永井路子のレビュー一覧
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国家宗教と心の宗教
井上靖の「天平の甍」で有名になった鑑真来日であるが、本来の宗教としての魂の救済 を解く鑑真たちと、国家の安寧.発展を目的とする最新科学として仏教を見る国家側との鮮やかな対立を描き出している。本書の語り口は小説.物語的ではなく、史論.評論的であり、司馬遼太郎の「空海の風景」を思い起こさせるところがある。
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最澄.空海.そして桓武
最澄の話というよりは、桓武も同様のウェイトを置いて描かれている。そして空海の存在も際立っている。今日における弘法大師と伝教大師の名声の格差も含めて、「密教」という当時流行の「科学」の波に乗り切れなかった最澄の運の悪さがなんだか可哀想に思えてくる。司馬遼太郎の「空海の風景」に描き出されている最澄像との比較も面白い。
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「今も昔も」変わらぬ話
芥川龍之介や太宰治が好んで題材にした今昔物語は、1000年以上の年月を経ても小説の題材の宝庫である。作者永井路子は、原典にとらわれることなく自由に想像の翼を拡げて「今も昔も」変わらぬ人間の欲望、男女間の関わりを描き出している。
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Posted by ブクログ
ネタバレ古典を習い大鏡に面白さを見出す才女が描く王朝小説
タイトルになっている「この世をば 我が世とぞ思ふ
望月の 欠けたることも なしと思へば」でラストを
飾る構成、本書は上下巻の下巻・・・上巻は後日w
歌は、長女彰子(一条天皇)二女研子(三条天皇)四
女威子(後一条天皇)五女嬉子(春宮嬪=御朱雀天皇)と四女までの喜び(威子立后宣下)を宴で詠んだ歌
章毎に視線が変わるので若干の違和感があるものの、
史実を複眼的に別方向からとらまえていて面白い
永井路子先生の政治状況・人間関係から推測して描く
物語は、最近読み漁っている学者さんの論と差は無く
本当に史料に親しみ研究されていると頭が下がる