小路幸也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ小路幸也の本ならではの味を貫いてほしかった。
作者本人が希望したのか、出版社の依頼なのか、ともかくミステリーやハードボイルドを描こうとしているのは分かるが、全然そんな風になってない(と俺は思う)
そもそも、この小説一番の読ませどころになってるはずの、少年が座敷牢に暮らす伏線なんて、ほったらかしやわ矛盾してるわ。自由に出入りできる座敷牢に暮らす血色のいい少年なんて伏線になるか!
それ以外の伏線回収も荒っぽさが目立つ。オーラスどんでん返しのつもりだろうが、主人公の回想シーンにすぎなくて「えーようにも悪いようにも取れる、解釈は読み手のご自由」ってな放り出し方に見える。解釈自由は鬼手やなぁと思った -
Posted by ブクログ
とある一族の小さな息子が、ある日、突然に周囲の人間の顔が「のっぺらぼう」になった、と。相貌失認の一種か。
父には、心当たりがあった。忽然と姿を消し、20年以上一度も会わなかった実兄が、その昔、周りに顔の見えなくなった人間がいたら知らせろ、と。
兄の過去の回想で、物語は進んで行く。
一人死に二人死に、突然死、自殺、事故死、自然死...
ミステリー要素だが、回想を駆け回るのは小学生たちの夏休みなので、どこか一種冒険譚的な要素もある。
幼少期の不思議な、また非科学的な体験を思い出す。
小路幸也氏のデビュー作。
日本の昔話などに通じるところが窺える。
突然の通り魔や狂乱する人間。それは魔がさすのだ -
Posted by ブクログ
きみは知らない/きみを知りたい
僕は動けなかった。恐怖心からではなく、男たちを叩きのめすその女性に見惚(みと)れてしまったんだ――。
その夜、カメラマン志望の大学生・木下英志は夜景を撮っていた。人気(ひとけ)のない公園で鈍い音を聞きつけカメラを向けると、そこには一人の女性がいた。彼女は屈強な男たちを叩きのめすと、車椅子の老人を伴い車へと消えた……。後日、改めて画像を見た英志は気づく。「似ている。横顔が、あの子に」
〈カウガール〉と名付けた彼女の画像を頼りに、その正体に近づいていく英志だったが、やがて彼女自身にも心を寄せていく。そして辿り着いた真相と、彼女の家族が背負った哀しい過去とは? -
Posted by ブクログ
湘南のとある家族の物語。
四人の子を持つ父親。だが、兄弟は皆母親が違う。一つ屋根の下。ある日、父は「楽園の話を聞いてくれないか」と、言い残し、旅立つ。
産むつもりではなかったのに産まれてしまった子、経済的理由で捨てられた子、虐待から逃れた子、望まれて産まれてこなかった子...
も、世の中にはいるわけです。
しかし、出生はなんであれ、育て上げられた環境がどんなに重要か。
赤ちゃんポストの意義と意味を反芻する。
賛否を問うのはそこなのか、と。
母になったあなたはどんな気持ちで、これを読み終えるのかな。
一冊を通して、実に爽やかで前向きな作品でした。家族ものを書かせたら、やはり小路幸