井沢元彦のレビュー一覧
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このシリーズは文庫本とデジタル本の両方で揃えているのですが、最近文庫本を1巻から再読を始め、7巻目が終わりました。この巻は後醍醐天皇から足利義教までを書いています。後醍醐天皇がどういう人で何をやったのかということは、表面的なことを追っていてもつまらないのですが、この本はとても丁寧に説明してくれます。後醍醐天皇が吉野山の山中で無念の思いで死んで、足利尊氏の一族を滅ぼすこと、このことに背くようなら後継ではないという強烈な遺言がどんな影響を与えたのか。尊氏の優しさが南北朝時代を後醍醐の死後53年も続いた原因になり、混乱を終わらせたのは足利義満の非情さであったこと。
太平記についても詳しくその由来 -
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主に鎌倉時代を扱った巻であるが、この本を読んでやっと鎌倉幕府の成立の背景や鎌倉仏教について分かった気がする。数年前に読んでいたのだが、仏教の話はあまり興味がなかったので読み飛ばしていた。しかし仏教のことがわからないと、日本史がわからないし、日本そのものがわからない。毎回感心するのだが井沢元彦はほんとうに噛んで含めて教えてくれる。
護国のために導入した仏教が、鎌倉時代にさまざまな新しい宗派が登場する背景とその主張について理解しようとしたらたいへんだが、丁寧に説明してくれる。たとえば「浄土」というのは仏の支配する世界の名称のことで、阿弥陀如来の支配する浄土だけを極楽浄土というのだ。そして阿弥陀如 -
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『逆説の日本史 5 中世動乱編』
井沢元彦
この巻では、鎌倉幕府の成立を中心に、源氏と平家の争いを「源平合戦」ではなく、源氏内部の争い=“源源合戦”として捉えることで、歴史の見方を大きく変えている。
- 源頼朝と北条一族編
北条時政の謀略によって、源氏の中で頼朝が台頭し、幕府成立へと導かれる。
- 源義経と奥州藤原氏編
義経は「戦術の天才」だったけれど、頼朝の「戦略」を理解できず、悲劇的な最期を迎える。
- 執権北条一族の陰謀編
教科書では語られない、北条家による権力掌握の裏側が描かれる。
- 悲劇の将軍たち編
「言霊将軍」実朝の暗殺事件の黒幕に迫る。 -
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このシリーズはすでに読んでるのであるが、再読することにした。天皇を中心とした朝廷政治から、武士による社会に転換してゆく時代をきわめて丁寧に教えてくれる本である。まず、我々は源平の戦いと教えられているが、源氏と平氏が戦っていたのではないことは、頼朝を支えていた北条氏が平氏であることからも明らかなのだ。基本は武士が自ら開墾したり実質的に管理している土地の所有権を朝廷に認めさせる戦いが鎌倉幕府を成立させた本質なのだ。平氏は権力を握ると結局貴族と同じ道を選んで、武士の土地所有権を認める社会を作ろうとしなかったために、東国の武士が立ち上がったのが、現象的には平氏を追い詰める権力闘争となったのだ。
頼 -
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5年前に読んだ本を再読しました。井沢元彦の本は何度読んでも面白いし、特に古代怨霊編は著者の真骨頂が遺憾なく発揮されているので興奮する。今から30年も前に書かれた本なので、聖徳太子の実在生については少し疑問な点がなくもないが、著者のように聖徳太子を捉えるとその実在性に矛盾はない。そして天武天皇の出目について著者のように捉えるからこそ、持統天皇の異常とも言うべき孫(軽皇子 文武天皇)への継承への執念がなぜそれほど凄かったのかということ。そして長屋王一族を自殺に追い込むまでして聖武天皇に継承させた理由も、天武天皇の出目について推理せずに天智天皇の同父母の兄弟と思っている限りわからないのだ。
このシ -
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これまで「通説」とされてきた歴史について、井沢元彦さんが、独自の視点で異論を唱えるという形をとっている本。言霊(コトダマ)と怨霊信仰、穢(ケガレ)の概念からとてもわかりやすく解説していて、歴史の面白さを感じることができる。
古今和歌集の六歌仙や源氏物語が怨霊信仰から生まれたこと、日本人の平和や軍隊に対する偏見や、穢多・非人と呼ばれた人々への差別意識は、平安時代からの日本独特のケガレの思想が影響していることなど、目から鱗である。
平将門の乱や白河上皇の節操のなさ、武士の世は崇徳上皇の呪いによって実現したことなども興味深く読むことができた。
また、国が国民の安全を守るのは当然のことで、その -
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この本は、すでに単行本を読んでいたのであるが、文庫本シリーズを収集しているので、あらためて読みましたが、とても素晴らしいと改めて思いました。ここまで懇切丁寧に日本史を説明されると、いろんなことが腑に落ちます。たとえば韓国併合のことですが、どうしてここまで韓国の発展ために多くの犠牲を払ってきたのに、韓国人はここまで日本人を敵視するのか。同じく、どうして中国では天安門事件とか、多くのことが明らかとなって、ネットとかで調べれば中国が専制的な支配が行われていることが明らかなのに民主主義への運動が起こらないのかが、理解できます。文化大革命という名のクーデターにより数千万人もの人々の命が奪われたというの
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購入済み
歴史の教科書の危うさ
若き頃学んだ歴史は自分のなかではいろいろと書き変えられている。もともと歴史に興味がありその類の情報を集め空想をめぐらせてきた。井沢氏の作品は例えようもない光を頂いている。もっと若いうちに出会いたかった。
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最初から最後まで、知的刺激に満ちたおもしろ日本史。
学会レベルでどれほど認められるかは難しいところがあるが、説得力に富んだ内容であることは間違いなく、何より専門学者を疑いながら自らの頭で考える姿勢が好ましい。
専門の歴史学者の弊害についても、3つの欠陥を喝破している。
第一に日本史の呪術的側面の無視ないし軽視、第二に滑稽なまでの史料至上主義、第三に権威主義。
何より日本の歴史学者が西洋の合理的思考に支配されることで見失ってしまった歴史の本質を抉り出そうとする視点の素晴らしさが冴え渡っている。
「倭」とはもともと古代日本人の集落である「環」であり、日本人の国家意識の成長とともに「日本」人であるこ -
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世界史でも「逆説」のスタンスは貫かれている。なにしろ徹底的に自分の頭で考える歴史になっている。そもそも歴史というのは勝者が書き換えた歴史が前提となっているのであり、通り一遍のことを書かれているのであれば、いまさら学ぶ意味はない。だが、この本は我々が疑問に思うことについてかなり突っ込んで書いてくれる。たとえばなぜインドで発生した仏教がインドで今では信者がいないのか?多くの地域で多神教は一神教に敗北しているのに、日本では多神教が生き残っているのはなぜか等のことをしっかり論じてくれている。宗教は大きく歴史を動かしているのに、そのことが理解できない日本人にとって、世界史は分かりづらいのだが、この本は
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井沢元彦氏の「逆説の日本史」はやはり凄いと読むたびに思う。30年以上かけてやっと26巻で日露戦争が終わったところである。
私は文庫で揃えたいので文庫化するまで待って読んでいるのだが、週刊ポストの連載からはかなり遅れるのだが、それを読むこともしないし、単行本を買うこともしないでひたすら文庫本になるのを待って読むことにしている。日本史は、この本を読まないとわからないことが結構沢山あると思う。たとえば、日露戦争における陸軍軍医の最高権力者は、高瀬舟などの名作を多く遺した「森鷗外」なのであるが、日露戦争中に陸軍では脚気で2万7千人もの死者を出している一方で海軍では殆ど出さなかった、その責任は森鷗外