永井路子のレビュー一覧
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推古天皇から始まる女帝の歴史。
男性天皇の中継ぎではなくゴッドマザーとして君臨した女帝たちの姿が描かれる。
中でも持統天皇と藤原不比等の攻防はすごく面白かった。
血で血を争う覇権取りの中、不比等だけは血を流さなかったというのも興味深い。
著者の作品はいくつか読んだことがある。
生き生きとし逞しい女性から見た歴史が面白かった。
その持ち味が存分に生かされたこの本は、カルチャーセンターの講座を元にしたものらしい。その講座受けてみたかった。
歴史の定石を反対側から見てみるというのは、多感な時期に戦中・戦後を過ごし価値観を変えられた著者ならではなのかもしれない。 -
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全くの理系人間だった私は古文だの日本史だのに苦しんだ思い出しかない。だけど、本文を現代語に訳しては状況が伝わりにくいんだという永井路子さんの言葉を読んでから、古文解読や時代背景を知識として持ってこの本を読めてたら、もっと楽しめたかもしれないと思った。
それでも、夫と離れて悲しいと涙する妻や、尊厳を守る為に命を断つ覚悟とか、楽ではない出家を自ら選んだり、それを耐えたり。女性の登場人数、場面が少ないとはいえ、同じ女としてお腹にドーンと響く所が多かった。
そういえば、子どもの頃読んだ永井さんの細川ガラシャ夫人、あの感動は今も忘れられない。あの感じ、子どもだったからなのかな?
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元明・元正両天皇は日本史上初めて母から娘に皇位が譲られた稀有な例の証人であり、かつ元祖スーパーキャリアウーマン親子である。
飛鳥・奈良時代に異常に女帝が多い理由を、「母系の通じて天皇家における蘇我氏の血を死守したかったから」という点から繙いた永井氏の観察眼には驚かされた。そうか、そういう見方があったか、という感じ。しかし黒岩重吾の『斑鳩王の慟哭』といい、本作といい、女帝たちは信じられないほど血統に固執する。それがいいことなのかどうかは別として、やはり自ら子を産む女性の性質がそういう風にさせる部分はあるのかもしれない。さらに、この時代に顕著な天皇家内部の複雑極まる婚姻関係が、血にしがみつくもう -
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北条政子、淀君、天璋院・・・歴史上にいる魅力あふれる日本の女性たちに関する人物評伝。
永井路子さんの軽妙で痛快な語り口が、「歴史」という言葉の重みをすっかり和らげています。多様性が認められにくい当時において、慣習に囚われない33通りの多彩な生き方が紹介されています。
激しい嫉妬と怒りを執筆のエネルギーに変え私生活を暴露した道綱の母、次々と降りかかる火の粉をはらりと躱しながら涼やかに賢く長寿を全うした北政所、数多の非難を浴びながらも道楽者の夫のせいで逞しくならざるを得なかった日野富子など。血筋や財力や肩書では彼女たちは測れません。一人一人は普通の女性です。
最後まで読んだとき、時代も生き方も異 -
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氷高の皇女ーのちの元正天皇の物語。
話は、氷高の祖母である持統天皇の晩年から始まる。弟である文武、母である元明、そして自身の元正、甥の聖武の時代にかけて綴られている。
天皇家の女性たちを中心としながらも、やはり政治の面になると欠かせないのが藤原氏。
天皇家VS藤原氏の行く末に、歴史を知っていながらもハラハラドキドキしてしまう。
改めて、藤原氏は狡猾というか、とても頭の良い政治家だったのだな、と思わざるを得ない。
ところどころ、急に話が進んでしまうように感じるところもあったので、永井路子さんの文章が大好きな私にとっては少し残念。
好きな時代だったこともあり、とても面白く、時代に引き込まれて -
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ネタバレのちに元正天皇となる氷高皇女が主人公である。
著者によると、歴史的には地味な人物であるようだ。
それでも、奈良時代に生きた彼女の壮絶な人生は小説にするに値する。
妹吉備と長屋王の結婚、側近の裏切り、為政者であった当時の天皇の苦悩は計り知れない。
自身の血筋を守るという大きな使命を背負い、巧妙な駆け引きが繰り広げられる。
一人の女性として様々な思いを持ちながら、天皇という職務を全うした彼女の本当の思いはいかばかりだったのだろうか。
当時は、腹違いの兄弟姉妹や、姉妹で伴侶が同じだったりと、家系が複雑で少し混乱してしまった。
人物の関係性をしっかりと把握していれば、もう少し滑らかに読めて、ストーリ -
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ネタバレ言葉の皮を剥きながら…。日本の言葉の7割は皮を被っている。だからその本質を知るためには丁寧な解釈が必要。そういうことか。
永井路子が40年の構想の時間をかけて書いた、長期熟成歴史小説。ストーリー仕立てではなく、解説なので、硬い文章を読みたくない人にはお勧めできない。岩倉具視の概要を知った人が改めて好むべき作品。
おもしろかった。岩倉具視のイメージが変わるし、やっぱり歴史に女の影響力があった。(堀河紀子)
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p12 馬車
永井路子の歴史観。
「一台の馬車に付けられた数頭の馬が、思い思いの方向に車を引っ張ろうとするように、一人一人が主役のつもりでひしめき合い傷つけあう -
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ネタバレこれは藤原氏が権力を獲得するようになる原点だと読める。蘇我の力が霞んでいく、そんな歴史物語。おもしろい。
美貌の女帝:氷高の物語。持統天皇の孫で阿閉の娘である。
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p40 蘇我の血
蘇我家の繁栄の始まりは蘇我稲目からである。欽明天皇以降約150年の天皇は蘇我の血を引く女を妃に迎えて続いてきた。今回の主人公の氷高もこの系譜である。
p48 壬申の頃
氷高の母:阿閉は天智天皇の娘である。斉明天皇の頃に白村江の戦で唐・新羅軍に敗退して、中大兄皇子は国内の支持を得られず、政治の中心地の飛鳥から近江大津宮に遷都して心機一転して天皇に即位した。
天智天皇は唐風趣味を大いに取 -
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めちゃくちゃ面白いです、永井路子、杉本苑子といういずれも1920年生まれの大熟女がかしましくも語る「ごめんあそばせ 独断日本史」。まるでその時代に生きて、まるでその人たちとしょっちゅう会っていたかのように語る、歴史上の人物の悪口三昧、こき下ろし。女たらしだの愚図だの、自己チューだの、デリカシーがないだの、世の中を見る目がないだの、好きだの嫌いだの・・・まあ次々と血祭りにしてしまうありさま。まな板に載せられたのは、紫式部、清少納言から始まって、平重盛、建礼門院、源義経、上西門院、後白河法皇、後醍醐天皇、楠正成・・・とまあ、きりがないほど。
まあ女同士、とりわけ気に入らない女の話になるとそ -
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百数年続く、天皇家の妃として名高い蘇我の女帝たちと、その皇位を奪おうとする藤原氏のお話。
後に元正天皇となる氷高ひめみこを主人公に
持統天皇、元明天皇、元正天皇、3人の女帝たちが活躍し、そして滅びるまでが
壬申の乱、藤原京から平城京への遷都や、薬師寺建立などの史実とともに描かれていて大変面白かったです。
薄紅天女の世界観がすごくよかったので、この時代のお話をもっと読みたいと思って本書に辿り着いたのですが、すごくよかった。
貴族という華やかさの裏にある、血統を守るためだけに行われる政治。
度重なる政略結婚、近親結婚で家系図が出てくるたび、蘇我氏の執念を見た気がしました。
かと言って、藤原の側 -
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戦国時代を生きる女性、信長の妹、お市の方の物語下巻。
兄の手によって夫長政と息子万福丸は壮絶な最期を遂げ、三人の娘とともに織田家に戻ったお市の方。信長が本能寺の変で倒れた後、かつて毛嫌いしていた柴田勝家のもとに、織田家再興を心に期して再び嫁いでいきます。その後は歴史が語るとおりの悲劇。
現代日本では、首をとったり串刺し磔にしたりはないけれど、残忍な争いは今も世界のどこかで続いていて、争いの裏にある政治劇は、あきれるほど変わっていません。そして、今も昔も複雑で捉えどころない人の心の動き。目の前にある事実をどう捉えるかだけでなく、目には見えない他人の心をどう読み解くか、そこから起こりうる未来を -
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夏休みの読書。このごろ実用書ばかり読んでいたけれど、たまには歴史物でも読もうかなと思って手にした一冊。物語の世界に一気に引き込まれ、久しぶりに心から読書を楽しめました。。。
織田信長の妹としてうまれたお市の方。戦国時代を生きる女性は、戦にこそ参加しないものの、政治的な駆け引きや情報戦において重要な役割を担っていたことを改めて思い知らされます。夫浅井長政と兄信長の争いが激しくなる中で、自分自身の役割を思い、覚悟を決めていくお市の方。
彼女が「良く見える目」をもっていたが故の苦しさが描きだされています。
上巻は、いよいよ追い詰められた浅井長政が、援軍を待って時間を稼ぎ、信長を返り討とうとすると