井沢元彦のレビュー一覧
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大学受験のとき、「落ちる」とか「滑る」とかそういった言葉を自然に避けようとした。言霊が宿り、現実のものになってしまう、という考えはある程度馴染みのある考え方である。
「言霊」の害毒は、言葉を信じすぎて、思考停止状態に陥ることである。平和憲法という「言霊」の事例がある。平和憲法を守れば日本も世界も平和なままである、といった事例は宗教的信念に近く、合理的な説明がつかないものと断じている。
「ペリーは突然やってきた」という日本人の歴史認識の大誤解、という章節から始まる本書で、日米交渉史の始まりとその時代の国益とは何だったのか、最も合理的な選択は何だったのか、合理的な選択を取れなかったのはなぜか、に思いを巡らせることができた。 -
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水戸光圀にはじまり、保科正之、池田光政など江戸の名君といわれた殿様の事績を中心に紹介する。僕が特に印象に残ったのは米沢藩における上杉鷹山の改革。TVなどでは改革の理想像のように扱われる事も多いが、流血を伴う断固たる決意をもった改革だった事が書かれていた。反対派を話し合いで説得する、というのがいかに難しいか、というのがよく分かる歴史の教訓と言える。
後半部分では、落語や俳句といった江戸文化の発展について書かれている。芭蕉の名句「古池や~」という俳句は、古池にカエルが飛び込む情景を詠んだものではなく、カエルが水に飛び込んだのを見て、古池の情景が頭に浮かんだ、という解釈を紹介していて興味深かった。 -
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日本史は元来好きだったのですが、自分の中ではあまり触れることが少なかった平安時代以前の歴史の面白さを教えてくれたのが、この本の著者の井沢元彦氏です。逆説の日本史シリーズは毎年秋口に単行本が出るので楽しみにしています。
この本は井沢氏がその大作の執筆の合間に書かれた本だと理解していますが、「学校では教えてくれない日本史の授業」というタイトルで文庫本で出されているもので、12の分野について講義の形で書かれています。
源氏物語、平家物語が書かれた背景を説明されていますが、日本というのは本当に面白い国なのだなと思いました。幕府と天皇が共存している等、日本には他国では見られない特徴がありますが、それらも原因があって今に至っていることが分かり面白かったです。
以下は気になったポイントです。
・綱吉がやったことの意味を、同時代の文献だけで測ることはできない。その本当の意味は、それをやった結果、世の中がどのように変化したかを長いスパンで見ることで見えてくる(p42)
・戦国末期の日本の総石高は1850万石、将軍家は400、旗本・譜代大名の合計は300万石の合計700万石、薩長が幕府を倒せたのは、財政を立て直すことができたが幕府はできなかったから(p48)
・信長秀吉時代には、土地から収穫できるおコメを換算して、当時の通貨単位である「貫」を用いて、銭何貫として表していた(p64)
・商売は卑しい行為なので、商行為を奨励してもいけないし、税金を徴収することは絶対にしてはいけないとされた(p67)
・江戸時代に特有な、貴穀賎金、商売蔑視、尊王思想、士農工商もすべて朱子学からきている(p75)
・勝海舟の曽祖父は、盲人にだけ特別に許された職業、高利貸し業で巨万の富を築いて、その資金で旗本株を買った。これが認められたのは養子縁組という体裁をとっていたから、これは儒教の強い中国や韓国では認められなかった(p79)
・モンゴルは騎兵の力で世界各国を征服したけれど、海に囲まれた日本は騎兵というモンゴル最大の強みを活用できなかった、これが日本が元軍を退けられた最大の理由(p95)
・大政奉還が成り、慶応最後の日に明治天皇は、四国の香川県坂出にある崇徳上皇(平安末期)の御陵に勅使を派遣している。それは明治天皇が心から怨霊の祟りを恐れていたから(p234)
・聖武天皇は、長屋王の祟りと天皇の死という大きな怨霊と穢れから逃れるために、わずか5年の間に、4度の遷都をしている(p249)
・748年に聖武天皇は元号を「天平感宝」と改めた、大仏造立のために必要としていた黄金が陸奥で見つかったから(p251)
・遷都、新仏教の力をもってしても怨霊に敵わないので、ついに怨霊を名指しして謝罪し、礼を尽くして鎮魂するという「怨霊信仰」が生まれた(p268)
・お経とは、本来仏教の教えを説いたもので、怨霊を鎮めるための呪文ではない(p309)
・琵琶法師に語らせれば、鎮魂に携わる人の範囲は大きく広がる。聞くだけでいいので、文字の読めない庶民にまで範囲が広がる(p325)
・読み書きの前に大切なのは、読み書きできるようになりたい、と思うこと(p330)
・生前の存在が大きければ大きいほど、高貴であればあるほど、それが亡くなったときには巨大なマイナスになる、それが遷都である(p352)
・自らの穢れを自覚し、実権を握ることを希望した武士と、どうせいらないものなのだから武士におしつければよいと思った天皇家で、利害が一致した。これば両者が並存できた理由(p364)
・きれいな水は穢れを洗い流す力を持っているので、川に橋を架けなかった、なので被差別部落はほとんどが橋のない川の向こうにある(p369)
・死や血を穢れとする文化は、どう考えても狩猟文化ではない(p376)
・新嘗祭(11/23)は最新の五穀を神様にささげて、それを天皇が自ら食するもの。この祭りは、天皇が日本における農耕文化(穢れ=毛枯れ)の長であることを意味している(p377)
・1925年に太平洋戦争を予言したような本が日本で発売されていた(p398)
・チンギスハーンは、大虐殺(シャーリゴルゴラ)を行った後に、その都市が使えなくなり、退却している。一度に全員殺したので死体が腐って悪臭が町に充満したから(p469)
2014年9月15日作成 -
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15巻を飛ばして本巻を読んでしまったが、まぁ、江戸時代のことだからよしとしよう。
15巻は内政史、本巻は文化史ということでもあるので。
いっとき著者のしつっこさについてけない時もあったが、だんだんとその執念に敬意を感じるようになってきた。もちろん、あまりに大雑把すぎるろ論証も多く、納得できない点もあるのですが・・・
本巻で言えば、鎌倉後教育史に当たる部分。大筋は納得できるのですが、あまりに、大雑把すぎて、本当に、日本人の当時の教育水準の高さを説明しているのか、今一つでした。
蛮勇とも言える試みで、荒さは仕方ないと思うが、その時代の専門家の必要性もあると思う。
井沢通史が完成したら、次は、専門家とコラボ、あるいは、徹底的な論争でもいいので、ぜひ、読んでみたい。 -
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末位から関白まで上り詰めた豊臣秀吉こそ下克上の象徴であるにも関わらず、織田信長や徳川家康に比べると些か劣る印象を持っていた。しかし本書では一冊を秀吉に充て、彼の人たらしの「大悪人」としての天才性を取り上げる。
自分の身分を心得、巧みに織田家や徳川家を排除する様は天才謀略家と言えよう。第5章では「朝鮮征伐」をスペインを代表したカトリック教への抵抗を目的とした明制圧とする説も面白い。
第1章 豊臣秀吉、その虚像と実像編
第2章 秀吉、天下乗っ取りの大戦略1
第3章 秀吉、天下乗っ取りの大戦略2
第4章 秀吉の天下統一経営1
第5章 秀吉の天下統一経営2 -
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織田信長に一冊を裂く。天才信長にはそれ程の価値がある。筆者が言う「天才の偉業はその後の常識になる。現代の価値観で計っても凄さは理解できない」には深く同意したい。
いつもながら筆者特有の冗長性や偏向性はやや気になるものの、視点は鋭い。特に延暦寺・本願寺との戦いは、宗教弾圧ではなく武闘勢力の弾圧であり、現代から見れば虐殺でも当時としては正当性があった、という論説はなかなか興味深い。信長は残虐性だけが取り上げられがちだが徹底した顧客主義(庶民)だった点も、他にはない卓越した分析だと思う。
第1章 織田信長の変革編
第2章 信長vs宗教勢力の大血戦編
第3章 新しき権力の構築編
第4章 本能寺の変 神への道の挫折編