新井素子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
おしまいの日は、三津子の日記から始まる。
仕事人間である夫、忠春が帰ってこない。
ご飯を作り、春さんが帰ってくるまで食事も取らず寝もしないで待っている三津子。
そんな寂しい生活の中に、にゃおんという猫が三津子の元にやってくる。
三津子の友人である久美、その夫の俊幸。
二人の介入も虚しく、三津子はおしまいの日へと近づいていく。
日記と手紙の黒塗りの部分。
なんとかして読めないのかな…。
それを公開したバージョンも発売してほしい。
何がおかしいのか、誰がおかしいのか、最後の最後で疑問が生まれてしまったな。
本当におかしい人は、自分がおかしいって気づけないはずだし、でもやっぱり三津子もおかしいんだろうし。
夢だと思ってたあの出来事が、本当に起こったことなんだろうな。三津子は忘れられて良かったね。 -
Posted by ブクログ
新井素子の長篇SF作品『ひとめあなたに…(英題:Glimpse Of You)』を読みました。
新井素子の作品は5月に読んだ『グリーン・レクイエム』以来ですね。
-----story-------------
女子大生の圭子は、最愛の恋人・朗から突然の別れを告げられる。自分は癌で余命いくばくもないのだ、と。
茫然自失する圭子の耳に、さらにこんな報道が──「地球に隕石が激突する。人類に逃げ延びる道はない」。
圭子は決意した。
もう一度だけ、朗に会いに行こう。
練馬から鎌倉をめざし、徒歩で旅に出た彼女が遭遇する4つの物語。
……来週、地球が滅びるとしたら、あなたはどうやって過ごしますか?
著者を代表する破滅SF。
解説=東浩紀
-----------------------
1981年(昭和56年)に刊行された作品です。
■練馬 圭子――出発
■世田谷 由利子――あなたの為に チャイニーズスープ
■練馬――世田谷 圭子
■目黒 真理――走る少女
■世田谷――目黒 圭子
■新横浜 智子――夢を見たのはどちらでしょう
■目黒――新横浜 圭子
■西鎌倉 恭子――聖母像
■新横浜――西鎌倉 圭子
■西鎌倉――そして湘南 圭子――ひとめあなたに……
■あとがき
■解説 新井さんがくれたもの 東浩紀
これは地球さんの余命いくばくもない、最後の1週間の出来事……朗、あたしの恋人、、、
やっと見つけた……あたしの半分……あたしと同じ感性を持ったひと……あたしの、アダム。
だが最近、朗の様子がおかしい……こんな、ヘビの生殺しの状態、我慢できない、、、
あたし、断固、意を決した……朗の家は鎌倉、うち、江古田。
地球滅亡の混乱のなか、正気と狂気、現実と非現実の長い旅が始まる……そして、やっと朗に会えた時、、、
超ベストセラー作家・新井素子が放つ長篇SFロマン。
地球の滅亡まで残り1週間……という非日常的な設定の中で、恋人に会いたいという日常的な目的を果そうと主人公の女子大生・圭子が、練馬から鎌倉まで歩こうとする、、、
その旅(移動?)の中での出会い、別れ、再会……そして狂気、SF的な設定がありつつも、登場人物たちの日常や、彼らが抱える悩み、喜びといったものが現実的に描かれているのが特徴かな。
奇抜な設定や派手なアクションはなく、非日常的な舞台の中で、登場人物たちがごくごく日常的な感情を抱き、日常的な行動をする姿が描かれ、ギャップがあるはずの非日常と日常を絶妙に融合させることにより、独特の雰囲気を醸し出してるな……と感じました、、、
ちょっと残念だったのは……一部の場面において残虐なシーンが含まれていること、女性の登場人物が多いことで、やや感情移入し難かった点かな。 -
Posted by ブクログ
深緑野分作品の中には雑誌で発表しているが本になっていない作品がいくつかある。今回は「石のスープ」が収録されていると言う事で即買いした。帯には「人類と食にまつわる8編のSF小説アンソロジー」と書かれてあった。しかも、この本には人間六度と新井素子の書き下ろしも収録されているのでお得感満載。他の5人は初めて見る作家。書き下ろし作品以外は全て「集英社WebマガジンCobalt」で公開されたものとのこと。このマガジン名は初めて知った。また帯には「豪華執筆陣が贈る空想科学ごはん小説」と書かれてあった。私の知っている3名以外の人も豪華執筆陣なのか。知らなかった、後で読んでみよう。
〇 石のスープ/深緑野分
SFなので、石の機能発現の理由なんて特に説明する必要はないが、元々の素材の味よりも悪くなる理由は知りたかったかな。普通は食材の組み合わせで味が良くなったり悪くなったりもするし、スープの濃さも味の旨さに影響する。単にこのような事は言わなくとも、十分にあり得ることなのかもしれない。しかし、栄養素はあるのだから、あとは調味料でなんとでも味をごまかせると思うのだが。この時代はアミノ酸の合成技術がなかったのだろうか。それよりも、この石に振り回される人たちの心の動きに着目した方が遥かに面白い。全く人間って奴は愚かなのかな。愚かだから本作品は面白いのか。
〇 敗北の味/人間六度
食生活は子供の頃と現在ではまるで異なる。今や野菜ばかり食べていても生きていける。油だけ飲んでも生きていける。体はうまくできているもので、炭水化物を全くとらなくても生きていけるので健全に痩せることができる。食に関する知識が桁違いに増えているからだ。どの様な形でも、食物からエネルギーを得ることで生きていけるが、エネルギーへの変換効率は実に悪い。従って、直接電池でエネルギーを取り込むことができれば生きていくために効率はこの上ない。
味だって、食品は化学物質の集合体なので、成分分析が完璧であればどんな食材の風味を完全コピーできる。食品会社の研究所ではそれが現実化している。そもそも味とか匂いとかなくても生きていける。点滴だけでも生きていける。実際、コロナに罹患した時も味覚が全くない状態で食事をしたし、酢の一気飲みもできたし、CoCoイチの10倍カレーも問題なく食べることができた。
これら食事の究極の形が電池なのだが、人間の体の細胞には記憶が眠っていたようだ。生物はいくら進化したとしても、脳には昔の記憶が片隅に残っていたのだろう。最近、鯨の刺身を食べたが、昔たくさん食べていた頃の記憶が一輝に蘇った。涙は出なかったが、脳全体にビビビと電気が走って、瞳孔が一気に開いた気がした。
〇 切り株のあちらに/新井素子
新井素子のデビュー作、勿論オンタイムで読みましたよ。でも、それ以降は全く読んでいない。何故かというと、新井素子の文体を全く受け付けないから。これは生理的レベルの嫌悪感と言える。それにも拘わらず今回読んだのは、歴史を経てさすがに文体が変化しているだろうと考えたから。しかし、昔と全く変わっていなかった。勿論この文体が良いと思う読者はいる訳だが、私は花粉症レベルのアレルギーがある。もうくしゃみをしたくないので、今後も読まないだろう。新井素子さん、ごめんなさい。
他の作品を一つ読んでみたが、どの作品とは言わないがちょっとレベルが違い過ぎるので残りの作品を読むことを諦めた。途中で諦めるのは、宮内悠介の「スペース金融道」以来だ。 -
Posted by ブクログ
作者の名前はかなり前から知ってはいたが、その作品を読むのは今回が初めて。日下氏の編集ものに興味があって、本書もそれで読んでみることにした。
本書には、80年代から2000年代の作品のうち、一度も文庫化されていない作品、再編集本ではない個人短編集に収録されたことのない作品、一度も本になっていない作品を、可能な限り集めてみたそうだ(編者解説より)。こうした編集方針を聞くだけでも、随分お得感を感じてしまう。
第一部は『季節のお話』という連作ショートショート。「雪 一月」では、雪というものがどうしてできることになったのか、「氷 二月」では氷ができるようになったのには奥さん思いの熊さんの思いがあったからといったような、ほのぼのとしたりちょっと可笑しかったりする、かわいいお話が12編収録されている。元の単行本ではカラーイラストが付されていたそうで、絵もぜひ見たくなる。
第二部は『ちいさなおはなし』という、15編のショートショート。ちょっとダーク調の強い作品もあるが、バラエティに富んでいて面白い。
ちょっと端折るが、最後に収録されているのが、『チグリスとユーフラテス』外伝の二編。今回が初めて読む新井素子の本なので、『チグリスとユーフラテス』という作品自体知らないのだが、日本SF大賞を受賞した作品とのこと。「馬場さゆり」は、心身ともに傷ついた夫婦が ”ナイン” という惑星へ移民することにした事情や葛藤を描いたもの、「あした」は、コールド・スリープという何十年にも及ぶ惑星間移民を可能にするための技術を完成させるために、被験者になることを志願した女性の心情を描く。この二編は外伝とはいっても正にSFで、おそらく本編には直接つながらないのだろうが、本編も読んでみたくなった。
クスっとしたり、懐かしさを感じたり、人間が生きるとはどういうことなのか少し考えさせられたりと、いろいろな思いを味わうことができる一冊だった。