あらすじ
「主人公・比夏留の名字“諸星”は諸星大二郎さんからいただいたものです」――作者
「本当です。」――諸星大二郎
女子高生・諸星比夏留(ひかる)は、古武道〈独楽(こま)〉の達人で、民俗学研究会所属の大食い少女だが、部活の仲間たちと、いつも摩訶不思議な事件に巻き込まれる。学校の裏で邪馬台国を探す表題作をはじめ、子供たちが洞窟の中で消失する「人喰い洞の研究」など、今回もめちゃめちゃ笑えるトンデモ伝奇「私立伝奇学園」シリーズ。第2弾
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Posted by ブクログ
私立伝奇学園高等学校民族学研究会シリーズ二作目。
一作目よりさらに面白くなってます。とても好き!
曾祖父の残した言葉を頼りに、常世の森にあるという邪馬台国の秘宝を求めて留学してきたタイ人ナロンチャイと邪馬台国の謎に迫る『邪馬台洞の研究』。
幻のクワガタ虫を求めて常世の森に迷い込んでしまった小学生・三太郎を助けるため、森にすむ未確認生物たちと戦う『死霊洞の研究』。
過疎の村の歪んだ風習と伝承の謎に迫りながらわんこそばを食い荒らす『人食い洞の研究』
そして最終巻・天岩屋戸の研究へと続く、『天岩屋戸の研究(序説一)』
毎回仕込まれたネタとダジャレ、そしてこじつけのくせに裏付けのしっかりした民族学、伝承、神話の数々。
オカルトとミステリと学園と恋愛と、ついでにグルメも加えてぐっちゃぐちゃにした挙句、最後は全部ダジャレで閉める。この絶妙さがたまりません。
ダジャレオチがだめな人にはおすすめできませんが……個人的にすごく気に入りました。
Posted by ブクログ
「邪馬台国はどこですか?」
高校生一年生の諸星比夏留は、バケツ一杯分もありそうな大盛りの海鮮丼を食べてた時にまた聞かれた。
おやつ代わりにこの海鮮丼の店で大盛りを6杯食べるのが日課になっていた。
邪馬台国の通説さえ知らな比夏留は、もちろん知らないと答えたのだが・・・。
私立伝奇学園高等学校民俗研究会に所属する比夏留は、部室でこの話をすると邪馬台国の論争が巻き起こる。
そしてその研究会にヤクザに追われた留学生が逃げ込んで来た。
先輩の白壁の相撲技でヤクザを退けた。
ヤクザは、留学生の伯父さんがこの伝奇学園の敷地にある広大な「常世の森」の森の中の邪馬台洞の中にあるお宝が目当てで留学生を襲ったのだった。
比夏留は、留学生の話を聞き邪馬台国の謎を解きたくなり、留学生と共に邪馬台洞を目指すのだが・・・。
と言うのが表題作の「邪馬台洞の研究」の話です。
他に「死霊洞の研究」「人食い洞の研究」などがある連作短編集です。
私立伝奇学園高等学校民俗学研究会の第二弾のこの作品は、非常に駄洒落が多いです。
主人公・比夏留は、古武道のために太りたいけど太れない!食べても食べても細いまま。一見軽そうな感じだけど体重は、200kg。胸は、ペチャパイの女の子。
主人公がこんな設定なので登場人物は、とっても個性的です。
二巻は、面白かったよ~!
Posted by ブクログ
“「今です。はやく……」
保志野だった。保志野は、倒れた弾次郎を抱え起こそうとしたが、もちろんそれはむり。比夏留が、
「えいっ」
と気合をいれて、父親を立たせた。
「パパ、大丈夫……?」
「あ、ああ……ちょっとふらついただけだ。——きみは?」
「お嬢さんの級友で、保志野ともうします。はじめまして」
「え?はあ……その……こちらこそはじめまして」
「そんなことやってる場合じゃないでしょ。逃げなきゃ」
保志野が松明を鳥に投げつけると、下腹部に当たって、鳥ははばたきながら飛び退いた。
「今です!」
三人は逃げる。やっと洞窟の入り口に到達し、外へ。
ぜいぜいはあはあぜいぜいはあはあ。鍛えているとはいえ、比夏留と弾次郎は重すぎるし、保志野はふだん運動をしていないつけがまわってきて、三人はそれ以上一歩も進めず、小川のほとりにへたりこみ、荒い息をついた。”
またもとんでも。
保志野がなかなか好き。
“「ようい、はじめっ」
大会委員長の掛け声によって、競技がはじまった。盛岡の大会は十五分勝負、花巻は五分勝負であるが、この村のルールは、食べられなくなるまでのデスマッチである。元椀と呼ばれる椀を手に持ち、なかの蕎麦を一口ですすりこむ。からになった元椀をちょいと上げると、隣に立っている給仕係が椀に入った一口分の蕎麦を放り込み、その椀を重ねていく。花巻や盛岡のものよりは多いとはいえ、この村のわんこそばも一回分の量は少ないが、それでも百杯、二百杯と食べると、そうとう腹にこたえる。薬味として、葱、海苔、削り節、まぐろ、とりそぼろ、なめこおろし、くるみ……などがあるが、それらを食べていては蕎麦が食べられないので、競技の際は薬味は取らないのが基本である。もちろん、つゆも飲まない。
「ほいっ、ほいっ、ほいっ、ほいっ」
「よっさあ、よっさあ、よっさあ、よっさあ」
「いーあるさんすーうーりゅーちーぱー」
「とんとことんとこ、すっとこすっとこ」
「うんこまちんたまきんたまぎんたま」
変な囃し声にあおられて、出場者は次々と蕎麦を平らげ、椀を重ねていく。しかし、比夏留はペースが遅い。ほとんどの出場者は三百杯を越し、羊歯山にいたっては四百杯の大台にのろうかという状況なのに、彼女はまだ二百杯と少しである。それもそのはず。比夏留は、ひと椀ごとにあらゆる薬味を椀のなかにぶち込み、つゆも味わってごくごく飲み干しているではないか。
「おいしーっ、このなめこおろし。薬味、おかわりねっ」
「あのー、差しでがましいこと言うようざが、あんまり薬味喰うと蕎麦が食べられねっぜ」
給仕が耳打ちしたが、
「だって、おいしいんだもん。もっともっと持ってきて」”