永井路子のレビュー一覧
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トップクラスの貴族は、天皇家へ自分の娘を輿入れさせて男の子を生ませ、次期天皇にするために画策するというお決まりのコースがあった平安時代。誰もがどっちが得になる?と右往左往な態度。天皇でさえ奥方の背後にいる親族へ気を使うわざるえない社会
気遣いができる道長が持つ(作者曰く)平衡感覚とそれを良しとする姉と妻と定期的に流行る疫病のおかげで道長の時代は長く続いた感
名前が覚えにくくて複雑に絡む関係性を理解するのが大変でした。武家との考え方の違いに驚きました。天皇家も貴族たちも異母兄弟だらけ。今京都奈良に住む人たち皆、天皇家の血を受け継いでるのでは??(笑)
面白い本でした。紫式部が顔を出すのはちょこっとです -
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『鎌倉殿』ロスに供えて読み始めました。
1979年の大河ドラマ『草燃える』は、この『北条政子』(1969年刊行)と『炎環』(1964年刊行)が原作。
中学生の頃に一度読んでいるんですが、嵐の中、政子が頼朝の元へ走っていくのが冒頭と記憶していたらちょっと違いました。
そのほか、実朝が造らせた船が海辺で朽ちてゆき、泣き声が聞こえると人々が怯えるんですが、実は公暁と駒若がイチャつく声だったという場面が印象に残っています。
(竹宮惠子が少年愛というジャンルは確立していましたが、BLシーンはまだめずらしく、中学生だったので衝撃的でした。)
あとはほとんど覚えておらず、行き遅れの政子が「体をもてあます」とか、頼朝との逢瀬とか、あー、そうかこのへんが苦手で、その後、時代小説へと向かわなかったんだと思い出しました。
(時代小説ってなぜお色気場面がお約束なの?)
全体的に政子は気が強いけれど、悪女ではなく、時代の中で政治に巻き込まれてしまった孤独な女性として描かれています。
比企討伐が息子頼家を若狭局に取られた政子の嫉妬を契機としているように、女を強調しすぎてる感はありますが、書かれた時代的にはしょうがないのかも。
宗時兄にブラコン気味だったり、四郎義時は無口で愛想がないと書かれていたり、『鎌倉殿』とのキャラクターの違いとか、事件をどう描くのか比較しながら読むのがおもしろかったです。
実朝暗殺の黒幕が三浦義村となっているのは当時としてはわりと斬新な解釈だったのではないでしょうか。
承久の乱の政子の演説ではなく、実朝暗殺までで終わっているので、政子の孤独が際立つラストだなと思います。
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人の人生にはいろいろな側面がある。この「北条政子」に関しては、愛した男であり冷徹な武家政権の創始者である頼朝との夫婦の愛憎を前段として、その子達との関係について、よくある母親の娘や息子・孫への深い愛情や絶望等を、頼朝の妻でありその子であるという特殊な立場にまつわる結果として、女性作家の目から抉るようにリアルに表現する。
これほどの母親の想いや悲しみは男には描けないだろう。
前半の頼朝による北条家との旗揚げや鎌倉幕府の御家人体制構築等牧歌的な創業の空気が後半になり、幕府成立後一気にシリアスな内部抗争と親子の確執へと急展開する。「明の静」から「暗の動」への転換も読む人を引き込みこの物語をより面白くする。
大姫、頼家、実朝そして孫の公暁等母親・叔母として政子の彼らへ深い愛情がその深さ故に幾重にも屈折・乱反射して繰り返しの悲劇を生む。
武家政権誕生の歴史的場面における、それを共に実現した女性の赤裸々で人間的な心の物語である。 -
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短編集。
「右京局小夜がたり」
「土佐房昌俊」
「寂光院残照」
「ばくちしてこそ歩くなれ」
「頼朝の死」
「后ふたたび」
「頼朝の死」では、政子と義時、三浦義村の嘘と真実を巡って、「噂って何だろう。ほんとの事って何だろう。私たちにその見分けがつくのかしら」と思う小雪の言葉が、この作品全体をうまく表しているように思う。
複雑に入り組んだ人間関係の、どこを切り取るかで見える景色が違うのは当然で。
この短編集では、敢えて周縁の人物、特にお側仕えの者を通して語らせることによって、うやむやにしながらも「彼らにしか知り得ない」ような真実みを残して読ませてくれる。
表題作「寂光院残照」では、感情を表にしない徳子の代わりに、後白河院へ物を申す阿波内侍の構図。
けれど、語らない徳子の本心はどこにあるのか。
いや、そもそも本心といえるものがあるのか。
寂光院に移った後の徳子は、どこか悟ったような気丈さで読むことが多かったけれど、この、囚われたままでいるような、諦めているような徳子像が印象に残った。 -
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ネタバレそれにしてもすさまじい一生である。
北条というと、頼朝のと血のつながる者たちが亡くなったおかげで幕府の実権を握れた一族。ただ、政子の立場からすると、長女は政略結婚の末の悲劇を嘆いて若くして亡くなり、長男は精神を病み、次男は長男の子どもに殺されるいったように、これ以上不幸なことはないというひどい目に合う。
これらもすべて日本で初めての武士の政権の確立のために仕方が無かったといってしまえばそうなのだが、政子の中ではいかばかりの葛藤があったのか。本書では、そうした政子に思いを馳せる。
物語は、実朝が殺されたところで終わる。自分の人生を狂わせた幕府を憎むこともあっただろうが、承久の乱では政子は幕府を救う。本当に強いひとなんだと思う。