  • 日常生活の冒険

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    大江健三郎デビュー。
    なんでこの人がノーベル賞とったのか?ずっとわからず気になってた。俺がモノを知らなさ過ぎるだけかもしれないけど、広く世に知られるような名作ってそんなにあったっけ?とゆー。直木賞てすごいんだろけど直木て誰?みたいな。
    しかしよかった・・・。とてもよかった。。。
    オススメです。

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    2009年10月04日
  • あいまいな日本の私

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    断定的すぎて意味のわからない所はあるものの、芸術に対する言及は興味深かった。「芸術家は私達が今まで知らなかった新しい世界を見せてくれる仕事」。芸術の意味がやっとわかった気がした。

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    2009年10月04日
  • ヒロシマ・ノート

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    今はもう、戦後ではなくて戦前なのだという話を聞いた。
    そういう世界で読む1965年の大江さんの静謐に満ちた、けれどとても力強い文章が隅々まで行き渡る。
    『われわれがこの世界の終焉の光景への正当な想像力をもつ時、金井論説委員のいわゆる《被爆者の同士》たることは、すでに任意の選択ではない。われわれには《被爆者の同士》であるよりほかに、正気の人間としての生き様がない。』
    何も出来ないと思う前に、一冊本を読むことはできる。

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    2009年10月07日
  • 新しい文学のために

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    現代の文学理論が非常に平易に解説されている良書。
    理論関係はいろいろ読んだけど、いまいちまだ頭の中で整理がつかない、という方にオススメ。

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    2009年10月04日
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ

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    時代の疾走感を感じる、難解さは日本トップクラスの暗号小説群。
    「みずから我が涙をぬぐいたまう日」とセットでどうぞ。

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    2009年10月04日
  • 「雨の木」を聴く女たち

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    どこへも行かない、どこへも行けない.
    久しぶりに読んでみたら、前と同じように凹みました.
    We never learn.

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    2009年10月04日
  • 遅れてきた青年

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    兵隊として死ぬことを夢見ていた少年に、終戦によって刻み込まれた「自分は遅れてきた」という絶望感。日本における“ロスト・ジェネレーション”の青春、戦前派or戦中派でも、戦後派でもない狭間の世代の喪失感…。あくまで主人公の視野に映るもののみを語る主観的な文章なのに、同時にどこまでも客観的な語り口が貫かれていて、そのひりひりとした緊迫感に引き込まれる。

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    2020年12月18日
  • 空の怪物アグイー

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    ・・・これを読むと、子供の頃に読んだ時に気分がドーンと沈み、具合が悪くなってしまった思い出が蘇って来ます。
    ちなみに「空の怪物アグイー」は大江健三郎の親友であった作曲家の故武満徹をモデルに書かれた物です。

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    2009年10月04日