大江健三郎のレビュー一覧

  • 「雨の木」を聴く女たち

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    「「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち」(大江健三郎)を読んだ。救済の象徴であるような『雨の木』をめぐる物語はしかし読み手の感情を抉るように鋭利である。自分の中に一本の『雨の木』があればと思う。最後の「泳ぐ男---水のなかの「雨の木」」に対する違和感が拭えないよ。難しいなあ。

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    2018年07月05日
  • 叫び声

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    ネタバレ

    芽むしり仔撃ち~性的人間の間くらいの時期、のはず。序盤の陽気さからそれぞれ破滅に向かっていく様子は、若者特有の精神的な危機をなぞるかのよう。大江健三郎を未読の人におすすめしたい。

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    2021年02月22日
  • 洪水はわが魂に及び(下)

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    アンチクライマクスが代名詞のような大江にあって、驚くほどストレート、かつ見事なカタストロフィ小説。ここまでコートームケイなストーリーでありながら絶妙に現実とリンクする、この時期の大江の咲き乱れる想像力の凄まじさ、充実は何度考えても震えがくる

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    2018年02月21日
  • 叫び声

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    フィクションをあまりに切実に受けとめすぎるというのは欠点である。しかし記憶に残るのは自分と合わせ鏡のような小説ばかりだ。おもしろい小説は苦痛を伴う。

    ところで岸政彦には彼ら3人にまたこう言って励ましてあげてほしい。
    「若いやつ頑張れよ。だいじょうぶやで、もうすぐ若くなくなるから。そうなったら楽になるからな。」

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    2018年02月19日
  • 叫び声

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    かなり読みやすい。
    皮膚をえがくのにもいちいちつきまとうじめじめとした失望感が、青春のどうしようもなく輝かしい・淡い希望にもおよんで、彼らを失意の底に陥らせる。
    この青年たちに固有の絶望感はしかし、やけに生々しく実に青春的で、どこか清々しい。

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    2017年10月26日
  • 万延元年のフットボール

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    ネタバレ

    当時の大江健三郎のあらゆるエッセンスが詰め込まれた意欲作。
    物語の設定とストーリーは、自身の故郷である愛媛の山間の村落、障害を患ったであろう子の誕生、戦後民主主義の中のアメリカ文化、学生運動と命をかける青春(跳ぶ、ほんとうのことなど)などの作者のバックグラウンドが複合して形作られている。
    同時に、冒頭の難解な長文はロシアフォルマニズムの異化の手法、弟鷹四の村落への反乱とその消滅は当時からの有力な学説であった異人による日常への祝祭の現出を採用しており、それらをすべて一つの作品で詰め込んだ内容の濃い作品なのだ。
    一度目を読むのに時間はかかるが、それだけの意味のある作者の最高傑作。

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    2017年09月03日
  • 万延元年のフットボール

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    日本人でありながら、自国からのノーベル賞受賞作家作品を読んだことがないのもいかがなものか、と思いまして。で、その大江作品の中、例の福田書評集で最も高評価だった本作をチョイス。勝手な印象だけど、何となく読み心地は村上春樹風。それをもっと小難しくした感じというか。あと思ったのは、英語みたいな日本語だな、ってこと。何を言っているのかというと、一文あたりがやたら長くて、文の途中まで意味が掴めないと思ったら、最後まで読んで腑に落ちる、みたいなあの感覚。なので読解に骨が折れる部分も少なくないけど、意外にリーダビリティは悪くない。内容は、タイトルからはイマイチ想像が出来なかったけど、江戸時代の一揆を、現代に

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    2017年08月28日
  • ピンチランナー調書

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    『同時代ゲーム』でも感じたが、大江のあまりに濃密な文章は作中に入り込んだSF的要素を一切の違和感なく読者に認めさせてしまう。原発や「転換」について様々に述べるところはあるが、愚かな一読者として、この文体に浸れることの幸せ、もうha、ha!が頭から離れないのだけれども、それだけは声高にいいはりたい。

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    2017年05月20日
  • 懐かしい年への手紙

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    大江健三郎は難解のように思われていて、じっさい簡単に読み解けるというわけではないのだが、言うほど難しくもないと思う。ただ、何通りもの読みかたができたり、いくつもの意味が込められたりしていて、たんに読むだけならまだしも、そのすべてに自分なりの解釈を与えてゆくという作業を加えると、やはり読むのにものすごく時間がかかってしまう。それに、そのことを言葉で適切に表現することも非常に困難であるが、さいわいにして本作には巻末に優れた解説があるので、そちらを適宜参照したい。同解説で触れらえているとおり、「懐かしい年への手紙」という、通常では組み合わせない単語のタイトルになっている点にまず注意する必要がある。こ

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    2017年02月20日
  • 大江健三郎

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    収録作品の是非については賛否両論あると思うが、どれを収録しても大江氏の全てっを語ったといえるものではない。
    どれもよかったと思う。個人的には治療塔が好きだ。パルガス・リョサの作風に影響を受けているのが感じられた。

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    2016年05月15日
  • 大江健三郎

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    昔々ヒロシマノートを読んだことがあるはず
    と思っているのですが、ほとんど覚えていません。
    なので、感覚としては初めての大江健三郎氏です。
    「人生の親戚」「治療塔」の長編2作が非常によかった
    と思います。
    特に人生の親戚での中心人物のまり恵の子ども達に
    おこった悲劇に関しての描写とその悲劇と向かう
    人たちの描き方は圧倒的な感じがします。

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    2015年11月07日
  • 日常生活の冒険

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    ネタバレ

    「おれはいまセックスとは何か? ということを考えているんだよ。おれはひとつのテーマについて永いあいだ瞑想するのがすきなんだ。それで三時間おれはセックスの問題について瞑想していたんだよ。考えてみろよ、昔はモラリストとかフィロソファーとかがいて、基本的な命題をじっと徹底的に自分の頭で追求したんだ。そして自分の声で表現したんだね。だから、その時代には、あの男は自然についてこう考えているとか、この男は悪魔の存在についてああいう仮説をたてているとか、町の人間がみな知っていたんだ。しかし今日では、そういうことはない。もう現代の人間どもは、いろんな基本的な命題については、二十世紀の歴史のあいだにすべて考えつ

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    2016年02月28日
  • 叫び声

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    うわぁぁぁーーーーーっ!
    確かに、しっかりと、その「叫び声」を聞いた・・・。

    「人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫び声が自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑う」(ジャン=ポール・サルトル)

    生臭さと、鋭利さと、ざらつきが一度に迫ってくるような、そんな小説。
    エロスとグロテスクとタナトスに彩られ、眉をひそめるような嫌な感覚がびしびし伝わってくるのだが、それがまた生々しくて、小説の状況とは裏腹に活き活きとしていて、とても面白かった。青春群像劇特有の疾走感も良かったのかもしれない。

    サルトルの言葉

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    2015年05月26日
  • 取り替え子

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    ネタバレ

    高校時代からの親友であり映画監督の塙吾良がビルから投身した。古義人のもとには彼の声が吹き込んであるカセットテープとそれを再生するための「田亀」があった。「田亀」をとおして吾良と会話する古義人。その姿におびえる妻の千樫と息子のアカリ。

    「田亀」と距離をおくためベルリンに赴く古義人。
    週刊誌では吾良の死因が悪い女に求められるが、吾良と千樫はそうではないと思う。
    吾良がヤクザに襲われたときのことから、吾良は自然と自分に襲いかかってきたテロルについて思いを寄せる。

    ベルリンに行く前、千樫は古義人に言う。
    彼らが学生のとき、夜中に帰ってきてガタガタになっていた、あのときのことを今度はウソをつかずに書

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    2015年02月09日
  • 私という小説家の作り方

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    ネタバレ

    想像力とは、「究極のリアリティー…すなわち、われわれが神と呼ぶところのものと接触するための、人間の心理にとって知られている最高の方法である」
    「世界は、ひとつにまとめる想像力の力を必要とする。それをもたらしてくれる最良のもの二つが、詩と宗教なのだ。科学はあたえるけれど、破壊しもする。」詩というより自分にとっては小説を中心とする文学の全体と、これという宗教が思い定められないのであれ神秘的なものへの祈念と、その二つを介して、つまり想像力の力において、私もこの世界をひとつにまとめて把握したい。自分が生まれ出てきたこと、そして今まで生きてきたし、現に生きている、そして死んでゆくけれどもその総体が生きる

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    2014年10月19日
  • 大江健三郎自選短篇

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    大江健三郎という小説家がどのような経緯で現在に至っているかがわかる貴重な一冊。初期の名作『空の怪物アグイー』や中期の名作『レインツリー』シリーズ、『静かな生活』上げていくときりがない。

    満足感でいっぱいです。

    11月8日追記
    まさか『王様のブランチ』で紹介されるなんて思いもしなかった。大江さんが言われるように一冊の本が救いになる瞬間がある。そうした本が持てる読者はやはり幸福なことなのだと思う。

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    2014年11月08日
  • 沖縄ノート

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    復帰40周年記念読書。
    「沖縄」と「本土」の埋まることのない溝を認識しつつ、かつ自身が「本土」側に属していることを痛感しつつも、沖縄のふところに深く入り込んで、本土の人間なら見て見ぬふりをしたいであろう問題を真正面から見つめ続ける著者に脱帽。

    本書の中で大江は繰り返し問う、「日本人とは何か、このような日本人ではないところの日本人へと自分を変えることはできないか」と。
    沖縄(基地)関連のニュースが出るたびに、「傲慢だ、強欲だ、日本の癌だ」と沖縄を貶めたがる人たちがいる。あるいは積極的に罵倒こそしないが沖縄問題など自分には関係ないことだと思っている人たちがいる。彼らがすなわち大江の言う「こ

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    2014年08月19日
  • 大江健三郎 作家自身を語る

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    ネタバレ

    初読。作品の時間軸に沿ってインタビューが構成されているが、作品そのものよりタイトル通り作家・大江健三郎さんについて知ることができる。話がどんどん多方面に伸びていき、大江さんの人生をたどることができる。いろんな箇所で涙をこらえながら読んだ。もう一度、すべての作品を最初から順番に読み直したいと切実に思った。大仕事ですが。

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    2014年08月18日
  • 懐かしい年への手紙

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     「万延元年のフットボール」に並ぶ、大江健三郎の代表作。自身を下敷きにしたとおぼしきKちゃんとギー兄さんを中心に展開される話に、繰り返されるダンテ、イェーツの引用とズレを伴う構成の繰り返しが波紋のような奥行きを与えている。傍点、太字、囲い文字、難読漢字、英文、伊文から旧かなに至るまで、視覚的にも効果的な表現技法が多用されており、ただただ圧倒される。
     ちなみに、私が買ったのはハードカバー(箱付き)初版だったが、「大きい【懐かしさ】に向かって」という大江氏へのインタビュー小冊子が付録としてついており、作者本人の意図が確認でき非常によかった。

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    2014年05月08日
  • キルプの軍団

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    あまり言及されることがないがとてもおもしろい。特に文学から文学をつくるという大江的手法が明示的に採られている。

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    2014年01月29日