永井路子のレビュー一覧
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ネタバレ大河ドラマ鎌倉殿の13人で登場人物のキャラが印象に残っているうちに読んだ。
悪禅師(阿野全成)・黒雪賦(梶原景時)・いもうと(保子=ドラマでは実衣)・覇樹(北条義時)の4編からなる直木賞受賞作。
悪禅師では亀の前騒動・義経追討・範頼殺害、黒雪賦ではまだごく初期に敗戦して隠れている頼朝見逃し・上総広常謀殺・義仲追討・義経を頼朝が嫌った原因は京好みの自分を差し置いて院に接近したことと説明・御家人66人からの弾劾状、いもうとでは婚約者義高の誅殺と大姫のやまい・比企一族殺害と頼家出家ねつ造・実朝と公暁・4代将軍三寅の世話人に保子がなったこと、覇樹では和田義盛とのいくさ・畠山重忠と稲毛重成とのいくさ -
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【きっかけ・目的】
令和4年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」関連で永井路子の著作の広告が出ていたので思わず購入してしまう。
【感想】
連作短編にとなっており、頼朝挙兵からその死、承久の乱までを主役を変えつつ時系列に物語が展開している。
今まで源平合戦の時代を注目することがなかったのであまりに大河ドラマの筋に沿っていることに驚くが、こちらが先の作品なのだ。
作者の慧眼が目を引くが、ストーリーとしても源平合戦から鎌倉初期の時代についてよく理解できる内容だ。
【終わりに】
大河ドラマも後半に移っていく。特に個人的には政子姉妹と阿野全成の最後の描かれ方が気になる。
この小説のように野心があったのか、ど -
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NHK大河ドラマ「鎌倉殿と13人」に刺激を受け、3冊目の永井路子を手に取りました。相当「吾妻鏡」を読み込んで、この時代の人物、相関関係を研究されてる方なので、読んでて安心感があるし、何よりめちゃくちゃ面白い。歴史って楽しいな〜と、思わせてくれる。
頼朝が鎌倉幕府を作ったわけではなく、坂東武者の力によるものだということや、乳母夫の持つ力の大きさ(比企尼vs阿波局=頼家vs実朝)、何もしないように見える北条義時がだんだん力を持ち、父時政と牧の方を失脚させるまで冷酷に成長する様などドラマの教本としては最高の一冊です。
その他、梶原、比企、新田、畠山と次々失脚していく中で、粘り強く北条とやり合う -
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今放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(三谷幸喜)はこの小説をベースにしてつくられているのではないかと思える程、史実や想像・創作の細かい微妙なところまで整合している。
しかし、頼朝・政子に最も近い全成と安子夫婦の心の動きを深く抉った「悪禅師」と「いもうと」はドラマでは決して表現できない凄みがあり、作者の思考の深さ繊細さの真骨頂をみる。
意志を面に出さない、顕揚への反感、時間をかけて熟成し、状況が熟れるのをひたすら待つ---。
簡潔なあとがき「この四編は、それぞれ長編の一章でもなく、独立した短編でもありません。一台の馬車につけられた数頭の馬が、思い思いの方向に車を引っ張ろうとするように、一人一人 -
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大河ドラマの影響で、北条政子その人に興味を持った。
政子の心の動きを細やかに捉え、鮮やかに描いている。
時代の波が容赦なく政子を悲しみに陥れる。
果たして本当に彼女は悪女だったろうか。
この本では政子を悪女としては書いていない。
一人の女、一人の妻、一人の母、一人の祖母として書かれている。
妬みや恨み、裏切りや悲しい死に囲まれ、悪女になるなと言う方が無理である。
ただ自分のわがままや欲望のために生きた人ではなく、深い愛情を与え続けたにもかかわらず、報われなかった悲しい人生の人であった。
当然、最終的にはどのような人生として受け入れていたかは、政子本人にしか分からない。
それでも、同情したり、同 -
ネタバレ 購入済み
大河ドラマの予習で
歴史小説と言えば花形である、戦国時代の武将の作品は色々読みましたが、源平や鎌倉時代は実はこれまで、あまり興味が無かった時代。
今回、大河ドラマの影響で読んでみることにしましたが、武士社会のさきがけの葛藤、苦悩、それらに恐怖と切なさを改めて感じました。
血縁者が血縁者を葬り去ることが普通に行われるなぞ、考えただけでも恐ろしい。
組織の秩序を守る為にと、血縁者に限らず、信じていた者に裏切られるということが起こりえる…、という時代だったわけですね。
北条家の政子、その兄、弟である今回の大河の主人公が、仲良くやっていたのかな、という点は、安心して読めました…。
政子は、武士社会の地位確立 -
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そろそろ来年(2022年)の大河ドラマに向けた読書を、ということで、まず本書を読んでみました。
小説ではなく論考です。『吾妻鏡』を中心に、『源平盛衰記』や九条兼実の日記『玉葉』など、さまざまな史書を読み込んで、歴史小説家ならではの想像力を駆使して導かれた、この時代の歴史の見方、捉え方にはとても説得力があります。
圧倒的な平家の世で、なぜ東国武士団は、流人だった源頼朝に臣従することにしたのか、また、北条氏がいつごろから力を持つようになるのか。そして、「御恩と奉公」をもとに維持される、頼朝を頂点とした東国ピラミッド。またその東国(武士団)と西国(朝廷)と、奥州(藤原氏)との関係。加えて、 -
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学生の頃から存在は知っていたんですが、「女性が書く戦国物(鎌倉ですが)は女性寄りの恋愛絡みのものになるから読みたくない」という偏見のもと、読まないままでした。炎環を先に読んでたら、絶対に読んでた、とは思う。
とはいえ、偏見はそんなに外れてなかったかな、と。
今、自分が歳をとったから、夫との関係、子供との関係も共感しながら読めるけど、学生の時に読んでたら、理解出来なかったと思う。
女の立場から見た、家族の安全のみのことしか考えてない主婦的なものではなく、自身をとりまく政治関係までちゃんと理解した御台様としての視点も描かれていたの良かった。
「女性的な見方」というのは、今までの社会の「妻はこうある