素晴らしくスタイリッシュな作品。
他のハードボイルド小説が野暮で芋っぽく見えるほどだ。
ただ、あまりに淡泊で読みごたえが無いと思う人もいるかもしれないが
そういう人は放っておいて問題無い。
無駄の無い文体は読み手にも洗練を要求するのだ。
シンプルだからと言って人物が記号化していたりはしない。
...続きを読む登場人物の衝動的で意味の無い行動が人物に深みを与えている。
元精神病患者の主人公、敵役の殺し屋、
内面と行動が伴わずただ暴力だけが積み重なっていく。
一度味わうとまた戻って来ざるを得ない独特の世界がある。
映画などとは違う「文章」の楽しみに溢れた小説。
ストーリー自体はわりとありふれたものだけれど
そぎ落とされた言葉の力は骨太な魅力で迫ってくる。
単なるハードボイルドとは一線を画す実験作とも言える。
文章を愛する人ならば食わず嫌いをせずに是非一度読んでいただきたい。