中条省平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
50年前の最初のテレビ漫画のゲゲゲの鬼太郎は見た。実写版の悪魔くんもうっすら覚えている。昭和ヒトケタの父親が鬼太郎は面白いと云っていたなあ。
子供時分は、水木さんの絵は少し苦手だった。手塚さんや石ノ森さんの丸っこい描線が好きだった。今見ると、背景や妖怪の緻密な描写や点描の凄さに驚きつつ、人物、人間側の鬼太郎達の描き方と奇麗な女性やイケメンの描き方にギャップがあるなと思う。
4人の語り手が水木さんを解き明かす。境港での幼少期、食うや食わずの紙芝居描き、貸本時代。死地を彷徨った軍隊時代、幻想怪奇譚好きが水木さんを形づくったとのこと。
成程、改めて、この人は野放図な天才だと知ったよ。 -
Posted by ブクログ
三年半ほど前、
高校生のときに古書店で古い文庫を買って積んだまま
読まずに〈引っ越し処分〉していたことを思い出し、
反省しつつ光文社古典新訳文庫を購入。
早熟・夭折の天才と言われる
レーモン・ラディゲの(短めの)長編小説。
作者の分身と思しい語り手〈僕〉の思い出。
分けても15歳からの激動の日々について。
第一次世界大戦下のフランス。
〈僕〉は四つ年上の画学生マルト・グランジエと出会い、
興味を募らせていったが、
彼女には婚約者ジャック・ラコンブがいた。
しかし、彼女が予定通り結婚した後も
互いに秋波を送り続け、
ジャックが戦線に送られた不在のうちに、
当然のように一線を超えてしまった――。
20世紀不倫小説の古典、但し、
当事者が十代なので相当に青臭い。
結末は2パターンのいずれかであろうと
予想しつつ読み進めた。
1.ジャックが戦死し、
マルトは晴れて〈僕〉と再婚。
2.マルトと〈僕〉は
白い目で見られる不倫に倦んで関係を清算。
が、どちらでもなく、
しかも、1・2よりもっとひどいエンディングだった。
そもそも〈僕〉は周囲を見下す鼻持ちならないヤツで、
マルトが彼のどこに惹かれたのか、よくわからない。
ジャックに問題があったとすれば、
マルトが絵を嗜むのを快く思っていないらしい点ぐらいだし。
彼女も若かったので、スリルを求めていたということか。
もう一つ考えられるのは、下品な穿鑿で恐縮だが、
マルトにとって性的な相性が
ジャックより〈僕〉の方がよかったから、かも……とかね。
とはいえ、独白の中でしばしば愛を口にする〈僕〉は
女を嫌いではないし、
その気になればセックスも充分に出来ます、というだけで、
本当に女性を――マルトを――愛しているとは受け取れず、
これはホモソーシャル小説の変形ではないのか?
と疑ってしまった。
女性との性的接触を汚らわしいが避けて通れない道と考える
高慢な男子が、一人の女の人生を踏み躙ってしまう、
といった筋書きの。
タイトル"Le Diable au corps"(カラダの悪魔) とは
《胎児》ではないのかな。
それが宿ったがためにマルトと〈僕〉は破局を迎えた、
という。
いや、不倫なんだから避妊しなさいよって話で。 -
Posted by ブクログ
さよなら『にんじん』
ということで「あら、素敵な本棚ね。と思われたくて読み直す世界の名作シリーズ」第一弾『にんじん』です
以前から気になっていた「光文社古典新訳文庫」名作と呼ばれるようなんは一通り読んでるんですが、やっぱりあらかた中身は忘れちゃってるので、せっかくなら【新訳】で気長に読み直そうと思い立ち、馬鹿みたいに手を広げておりますw
本当は『あしながおじさん』が気になってたんですが、みんみんの読書ストーカーと思われたらプライドが許さないので、やっぱり中身は忘れちゃってるんですが、子供の頃大好きだった記憶だけは残ってるフランスはルナールの『にんじん』からです
なぜ大好きだったかとうっすら残る記憶を紐解くと、主人公の少年にうっすら自分を重ねてたんだと思うんですよね
と、思って読み直したら、あれれ?にんじんめちゃめちゃ姉兄、母親にいじめられてるやん
しかもそのうっぷんを晴らすのににんじん自身も小動物を虐待してるし
結末もハッピーエンドに程遠い
確かに一番上にお姉ちゃん、次にお兄ちゃんで末っ子っていう家族構成と、にんじんの頑固で理屈っぽく、空想癖があってちょっと嘘つきってのは子供の頃の自分に重なるけど
父母はもちろん姉兄にも愛され守られた記憶しかないぞ?めっちゃ甘やかされたし
おかしいな
たぶんあれだな
兄貴に些細な意地悪をされたりゲームの順番守ってくれなかったり
お姉ちゃんとお風呂に入って頭をちゃんと洗わなくて叱られたり
母親によく出来たテストを思ったほど褒めてもらえなかったり
父親が遊びに連れて行ってくれる約束を守ってくれなかったりしたときの気持ちを意地になって広げてただけな気がするわ
ごめん、にんじん
わし君とは全然違ったわ
たぶんルナールの主題とは全然違うところに着地してるのは充分承知してるけど
今になって愛された子供時代を再認識してるわ
さよなら『にんじん』 -
Posted by ブクログ
たかだか140頁くらいのお話なのに、読み始めて読み終えるまで16日も掛かってしまうくらい、食傷気味。。
バタイユさんの最高傑作らしい「マダム•エドワルダ」よりも、「目玉の話」のインパクトが凄すぎた。
冒頭の、猫用のミルク皿にシモーヌがお尻を浸す、という場面が有名らしいが、その後も、ひたすら変態的場面が続く。
闘牛場で、シモーヌの要望により、仕留められたばかりの闘牛の睾丸がふたつ生のまま銀の皿で供され、シモーヌは、闘牛の(文字通り目玉が飛び出る)死亡事故を観ながら、ひとつは食べ、ひとつは隠部に入れる、という意味不明の倒錯の世界へ。。
最後の方のセビリアの教会での出来事は、キリスト教会がどういう反応をしたのか気になるくらい、非キリスト教徒から見ても冒涜的に映った。(初稿は地下出版だそう。)
こういう倒錯的な感覚に至る原因らしきものとして、梅毒で四肢が不自由なバタイユの実父がお漏らししながら白目を剥いていたときの目玉の映像、が最後に分析的に語られる。
-
購入済み
難しい
難しいですね。
若いうちに読んでたらなにか思うところもあったかもしれないけれど、
今の私にはなんと言ったら良いのかわかりません。
私の感受性の問題だろうか。
ともかく一つ言えるのは、若いうちに読んだほうが良いと思います、そのときは理解できないとしても。
初めて読むのが歳を取ってからだと、
理解はできてもどう評価したら良いのかわからない感じになってしまいます。 -
Posted by ブクログ
訳者中条省平さんの解説から引くと、筋書きは、
早熟な少年が、人妻に恋をし、その夫が戦争に行っているのをいいことに肉体関係を続け、彼女の生活をめちゃめちゃにしてしまう、
というもの。
作者の実体験に基づいて、16〜18歳のときに執筆されている、というのが、まず驚き。
ヒロインであるマルトの人格がよく分からないというか共感し難いのだけど、古典新訳の対象として選ばれたのは何となく理解できるような。
『カフェ古典新訳文庫』で思い入れのあるひとの文章を先に読んだからかもしれないが。
少なくとも100年前の小説には思えなかった。
三島由紀夫が惚れ込んだ作者と作品らしい。
赤ちゃんの父親が誰か、という点で、終盤くるんと一回転して、元に戻る辺りは、してやられた感がある。
お昼のメロドラマ的な安っぽい作品とも言えるし、夭逝した天才作家の傑作とも言えるし、出版社の腕の見せ所のある作品か。
-
Posted by ブクログ
20世紀フランスの作家、
アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ(1909-1991)
最晩年の掌・短・中編をピックアップした新訳版。
信頼という名の暗黙の了解が粉砕され、男を打ちのめす物語。
某か自分の思い通りに運ぼうと策を巡らし、
上手く行くかに見えても、
最後は肉体的あるいは精神的に
ひどいダメージを食らう男性の姿が描かれているが、
彼らは衝撃を受けつつ、
もしかしたら最初からカタストロフを予見していたのでは……
という疑念も湧いて来る、
そんな“カッコつけた”道化師が演じる悲喜劇といった趣の、
捻じれたダンディズムに彩られた作品群。
■クラッシュフー(Crachefeu)
白水uブックス『薔薇の葬儀』(田中義広=訳)で既読。
タイトルは「火を吐くもの」の意で、spitfireの仏語訳。
ここでは英国トライアンフ社の2シーターオープンカーの
スピットファイアを指す。
国有林の視察が職務の技術長、
森林管理官ブラン・ド・バリュは、ある日、
愛車クラッシュフーで森を走っていて、
自転車を漕ぐ少女に遭遇――。
彼女の不吉な夢が現実化し、彼を打ちのめす。
突発的な性愛と理不尽な死の交錯という不条理劇。
■催眠術師(L'Hypnotiseur)
港町で《四百羽の兎》という名のバーに入った
ティテュス・ペルル。
ホステスに勧められるまま強い酒を呷り、酩酊したが……。
■すべては消えゆく(Tout disparaîtra)
パリの地下鉄で出会った男女、
ユゴー・アルノルドとミリアム・グウェンは
恋愛や性に纏わる会話を、衒学趣味を交え、
オブラートにくるんだような芝居がかった物言いで
繰り広げつつ、街を歩く。
散々焦らされたユゴーは
とうとうホテルへ行こうと切り出したが、
ミリアムはもっと特別な場所があると彼を誘い……。
タイトルは地下鉄構内の《Tout disparaîtra》
=「全品一掃処分」というセール広告の決まり文句に
由来することが途中でわかるので、
男女が互いに関係を深めると見せかけて
回りくどい話を続けながら
結局何も起こらないのかと思って読み進めたら、
途中でガラッと様子が変わって
淫蕩かつ残酷な展開になり、ギョッとした。
ミリアムが電話の相手に「はい……はい……」と
返事するだけ(p.218-219)の数行がシュール!