井沢元彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
逆説の日本史シリーズでお馴染みの井沢氏による本で、最近本屋さんで文庫本化されているのを見つけましたので読みました、単行本は2019年頃に出ている様ですね。
今まで彼の本は何冊も読んできているので、読んでいて納得することばかりです、やはり日本人というのはこうなのだな、と思ってしまいます。良い面も悪い面もある、これが特徴なのでしょうね。
以下は気になったポイントです。
・聖徳太子の憲法十七条(604年制定)における第一条、「みんなで話し合って物事を決めれば必ず正しい」そして、十七条(最後)には「重大なことながは一人で決定してはならない、必ず多くの人々とともに論議すべきである」と言っている、重大な事柄を論議するに当たっては或いはもしか過失がありはしないかという疑いがある、だから多くの人々とともに論じ是非を弁えてゆくならば、その事柄が道理に叶うようになるのである」と書いてある(p33)
・徳川家康は、わざわざ息子の中で一番おとなしい秀忠を選んだ上、自分の権力をわざわざ複数にばらした、老中5人の合議制にして、将軍は老中が合議で決めたことに対してハンコを押せばいいというシステムにした、必ず全員一致とした、そのためにお互い妥協点を探り合って、皆が納得する形にした、これが日本の民主主義と呼ばれている(p46)一人で決めることは悪だから、将軍にはやらせずに「大老」を置いて、悪いことは大老に泥をかぶってもらう(p49)
・事変とは、社長のいうことを聞かないで部下が勝手に、会社がつぶれるか、潰れないかの社運に関わるようなプロジェクトを実行しているということ、日本においてそれができてしまうのは、本当の意味での絶対権力が存在しないから(p51)
・日本の正当な所有者、支配者がなぜ天皇家なのかというと、それは「オオクニヌシとの話し合いで譲られた」から、戦争で取った訳ではないとされている(p60)
・徳という字を使っているから儒教と思うのではなく、怨霊鎮魂であるという、日本古来の思想である。この始まりは、10世紀の900年代冒頭、菅原道真の怨霊騒動が起きた辺りからと言われるが、もっと遡って、奈良の大仏を建てた理念、今回の憲法17条を大切にするのも怨霊信仰の裏返しである(p68)
・オオクニヌシがアマテラスの子孫であるニニギノミコトに国譲りをしたときの条件として、1)現世の政治(アラワゴト)はアマテラスの子孫である天皇家がやる、オオクニヌシは「カクリゴト)=直接政治に関りのない運命とか宿命を支配すること、2)アマテラスの子孫は、オオクニヌシのために大きな神殿を建ててお祀りをして、お仕えすることであった(p75)
・信玄と謙信が5回も戦って決着がつかなかったのは、双方が名将というのが定説だが、決着できる余裕がなかったのが真相だろう。戦争は旧暦10月から初雪までなので、1年のうち2ヶ月程度、さらには、無茶な戦術は取れない。2割も兵士を失ったら戦闘に勝ったとしても実は敗北である、その分の農作業労働者が失われて生産性が落ちるので(p91)
・信長と秀吉が、信玄と違って本拠地を移動できたのは、彼らの軍団は一年中稼働できる兵士であったから、だから信長は天下を取れた(p92)
・リーダーシップを取るのが上手な人は、ガス抜きというか、みんなで話し合ったという形を取る様にする、最悪なのは自分たちが無視されていると感じさせること(p101)
・外国の差別というのは、お互いに違いがあって、その違いを認めないということ。ところが日本の場合は、差別する側と差別される側に、人種的な違いがない、宗教的な違いも少なくともある様には外国人の学者には見えない。差別としては一番悪質ということになる(p122)
・タブーには2種類ある、1)神聖なものだから汚してはいけない、2)汚いから触ってはいけない、その汚さが伝染するから、という意味がある。「穢れ」はどちらかといえば汚いということ。清浄の「浄」とは、前は汚かったけれど今は綺麗になった、綺麗になっていないものが「穢れ」ということ(p129)これを消すには、石鹸では落ちない、水に流せば落ちる。このことを「禊(みそぎ)」という(p131)
・藤原京は平城京の時代になって、親が使っていた宮殿をまた息子が使う様になった、死穢の問題はどうやって解決したかというと、持統天皇から火葬にするようにした(p138)
・日本には70%が山地であるおかげで、保水力があるので、山からじわじわと綺麗な水(=天然で濾過された非常に美味しい水)が伏流水として流れ出てくる。だから日本ではお茶は、嗜好品であったが、外国では昔はお茶は「必需品」であった、煮沸した水にお茶を入れ、さらに葉緑素とカテキンで消毒作用することで、やっと飲めた(p166)イタリアにはいい温泉は若干あるが、水はまずい。日本は温泉に恵まれている上に、飲水も美味しい(p170)
・菅原道真の正式な神様としての名前は「火雷天神」とされ、これを祀った神社のことを「天満宮」という、地方にある神社は、天神社、天神様という(p200)
・今、戦争絶対反対という人がいるのは、第二次世界大戦で約300万人の日本人が死んだからだろう、それ以前は戦争に勝つことで、日本の国権や国益が増大していったのは紛れもない事実であった(p205)
・昭和天皇はみだりに戦争をすることは反対、東條英機も戦争はしないように、と言っていたが、この言葉に背いて戦うことを決意した。その理由は「英霊に申し訳ないから撤兵できない」ということ、中国から完全撤兵したら、日清・日露戦争で倒れた十数万の兵士たちが、全員「怨霊」になってしまう(p208)
・朝廷がなぜ権力を幕府に奪われたか、国家の要である軍事警察権を放棄したから、それを拾い上げたのが鎌倉幕府である(p216)日本の封建時代の政治は、軍事警察権を朝廷から預かっていた、という形式で成り立っていた。最初は軍事官僚に任せていたが、彼らも次第にそれを嫌がる様になったので、結局、自警団である武士たちがそれを担う様になった(p217)
・幕府というのは、中国語で元々は皇帝のいる都から遠く離れた土地に設けられた臨時の前進基地のことをいう、そこにいるのが軍団長の将軍で、軍団は異民族と戦っている(p218)鎌倉幕府とは、形の上では、最初は関東以北の東北地方を監視する軍団の長である、征夷大将軍が、臨時に駐屯している場所であった。なので、天皇から正式に任命された征夷大将軍は、税金をとっても良いし、徴兵しても良いという形であった(p218)
2022年9月19日作成 -
Posted by ブクログ
読もう読もうと思っていたけど、なかなか縁のなかった日本史推理エッセイ集。近所の怪しげなDVD屋で50万円で売られていたので、まず1巻を購入。さすが乱歩賞受賞の井沢元彦さんの著作だけあって、学術書の雰囲気はなく、娯楽性の高いエッセイ集でした。個人的には歴史推理モノは好きで、「隠された十字架」(梅原猛)、「成吉思汗の秘密」(高木彬光)、「時の娘」(J・ティ)は夢中で読みました。本作も時間を忘れさせてくれました。
本書はもともと「週刊ポスト」(小学館)が平成4年から続いている連載。ある程度、内容がたまると単行本として刊行され、現在26巻「日露戦争と日比谷焼打の謎」が発行されています。
本書で井沢さんの推理の基本になっているのは①従来の歴史学会の権威主義、史料至上主義への批判(すなわち『時代で常識とされていたことは記録されなかった 』という前提)②日本史の形成における「言霊、和、怨霊、穢れ」への無意識の信仰に基づく非論理的な日本人の行動です。
なるほど、上記2点を前提とすれば日本史も違う景色が見えてきます。
例えば
・魏志倭人伝の「倭」は「環」→「和」が由来。聖徳太子の十七条憲法は「和」の精神すなわち「話し合い至上主義」である
・大国主命は殺害された。出雲大社は大国主命の怨霊を封じ込めるための「霊魂の牢獄」
・卑弥呼が死んだのは紀元248年9月5日。この日に皆既日食が起きている。この事件には卑弥呼の死と天照大神の間の重大な関係が背景にある
冒頭にも書いた通り娯楽性の高い歴史エッセイ集で時間を忘れて読みました。明日、第2巻「古代怨霊編」を探しに怪しいDVD屋に行こうと思います。
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Posted by ブクログ
この本は、日本史を新しい視点で丁寧に説明してくれるので毎回楽しみながら読んでいる。歴史上の出来事はそれなりに知っているのだが、その出来事が起こった理由や背景についてはよくわかっていないのが普通である。この本によって歴史に興味を抱いた人は大勢いることだろう。
日清戦争や日露戦争については、勝ったという事実だけ教えてもらったが、どうして勝てたのかについてはなんとなく理解しているだけである。よっぽど中国やロシアが弱かったのだろうと漠然として思っているだけであった。しかしこの本を読んでわかったのは、まさに奇跡的な勝利なのである。清の北洋艦隊というのが、7,300トン級の戦艦に対し日本は4,000トン級でしかなかった。そして銃砲も清の方が新しい装備であったのだ。
台湾の統治はうまく行ったのに対し朝鮮の統治がうまくいかなかった理由もよくわかっていなかったが、徹底的に詳しく述べられているので腑に落ちた。 -
購入済み
爽快感さえ覚える
作者は「逆説の日本史」で有名であるが、この作品はその前身とも言うべき本である。
「逆説の日本史」と内容がかぶっているのはやむを得ないが、イッキ読みする日はこれくらいのボリュームがちょうどよい。
怨霊信仰 言霊 というキーワードを使って歴史の謎を解き新解釈を加えてゆく手法には、いつものことながら爽快感さえ覚える。もっとも牽強付会のきらいがないでもないが。