大江健三郎のレビュー一覧
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大江健三郎の2冊目。昭和39年8月に出版されたこの小説の20代後半の主人公と大江とは合い重なる設定。大江の子供「光」も脳瘤によって知的障害者として生きている。新潮文庫の巻末には大江が昭和56年1月に書いた一文が置かれている。その中で小説の終幕への三島由紀夫などの批判に対して、「経験による鳥(バード)の変化・成長を表現するという、最初の構想をまもりたかった」と記している。20代の大江が突っ伏して動けなくなるほど困惑していた子供を抱えた父親としての姿は、大江自身の言葉のように「青春」そのものを切り取っていると感じた。これから読み進めていこうと思っている大江の作品が楽しみになってきた。
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☆4.5 奇妙なスルメ小説
最後の千樫の推測のくだりで身震ひする気持になったが、なんとも奇妙な小説だと加藤典洋の書いてたままに評しよう。
どうも前半までは平坦だとおもってゐたが「覗き見する人」以降おもしろかった。ギシギシの挿話に熱中させられるものがあった。
かういふ小説は、事実背景を知ったうへで再読するとより面白く感じられるとおもふ。実際、いま再読して前半もおもしろい。
まあ評判を聞かずに読むのがいい。たぶん勝手に期待するとぴんとこない。斎藤美奈子や松岡正剛がぴんとこなかったのもわからなくはない。大江健三郎に関心がないと読めないのである。
なにしろその続篇として『憂い顔の童子』がある -
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1文が10行にわたることもあり、さらに側から見れば発狂した者の口述記録でもあるため、完全に排他的な文体となっており、私も数ヶ月前に一度読み始め、途中で断念することとなった。
今回また読み始めたのは、大江の晩年の作品『水死』を読むことを目指すにあたって避けては通れない作品だからである。
「純粋天皇」というセンシティヴかつ荘厳なテーマを、なかば発狂した者の口述を通したユーモラスな文体を採用したおかげで、また小説という“フィクション”が保険として働いてくれるおかげで、重々しくなり過ぎずに扱えている。
この本を読んで、自分は大江作品の中でも神秘主義に重きを置いた作品の方が好きだと気づいた。もちろん -
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「火をめぐらす鳥」を読んだ時点で。
大江健三郎という小説家を表すいくつもの側面があるけど、そのうちの一つは「小説の言葉で『詩』を書く作家」というものがあるだろう。この短編はその側面の最良の一つではないか。
読み終わって
大江の最後の短編集であり、まさに円熟の筆致ということもあるが、語り直し、捉え直しや新たな作品への習作となっている作品ばかりで、継続して大江を読んできた読者にはとても楽しめた。
余談ながら「読者に向けて」の「人生の親戚」誕生に関する挿話に思わず笑ってしまった。深刻な出来事を語っていてもいつもどこかにユーモアの感覚が必ず潜んでいる、とても大江健三郎らしいエピソードだった。 -
Posted by ブクログ
「著者初の本格的近未来SF」と銘打たれているが、発表当時の評価はあまり芳しくなかったような記憶がある。スペースシャトル「チャレンジャー」事故など、1980年代後半の出来事から作り上げられた世界観なので、古いと言えば古いのだが、東京電力福島第一原発事故を経た現在から見ると、作中に描かれた核戦争後の「残留者」たちの生活が奇妙なリアリティを持って迫って来るから不思議である。
ストーリーとしては決して起伏がある作品ではない。エクリチュールの緊張感という意味でも、直前に読んだ『万延元年のフットボール』に比べるべくもない。しかし、核に汚染された土地にうっそうと生える木々や雑草の力強い様子が、なぜだか印