永井路子のレビュー一覧
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50年経てかえって新鮮
1980年当時の主人公がちょうどそのころの自分の年齢に近く、その時代を生きてきた人生を振り返って感慨にふけった。作者は自分の母親と同じ世代、大した筆の力だなと感心した。結婚とは何だろうか、生きる目的とは、飛鳥時代と1980年代さらに今の若者は変わってしまったところと人間の本質は変わらないというところと実に面白かった。現代の結婚のかなりの部分はマッチングアプリだとか。
飛鳥時代のことは歴史の番組等で知ってはいたが、持統天皇が実の叔父と結婚していたとはびっくら仰天である。遺伝子にゆがみが生じて短命な皇族もいたのかなとも。オス猫は近親相姦を避けるためにその地を去ることが本能に埋め込まれてるとか。この -
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飾り物でない天皇たち
本書は一応 鑑真和上の業績をたどる という経糸が前提とはなっているが、横糸としての孝謙天皇.道鏡そして何よりも藤原仲麻呂の人物造形が誠に見事である。この時代の天皇は、のちの時代の飾り物.象徴としての天皇ではなく、良きにつけ悪しきにつけ生き生きと活動し愛しあい争い殺し合っていたのだなと、深い感銘を受けた。
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華やかな時代ではあるが
清少納言や紫式部に象徴されるように、華やかな時代ではあるが作者永井路子は「羅生門」に代表されるような影の部分、そして藤原隆家に代表されるような武士の萌芽をしっかり描きこんでいる。1000年以上の年月を経ても政治家 政治屋のやり口は基本変わらない というところが面白くもあれば悲しくもなるところである。。
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平凡な幸運児
作者 永井路子が描きあげた関白藤原道長の人物造形がとても素晴らしい。この本の題名にもなっているように、有名な「この世をば....」に象徴されるようなゴツゴツガツガツしたやり手の政治家 というイメージを抱いていたが、この本を読んでいい意味で裏切られ認識を新たにした。まさに作者が言うところの「平凡な幸運児」であった。
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信長の血をひく三姉妹が
信長、秀吉、家康の時代を大きく動かしたことは大まかには知っていた。女性である作者が三姉妹からの視点で描いたこの小説は三者三様の生き様をあきらかにしていて実に興味深かった。加えて武将が主役の歴史小説ばかり読んできた自分は、女性たちの建前と本音を洞察することでより歴史を深く楽しめると感じた。
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ネタバレ光る君へ、に触発されて道長に関する小説を探し読んでみる。
昭和59年発刊。当時はまだ清少納言の評価が高くなく才をひけらかす、奔放・高慢といった評価が多かったとされる。その状況に比べればやや抑えた形になっている。才をひけらかすまでではなく、才を誇るといった感じ。
なお紫式部はまだ登場していない。彰子さまが入内していないので当然と言えば当然だが。
道長自体も上巻の時点では上昇志向もあまりなく、父、兄、姉に振り回される呑気な三男坊という態。光る君へ、にも通ずる性格付け。
徐々に権力というものに取り憑かれている感じを見せながら下巻へ続く。
強気な姉と柔和な弟という関係性が徐々に変わっていくさまは同 -
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血族同士の暗闘にあけくれる平安朝。
火山帝を騙して出家させる等、熾烈な権力争いの真っ只中の、兼家。
兼家の三男で、のんびりやの道長は、政より、「いかにして女性にモテるか」に興味が有った。
妻を持ち、子供ができ、ようやく政に目を向けたが、上を見ると、凄腕の長兄、次兄とが居座っていて、出る幕なし。
ところが、そんな道長に、天の采配が降りつつあった。
上巻は、後世「七日関白」と呼ばれた、次兄・道兼の死により、道長に、内覧の宣旨が下ったところまで。
親が亡くなったとたんに、我が家族のみの栄華を望む。
正に「兄弟は他人の始まり」とは、よく言ったものだ。 -
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三男だった道長が大出世をした史実と
やや傲慢にも思えるあの歌の存在で
栄華を極めた、計算高い男という印象だったが
この物語の道長は、平凡児。
口癖は「ああ、何たること、何たること」だ。
それでも、野心は少なからずあり、成長しながら
確実に幸運をつかみ、それに甘んじることなく
場を見極め、理由をつけ政治家として生きた青年として描かれている。
大河ドラマの影響か、この時代を背景にした本をたくさん目にしたため購入したが、さすが永井路子さん。
歴史が好きなため、どんな人にも歴史に触れてほしいと分かりやすく書きたいという記事をどこかで読んだ通り、読みやすかった。
この本を読んだあとに、道長のあの -
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永井作品の中でも毛利元就の妻「おかた」が主人公の「山霧」は好きな作品だ。戦国時代の話なのに血なまぐさい感じがあまりしないのは、戦場の話よりも元就の知略や夫婦間の心情に重きがおかれているからだろうか。もちろん首を取っただとか、そういう話は随所に出てくるのだけれど。
他家から嫁いできた妻は、彼女の実家のスパイであり(そして実家を探らせる婚家のスパイでもある)、時には外交担当にもなったりする。だから夫婦とはいえ互いの胸の内を安易に明かしたりはできない。国人や大名の提携関係は情勢に応じて常に変化しており、昨日の敵は明日の友かもしれないし、その逆も然り。愛しながらも緊張感を伴う戦国時代の夫婦関係が興味 -
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TNさんのお勧め。
「この世をば」と同じ作者。
鎌倉幕府創世期を、4人の主人公、
頼朝の異母弟全成、御家人筆頭の梶原景時、
政子の妹保子、そして北条義時の視点から描かれていた。
現在進行形で見ている大河ドラマの先達として読んだ「この世をば」とは違って、
今回は既に見た大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を思い起こしながら読むことになった。
すでに顔が判っているというとおかしな表現だが、
俳優さんをあてはめて読んでいけるので、登場人物が把握しやすかった。
もちろん、演じていた俳優さんを思い出せずに、誰だったか気になって調べてしまう人もいた。
ドラマとこの本の人物像の違いはそのままに見た目はドラマで -
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永井路子さんの考える歴史上の優れたナンバー2
北条義時、源義経、徳川秀忠、平時忠、明智光秀、藤原不比等について、彼らの何が優れていて何を間違ったのかを面白く読むことができる。
永井路子さんらしい視点は今の時代にも通用することも多い。
永井路子さんの小説の中でも書かれてあったけど、こうして並べてみると義経のダメだったところがよくわかる。
個人的には北条義時、徳川秀忠、藤原不比等は興味深く読んだ。
何といってもこの本のいいところは、最後に城山三郎先生と永井路子さんの対談があるところ。
2人がナンバー2について語っている。
2人の対談は何という企画!素晴らしすぎる。
「歴史は巨人。問かければさま