Posted by ブクログ
2011年04月11日
“保志野は目を丸くして、比夏留の食べっぷりを見守っていた。十人前はありそうな、山盛りのマカロニが、みるみる減っていく。
「あいかわらず……すごいよねえ……」
「だって、おなか減ってるんだもん。ここんとこ体育祭の準備で昼ご飯抜きだったし、こないだ血を飲んだでしょう。あれから気持ち悪くて、病院でもご飯が...続きを読む食べられなくなっちゃって……やっと元通りになったの」
「諸星さんでも食べられなくなることあったんだ」
「そーなの。ちょっと痩せたんだから」
「えっ、ほんと?」
「ほんとよ。二百十二キロに落ちて、ショックだった。もちろん、もう戻したけどね」
ぱくぱく、ぱくぱく。
「でも、今度のことでは保志野くんの『わかったああああ!』が聞けなかったね。ちょっとさびしいかも」
「いまいち、出番がなかったですね。ま、いいんですけど」
ぱくぱく、ぱくぱく。”
最終巻。
保志野かっこえー。
そしてどこまでもとんでも設定。
楽しかった。
“「森のみんなのことを、語り継ぐことが必要だよね。たとえ、誰も信じてくれなくても」
「もちろん」
「——じゃあ、民研に入らない?」
「えっ……」
予想外の申し出に、保志野はためらいの表情を見せたが、
「わかりました。薮田先生とも、これからはうまくやっていけそうですし」
「やったー。新入部員ゲット。犬せん、喜ぶぞー」
比夏留が万歳を叫ぼうとしたとき、
「でも、ひとつだけ条件があります」
「何?」
「特典をください」
「——へ?」
「今、ここで」
そう言って保志野は、比夏留の唇にそっとキスをした。
比夏留は、数分間、蝋人形のようにかたまっていたが、やがて、身体中の空気がなくなりそうなほどの長い長い息を吐いてから立ちあがった。
「今から、行かない?」
「ど、どこへ……?」
「おいしい中華料理屋さん見つけたの。もちろん保志野くんのおごりでね」
「どうしてぼくが……」
「新入部員は先輩の命令には絶対服従よ。中華料理のあとは、えーと……スパゲッティ屋さんに行こうかな。最後のシメは、お寿司屋なんていいかも」
保志野の顔が青ざめた。”