あらすじ
歴史エッセイの名手が紡ぐ「わが愛する男たちの肖像」
SNSで話題。累計15万部の伝説の名著が、緊急復刊!
『炎環』『雲と風と』『北条政子』『つわものの賦』……多くの歴史小説を著した著者が、歴史上はほとんど無名・英雄の陰に隠れながらも実力を持ったしたたかな仕事師、〈ナンバー2の男〉の生き方を描きます。
『鎌倉殿の13人』ですっかり有名になった北条義時は、永遠のナンバー2.根っからの権力・政治好きにもかかわらず、あえて表には立たず、したたかに、ナンバー2の生涯を全うした。
源義経。同じくナンバー2でありながら、組織のなかの自分の位置づけが出来ず。華やかなスタンドプレーを繰り広げ、ナンバー1が霞むなど数々の致命的失敗をおかした。
徳川秀忠。家康と三代家光の陰にかくれた秀忠こそが、徳川家の最大の功労者。大名の転封、改易、人員の配置転換など重要な施策を行い、幕府の基礎を固めた。メシよりイロより政治が好き。
他、平家政権の仕掛人「平時忠」、途中入社ゆえに栄光と挫折を味わった「明智光秀」、など。
巻末の城山三郎氏との対談には、2024年大河ドラマ『光る君へ』で注目の関白・藤原道長も登場。「この世をば」と詠った彼はナンバー1志向と思いきや、意外にも……。
歴史好きはもちろんのこと、今を生きるビジネスパーソンも必読! 「組織論」本としても読める名エッセイです。
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Posted by ブクログ
永井路子さんの考える歴史上の優れたナンバー2
北条義時、源義経、徳川秀忠、平時忠、明智光秀、藤原不比等について、彼らの何が優れていて何を間違ったのかを面白く読むことができる。
永井路子さんらしい視点は今の時代にも通用することも多い。
永井路子さんの小説の中でも書かれてあったけど、こうして並べてみると義経のダメだったところがよくわかる。
個人的には北条義時、徳川秀忠、藤原不比等は興味深く読んだ。
何といってもこの本のいいところは、最後に城山三郎先生と永井路子さんの対談があるところ。
2人がナンバー2について語っている。
2人の対談は何という企画!素晴らしすぎる。
「歴史は巨人。問かければさまざまなヒントや慰めをくれる。豊富すぎるその答えをどのように生かすかは人それぞれ。歴史をひからびたミイラとしてではなく、生き生きとした人間大河の流れとして捉える緒口にして欲しい。」と永井路子さんが書かれている。
その言葉を胸に刻んでおきたい。
1989年刊行で30年以上も前の本だけど内容は今読んでも面白い。
電子書籍にしてくれてありがとう。
Posted by ブクログ
炎環が大変おもしろく、本書も気になって手に取った。
歴史に名を残すナンバー1となった傑物たち、その脇を固めた様々なナンバー2たちにスポットを当てていく。
当然ながら歴史には複数の視点があるためにナラティブな語りではやや偏りが生まれる、限界があるとは思うが、複数の成功事例、失敗事例それぞれを論じていくことでなるほどと思わせる。
個人的に、ナンバー2という単語はいぶし銀、縁の下の力持ち、などと並んで好みである。
影の功労者、なんて最高にかっこいい。
お上の考え、下の者の感情、外部環境の動向・機微、あらゆる情報を集めて巧みにコントロールする能力に加えて、時勢を読む判断力も求められるし、時には理不尽な状況で耐え忍ぶ忍耐力、いざとなれば泥を被る覚悟も求められる...って要するに、優れたナンバー2になるために必要な要素を突き詰めると、けっきょく優れたナンバー1に求められる器とも同じなのでは。(なんならそれ以上?)
猪突猛進にぐいぐいまわりを巻き込む一方でややバランスの欠如したタイプの傑物ももちろん存在したことはあるのだろうが、のちまで語り継がれる明君、名将は、ナンバー1だろうとナンバー2だろうと、みんなバランス感覚が優れていたのではと思った。
本書でおもしろく学んだ教訓が現代のサラリーマン生活にどこまで適用できるかわからないが、少なくともナンバー2に求められる能力を磨いて組織への貢献を目指そう、いい仕事をしようというモチベーションになった。