井沢元彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
今回も、前巻までに引きつづいて江戸時代の歴史があつかわれており、アイヌの歴史、本居宣長と平田篤胤の思想、ロシアの来航とそれに対する幕府の対応、そして薩摩藩や長州藩の藩政などが解説されています。
幕府の対外政策については、朱子学的な発想によって現実を正しく見ることができなかったという、従来の著者の主張がくり返されています。著者は、朱子学を「宗教」だと断じていますが、このばあいの「宗教」は現実を歪めて認識させるイデオロギーというくらいの意味なのだと思います。そのうえで著者は、現代の「常識」にもとづいて、「宗教」的な認識のゆがみに対する否定的評価をくだしています。
著者のようなしかたで、明快に歴 -
Posted by ブクログ
ネタバレとてもわかりやすくて知識がすっと入る文章でとても読みやすかったです。楽しく歴史を学べます。
しかし内容には証拠がなく著者の考察が大半を占めているので事実と鵜呑みにせず一つの仮説と思って読む必要があります。
仮に真実だとしても言霊、怨霊信仰、穢れなど精神論を歴史に当てはめているので証明することはできません。
歴史学者を攻撃的に否定しており、確かに間違いがあったのかもしれませんが、あまりに攻撃的な書き方で著者の感情が現れすぎていて不快な部分もありました。教科書は歴史的証拠を基に事実を伝えるので妄想は書けないのでしょうがないと思います。
歴史についての考え方、内容については本当にわかりやすく、そうだ -
Posted by ブクログ
この巻は「江戸名君編」というサブタイトルが示しているように、徳川光圀、保科正之、上杉鷹山、池田光政といった人びとの業績がわかりやすく解説されています。
すでに著者は、水戸家が「徳川家の安全装置」であるという独創的な考えを語っていましたが、本書ではその考えを敷衍した議論がおこなわれており、明治維新へと日本を動かしていく力をもつことになる尊王思想の源流をさぐっています。また、江戸時代の識字率の高さがどのようにして実現されたのかということを、通史的な観点から解き明かす試みもなされています。
この巻では、状況証拠にもとづく著者の憶測をつないでいくような論証がめだち、やや危うさを感じるのも事実ですが -
Posted by ブクログ
この巻では、新井白石の正徳の治から、吉宗の享保の改革、田沼意次時代を経て、松平定信の寛政の改革までがあつかわれています。
田沼意次にかんしては、大石慎三郎が名誉回復を図ったことが知られていますが、著者もその立場を引き継いでいるようです。とくに辻善之助の『田沼時代』(岩波文庫)については、田沼の業績を正当に評価していないとして、厳しく批判されています。そのうえで、儒教思想の商業蔑視の考えが江戸時代の経済政策を大きくゆがめていたとして、吉宗や松平定信に対しては辛い評価をくだしています。
江戸幕府の経済政策の問題点を指摘する著者の議論は、おもしろく読みました。その一方で、国際的な環境の変動も視野 -
Posted by ブクログ
この巻では元禄時代の政治と文化があつかわれています。
赤穂事件の真相について著者ならではの観点からその真相にせまり、さらに綱吉によってはじめられた側用人のシステムが、家康以来の江戸幕府の統治の仕組みをどのように改変するものであったのかということが語られています。
また、朱子学を中心とする儒教的な考えかたが江戸幕府によって取り入れられ、とくに商業を蔑視する発想が非合理的なものであったという著者の主張が提示されています。そのうえで、この時代に日本には世界にも類例のない商業倫理が形成され、このことがアジアのなかで日本がいちはやく近代化に成功したことの理由であったと論じられています。この考えは、著 -
Posted by ブクログ
「逆説の日本史」は井沢元彦が一貫した観点から日本史全体を丁寧に解説してくれています。これだけ自分の頭で考え、綿密に自分の言葉でしつこいくらいにわかりやすく語ってくれる歴史書は他にありません。ただ、彼はその主張を逆説の日本史で書いているだけでは物足りないのか、様々な別の本を次々に出しています。もう逆説の日本史は30年間描き続けているのに、まだ終わりません。
もう明治維新後の話になっていますので、さすがにそろそろ完結までのストーリーは見えているのかと思いますが、単行本は25巻で「日英同盟」ですから最終的に28巻くらいまで行きそうですね。
単行本を買いたいのを抑えて、文庫本が出るまで買わないようにし -
Posted by ブクログ
新型コロナのおかげですっかり感染症まわりの一般書が増えたが、本書は歴史家が語る一冊。天然痘、梅毒、インフルエンザ、結核……と日本を襲ってきた疫病がどんな影響を与え、歴史を動かしてきたかを記している。
平清盛のマラリア説はこれまでによく目にしたのだが、歴史的な人物と感染症という切り口はなかなか興味深い。中でも黒田官兵衛の梅毒説はインパクトがあった(詳しくは本書で)。
今回、日本で新型コロナウイルスが感染爆発しなかった要因「ファクターX」の一つとして、「マスク着用や毎日の入浴などの高い衛生意識」が候補にあがっていたが、本書によれば昔はそうでもなかったようだ。
中世だと「京都の貴族たち -
Posted by ブクログ
本巻では、元禄時代にさしかかるまでの江戸幕府の鎖国政策、武断政治から文治政治への変遷、さらに茶道、歌舞伎、儒教などの文化史があつかわれています。
本巻があつかう江戸時代初期において朱子学が支配体制を正当化するイデオロギーの役割を果たしたという見方は、丸山眞男の『日本政治思想史研究』(東京大学出版会、1952年)でも採用されていますが、こうした見方については尾藤正英が『日本封建思想史研究』(青木書店、1961年)においてつとに批判しており、朱子学がじっさいの政治にどのような影響をあたえていたのかということは、もうすこし慎重に判断するべきではないかと思います。
また著者は、「儒教は、こうした慰 -
Posted by ブクログ
この巻では、関ケ原の戦いから豊臣滅亡までの経緯と、家康によって江戸幕府の礎石がどのようにつくられたのかということがテーマになっています。
前巻とおなじく、天下を取るためにはたんに戦いに勝利するだけでなく、支配をどのように正当化するのかということが大きな問題になるという点についてのわかりやすい説明がなされています。基本的に著者の立場は英雄史観なので、シリーズのどの巻もおもしろく読めるのですが、戦国大名たちの武力による戦いよりも権謀術数や政治工作などにおける彼らの英雄ぶりが語られていて、手練れの推理小説作家でもある著者にはお手のものなのかもしれませんが、おもしろく読むことができました。 -
Posted by ブクログ
本書のテーマは信長の二本統一事業を引き継いだ秀吉です。前半は、本能寺の変以降、秀吉が天下人となるために、みずからの政治的支配の正当性をどのように裏づけようとしてきたのかということがくわしく語られています。また後半は、秀吉の朝鮮出兵のねらいを、現代のイデオロギーにもとづく恣意的な評価から自由な立場に立って見なおすという試みがなされています。
秀吉の朝鮮出兵にイエズス会の動向を関連づけるという著者の見方はあまりにも意外で、まだその妥当性を判断しがたいように感じています。もう一つ気になったのは、著者が儒教思想について、歴史を歪曲する原因としかみなしていない点でしょうか。もちろん歴史的事実を追求する -
Posted by ブクログ
本巻では、織田信長の天下統一の企図にせまる試みがなされています。
著者は、下部構造が上部構造を決定するというマルクス主義史学を批判しており、そのために英雄史観的な歴史の見方が色濃く出ています。とくに本巻では、著者の信長への愛が押し出されており、歴史的な事実の評価に現代の常識を持ち込んではならないとつねづね主張する著者のほうが、信長に時代を超越した壮大なヴィジョンをあたえてしまっているようにも思えます。
とはいうものの、著者の熱い語り口が読者をぐいぐい引っ張り込んでいく魅力をもっていることは事実です。とにかくたのしんで読むことのできる内容でした。 -
Posted by ブクログ
本巻では、応仁の乱から山城の国一揆および加賀の一向一揆までの歴史と、能を中心とする室町文化について説明がなされています。
本書のような読みやすい日本史の解説本のばあい、無責任極まる室町幕府八代将軍の足利義政と、恐妻の日野富子というキャラクターに焦点があたってしまいますが、本書では政治的混乱を生み出した背景についてもかなり立ち入ってていねいに説明がなされており、興味深く読みました。
将棋をモノポリーにたとえるなど、著者の連想が大きく飛躍しているように感じられるところもありますが、それも含めてこのシリーズのおもしろさなのではないかと思います。 -
購入済み
毀誉褒貶が激しいかもしれないが
井沢氏の歴史ものは時折歴史の専門家以上の分析力を膾炙しているようだ。ただ結論に対しては毀誉褒貶が激しいようだが、大人の読者であれば今回の書のように確実に真相の解明と思われる個所を知識として習得するだけでも十分な価値があるのではないかと思っているのだが。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ源氏物語多作者説を軸に、南朝伝説をからめ、さらに太平洋戦争発端を絡めた物語。
学生時代の角川書店創業者を主人公に、柳田国男、折口信夫等が出てきて、タイトルから平安朝を中心に展開するかと思いきや、足利幕府、南北朝、さらにアメリカのスパイだのが出てきて、真珠湾攻撃に至るという予想外の展開だった。
ただ、「なんておう」の末裔が現当主と孫娘だけという時点で詰んでるやん!と思ったのと、「なんておう」家に伝わる「本物」三種の神器云々に、いやいや、そのうち二種は形代でっせと思いつつも、まぁ小説やしなと読んでいく途中で金田一耕介が不必要に登場したため、最終的な読後感想が、角川書店の創業⚪⚪年記念作品ですか?に -
Posted by ブクログ
この巻では、沖縄の歴史をひもとき、倭寇の正しい姿を解説し、さらに中国の冊封体制と種子島の鉄砲伝来との関係について説明するところからはじまっています。著者は、現代の日本人にとってこれらの史実がもつ意味を正しく認識することがむずかしいといい、シドニー五輪で柔道の篠原信一がいわゆる「世紀の大誤審」により金メダルを逃した事件に言及することで、現代の国際社会において日本人が心に留めておかなければならない教訓を読み取ろうとしています。
後半は、毛利元就、武田信玄、織田信長という三人の戦国武将がとりあげられます。「戦国大名はだれもが天下統一をめざしていた」という理解は、じつは信長によってその偉業が成し遂げ