井沢元彦のレビュー一覧
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この巻は、秀吉から家康に天下が移る過程を中心に描いているのだが、石田三成や福島正則、加藤清正らの諸将がうまく家康に操縦されていく背景を丁寧に説明してくれます。関ヶ原の戦いは、語り尽くされているように思えますが、戦国時代の大名たちが当時の状況下でどんなことを考えていたのかが想像されて興味深い。それからわずか14、5年後に大阪の陣が起きるのですがこの時には大名のうち誰一人として秀頼側に就こうとしなかったという現実は、私たちに厳しい現実を教えてくれます。
太平洋戦争における「失敗の本質」も教訓的なのですが、関ヶ原は秀頼だけでなく、毛利や長宗我部にとっての失敗の本質を考えさせてくれる貴重な史実だと改 -
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2020年に読んだ本の再読。戦国時代については3冊に分かれていて最初の1冊目である。この人の本は私たちが気付かないままなんとなくボヤッと理解している歴史の深層を教えてくれるのだが、戦国時代は我々に馴染みが深く知らないことは少ないと思い込んでいる。そしてなぜそのような展開になったのかなんてこともよくわかっていない。信長が義昭を将軍として立てて上洛する前の京都の状況なんて、三好3人組だとか、松永久秀とか実はよくわかっていなかった。毛利元就についても、安芸の山奥の国人の次男が、どうして中国から九州にかけて13国の大大名になったのかよくわかっていなかった。そんなことを丁寧に教えてくれる本である。なに
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この手の本でこんなに夢中になって読める本ってあまりないと思います。再読も8巻まできましたが、面白いので500頁足らずの文庫ですが、2日くらいで読んでしまいます。並行してもう一冊読んでるのが、新書で羽柴秀長の生涯というのですが、こちらは半分の分量ですがなかなかのめり込めません。室町時代というのは、あまり面白みを感じられない時代だと思い込んでいましたが、実はとてもエキサイティングなスターがたくさん登場する時代だったのです。天皇家を乗っ取ろうとした日本国王足利義満、恐怖のくじ引き天魔王足利義教、怖しいお方公方日野富子、半将軍でホモの細川政元、流れ公方足利義稙…とユニークな主役がたくさんいます。山城
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日本のルーツを知るのに役に立った。歴史学者の多くは史料絶対主義で、推論や仮説、宗教の重要性を無視しているという、著者井沢氏の主張に目から鱗がおちた思いだ。本書の中身もさることながら巻末にあるコラムの内容が非常に勉強になった。
また、日本書紀などの史料についても、誰が編纂したのかによって事実と異なる内容になっているのではないかという推察もごもっどだと感じた。
邪馬台国(卑弥呼)と大和(天照大神)が同一なのではないか?勝者が引き継ぎたい内容に改竄されているのではないのか?などを勘ぐりながら歴史を勉強していくのは非常に楽しそうだ。
それを体現したのが、森鴎外先生。帝謚考(ていしこう)は読んだこ -
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海外に行く時に、行く前や行った後に準備しなければならないものから目を背け、後になって後悔することがある。とりあえず行ってしまえば、後からなんとかなると思っているのですが、どうにもならないこともある。
また、仕事の電話対応も相手にリスクを話せば怖がって拒否されてしまうだろうと、その話をスキップすることがよくある。本来は、事前に伝えてトラブルを避ける必要があるが、言ってしまえばそれがあたかもよく起こることのように感じ、また相手も同じように捉えているなと感じる感覚や反応が帰ってくる。
本来、論理的な考える必要のある場面で思考停止にさせる言霊信仰は、自分の中にも根深くあると思う。困難に直面した時、 -
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ネタバレ相変わらずの井沢節、、もう慣れました。。
歴史学者では書けない、日本の宗教観や世界史を踏まえたの考察、とても面白かったです。
色々興味深かったけど、特に印象に残ったのは以下。
☆江戸時代はあえてスピードを拒否した時代だった。
技術が進歩して武器が強力になればそれだけ徳川幕府を倒す勢力が台頭してくる可能性が高まるから、技術の進歩を幕府の方針で止めた時代。
舗装道路にしなかったのも、攻めあがる敵のスピードを上げさせないため。
☆織田信長は、宗教団体の武装解除を成し遂げ、世界でも珍しい宗教戦争のない国家を実現した。
☆持統天皇は、日本固有の宗教である穢れを「火葬」を行うことで解決し、遷都をや -
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ネタバレ「比較」と「宗教」が、日本の歴史教育に欠けている2つの重要な視点であるとして、論じられています。たくさんの情報量に消化不良を起こしそうでしたが、歴史の真実を見極めていく面白さを感じました。以下記すことは、特に印象に残ったことです。今後、歴史小説を読んで日本史を考えていく上で、心にとめておこうと思います。
☆信長は、宗教団体の武装解除を成し遂げ、世界で最初に宗教戦争のない国家を実現
☆徳川綱吉は、戦国時代(人を殺して褒められる時代)を完全に終わらせた
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生類憐みの令→武士の常識を覆す
☆天皇一代ごとに首都を移転→穢れ忌避信仰(亡くなった天皇は穢れている)
☆天皇家 -
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日本の歴史、日本国民の感情や感覚、価値観から生まれる行動特性を、宗教の視点から説明したとても興味深い内容だった。
日本は無宗教と言われ国民もそれを信じて疑わない。日本国民が信仰する神などいない。この本を読むまでは私もそう考える1人だった。
ただ、日本では少なくとも平安の時代から呪いが信じられ、呪いの元凶、怨霊という神がいた。ゲゲゲの鬼太郎然り、呪術廻戦然り。現代でもこのような作品が世に広まり人気を集めているのは、日本国民に受け入れられやすいから、つまり怨霊のような呪いの類を心のどこかで信じ、もしかしたらあるかもと想像できてしまう怨霊信仰が当たり前のように、DNAレベルで根付いているのではない -
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ネタバレ興味深く読めました。面白かった。
分かりやすく書かれていたのが良かったです。
個人的に言霊信仰の所が面白かったなあ。確かに現代日本でも当人が主張した言説と、当人の人格を結びつけますよね。SNSの誹謗中傷とか。
あと梅毒について。梅毒が入ってくるまで、遊女自体を蔑視する風潮がほとんどなかったとの事。当時の遊女は、現代のモデルやファッションスターのような存在だった。コロンブス新大陸発見→ヨーロッパで梅毒が流行→日本に流入まで20年くらい。早いなあ。
他にも面白かった部分たくさんあったけど、キリがないのでここまで。勉強になりました。また読み返してみよう。 -
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本書の終章に「歴史研究では、そのような推論を行ってはいけない」という歴史学者の発言が引用されている。そのようなことが歴史学者の常識なら、これは歴史研究の自己否定だ。推論のない歴史研究は、ただの暗号解読でしかなく、歴史への理解にはならないからだ。
本書では「比較」と「宗教」という2つの視点から大胆な推論を行うことで、日本の歴史を、一貫性のあるストーリーとして読み解かせてくれる。
日本の歴史教科書がつまらないのは、ただの暗号解読の積み重ねに過ぎないからで、完全に他人事だからだ。
本書の歴史論は、日本史を完全に他人事から自分事にパラダイムシフトさせてくれる。こんなに歴史が現代の自分と繋がってい -
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この人の本は初めてかな、なかなか面白い。ただ本人の歴史学者への攻撃は、よく事情を知らない人間からすると少し辟易するな。少なくとも本人が認めているとおり著者は歴史家であって学者ではないので、現在の日本の歴史学と方法論的な違いがあるのは仕方ないこと。自分の説を教科書に載せていれば、なんてのはちょっとちゃうんじゃないかと思うが。もちろんおれ個人としては、学術的にどうこうではなく大きな視点で歴史を俯瞰する人は必要だと思っているし、そこから常識を覆すような視点を提示している著者の説はいいと思う。
比較と宗教という視点を持つことは著者は重視していて、比較に関しての例としてなぜ日本はレンガ文化でなく木造文化