中条省平のレビュー一覧
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裏社会の闇で身悶える者どもの情動を切り詰めた文体でクールに描き切るロマン・ノワールの雄マンシェット1972年発表作。マンシェットは推敲を重ねる完全主義者の面もあったらしく、作品数も限られている。単に冗長なだけの小説にはない張り詰めた緊張感がみなぎり、贅肉を極限まで削ぎ落とした骨肉のみで、人生の一瞬の光芒を鮮やかに切り取る。暗黒小説の神髄に触れたいならば必読の一冊といえる。
親を失い、おじとなる企業家に引き取られていた少年が何者かに誘拐される。直前に世話係として雇われていた若い女も共に連れ去られるが、隙を突き二人は脱出。だが、執拗に追跡する誘拐犯らとの攻防は熾烈を極め、壮絶なるバイオレンスが展 -
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ロマン・ノワールの神髄に触れることができるマンシェット1981年発表の遺作。最後の仕事を終え、引退を決意した殺し屋を阻む闇の組織との無情なる闘い。徹底した客観描写で情景を描き切る真にハードボイルドな文体を、フランス文学者・中条省平の気合いの入った翻訳が生き生きと甦らせる。無駄の無いスピーディな展開の中に、孤独な殺し屋の生い立ちとトラウマを表出させ、裏切りと罠によってタフな男が脆くも崩れ去っていく様を、極めてドライに活写していく。終盤、愛人の不貞によるショックで失語症となるというエピソードは余りにも感傷的過ぎるが、言葉を発することなく黙々と復讐劇を繰り広げる暗殺者は異様な迫力に満ちている。
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ネタバレ【本の内容】
「ある街角で、不安が私に襲いかかった。
汚らしく、うっとりするような不安だ」極限のエロスの集約。
戦慄に満ちた娼婦との一夜を描く短編「マダム・エドワルダ」に加え、目玉、玉子…球体への異様な嗜好を持つ少年少女のあからさまな変態行為を描いた「目玉の話」を収録。
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子供なんてのは、まあ親から与えられた本なんてだいたい興味無いですよね。
親の価値観なんて古くてダサいっていうか、教養なんてウザいっていうか、自分たちの世代の方がいけてるっていうか。
なので、親としてはやっぱり子供にナメられないような本を与えたいところですよね。
まあなんでもいいんで -
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【本の内容】
第一次大戦下のフランス。
パリの学校に通う15歳の「僕」は、ある日、19歳の美しい人妻マルトと出会う。
二人は年齢の差を超えて愛し合い、マルトの新居でともに過ごすようになる。
やがてマルトの妊娠が判明したことから、二人の愛は破滅に向かって進んでいく…。
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[ POP ]
作家が若いときでないと書けない物語があるように、読者もまた若いときでないと感じ得ない衝撃があると僕は思う。
そういった意味で、『肉体の悪魔』は10代の頃に読んでいたらもっとぶっ飛んでいただろうなと悔やまれる一冊だ。
これでもかというほど一人称で書かれていて、景色はあまり意味をなさない。 -
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実業家の甥と、その世話係の女が誘拐犯にさらわれる。二人は命からがら誘拐犯の手を逃れ、どたばたの逃走劇が始まる。
話のプロットやミステリの本筋自体は別段珍しいものはない。
ただもう、世話係の女、本作の主人公?のジュリーが奮ってる。
ジュリーは精神病院を出たばかり。過去の経験から極端に警察を嫌い、抑うつの気がある。
誘拐犯たちをもって、イカれた女と言わしめるジュリーの逃走劇に、周囲がガンガン巻き込まれる。
ドンパチと派手な立ち回りの連続だし、ジュリー以外の登場人物も一癖ある連中が多いし、最後の場面にいたっては舞台となる建物までグロテスク。
その全てをさも当たり前のように、淡々とスピーディに描い -
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ネタバレ『ジョジョ』25周年を記念してセレクトされた名言集(第1部~第3部)。
買おうか買うまいか迷っていたところ、最近ジョジョラーであることが発覚した職場の先輩が貸してくださいました。有り難い有り難い。
日常生活の中で気を抜くとうっかり口に出してしまうような汎用性の高いものから、すっかり忘れてたけど目にした瞬間色んなこと思い出して一気にテンションだだ上がりするものまで。
ジョジョ既読者ならコミックス再通読したくなること請け合いです。
未読の人は知らん。っていうか未読者は名言集より本編をどうぞ。
学習院大学文学部フランス語圏文化学科教授・中条省平氏による解説が、質・量ともに圧巻。
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中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』をタイトルからして誤訳であるして、自分がもっとマンシェットの雰囲気をと、ペンを執り直し、改めて訳したものだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。
他者訳のタイトルを批判しながら「愚者」を「あほ」と読ませたり「城塞」を「おしろ」と読ませたり、いかにランボオの中原中也訳をイメージしたからと言ってマンシェットをわがものにしたというのは、傲慢に過ぎる。だからフランス語の専門家は嫌いだ(元フランス語専攻学生の嘆き)。
とは言え、この本がマルレーヌ・ジョベール(あの『雨の訪問者 -
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