永井路子のレビュー一覧
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大昔の女の武器は「美貌」と「妊娠能力」だったという。整形や不妊治療もない戦国時代には、こういうことが運頼みだった。努力ではどうにもならないものだからこそ、女の僻みは強烈だったとも言える。永井さんならではの面白い視点だなと思った。
関ヶ原の合戦は「おねね(東軍)」対「お茶々(西軍)」の代理戦争という見方も言われてみれば納得できる。庶民の出らしく時勢を読んで順応していった「おねね」。一方、家柄を誇りに完全に時勢に乗り遅れた「お茶々」。20年も経てば時の為政者も代わる。戦国時代とはそういうものだから。秀吉の2人の妻の生き方は分かり易いくらい対照的だった。 -
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「ねね」という名は柔らかな響きがする。秀吉の正室おねねは名前のように優しい性格の女性だったのだろう。そして優しいだけでなく、竹のようにしなやかなでありながらも芯の通った強い女性だったのではないだろうか。この本を読んでそんな印象を持った。
下級武士の娘が、いつしか「御内室」と呼ばれるようになっても驕り高ぶることなく冷静でいて庶民的感覚を失わなかったことが、彼女が味方を増やすことができた理由だと思う。織田信長、おねねの兄・家定、義弟の弥兵衛(浅野長政)、伯父の杉原家次、加藤清正、福島正則、姑である秀吉の母…。おねねが秀吉の女癖に泣かされた時には、女あるじの地位を守るために彼らが支えになってくれた -
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炎環が大変おもしろく、本書も気になって手に取った。
歴史に名を残すナンバー1となった傑物たち、その脇を固めた様々なナンバー2たちにスポットを当てていく。
当然ながら歴史には複数の視点があるためにナラティブな語りではやや偏りが生まれる、限界があるとは思うが、複数の成功事例、失敗事例それぞれを論じていくことでなるほどと思わせる。
個人的に、ナンバー2という単語はいぶし銀、縁の下の力持ち、などと並んで好みである。
影の功労者、なんて最高にかっこいい。
お上の考え、下の者の感情、外部環境の動向・機微、あらゆる情報を集めて巧みにコントロールする能力に加えて、時勢を読む判断力も求められるし、時には理不 -
購入済み
透徹した視線
「悪霊列伝」という題名から海音寺潮五郎の「悪人列伝」を連想したが、作者永井路子の透徹した視線を感じる作品であった。怨霊 言霊を信仰する畏怖する という点では、井沢元彦の「逆転の日本史」の古代 中世版を思わせるところがあるが、作者永井路子は更に深読みして、生者が利害関係者が操る悪霊 という視点で、推理小説的な面白みをさらに加えている。
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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で鎌倉時代に興味を持った。ドラマは北条義時視点だったが、本書は姉の政子視点で描かれている。
登場人物が多く、背景についての解説も少ないため、ドラマを見ていなかったら途中で脱落していたと思う。ドラマ視聴後の読書のため、登場人物の顔とキャラクターが生き生きと思い出されて楽しく読めた。
時系列としては、鎌楽幕府の成立が軸になっているが、小説のイベントは女の政子の視点なので、家族の出来事を軸に描かれている。そしてそれが面白い。よくある歴史小説とは異なり歴史上の人物が血のつながる家族であり、欲に振り回される人間であり、良かれと思った行動が地獄に続いている皮肉であり、渦中の人 -
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鎌倉殿が始まった頃に買っていたのにずっと積読に。
基本的になんであれ映像化は好きじゃないのだけど、でもこちらはドラマ後に読んでも大変良かった!
源頼朝はともかく、その周辺人物像がいまいちわからなかったから、全て把握している今なら知識不足と理解不足に悩むことなく読み進められた。
全4章の構成は
•全成
•梶原景時
•北条政子の妹(今作中での名は保子、ドラマでは実衣)
•北条時政と義時
それぞれから見た鎌倉幕府の成り立ちや内情が描かれていて、どうしてもそこまで細かくは描ききれないドラマの脚本の隙間にある感情や事情が読み取れて面白かった。
三谷幸喜さん絶対これを参考資料にしてるよな〜、、とい -
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大河ドラマが面白かったので、関連書籍として読んでみた。
登場人物が多くて関係も複雑なので、ドラマを見ていなかったらきつかったと思う。ドラマのおかげで登場人物の顔とキャラクターが自然と浮かび、映像として脳内に再現できた。
小説の構成も面白い。連作短編のようでいて、そうでもない。同じ時間軸のできごとを複数視点で描いている。また、歴史上で有名な頼朝と政子は中心でないところも面白い。頼朝と政子の周辺で生きている脇役たちの内面描写が人間味があり、歴史上の立派な人物ではなく生きている人間として感じられる。
大河ドラマとは微妙に異なるキャラ設定や、事件の時の動き方なども面白かった。作家によって同じ事件か -
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壇ノ浦で助けられて寂光院で余生を送った建礼門院のもとに後白河院が訪ねたという大原御幸。永井路子さんは杉本苑子さんとの対談本で大原御幸はなかったわよ、わはははと言っていた。無かったと言いつつどんな話を書いたのだろうと興味があった。
現実にはなかったと思いながら、もしそうだったら、どんな言葉を交わしただろうかと永井路子さんらしい話だと思った。無関心と無感覚な建礼門院は理解できるような気がした。
その他、実朝の御台所の乳母の視点で実朝落命までが描かれた右京局小夜がたりなど全6作の短編集。
頼朝の死では、いかにして噂が出来上がるか、真実かどうかはどちらでもよく、真実であって欲しいと思う人があると噂は生 -
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永井路子さんによる歴史エッセイ。
最初大河ドラマを見るにあたって基礎知識をと思い読み始めた「炎環」がとても面白く、それ以来永井路子さんの本を読み続けている。
歴史学者ではない、彼女の小説家としての視点の解釈が面白く、時に学者では思いつかない考えに頷くばかり。
今では定説になりつつある実朝暗殺の黒幕も、当時の識者の間では北条氏が有力視されていたが、資料を何度も読み、当時の武士の在り方、考え、風習などから乳母、乳母夫の持つ影響力を考え黒幕は三浦義村であろうと推測している。
40年以上前に書かれた本でも色褪せることなく、今なお楽しく読むことができる。
このエッセイが書かれた当時は、北条義時は三上皇を