大江健三郎のレビュー一覧

  • 人生の親戚

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    2人の息子を自殺で亡くした悲しみを正面から迎え入れるための集会での瞑想と、担いなおすためのメキシコの農場での労働を経験するが、それらの場所で救済を媒介するかのようなまり恵の働きとその働きに励まされる周囲の人々のような形で魂の癒しが語られる。
    最後には以前の作品でも語られていた小説(を書くこと)の罪が、本作ではまり恵=マリアとしてまり恵の生涯を了解し得るものとして書いたことへの葛藤として書かれている。

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    2025年11月25日
  • 万延元年のフットボール

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    ネタバレ

    村上春樹『1973年のピンボール』のタイトルの由来といわれる作品で、村の共同体やスーパーマーケットに対する暴動、また主人公の弟鷹四が過去に犯した行為など、美しい自然の描写に反して、内容としてはグロテスクな場面が多い。

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    2025年11月16日
  • 沖縄ノート

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    個人的にはヒロシマ・ノートほどではなかった。変換前の沖縄のレポートとして、また沖縄を見る日本人として読者も自分も他人事にしないという強い情念で内側へ検証していこうという姿勢は誠実かもしれないが、歴史が響かせる怒りの前に慄きすぎていて、ヒロシマ・ノートより言葉の普遍性に欠けているように感じます。また現代の沖縄問題について考える上ではむしろ精神的に深掘りしすぎて発展させるのが難しい。裁判沙汰になった集団自決についてより他の部分のほうがいま見ると評価が難しいところかな。

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    2025年10月30日
  • 芽むしり仔撃ち

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    ネタバレ

    学生時代、友人が、卒論代わりに大江健三郎の書誌を作った。
    身近に大江健三郎を読む友人などいなかったので「好きなの?」と聞いたら、「難しいけど、好きなんだよね。特に『芽むしり 仔撃ち』が」との返事に、「めむしりこうち」という音が意味するところが分からず、当惑した。
    後に漢字表記を見て、間引きの話か、と思った。

    感化院(昔の少年院)の少年たちが、集団疎開のために山奥の村に連れてこられる。
    彼らはもちろん良い子ではないが、イメージするほど悪い子たちだとも思えない。
    戦時中という時代を考えれば、子どもたちの心がすさんでいるのもしょうがないと思う。

    谷を渡るトロッコに乗らなければ村に入ることはできな

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    2025年10月23日
  • 沖縄ノート

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    戦後の沖縄、特にアメリカ統治下の時代に著者が実際に沖縄に行って感じたことを記載した内容。単に、著者の沖縄に対する感じ方を書いているのではなく、沖縄のアイデンティティーや文化、本土に対する沖縄県民の劣等感と抑圧された苦しみを記載していた。

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    2025年09月30日
  • 同時代ゲーム

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    大江健三郎の長編小説。叙事詩的な展開で、歴史と時間を切り抜いて、村=国家=小宇宙として大江の創造空間を存在させる試みである。とても大きなスケールで読み進めていくのにずいぶん時間がかかったが、不思議に読み通していきたいとエネルギーをもらえる小説だった。不順国神(まつろわぬくにかみ)不逞日人(ふていにちじん)とのろしを上げて大日本帝国と屹立する戦いを始める展開はスリリングであったし、何をものみこんでいく巫女の妹の存在も魅力的であった。登場する一人一人の姿が浮かび上がるように緻密に作られた世界が最後まで展開されていく。大江ワールド感服しました。四国の奥深く分け入った山間地を想像しながら、大江が生まれ

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    2025年09月21日
  • 性的人間

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    大江健三郎の変態度maxの小説を集めた中・短編集ですね!アホらしい程下劣で変態なんだけど、人間の生きる意味や方向性なんて所詮はその下劣な欲望に基づいてるんじゃないかと、不思議な説得力と文学的な高尚さも感じます。
    特にセヴンティーンが素晴らしかったですね!女子生徒が生理で体育を休んでいる日をチェックして全生徒の生理日を把握し、且つオギノ式で安全日も割り出すアホ同級生に何故か愛しさを感じてしまいました。

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    2025年09月21日
  • 死者の奢り・飼育

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    ネタバレ

    現代の価値観と違い過ぎて物語の繊細さが理解できなかった。

    水槽に沈む死体に対して湿度の高い激重感情を頭の中で炸裂させる文学青年、身体や足が動かなくなる病に侵され希望なく暮らす少年たちの元に現れた両足骨折の青年、病棟内を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して健常者の世界へ戻っていく無責任さ、黒人兵士を家畜のように世話をし交流するグロテスクさ、屈辱感に必死に耐えようとする人に付き纏う傍観者の行き過ぎた正義感と加害、外国人兵士の通訳をする日本人が日本人を見下す滑稽さ。

    誰もが持っている陰湿な部分をチクチクされるような話

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    2025年08月25日
  • 芽むしり仔撃ち

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    ネタバレ

    大江健三郎は以前読んだ短編集が途中でしんどくなってしまったのでこれもあまり気は進まなかった。読んでみると読みにくいところはあるものの面白くて一気に読んでしまった。
    ページ数も少ないのに内容が濃くて何ヶ月にもわたる話かと思っていたら5日程度の話と明かされた驚いてしまった。

    結末は当初いまひとつに感じたが習俗の壁に屈服せず突破したという解説を読んですごく腑に落ちた。
    この解説がすごく秀逸でここまで読んで1つの物語とすら思う。読んでる間ずっとちらついていたそもそも感化院が3週間の行軍で疎開するって言うのが現実味があるのか断じてくれたのも良かった。

    実際刑務所とかって空襲どうしていたんだろう?破獄

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    2025年08月16日
  • 大江健三郎自選短篇

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    短編集といえど、800ページ以上あり、全て読み終わるのに4ヶ月半ほどかかった。

    本書は初期、中期、後期で分かれて読むことができたが、初期は面白く読める作品が多かったが、中期から後期にかけては私小説風に描かれる小説が増え、個人的にはそのあたりから面白さが減退した。

    初期短編は全部面白かった。といっても暗めの話が多かった。特に「死者の奢り」は大学でそれにまつわる論文をまとめ、発表する機会があり、思い出深い。
    中期短編は私小説が強めで、あまり面白くなかったが、「静かな生活」と「河馬に噛まれる」はよかった。
    後期短編も印象深いものはあまりなかったが、「マルゴ公妃のかくしつきスカート」はかなりよかっ

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    2025年08月17日
  • 死者の奢り・飼育

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    「飼育」などは、なんだかとてつもないモノを読んでしまった、という感想。心情描写がすばらしく、人間の心理を深掘りして示してくれる。ストーリーも奥が深い。

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    2025年07月17日
  • 懐かしい年への手紙

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    自作の引用は今まで通りだが、作品周辺への言及も多く、そのせいか漫画でみられる主要なキャラクターの再登場、過去編的な興奮よりかは最終話、エンドロールのような寂しさがあった。
    「永遠の夢の時」=「懐かしい年」の情景が書かれるラストは泣きそうになる
    あたかも地図の上のひとつの場所のようにとらえられる「懐かしい年」、大切ななにもかもが起こり、循環し続ける「永遠の夢の時」に向けて書かれる手紙、、

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    2025年07月02日
  • 個人的な体験

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    弱い人間が父になるまでの心情の動きが描かれていた。しかもかなり激情。生まれた赤ちゃんの死を待つ父親という設定が斬新すぎた。

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    2025年06月22日
  • 芽むしり仔撃ち

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    自由思想について書かれていると感じた。
    いかに自由意思にもとづいて生きることが難しいか。。。
    無人になった村で初めて自由に生きる子どもたち。
    でもせっかく自由を手に入れたのに、大人の指示が恋しくなるのがアイロニカルである。

    人の残酷さ、冷酷さ、自己中心性は環境によってどこまで強化されるのか。
    本作はノンフィクションであるが、現実感がある。解説者は設定が非現実的であると執拗に固執するが、戦時下で起こり得る、起こっていたかもしれない事態ではある。間違いなく、大人の保護下になかった子ども達が大人達から非人道的な扱いを受けることは日常であっただろうと思う。

    芽むしり、仔撃ち。
    日本でもほんの少し前

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    2025年05月02日
  • 芽むしり仔撃ち

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    4.2/5.0

    閉鎖的な村を舞台に、弱者の視点で権力の不平等や、世間の理不尽さを描いているように感じた。
    閉じ込められた子供たちが徐々に打ち解け合いながら、仲間意識を強めていくというジュブナイル的な魅力もあり、その様子が可愛らしい。
    村人たちが帰ってきた後の、子供たちが必死に抗う姿や、仲間を思いやる姿に胸を打たれる。
    世間の圧力に抑えつけられる子供、弱者というテーマはいつの時代も普遍。

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    2025年04月25日
  • 定義集

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    ネタバレ

    ゆっくり細やかに読むことが大切だと思う。
    全ては繋がっていて、1度読み終えただけでは分からないし、何度も読むこと(reread)が大切だと思う。
    寛大な随筆集だと感じた。
    私がこの本を数年後に読んだ時どれくらい分かるようになっているのかな。

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    2025年04月22日
  • 大江健三郎自選短篇

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    2014年春に大江健三郎さんがあとがきに書いた書稿に尽きると思います。

    芸術は人間の全体に根を下ろしている習慣である。長い時をかけて、経験を通して、それを養わなければならない。そうすると自分が知らない大きさの困難に出会った際に、この習慣が助けになる。私は若い年で始めてしまった。
    小説家として生きることに本質的な困難を感じ続けてきました。そしてそれを自分の書いたものを書き直す習慣によって乗り越えることができたと今になって考えます。そしてそれは小説を書くことのみについてではなく、もっと広く深く自分が生きることの習慣となったのでした。

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    2025年04月15日
  • 個人的な体験

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    ネタバレ

    4.2/5.0

    頭部に異常を持って生まれてきた息子に対して、現実を見つめる事が出来ずに、現実から逃れようとする男。現実から遠く離れたアフリカを夢見て、不倫と性に溺れるその姿が鮮明に描かれていて、その葛藤が苦しい。
    最後は現実を受け入れ、対峙することを選択するが、実際に息子を葬り去る一歩手前まで傾いており、その選択がいかに酷なことであったかが窺える。
    文学として、厳しい現実に対する逃避と対峙の葛藤模様の緻密さが面白かった。

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    2025年04月15日
  • 新しい文学のために

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    前半の「異化」や「想像力」のくだりがめちゃくちゃ共感できますし、このように解説されることで、自分の小説を読む態度が改められ、再読も初読もより楽しめるようになると感じました。
    自己の想像力を使って小説を能動的に受けとめる、このような態度はショーペンハウアーの『読書について』でも語られていたなと思いました。

    また、ここで引用されている夏目漱石や井伏鱒二、チェーホフなどの作家が悉く私の好きな人たちだったのも即買いポイントです。(^^)

    ただ今のところ、ラストの『ヒロシマノート』にまつわる話をなぜ挿入したのかイマイチわからなかったです(序文でそれについて述べていますが)。再読のときにわかればいいな

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    2025年03月22日
  • 死者の奢り・飼育

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    4.0/5.0

    死や性、病気といったものに対する著者の感性、そして今よりもその境目がはっきりしていたであろう戦後間もない時期の、日本人としての自意識と、外国人に対する純粋な興味と、敵対心を感じた。

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    2025年03月21日