マンシェットのレビュー一覧

  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    これを紹介する時正直悩んだ。冒頭が
    「トンプソンが殺すべき男はおかまだった。」
    だし、ヒロインが精神病院から出てきたばかりだし、タイトルがこれだし。だし、だし、だし。だいたい、おかまはその後の物語に全然絡まないんだから、殺す相手がおかまでなくてもいいじゃないか。ほら、ね、このように、この本を差別用語を使わずに紹介するのは難しい。仕事としてレビューを頼まれると言葉を選ぶのに苦労する。この本を知ったのはトヨザキユミさんが主宰する書評合評会で、もう一つの課題図書は西村賢太さんの『どうで死ぬ身の一踊り』これもまた…忌み言葉を使わず紹介するのは難易度高い。ちなみに合評会はアマチュアの作品を審査するものだ

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    2025年09月14日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    ネタバレ

    【本の内容】
    精神を病み入院していたジュリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係となる。

    しかし凶悪な4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。

    ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。

    殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる。

    [ 目次 ]


    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    2015年01月18日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    素晴らしくスタイリッシュな作品。

    他のハードボイルド小説が野暮で芋っぽく見えるほどだ。
    ただ、あまりに淡泊で読みごたえが無いと思う人もいるかもしれないが
    そういう人は放っておいて問題無い。

    無駄の無い文体は読み手にも洗練を要求するのだ。

    シンプルだからと言って人物が記号化していたりはしない。
    登場人物の衝動的で意味の無い行動が人物に深みを与えている。
    元精神病患者の主人公、敵役の殺し屋、
    内面と行動が伴わずただ暴力だけが積み重なっていく。
    一度味わうとまた戻って来ざるを得ない独特の世界がある。

    映画などとは違う「文章」の楽しみに溢れた小説。
    ストーリー自体はわりとありふれたものだけれど

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    2009年11月12日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    まるで映画を見ているよう…登場人物の余計な描写や心情が一切排されると、小説はこう言う感覚を生むのか、と衝撃を受けた。ジュリーの精神疾患の危うさと同じくらいギリギリの所にいるその他の登場人物たち。ペテールを抱えて、写真で見たお城に向かってひたすら逃げるジュリーに姿は鬼気迫り、精神に異常を来した女性が執拗なまでに追い続けた結果だったとしても、ペテールが救われた事に変わりない。

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    2012年06月01日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    通勤電車の中と昼休みと就寝前に分けて1日で読んだ。小気味良い展開なので、ほんとにあっという間だった。

    不条理バイオレンス犯罪小説と思いながら読んでいたが、最後はしっかりハードボイルドミステリーとして終わった。振り返ると、確かに仕掛け人はこいつしかいないよな、と思えるのに、あまりのドダバタ劇だったので、伏線回収があるとは夢にも思わなかった。

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    2022年12月14日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    70年代ノワール小説の最高峰マンシェット新訳だ。精神病院を退院したジュリーは企業家で慈善家のアルトグに雇われて彼の幼い甥っ子ペテールの世話を始める。屋敷のまわりではアルトグの昔の共同経営者で凶暴なフェンテスがうろついていた。ある日散歩中の2人は凶悪な4人の殺し屋に誘拐されてしまう。ジュリーは1人を殺してペテールと共に脱出。殺し屋は容赦なく追いかけてくる。銃撃、破壊、殺人、流血の逃走劇。殺し屋の背後に誰がいるのか?誰が味方で誰が敵なのか。実は登場人物全員がイカれている。善悪の話ではない。生きるか死ぬかの本能の話だ。そしてハッピーでもバッドでもないサバサバしたラストが印象的だ。
    昔はノワール小説と

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    2020年11月22日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    これが古典なのか、と思うわね。でも50年前か。50年前というとけっこう昔か。そういう意味じゃ古典か。そして年を取ったものだ・・

    それはさておき中身は古典というよりノンストップ・バイオレンス・アクション、って感じ。これをハリウッドの適当な監督が映画化すれば絶対にB級の酷いものになる、間違いない。
    思わせぶりなタイトルにはきっと深い意味が隠されていて、読んでいる中で伏線を回収しているのか、タイトルの意味も理解できるのか、でもそんなの関係なく、ギャングから逃げるシーンは手に汗握って大好きよ。

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    2018年07月05日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    裏社会の闇で身悶える者どもの情動を切り詰めた文体でクールに描き切るロマン・ノワールの雄マンシェット1972年発表作。マンシェットは推敲を重ねる完全主義者の面もあったらしく、作品数も限られている。単に冗長なだけの小説にはない張り詰めた緊張感がみなぎり、贅肉を極限まで削ぎ落とした骨肉のみで、人生の一瞬の光芒を鮮やかに切り取る。暗黒小説の神髄に触れたいならば必読の一冊といえる。

    親を失い、おじとなる企業家に引き取られていた少年が何者かに誘拐される。直前に世話係として雇われていた若い女も共に連れ去られるが、隙を突き二人は脱出。だが、執拗に追跡する誘拐犯らとの攻防は熾烈を極め、壮絶なるバイオレンスが展

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    2017年01月20日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    実業家の甥と、その世話係の女が誘拐犯にさらわれる。二人は命からがら誘拐犯の手を逃れ、どたばたの逃走劇が始まる。

    話のプロットやミステリの本筋自体は別段珍しいものはない。
    ただもう、世話係の女、本作の主人公?のジュリーが奮ってる。
    ジュリーは精神病院を出たばかり。過去の経験から極端に警察を嫌い、抑うつの気がある。
    誘拐犯たちをもって、イカれた女と言わしめるジュリーの逃走劇に、周囲がガンガン巻き込まれる。
    ドンパチと派手な立ち回りの連続だし、ジュリー以外の登場人物も一癖ある連中が多いし、最後の場面にいたっては舞台となる建物までグロテスク。

    その全てをさも当たり前のように、淡々とスピーディに描い

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    2013年03月29日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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     中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』をタイトルからして誤訳であるして、自分がもっとマンシェットの雰囲気をと、ペンを執り直し、改めて訳したものだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。

     他者訳のタイトルを批判しながら「愚者」を「あほ」と読ませたり「城塞」を「おしろ」と読ませたり、いかにランボオの中原中也訳をイメージしたからと言ってマンシェットをわがものにしたというのは、傲慢に過ぎる。だからフランス語の専門家は嫌いだ(元フランス語専攻学生の嘆き)。

     とは言え、この本がマルレーヌ・ジョベール(あの『雨の訪問者

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    2012年07月01日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    普段、ロマン・ノアール系統は読まないのに
    妙に文章が「入って来る」のが楽しかった*
    どうも、こういう文体が好きらしいと
    気づきましたとさw

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    2010年02月05日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    主人公たちが殺し屋たちから命からがら逃げる逃げる。彼女らが通った後は死屍累々(かな?)。
    余計な心情も入ってなくて、スカッと読めました。

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    2009年11月10日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    はちゃめちゃなストーリー展開にただただ翻弄されて読みました。登場人物たちがみんなぶっ飛んでいるので、その一挙手一投足に違和感を覚えながら、不思議な感覚でかえってそれが楽しかったです!

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    2025年04月09日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    ネタバレ

    マンシェットをこれで2冊読んだ。
    ともにタイプは似ていて、ハードボイルトというよりピカレスクに近い。登場人物の多くが自分の欲に忠実、ともすればその欲求すらあいまいな中で、逃走劇を繰り広げる。
    当然、追うものも追われるものも己のことしか考えないので、通常の善悪の基準は当てはまらず、それゆえ感情移入がしにくい。本来は被害者であるはずのヒロインですら、逃走劇においては不要な被害者を生み出しているのだから。
    マンシェットはどこまでも人間のエゴをギリギリの行動の中で描きこみ、その寂寥感が好きな人は良いかもしれないが。
    どうしても読んでてスジっぽく感じてしまう。

    皮肉なことに、自分の命を差し出してすら請

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    2015年08月11日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    即物的で無味乾燥な味の、いい具合な一品。ハードボイルド的に心理描写をやめているのに、何故かメランコリックなのが微笑ましい。

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    2014年06月07日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    精神病院に入院していたジュリーがある日アルトグという富豪の甥のベビーシッターになるが、殺し屋のトンプソンに誘拐される。ジュリーは子供を連れて必死の思いで脱出する。果たして2人は無事に逃げおおせることができるのか?というのが粗筋。特異なのはジュリーにしろアルトグにしろ殺し屋にしろ、どこか行動が狂っていて、もはや善悪の区別が付けられなくなっている点。一切の心情描写を省いた文体がそれを強調する。物語の展開や殺し合いの描写は極めて巧みでハードボイルドとしては傑作だと思う。個人的には主要な人物があまりにもあっけなく死んでしまい、その狂気から何かを読み取る前に物語が終わってしまった感があって少し物足りなか

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    2013年03月31日
  • 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える

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    久しぶりに、バイオレンスな小説を読んだ気がします。なんというか、黒社会を描いた80年代後半から90年代前半にかけての香港映画みたいな、もしくは今ほど有名になる前の三池崇史監督作品のVシネマというか。ある程度、物騒な話だろうとは思っていたものの、作品と著者に対しての予備知識を全く持たずに読んだので終盤は驚くばかりでした。かつてTV東京木曜夜9時に放映されていた映画のような、万人受けはしないけれど好きな人には病みつきになる魅力を持った作品だと思います。

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    2012年12月16日