永井路子のレビュー一覧
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ネタバレそれにしてもすさまじい一生である。
北条というと、頼朝のと血のつながる者たちが亡くなったおかげで幕府の実権を握れた一族。ただ、政子の立場からすると、長女は政略結婚の末の悲劇を嘆いて若くして亡くなり、長男は精神を病み、次男は長男の子どもに殺されるいったように、これ以上不幸なことはないというひどい目に合う。
これらもすべて日本で初めての武士の政権の確立のために仕方が無かったといってしまえばそうなのだが、政子の中ではいかばかりの葛藤があったのか。本書では、そうした政子に思いを馳せる。
物語は、実朝が殺されたところで終わる。自分の人生を狂わせた幕府を憎むこともあっただろうが、承久の乱では政子は幕 -
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論考というほど難しくはないけど、ちょっとホネのある歴史エッセイ集。
人物別に書かれています。「頼朝とその周辺の人びと」では、源頼朝、北条政子、比企尼と阿波局、頼家と実朝、北条義時。「逞しき東国武者」の部では、三浦一族、伊豆の軍団、武蔵七党。そして「西国の権謀家たち」として、後白河法皇、源通親、後鳥羽院と藤原定家。
まず『つわものの賦』を読み、鎌倉時代の流れと永井路子さんの歴史観を知り、次に細川重男氏の『頼朝の武士団』を読んで、頼朝軍団の雰囲気とその攻防の緊張感を味わってからこの本を読んだ結果、この時代の理解が深まっていたおかげで、ラクに楽しく読めました。
ただ本書は、雑誌などに発 -
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観るにあたり、知識を補おうととっさに浮かんだ本作。政子自身の妻や母親の視点で書かれているが、鎌倉時代の大きな流れを理解するには適切な選択だった。
『吾妻鏡』などの資料をもとに永井さんは政子像を描いている。そもそも女性は歴史資料に残っていないことが多く、「政子」と云う名も、三代将軍実朝の時代になり朝廷から官位を授かった際に、父の名から一字もらってつけられている。頼朝の時代に果たして”政子”とは呼ばれていたのだろうか。平家との争いだけでなく、乳母一族との権力争いも凄まじい。はからずも将軍の妻、そして将軍の母になってしまった政子が、子を愛したい、子に愛されたいと願いなが -
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ネタバレ歴史をさわがせた女たち
飛鳥奈良平安という私の好きな時代の歴史小説を普通の本屋で見つけるのは難しく、古本屋さんの方が魅かれるものが売ってたりします。
なので古本屋さんを見かけるとついつい店内に入ってしまうのですが、そこで必ずと言っていいほど見かけるのが本書。
なぜこの本だけこんなに世の中に出回っているの?しかも古本市場だけに。
とはいえ、初心者用っぽく感じたし、古い本だから読まずにいたけど、これだけいつも見かけると気になるのでとうとう購入してしまいました。。
歴史小説家永井路子さんの歴史エッセイです。
どの章もさらりと読めて楽しめましたが、その中で静御前と神功皇后の章が印象に残りました。 -
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ネタバレ持統天皇の孫、氷高皇女のお話。
スポットライトを当てる人物は永井路子らしく、いいところをついてるなぁ、と思います。
生まれ、天皇となり譲位し、聖武天皇の補佐をするまでの一生。
氷高皇女は静謐な美しく芯のある女性としてかかれています。
個人的にはぱっとするところがあまりない気がするのですが、傍観者としての役割を果たしているのだと思えばその静かさもすんなりと受け入れられます。
私はサイドの人物、特に藤原不比等と聖武帝がとても好きになりました。
不比等は陰険であまり好ましくないような書かれ方をしているのですが、晩年に至るにつれて人間味のある人なんだなぁ、と思うと人の儚い悲しみを感じます。
聖武帝も -
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長らく『平家物語』を食わず嫌いしてきた。
相変わらず『平家』そのものは読めていないが、こういう入門書?を手に取ろうと思っただけでも、進歩かもしれない(笑)。
大河ドラマのおかげもあって、盛盛いっぱいの平家の公達も、ようやく何人かは「固体識別」ができるようになった。
しかし、それでも、全ての人物を頭に入れるのは難しい。
女性の人物を視点にしていることで、多少なりともとっつきやすいだろうか・・・。
一族の滅亡に直面した人々の苦しみは、本書からも垣間見ることができた。
筆者は、特に二位の尼(平時子)に思いいれが深いようだ。
そして、建礼門院には、少し厳しい。
その基準は、死に対する覚悟の深さのよう -
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私にとって、平家物語はあはれの文学である。
それは、源氏物語のあはれとは少し違う。
自分の意思に関わらず、明らかに傾きつつある時代の、大きな渦に巻き込まれていった多くの人達の、時に栄華を、そして遂には偏に風の前の塵に同じ、、、を。
けれど、やはり男側から見る平家物語は軍記物としての色合いの方が強い。
その男たちの陰に隠れた、多くを語らない女達にスポットを当て、筆者独自の視点から見た平家物語がここにはある。
とりわけ私は時子(清盛の妻)が好きだ。
肝の据わった、覚悟ある人物は男であれ女であれ、傍から見ても気持ちが良い。
壇ノ浦の場面の、神器と安徳帝を抱いて入水する彼女の姿には息を -
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ネタバレお市の方は,織田信秀の十二男七女の中の一人,信長の異腹の妹である。自由で型破りなことが好きな信秀は,この風変わりな娘を特に愛した。当時,信秀の家格はさして高くない。そのころ尾張に勢力があった織田と言う家の家来である。もともと尾張の守護として入国してきたのは斯波氏で,織田はその被官に過ぎない。が,室町時代の末になると,斯波氏はすっかり衰え,織田がむしろ主人顔をしはじめた。その織田もその頃は分裂し,片や岩倉に城を構え本家を名乗れば,一方は清洲に拠って守護代となり,その城下に守護館を作って斯波氏を手元に引き付けておき,大義名分はこちらにあると宣伝する,といった状態である。信秀はこの清洲織田家の三奉行