田中啓文のレビュー一覧
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「笑酔亭梅寿謎解噺」シリーズで御馴染かつお気入り作家・田中啓文の「チュウは忠臣蔵のチュウ」に続く時代小説版お笑いミステリーだ。
京都で斬首されたはず石田三成が米沢藩に生きのびていたが、いつしか幕府の知るところとなり坊主姿になりそこから密かに抜け出して南へ向け旅立つ。柳生十兵衛を追っ手として振り向けるが、坊主姿の三成と付き添いの腐乱坊そして行きずりの彦七の三人組は果たして追っ手を振り切れるのか。
三成と言うと何となく細面で切れ者というイメージがあるが、ここでの三成は「チビで真ん丸顔」のひょうきん者だ。米沢藩の追っ手が顔も知らずに三成を探索に訪れた茶屋の親父に「怪しい二人連れは見なかったか」と -
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ミステリーにカテゴリわけしたけど、あんまミステリーっぽくはないかな。コナン要素はあるんだけど。
バンドマン(笑)をなんとなく目指していたらしいヤンキー(笑)の竜二が、担任に無理矢理酒飲みの落語家のとこへ弟子入りさせられるのが冒頭。
それから、落語の話に合わせた謎解きを孕んだ、竜二の成長物語的ジュブナイル。…だと、私は思っている。
転職する前、昼休みがその時間なので見ていた『ちりとてちん』をなんとなく思い出したので、噺家さんの仕組みみたいの、なんとなくすんなり理解できたかな。まったく知らずに読んだら、その辺については微妙かも(あんま説明がない。常識なの?)。でも、話は面白いので知らなくても楽 -
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“保志野は目を丸くして、比夏留の食べっぷりを見守っていた。十人前はありそうな、山盛りのマカロニが、みるみる減っていく。
「あいかわらず……すごいよねえ……」
「だって、おなか減ってるんだもん。ここんとこ体育祭の準備で昼ご飯抜きだったし、こないだ血を飲んだでしょう。あれから気持ち悪くて、病院でもご飯が食べられなくなっちゃって……やっと元通りになったの」
「諸星さんでも食べられなくなることあったんだ」
「そーなの。ちょっと痩せたんだから」
「えっ、ほんと?」
「ほんとよ。二百十二キロに落ちて、ショックだった。もちろん、もう戻したけどね」
ぱくぱく、ぱくぱく。
「でも、今度のことでは保志野くんの『わ -
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“「今です。はやく……」
保志野だった。保志野は、倒れた弾次郎を抱え起こそうとしたが、もちろんそれはむり。比夏留が、
「えいっ」
と気合をいれて、父親を立たせた。
「パパ、大丈夫……?」
「あ、ああ……ちょっとふらついただけだ。——きみは?」
「お嬢さんの級友で、保志野ともうします。はじめまして」
「え?はあ……その……こちらこそはじめまして」
「そんなことやってる場合じゃないでしょ。逃げなきゃ」
保志野が松明を鳥に投げつけると、下腹部に当たって、鳥ははばたきながら飛び退いた。
「今です!」
三人は逃げる。やっと洞窟の入り口に到達し、外へ。
ぜいぜいはあはあぜいぜいはあはあ。鍛えているとはいえ -
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“まず、大盛りカレーライス(味が薄くて超まずい)。これでもかとばかりにカレールーのかけられたてんこもりの飯がスプーンで突き崩され、雪崩のように口に吸い込まれていく。まわりの級友たちは、三人前はありそうなその飯の山がみるみる消えていくさまを呆然と見つめていた。だが、それでことは終わらなかった。続いて、大盛りきつねうどん(味が濃くて超まずい)。洗面器のような丼に入ったうどんは、五玉はあるだろう。そのうえに揚げが五枚、蓋のように並べられている。スプーンを箸に持ち替えると、一分一秒でも惜しいというように、凄まじい勢いで麺を啜り込む。ずずずずっ、ずずずずずずっ、ずずずずずずずっ……。天井が落ちてきそうな
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モヒカン噺家「竜二」シリーズの第3弾。今回も彼を中心に
大きな問題やトラブルが続々と舞い込んできます。その
殆どが本人が望んでない事なのが可哀想ではあるw。
もちろん、今作も楽しく、ホロリとさせられる人情噺や
バカバカしいオチも用意されており、面白いんですが
この「竜二」のあまりにも周りに流される態度に
読んでいてイラっとします。
前作でもそうですが、落語に入り込めない為、スグに
自分の意識や興味が目移りしてしまうんですねー。
今回は俳優になりたい...なんてアホな夢見てますw。
まぁ、そんなたわけた夢はスグに師匠に
看破されてしまうんですが...。
まだまだこの竜二の成長を師匠たちと見届け -
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シリーズ2作目はストーリー全体が大きく動きますね。
「ハナシがうごく!」篇って感じですw。
金髪モヒカンの下っ端噺家「竜二」のその異常なまでの
ツキの良さと落語センスの高さは謎ですが、色々な
芸能や人々や状況に流され、モロに影響を受けながらも
なんだかんだと彼なりのスタンスで落語を続けていく
姿勢は微笑ましいし、応援もしたくなってきますね。
前作以上に破天荒でもはやたんなる酒乱にしか
見えない破滅型芸人の「梅寿」師匠の壊れっぷりも
安定感(?)があり素敵w。
時にはド浪花節のめっちゃいいオッサンになるのは
ズルい。その浪花節全開の「ちりとてちん」が
今作のベスト!かな。